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クロ現+
2020年11月14日
このお題はクローズアップ現代+で番組になりました

“オンライン就労支援” 困難を抱える人への新たな支援のカタチ

11月10日に放送したクローズアップ現代プラス「気づかれない大人の障害」は、放送後にSNSなどで様々な反応が寄せられました。
「これは私だ」「治療やトレーニングの話題も取り上げてほしい」など、当事者や支援機関の方からも多くのご意見をいただきました。今回寄せられた声にもあった「トレーニングや訓練」について、番組では取り上げきれなかった内容を記事でお伝えします。
“Withコロナ”の生活で、社会のあらゆる場所でオンライン化の流れが進んでいますが、就労支援を行う現場でも、これまでほとんど取り入れられてこなかった“オンライン就労支援”が広がっています。 新型コロナウイルスの影響が続く中、新たに生まれた取り組みを取材しました。
(取材:クローズアップ現代プラス 栗原望アナウンサー)
新型コロナを機に始まった“オンライン就労訓練”

東京 品川区の「ジョブサ品川区」

取材に訪れたのは、東京都の指定を受けて就労支援をおこなう「ジョブサ品川区」。
メンタルの調子を整えるトレーニングや、コミュニケーションのスキルに加え、実際に企業で働く際に使うパソコンの基礎などを学ぶ場所です。ことしは新型コロナウイルスの影響で雇用状況が悪化していることもあり、相談者の数は、4月と比べ9月はおよそ3倍に急増しています。

参加しているのは、ひきこもりから社会への参加をはじめようと取り組む人や、かつて職場で悩みをかかえて退職し、再就職をめざそうという人たちです。生きづらさを抱えながらも、なんとか仕事をしたいと願う人たちが集まっていました。
中には、今回番組で注目した、障害があることを本人も周りも気づくことができずに辛い思いをしてきた人も多く、こうした就労支援の施設で相談をする中で、適切な診断につながったケースも多くありました。



通所による職業訓練の様子  講師は他の場所にいてオンラインで授業を配信

この就労支援は、原則2年間利用できます。利用者の負担額は1割で、残りは東京都が負担します。都に利用状況や成果を報告するために利用者の出席数や課題の進捗などを詳しく記録する必要があることから、これまでオンライン化が進んできませんでした。しかし新型コロナの影響でリモートワークなどが進んだ今では、東京都内全ての区でオンラインでの就労支援が可能となっています。

オンライン化は、これまで対面での就労支援が受けにくかった人たちにも支援の手が届くようになった一面もあるといいます。

「ジョブサ品川区」福祉事業部  西河 知子 統括マネージャー
「特に感覚過敏の方、例えば私たちが当たり前に朝電車に乗って通勤をしているんですけれど、人と人との距離で、雑音が全部聞こえてしまう方。肩が触れ合っただけで気分が悪くなってしまう方もいらっしゃいます。実は通えないんだけれど、在宅であればやってみたいというニーズがあったので、オンラインでやろうと考えました」



「ジョブサ品川区」福祉事業部  西河 知子 統括マネージャー

オンラインで押印も
「ジョブサ品川」ではSNSやオンライン配信の講義を通じて、コミニケーションのスキルアップを学んだり、企業に入ったときのことを想定した作業などの課題に取り組んだりしています。


この日の課題は「電子レンジの買い替え」  利用者が一日かかりでつくった資料

この日の課題は、「会社で電子レンジの買い替えの見積もりを作る」という実践的なもの。
上司から商品購入の際のリサーチや、市場動向の確認などが求められたときに対応できるよう訓練を積んでいるのです。

利用者たちはインターネットで商品の価格を調べ、パソコンで資料を作成していました。 途中で職員がチャットで確認したり、疑問に答えたりしながら対応していきます。
オンラインにしたことで可能となったのは、利用者の質問や疑問に即座に対応できるようになったことだといいます。
教室で手を上げるのはおっくうだけどチャットならば参加できると学びの効果も上がっているということです。


授業終了後の「押印」もオンラインで行う

そして課題が終わると行うのは「押印」。これまでは施設に来て日々の終わりに押印していましたが、オンラインで可能になったことで「記録」がしっかりと残せるようになりました。
こうしたオンライン就労支援の取り組み、新たな選択肢を生み出す可能性もあるといいます。

ジョブサ品川区 福祉事業部 西河 知子 統括マネージャー
「オンライン就労支援によって、在宅ワークがどう行われる1日の流れがどういったものであるか、自分がどれぐらいのレベルで作業ができれば働けるのか。本当は通勤は苦しいんだけど、そういう在宅ワークがあったら併用型(※通勤と在宅を併用して勤務すること)の会社に就職してみたいとか、あるいは完全在宅ワークでしてみたい方もいらっしゃいます。オンライン訓練をしていくことによって利用者の選択肢を増やしたのはあるかなと思ってます」


新型コロナで増加する“在宅勤務の求人”


ハローワークが公開する求人資料  「在宅可能」な企業も相次いでいる

一方で施設によると、企業側の求人にも変化がみられるといいます。
上の写真は施設が利用者に紹介している求人の資料。これまであまり見られなかった「在宅のみ」での就労の形態が、増加しているといいます。 こうした「在宅勤務」が可能な会社が増えていけば、例えば地方に住んでいても東京の会社の仕事ができる機会が生まれるなど、生きづらさを抱えた人たちの仕事が増えていくのではと期待しています。

「ジョブサ品川区」福祉事業部  西河 知子 統括マネージャー
「新型コロナの影響が続く中、各企業が在宅求人に切り替えることで、地方採用にもつながっている例もあり、地方の障害枠の求人も活性化していくんじゃないかなと思います。今生活している場所でしっかりと働ける術があるように、変わっていってほしいなと思っています」

「ジョブサ品川区」の利用者の多くは、ひきこもりや「障害」など、これまでの生活の中で生きづらさを抱えた方々でした。一生懸命に学ぶ姿を見て、本人たちの中に「社会に参加したい」という強い思いがあることが分かりました。
その思いにこたえるためにも、「在宅OK」など、変化する必要があるのは、社会のほうなのだと強く思いました。
「オンライン就労」は、社会の中にあった「弱いところ」に支援が届き、社会的弱者とされてきた人たちをエンパワーメントできる取り組みではないかと感じました。