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2020年8月19日

ツイッタージャパン社長に聞いてみた【後編】

ネット上のひぼう中傷に関するツイッタージャパンの代表取締役 笹本裕さんへのインタビュー続編。聞き手は「フェイク・バスターズ」出演者で自身もひぼう中傷を受けた経験のある葉山潤奈さん。
対談の後半、ツイッター側の発言からは、プラットフォームとして「ひぼう中傷対策」と「表現の自由」を両立させるための苦悩が垣間見えました。

「ツイッタージャパン代表に聞いてみた」対談の前編はこちら


笹本 裕さん
ツイッタージャパン 代表取締役  複数の外資系企業で要職を歴任。2014年から現職。


「表現の自由を守る」と「ひぼう中傷をなくす」…両立できる?

ツイッタージャパン代表 笹本 裕さん(以下、笹本)
(プロレスラーの木村花さんが亡くなった)事件の時は、社員それぞれが本当にすごく心を痛めました。社内の会議でも「なぜこういう事が起きてしまったのか」「我々ができる事は何だったのか」議論し合いました。その時にも話をしたのですが、日本にいる我々は自由に発言ができることの尊さや重みを忘れがちではないかと。
日本は「言論の自由」が担保されている一方で、それを悪意をもって使う人がいることがすごく残念です。言論統制にならないようにしつつ、利用者のリテラシーの向上や、倫理に反することにはしっかりと対応していきます。

葉山 潤奈さん(以下、葉山)
私も普段、ユーザーのリテラシーを高められるような発信をしているつもりですが、それだけでは、ひぼう中傷を防ぎきれないと感じています。発言する側に「自由のはき違え」がすごく多いと思っています。私としては、攻撃的なコメントを被害者が消せるようになってほしいとか、複数のアカウントを持つことに制限をかけてほしいと思うんですけれど、ツイッターとしては、それらを秤にかけた場合、「言論の自由」を大事にしたいということですか?

笹本
発言の自由はとても大切だと思っています。
例えば日本では「#検察庁法改正案に抗議します」というムーブメントが起きました。またアメリカでは「#MeToo」というムーブメントが数年前に起きました。こうしたことが起きるのもツイッターの特性であり、力でもあると思います。
誤解してもらいたくないのですが、我々も決して、悪意を持って人を攻撃したり、ひぼう中傷する人を守りたいわけではないんです。一方で、権力と対峙するような弱い立場の方々が、自分を守りながら自由に発言できることも担保したいと。


ネット上の「表現の自由」 日本とは事情が異なる国も

――世界中で1億8600万人が利用するツイッター。日本から海外に目を向けると、そもそもネット上の発言に「自由」が認められていないことも多いと笹本さんは語る。

笹本
ムーブメントが起きる時は、まず弱い立場の人が発信をして、それがだんだん広がっていくことが多いと思いますが、国によっては言論統制があって、発信者が特定され処罰されることもあると思います。
ある国では、中央政府がツイッターを閉鎖しようとしたことがありました※。
我々はグローバルなプラットフォームであるがゆえに、そうした動きにも日々触れています。
自由に発信できない国にいる人たちからすると「日本はすごく自由でいいね」と言われます。

葉山
うらやましい、というわけですね。

※イランでは2009年に、反政府デモの呼びかけに使われることを警戒し、政府がツイッターやフェイスブックの閲覧を禁止。 またトルコでは、政権への批判をおさえるため、2014年に政府がツイッターを遮断する措置を取った。その後、裁判所が憲法違反との判断を示し、遮断は解除された。

“日本の会社”として何ができる?


葉山 潤奈さん
芸能事務所社長、モデル、ユーチューバーなど多彩に活動。
過去にネット上で悪質なデマを拡散されたり、動画の生配信中にひぼう中傷が殺到するなどの被害に悩まされてきた。同じような被害に遭った人の相談に乗ったり、被害を減らすための発信を続けている。


葉山
ひぼう中傷をなくすために、グローバル企業としてではなく、「ツイッタージャパン」として、日本国内で何かやれることはないのでしょうか。

笹本
日本国内で対応できることも数多くあると思います。
グローバル企業だからと言って、日本と海外をすべて同じように考えているわけではありません。当然日本で起きている問題には、しっかりと対応していこうとしています。日本語のコンテクスト(前後の文脈)がわかる人材を強化し、その知見を機械学習に反映させるなど、日本から世界に対してしっかり声を出しています。
例えば、日本は自殺が多い国ですが、そういった方々をできるだけ多く救おうと、自殺に関する検索をした方に、注意喚起をする機能を追加しました。これは世界の中で日本が最初にスタートさせたものです。

もう1つは「※ソーシャルメディア利用環境整備機構」の発足です。国内のSNS事業者でつくる団体で、デジタル上の問題にいかに対峙していくのか議論を始めています。今後SNSに関する政策にも関わってくると思います。

※「ソーシャルメディア利用環境整備機構」
ツイッターやフェイスブック、LINEなどのSNS事業者がことし4月に設立した団体。5月には、プロレスラーの木村花さんがSNS上でひぼう中傷に遭い亡くなったことを受け、緊急声明を発表。嫌がらせや名誉毀損などを禁止事項し、違反があった場合のサービス利用停止などを徹底するとしている。




ひぼう中傷をなくすために必要なことは?

葉山
ユーザーとプラットフォーム、いろんな分野で対策をしないとどうにもできないというところは、私たちユーザー側もわかっています。
「もし法律が変わったら…」「プラットフォームの利用制限がかかったら…」ではなく、もともと道徳の話でもあると思うので、「やってはいけないことをやっている」という認識をもっと広めていきたいと思っています。

笹本
そうですね。今まさに葉山さんがおっしゃったように、リテラシーというのはまだ伸びしろがあります。「あの人と意見が違うから」と攻撃する人もいるので、多様性の大切さを知ってもらうことも必要だと思います。
また、SNSやYouTubeなどでビジネスをしている人の中には、炎上させることで注目を集める手法をとっている場合もあると思います。そういったことも「それがかっこいいことではないんだ」ということを、みんなで共有していくことも必要ではないかと、私も思っています。
「こういう課題がある」と発信することにぜひ力を入れたいと思うので、そういった取り組みをご一緒させていただけるとありがたいです。

葉山
そこは共感します。ぜひ、よろしくお願いします。


インタビューは8月5日にツイッタージャパンのイベントスペースで行われた