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2020年8月20日

「フェイク・バスターズ」番組ダイジェストVol.1 もしも身近な人がひぼう中傷を受けたら…


プロレスラーの木村花さんの死によって、被害の深刻さが改めて浮き彫りになったネット上のひぼう中傷。大人だけでなく、中高生など、子供たちへの被害も広がっている。指先一つで誰もが簡単に人を傷つけてしまう時代。もし、あなたやあなたの子どもが、SNSでひぼう中傷の被害にあったら…

まさか息子が 新型コロナでひぼう中傷
関東地方に住む高校生のリョウスケさん(仮名)は、ことし3月、新型コロナウイルスに感染し2週間入院した。PCR検査で陰性になった後も熱や倦怠感などの症状が続き、学校は長期間休んでいる。この間、症状の変化や病院での治療の様子などを、ツイッターで匿名で発信してきた。



リョウスケさん
「僕が情報発信することで、何か手助けになればいいなと思い、始めたのがきっかけです」
















リョウスケさんが反論するとコメントはさらに攻撃的になり、複数の匿名アカウントから1日数十件のひぼう中傷が書き込まれた。中には、リョウスケさんがウソの投稿で収入を得ているという、事実無根の書き込みまであった。

リョウスケさん
「ひぼう中傷は目に入ると流せない。無視したつもりでも心に残って、長い間続くと、どんどん心が削られて、精神もすり減っていった」

母・アケミさん(仮名)
「ひぼう中傷が来ている時は、息子は本当に落ち込んで、泣いたりすることもありました。(ひぼう中傷は)他の世界の話だと思っていたんですが、こんなに身近に起こり得るんだと」


「投稿者を特定したい」 裁判を起こした親子
もしひぼう中傷を受けたら、被害者や家族はどうすればいいのか。
ことし5月、プロレスラーの木村花さんが、リアリティ番組に出演したことがきっかけで激しいひぼう中傷に遭い、亡くなった後、ひぼう中傷に対して裁判を起こして立ち向かおうという声がわき起こった。



裁判をしたら、被害者はどこまで救われるのか?実際にそれを経験した親子がいる。
マモルさん(仮名)は、中学1年生の頃からいじめを受け、その延長でネットでも激しいひぼう中傷を受けた。「爆サイ」という匿名掲示板に専用のスレッドが立ち上がり、悪口などが次々と書き込まれたのだ。



母・ユウコさん
「息子はウソつきだとか、虚言癖があるとか。最初は、何でこんなこと書かれるんだろうって思って。みんな匿名なので誰なんだろうって。ただ学校関係者なんだろうというのは内容を見てわかった」




学校は全学年の保護者を集めて、説明会を開催。
しかし、掲示板の書き込みは、かえってエスカレートしていった。
中には、マモルさんの行動を監視しているような書き込みも現れた。



母・ユウコさん
「自転車でどこを走っていると、書かれているものがあった。息子は『もう外に出るのも怖い、誰かが見てる』と。部屋にいるのに、外から誰かに見られているかもしれないと。そんな状態になっちゃったんです」


もはや自力では解決できないと思ったユウコさんは、弁護士に相談した。





荒生裕樹弁護士
「印象としては、掲示板の内容が相当異常だと思ったんです。取り返しのつかない事態に陥る前に、なんとか事態をくい止めたいと」


荒生弁護士が提案したのは「発信者情報開示請求」という手続き。匿名で書き込みをした人の情報を明らかにするよう、サイトの運営会社やプロバイダーに求めるものだ。しかし、そこには厳しい条件がある。



手続きでは、特定の書き込みを指定して、その投稿者の情報を請求する。認められるには、誰に対して書かれたのかがわかり、かつ、明らかに、名誉毀損や侮辱、プライバシー侵害にあたる表現が含まれている必要があるという。
たとえば、先ほどの、「自転車に乗っていた」という書き込みは、本人にとっては辛い内容でも、裁判で情報開示が認められる可能性は極めて低いという。



荒生弁護士
「ご本人としては本当に見ていてつらいものでしょうけども、法的な観点でいうと、そういった権利侵害までは認められないという判断もあります」


スレッドの書き込みは全部で3千件近く。弁護士が検討したところ、そのうち裁判所に認めてもらえそうなのは、わずかに9件だった。
さらに、プロバイダーのアクセス記録が消去されているものを除くと、書き込んだ人をたどれるのは、9件のうち4件。その4件が裁判所に認められ、投稿者を特定することができた。



その後、謝罪してきた人を除く1人を相手に、損害賠償を求める裁判を行い、和解が成立した。最初の相談からここまで1年9ヶ月がかかった。

実際に特定できたのはわずかだったが、裁判がメディアに取り上げられるなど、影響は大きかった。裁判を起こしたあと、マモルさんの悪口が書かれていたスレッドは、掲示板から消えた。

母・ユウコさん
「やっぱり、匿名でひぼう中傷をしている人たちに対して、匿名だってバレるんだよっていうことが発信できたかなと。そこは一番よかったところだと思う」


マモルさんは、不登校のまま中学を卒業。高校は地元の人が少ないところを選び、今は毎日通学している。

マモルさん
「(中学時代は)色んなことがあって、悲しいときが多かったです。またいつ書かれるかわからないので、そこは怖いです」


知っておきたい もしひぼう中傷を受けたら
ひぼう中傷から身を守るには、どうすればいいのか。フェイク情報と戦う専門家「バスターズ」が議論しました。



評論家 宇野 常寛さん(以下、宇野)
スレッドの書き込みが3千件あって、実際に裁判所に認められそうなのが9件というのは、かなりシビアな判断基準に見えるんですが、仮に裁判をしようと思ったらどのような手続きを踏んだらいいんですか?

弁護士 神田 知宏さん(以下、神田)
まずは、書き込まれた画面の「証拠化」をしていただきたいです。
画面を印刷したりスクリーンショットを撮るなどして、ひぼう中傷を受けた証拠を残すことが重要です。その際重要なのが、URLがわかるようにすることです。スマホのブラウザだとURLが全部映ってない場合が多いので、パソコンに転送したり、メモアプリにコピーするなどしてURLをすべて残しておくようにしてください。



神田
もう一つ重要なのが、手続きのスピード。プロバイダーなどが保存しているアクセス記録は通常3ヶ月から6ヶ月で消去されてしまう。情報開示請求をするならなるべく早く弁護士に相談する必要がある。

宇野
裁判というと結構お金がかかるというイメージがありますよね。その辺はどうなんですか?

神田
1つ悪口を書かれて、書き込んだ人を最後まで特定しようと思うと、裁判費用が50万~100万円くらいはかかります。(※投稿者への損害賠償請求も含めた概算です)
「慰謝料で元がとれますか?」と聞かれる方がいるんですが、慰謝料はいまそんなに高くないんです。

YouTuber 葉山 潤奈さん(以下、葉山)
私は、加害者に賠償してほしい、謝ってほしいという気持ちももちろんありますけど、ひぼう中傷された時に「争う姿勢を打ち出すのも1つの手なんだ」と発信していく。これしかないんじゃないかなと思っています。

ITリテラシー専門家 小木曽 健さん(以下、小木曽)
ひぼう中傷をすると訴えられることがある、って知らない人もいるし、反撃できるって知らない人もいっぱいいる。なぜかというと、過渡期だからだと思います。今、我々がこうやって話をして情報発信をすることがその先に進むきっかけにもなる。

いま発信者情報開示請求を、被害者がより使いやすい仕組みに変えようという動きが進んでいる。開示する内容に、これまで含まれていなかった、書き込んだ人の電話番号を追加することや、より短い時間で情報開示が進む新たな裁判手続きについて検討されている。


被害者をサポートするため、裁判以外の相談窓口も整えられてきている。国が作った相談センターのほか、ネット企業の業界団体が作った窓口や、子どもの被害を専門に扱うところもある。どこに相談すればいいか迷ったら…

小木曽
もし「どの窓口に相談すればいい?」と聞かれたら、私は「全部に連絡してごらん」と言います。色々な人が色々なアドバイスをくれるから、その中で自分が「これは使えるな」と思うところを選んでいいんだよと。



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Vol.2 ひぼう中傷の被害者を救う 第三者がカギに!
Vol.3 ひぼう中傷をなくすために…プラットフォームの役割は?



「フェイク・バスターズ」

8月20日(木)夜10:00~10:30(総合テレビ)