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みんなでプラス > 宮田裕章さんと考える データとわたしたちの社会 > Google×宮田教授 ネット医療情報に「信頼」を
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2020年9月5日
Google×宮田教授 ネット医療情報に「信頼」を
 「ウイルス予防に緑茶や紅茶がおすすめ」「水道水に混入して人体に悪影響が出る」など新型コロナに関するデマ・科学的立証のない情報が今も数多く出回っています。一方で学術研究によって日々発表される最新論文の中にも、誤ったデータが使用されていたり、発表後に取り下げ・修正されるものが世界で相次ぎ、専門家であっても正しい情報を把握することは容易ではありません。
 今宮田さんはGoogleをはじめとした民間企業や医療従事者らとチームを組み、正しい医療情報のネット発信に取り組んでいます。「今後も多くの真偽情報が出てくるなかで、不確かな情報が大量に拡散されてしまう“インフォデミック”をいかに防ぎ、どう社会を良くしていけるか。難題だからこそ、情報を扱う企業やアカデミアの協力・連携のチカラが試されています」。新型コロナが加速させる「Data for Social Good(社会課題解決のデータ利用)」の可能性が模索されています。

(番組ディレクター 今氏源太)


ネット上に不足する、信頼できる医療情報
「コロナ禍においては信頼できる医療情報へのアクセスが今まで以上に重要です。一方で一般ユーザーが検索するキーワードと医療機関が発信する情報には差があり、このギャップをどう乗り越えていくかが大きなカギです」

 7月、宮田さんはあるプロジェクトのキッフオフミーティングに参加しました。慶應大学医学部チーム、医療専門家、医療系メディアなど14人の参加者に向かってプロジェクトの意義を話すのはGoogleのチームです。



 「COVID-19情報アクセス改善ワーキンググループ」と名付けられたこのプロジェクト。ネット検索における医療情報アクセスをより良くするために始動しました。
 日本でも利用者の多い検索エンジンであるGoogle。ユーザーが検索ワードを入力すると、ネット内の膨大な情報から独自のアルゴリズムでひとりひとりに適切だと思われる情報を表示、羅列します。しかし検索エンジンはその性質上、そもそもネット空間上に適切な情報が存在しない場合は、求める情報に誘導することはできません。
 国内のコンサルティング会社が行った調査によると、「これまで一度でも新型コロナウイルス感染拡大に関するフェイクニュースを見聞きしたことがある」と回答した人はおよそ73%。さらに「フェイクニュースを見聞きした情報媒体」については「Googleなどのインターネットの検索エンジン」が36%で最多でした。



 ネット空間全体に不正確な情報ばかりが増大し、信頼できる情報が枯渇してしまってはインフォデミックを防止することはできません。こうした積極的な情報発信のために宮田さんをはじめ異業種が連携した異色のプロジェクトチームが編成されたのです。

検索データ×AI分析によるGoogle新サービス
 Googleが今回新たに開発したのが「クエスチョンハブ」という検索ワードの分析ツールです。画面を開くと「コロナ予防飲み物」「免疫力を上げる食べ物コロナ」などの言葉がずらり。これはユーザーが検索したものの、対応する適切な答えや情報がないとGoogleのアルゴリズムが判断した「未回答ワード」の一覧です。


Googleの新ツール「クエスチョンハブ」画面

 普段私たちがGoogle検索を使うとき、ユーザーは何が知りたいのか、さらにネット上のHPや記事などのコンテンツにはなんの情報が載っているのか、AIによって「意味」の理解が行われています。
 例えば「渋谷 コーヒー」と検索したとき、コーヒーが飲みたいのか、コーヒー豆や調理道具がほしいのかなどいくつかの意味が考えられます。AIは検索ワードだけでなく、位置データ、スマホ利用者かパソコン利用者かなど様々な要素を使ってユーザーが求めている情報を予測します。そしてネットから意味が合うコンテンツを探し出し、最も適切だと考えられた結果を表示しているのです。
 クエスチョンハブが示すのは、こうした意味のマッチングが不十分で、質問に関連する答えがない可能性があると判断された言葉です。ワード一覧は毎日更新され、医療系メディアなどコンテンツを発信する企業から利用申請を受けて、使用の許可を判断します。

テクノロジーを使ったソーシャルグッドを目指す
 Googleはこれまでも日本で医療情報検索の改善に取り組んできました。2017年には検索アルゴリズムをアップデートしてより信頼できる医療情報が結果の上位に表示させる改善を実施。チームの統括をするダンカン・ライトさんによれば現在20~30の“コロナテック”に関するプロジェクトが動いているといいます。テクノロジーを使って感染拡大を抑えることができるのか、今回のプロジェクトでもできる限りの協力をしたいと意気込んでいます。



Google 検索パートナーシップ東アジア統括部長 ダンカン・ライトさん
「Googleを使ったコロナに関する検索が日々大量に行われています。治療法や症状以外にも薬剤の名前、最新の研究結果、民間の療法についてなども多く検索されており、『コロナ アロマ』『食べるコロナワクチン』などのワードがクエスチョンハブに上がっています。私たちは信頼性が高い情報をユーザーに届けるためにも、現在の未回答ワードをリストアップし、宮田先生をはじめ専門家の皆さんが中心となってどんなコンテンツが必要か考えています。今の状況を踏まえながら、どういう優先順位で情報を発信していくかがカギです。私たちにとってもユニークな取り組みであり、大きな一歩を踏み出していると思っています」

 取り上げるべき未回答ワードや、書くべきコンテンツの中身に関してGoogleからは意見を言わず、あくまでもクエスチョンハブを提供して情報をオープンにするのが役割だといいます。人々の価値観が多様化する中で、ありとあらゆる言葉が検索エンジンで調べられるようになった今、クエスチョンハブはウェブ検索そのものをより良くするための挑戦だとダンカンさんは言います。

Google 検索パートナーシップ東アジア統括部長 ダンカン・ライトさん
「検索エンジンで調べられる全キーワードの15%は過去に一度も検索されたことのない言葉です。毎日色々な人が色々な言葉を入力しています。目指すのはウェブ全体の環境を整え、ユーザーにとって必要な情報がさらに届きやすくなるように、エコシステムを改善することなのです。今後は医療だけでなく様々な分野にも応用していくとともに、担当する東アジアの10か国以上でも展開していきたいと考えています。
Googleの企業理念は“情報を整理して誰もが使えるようにする”ことです。今回のプロジェクトはこの理念とも親和性の高い取り組みだといえます」


 個人の検索データを使って、どこにどういった広告を出すことが効果的か詳細な分析を行い、企業からの広告料を得て巨額の利益を上げているGoogle。一方で検索エンジンによって私たちは知りたいことをいつでもどこでも調べることができ、とても便利になりました。ITプラットフォーマーとして社会を変えるほどの影響力を持つからこそ、ビジネス目的を越えたソーシャルグッドを生み出す取り組みは非常に意義があると感じました。

不安をあおらない中立的な情報が求められる
 クエスチョンハブで上がった未回答ワードに対して、医療専門家によってウェブ記事の制作が行われています。いかに信頼のできる医療情報を作り上げるかは、専門家であっても簡単ではない作業です。
 この日、医療情報サイト・メドレーを監修する医師の園田唯さんは“コロナとうがい薬”をテーマにした原稿の最終確認を行っていました。8月の大阪府知事による記者会見で、ヨードの入ったうがい薬がコロナ感染拡大防止に有効だと発表され、真偽を巡ってクエスチョンハブでも多くの関連ワードが確認されていました。



メドレー 監修・医師 園田唯さん
「記者会見をみたとき、正直良い印象はありませんでした。医療者の間ではヨードのうがいについて、風邪の予防効果があまり高くないというデータは割と知られています。なぜコロナだけに有効だと言えるのか、なにを根拠にしているのかがわかりませんでした。また、もし買い占めなど需要の急増が起これば普段からヨードを必要としている医療機関などに在庫が行き届かなくなるリスクがあり、客観的な視点からの情報発信が必要だと思いました」

 園田さんは複数の医師と協力し、会見の基になった学術研究を紐解き、さらに過去の論文や発表など18本を参照。ヨードは殺ウイルスに有効である一方、新型コロナの予防に効果があるかは不明だという内容で記事を作成しました。ひとつの論文や意見に縛られず、複数の出典や視点を通して言えること・言えないことを正しく見定めることが、医療情報の発信には大切だといいます。



メドレー 監修・医師 園田唯さん
「医療者の中にも考え方が偏った人はいます。我々は必要以上に不安をあおったり、書き手の意思が入りすぎないよう、中立的な立場を意識して記事を書くようにしています。ヨードのうがいに批判的な意見も多いですが、そこに対してもすぐに同調せず、証拠や研究結果を調べていくことが重要です。きちんと吟味された情報を出さないと我々が新たな誤解やインフォデミックを生んでしまう可能性だってあるのです」

 プロジェクトメンバーで医療情報サイト・メディカルノートの運営を行う井上祥さんは、日々大量の論文が発表されるなかで正しい最新情報を的確に把握することは医療者であっても難しいと言います。



メディカルノート 代表取締役 井上祥さん
「すでに世界中には数千本のコロナに関する論文が発表されています。しかし中には世界的に権威のある論文サイトに掲載されたにもかかわらず、まったくの嘘情報を基に執筆されていたり、発表後に撤回をされたものまであるのです。ウイルスの実態がわからないなかで少しでも有意義な情報を早くだそうとするあまり、査読や情報の確認がおろそかになったのだと思います。私たちはその時々でわかっていることを発信しながら、更新があった場合はつど追加情報を加えていくなど工夫をしています」

 井上さんたちは今後もクエスチョンハブを活用しながら、新型コロナの影響を受けた医療全体に関する情報発信も行っていこうと考えています。

メディカルノート 代表取締役 井上祥さん
「例えばコロナによって、人間ドックや内視鏡検査の数が大きく減っています。感染予防を考えると今は検査を受けない判断も必要ですが、がんや重病の早期発見がしづらくなる可能性があります。また足が遠のいたままインターネットの情報だけで自己診断をしてしまい、病状が進行する人もいるかもしれません。受けるべき検診は不要不急と思わず、きちんと受けてほしいというメッセージも発信していこうと考えています」

「信頼」がないと情報を扱えない時代になりつつある
 今回のプロジェクトに参加する宮田さんは、「データが社会の課題を解決する」良い事例だと評価します。ITプラットフォーマーにとってもユーザーから信頼を得ながら、安心してサービスを使ってもらえるよう、関係性作りが見直されている時期に来ていると言います。

慶應義塾大学 宮田裕章教授
「世界中の人がその便利さからGAFAなどのITサービスを利用し、個人情報など多くのデータをなかば自然と提供していました。一方で、知らない間に企業間でデータが取引されていたり、フェイクニュースやひぼう中傷を拡散する装置になっていたりなど、負の側面を抱えている事実に人々が気づいています。データは誰のものか、今世界中で議論が起きてるようになっています。便利だったら他は何をしてもいい、という時代ではなくなったのです。そのサービスが個人の健康や幸せに寄与したり、より暮らしやすい社会をつくることに貢献しているかどうか、注視されています。今後は信頼ができると人々が判断したサービスだけがデータを集めることができ、生き残る時代になるでしょう。Data for Social Goodは私たちとITプラットフォーマーの関係性を考える意味でも重要な視点なのです」
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