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みんなでプラス > 宮田裕章さんと考える データとわたしたちの社会 > 1人ひとりの想い・価値が響き合う社会へ ~宮田裕章さんがめざす「共鳴する未来」とは~
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2020年9月26日
1人ひとりの想い・価値が響き合う社会へ ~宮田裕章さんがめざす「共鳴する未来」とは~
 新型コロナの影響を受けてリモートワークやオンライン会議などデジタル活用は広がりをみせ、さらに菅新政権によるデジタル庁の計画など、社会全体が「データ駆動型社会」に大きく歩みを進めています。そんな中、今月宮田さんは初の著書『共鳴する未来』を執筆しました。「単にテクノロジーやビッグデータを使って利便性が高まるだけでなく、社会のしくみそのものから考えなおすべき変化の時期にきているのです。そのひとつが、お金だけではない様々な価値を大切にしながら社会そのものを動かしていくという“共鳴する未来”なのです」。共鳴する未来を実現するためには何が大切なのか、宮田さんの考えを聞きました。

(番組ディレクター 今氏源太)


「欲望の資本主義」から「共鳴する未来」へ
 アフターコロナ、データ駆動型社会、持続可能な開発目標・・。これからの社会の在り方を標ぼうした様々な言葉が生まれ、実現への試行錯誤が続いています。今後どのような暮らしを実現したいのかは1人ひとり異なりますが、宮田さんはデータを使ってより良い社会をつくるという信念を通して積み重ねてきたおもいを “共鳴する未来”という言葉で表現しました。



 私は1年にわたって宮田さんとともに番組の取材・制作を行っていますが、共鳴=響き合うという語感には宮田さんの様々な考えが新鮮な手触りのまま込められていると感じました。一体なぜこのタイトルにしたのか?まずはそこから質問を始めました。

慶應義塾大学 宮田裕章教授(以下、宮田)
「書籍のタイトルですが、20回くらいリライトしたと思います。これまでも多くの人が『お金より大事なものはある』と言ってきました。しかしそうした価値を実際に形にしたり、共有しようとするには結局お金を使うしかなかったわけですよね。産業革命以降は経済合理性っていうところで世の中の大半が動いたし、理念とか主張のようなものがあったとしてもそれだけではお金は回りませんでした。

お金の合理性という単一の欲望の渦の中に人々を巻き込み、みんなが同じ未来に向かうこれまでの資本主義は限界にさしかかっていることが世界経済フォーラムでも指摘されています。そうした中で、新たな軸で世界を駆動させることに注目が集まっています。それがデータを用いて社会を動かすことです。例えば石油や天然ガスなどのエネルギー源をみてみると、採掘権や利権を巡って多くの国や企業が争ってきました。限りある資源を奪い合い、他を排除して自らがより多くを所有する『排他的所有』によって競争に勝つことが重要だからです。
一方で、データは一度使ってもなくならない資源です。またひとつのデータよりもビッグデータのように何十万、何百万と数が増えるほど、様々な利活用が可能になります。ひとりの個人や企業が独占するよりも互いのデータをシェアすることで新しい価値を生み出す『共有財』という特徴があるのです。

全ての人の人権が守られたり、格差が解消された世界を望む人もいれば、美しい環境のなかで生活したい人がいたり、あるいは健康を最重視した生き方をしたい人がいたり、未来をどう良くしたいかは多様な願いがあるはずです。データが社会の隅々にまで入り込むことでこうした多元的な豊かさを具体的に示すことができ、それを原動力に社会を動かしていくことができます。お金以外の様々な価値が互いに響き合うのが私の考える共鳴する未来です。単に仕組みのデジタル化とか効率化をすることがデータ駆動型社会の本質ではないのです」

20年前に考えたコンセプトが、カタチを帯び始めている
 私が初めて宮田さんの考えを聞いたとき、「立場の弱い人や困っている人に手をさしのべられるのがデータの持つチカラ」と言っていたことが今でも印象に残っています。手をさしのべるという表現に、無機質で手触りのないデータのイメージが覆りました。宮田さんはこうした考えは若い頃から一貫して自身の中で紡がれてきたといいます。



宮田さん
「共鳴する未来という着想のコンセプト自体は20年前からずっと考えていました。実は書籍内のとある箇所は20年前に書いた文章をまるごと使っています。表記はされていないので誰にもわからないと思いますが。
当時まだ大学生だった頃、社会における本質とはなにかを考えていました。憲法学やメディア論など、データサイエンスや医療以外の学問も幅広く学ぶなかで、シェアドバリュー(共有する価値)によって人々の手で社会を作り上げていくことが大切なのだとたどり着きます。しかし当時の教授やお偉いさんたちは『若造が何を言っているんだ』『証明してみせろ』という反応だったので、じゃあやってやろうと 笑。
医学を軸に実践を紡いできたつもりですが、実践に熱心になりすぎると元々の自分の志はなんだったか、昔考えていたことを結構忘れるんですよね。今回改めて当時の文章を引っ張り出してみたら、今読んでも新鮮さがあると思ったんです。自分でも少し驚きました。

データを用いた新しい価値の具体化を、技術や文化がトライアンドエラーを繰り返しながら徐々に現実社会で顕在化してきています。近年で大きなインパクトがあったのは例えば中国の信用スコアです。日本では負の側面ばかりが強調されがちですが、信用というものをデータで可視化することによってお金とは違う尺度で社会が回ることを証明した重要な実例だと思います。

2019年2月12日「個人情報格付け社会 ~恋も金回りもスコア次第!?~」で
中国の信用スコアを取り上げた

新型コロナによって健康と経済の狭間で多くの人が今も苦しんでいます。世界中で『お金がすべてじゃない』とたくさんの人が実感をしたのではないでしょうか。またアメリカではブラック・ライブス・マターなど、人権や平等への強い願いがムーブメントを巻き起こしています。フランスは環境政策に力を入れようとしていますし、ドイツは一部の州でベーシックインカムの導入が決まり、命と経済の間でどう幸福を実現するかに価値を置こうとしています。こうした多元的な価値が立ち上がる今、これらをデータで可視化してつなげることで、それぞれを尊重しながら社会を回していくことが可能になっていくと思っています

強欲な企業だろうと、ソーシャルグッドが必須になる
 では、共鳴する未来を実現するためにはこれから何が必要なのでしょうか。現実ではGAFAなどITメジャーは個人情報を独占、収集や分析によって巨額の富を築いており、欲望の資本主義そのものの姿にも思えてしまいます。しかし一方で、個人のデータは簡単に使用できなくなるような規則が広がったり、公共目的に限って共有することができるなど、データを取り巻く状況は確実に変化をしていると宮田さんは言います。

宮田さん
「データ駆動型社会の初期では、データを独占して富を独占するというまさにGAFA型のモデルが世界に広がりました。それが2018年にEUでGDPR(EU一般データ保護規則)というルールができたことによって、個人のためのデータ保護が強化され、企業は同意がないデータ利用がしづらくなっています。個人のデータは企業のものではなく個人のものであるという考えです。
これからどんな変化が起こるかというと、企業はデータを使うためにユーザーから信頼を得ないといけないということです。1人ひとりのより良い暮らしやソーシャルグッドにどう貢献できるのかをまず示して、そのあとで経済的な富も得るという順番で企業活動は進むことになるでしょう。単にお金儲けだけを考えている企業は人々から信頼されず、データを使うことが困難になりますし、逆に言えば強欲的な企業であってもソーシャルグッドを実現しないとデータを使ったお金儲けもままならなくなるということです。

本来企業とは経済活動を通して社会に何かの貢献をするための組織であり、お金というのはあくまでもその手段のひとつでした。それが近年は株主のために短期的な利益を目指さないといけないプレッシャーや、時価総額の最大化が目的になり、持続可能ではない経済活動を実施しているケースが少なくありません。CSR(企業の社会的責任)として寄付などの社会貢献を行う動きはこれまでもありましたが、バランスをとるための表面的な対処という批判もありました。社会や世界に貢献しながら健全な利潤を生む、その説明責任がデータを使うためには求められるようになってきているのです」

政府であってもデータを使うことは容易ではない
宮田さん
データを使うために欠かせない信頼作りは企業だけでなく国にも当てはまります。今日本ではデジタル庁創設が話題になっていますが、そのきっかけになった出来事のひとつが特別定額給付金の配布です。個人の口座データなどが使えないので国は一律10万円を国民に配るために事務コストが1500億円もかかっているんですよ。



これを解決するのに政府が言ったのはマイナンバーと銀行口座を紐付けさせてくださいというわけですよね。しかしそれだけ言われたら普通嫌だよってなりますよね。なんで我々の個人情報を把握されないといけないのだと。
政府はデータを集めることでどんな公共的なメリットがあるのかをしっかり示さなくてはいけないはずです。例えばですが、税金を不当に納めていない人を発見でき、そこで得た分を補償に回すことができるなどです。

今までの日本はIT推進を道路行政のようにやってきました。道路は事前に目的を理解してもらえなくてもつくればあとから様々な利用方法を考えられるのですが、、ITは目的がないままシステムを作ると全く使い物にならないんです。なんのために国民のデータが必要なのか、WHYをしっかりと示しながらデータを使わない限り、デジタル庁は上手くいかないと思います。一番大事なことはデジタル化をどう進めるかではなくて、行政の役割とはなにかというところから考えることです

1人ひとりの選択が世界とつながっている
 共鳴する未来には企業や行政だけでなく、私たち1人ひとりの行動も大切だと宮田さんは言います。自らが望む暮らしはどのようなものなのか、そのために毎日どんな行動を積み重ねていけるのか。人々が『つながる社会』だからこそ小さな積み重ねを意識することで未来の行き先は大きく変わると、可能性を感じています。

宮田さん
「新型コロナによって1人ひとりの行動が社会に与える影響というのがよくわかったと思います。みんなが身勝手に外を出歩いたり三密を無視してしまうと人がわっと増えて感染者が急増してしまうかもしれない。すると健康リスクだけでなく経済までもが止まってしまうかもしれない。
これは感染症だけの話ではなくて、環境問題も教育も人権も全てつながっているんだと思います。1人ひとりがどういう製品を選ぶのか、どういうところに遊びにいくのか、どういうことを学ぶのか、どういう仕事をするのか。これらすべてが世界とつながっているんです。すでに人々は共鳴し、響き合っているのです。1人ひとりの「生きる」ということが世界の豊かさにつながっています。

経済合理性に貢献するためだけの歯車となって人々が生きたり、労働を捧げるのではなくて、人々がどう生きたいのかというのがまず先にあり、それらが重なりながら能動的に未来を作っていく時代になるでしょう。それが共鳴する未来であり、その実現のために今後も取り組んでいきたいと思います



 宮田さんの取材を続けてきた私にとっても宮田さんの見識は深く、難解に感じることも少なくありません。しかし今回の書籍を通して宮田さんの未来に込めるおもいを一段深く理解することができました。全ての人がデータによる恩恵を受けながら“共鳴する未来”で暮らせるようになるには多くのハードルがあります。ただひとつ言えるのは、こうした個人データは私たち自身の日々の行動によって生み出されるものです。いくら国や企業がテクノロジーを推し進めようとも、資源となるデータを生み出すのは私たちであり、最終的にサービスを利用するのも1人ひとりの消費者です。そういう意味ではデータの「生産者」とも言えます。データ駆動型社会は未来ではなく、すでに私たちが深く関わっており、その主役であるとも言えるかもしれません。そうであれば、共鳴する未来は単なる理想論ではなく、私たちの日々の選択や社会参加が大きなカギを握っているのだと思いました。
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