クローズアップ現代トップ > みんなでプラス > withコロナを生きるヒント > 「コロナ禍の在日外国人に安心を」東京・高田馬場のミャンマー・レストラン【現状リポート】
2020年8月28日

「コロナ禍の在日外国人に安心を」東京・高田馬場のミャンマー・レストラン【現状リポート】

新型コロナウイルスの感染拡大によって、多くの飲食店が窮地に立たされています。
東京・高田馬場にあるミャンマー料理店 ルビーもその1つ。4月の売り上げは去年の10分の1となり追い込まれています。ミャンマーから来日し、難民認定を受けたチョウチョウソーさんが経営するこの店。飲食店としてだけではなく、在日ミャンマー人たちの相談の場、日本人との交流の場としての役割も担ってきました。 最近は、コロナの影響で仕事が激減したミャンマー人たちの相談にも乗っているチョウさん。このままでは、「大切なコミュニティーが失われてしまう」と危機感をつのらせています。

(「withコロナを生きるヒント」取材班 ディレクター 伊藤加奈子)


安心できる「コミュニティー」が窮地に
「リトル・ヤンゴン」とも呼ばれる高田馬場。周辺の地域には、約1,700人のミャンマー人が暮らしていて、多くのミャンマー料理店があります。ルビーは、2002年に開店しました。(2012年に現在の場所に移転)



ミャンマーでは会計士をしていた、オーナーのチョウチョウソーさん。1988年の民主化運動に参加していましたが、仲間たちが捕まっていき「次は自分かもしれない」と身の危険を感じるように。そこで、1991年に日本に逃れ、1998年に難民認定を受けました。日本で暮らすミャンマー人が増える中、「安心できる場を作りたい」という思いでこの店を開きました。





チョウチョウソーさん:
「店を開くときから、ミャンマーの味を食べられるだけではなく、お互い情報交換もできる『交流の場』にしたいと考えていました。生活が大変な人、日本語の問題、職場の問題がある人など、色々な課題を抱える人がいます。けれど、ここに来たら落ち着けて、ひと安心。『おいしい。よかった。幸せ』と、その瞬間だけでもいいので、温かい気持ちになって帰ってもらえたらいいなと。」

ランチビュッフェではさまざまなミャンマーの味を楽しめる

その後、ミャンマーと日本のビジネス面での交流も増えたことで、日本人の会社員なども店を訪れるように。さらに、日本に暮らす難民のことを知りたいと講演に呼ばれた大学、高校などの学生たちも来てくれるといいます。店は、ミャンマー人と日本人の交流の場にもなってきました。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、4月の売り上げは去年に比べて、10分の1にまで落ち込みました。感染拡大防止協力金、持続化給付金など、収入を得るために手は尽くしてきましたが、経営は追い込まれています。

店がなくなると「相談の場」も喪失してしまう
日本にいるミャンマー人のリーダー的な存在であるチョウさん。仲間たちと一緒に、在日ミャンマー人を支援するグループを作り、職場や家族の問題などあらゆる相談に乗り、生活をサポートしてきました。ミャンマー人に日本語を教える活動も続けています。

コロナの流行が始まってからは、コミュニティー内で少しでも余裕のある人が、米や油、卵などの食料を寄付する助け合いも行うようにもなりました。日本語があまりできない人たちや、情報過疎になりやすい地方に住むミャンマー人たちにも、日本のコロナに関する情報が行き渡るように、受けられる支援や日々の感染者数の情報などをミャンマー語に訳してSNSでの発信も行っています。

先日私が参加した新型コロナウイルスの在日外国人への影響をテーマにしたセミナーでは、日本に住む外国人の人たちの中には、「3ない(情報、住居、身分がない)」の状況にある人も多いと聞きました。チョウさんの店は、駆け込み寺のような存在でもあり、直接相談にやってくる人や電話をかけてくる人もいます。取材にうかがった直前にも、「職場でトラブルがあった」と突然相談に来た女性がいたとのこと。チョウさんは、「もし店がなくなってしまうと、相談の場や、コミュニティーそのものもなくなってしまう」と強い危機感を持っています。

チョウチョウソーさん:
「私たちは、日本に長く住んでいるから責任があると思っている。私たちが最初日本に来たときは、助けてくれる人はいなかったので、最近来た人たちには経験談を話すなどして、できるだけサポートしています。できることをやらないのは悔しいし、『関係ない、知らない』などとは無視できません。いろいろな問題があるのは当たり前のこと。特に、このコロナの中ではたくさんあります。ただ、みんなお店のつながりで知り合ったから、お店がないと活動を続けるのが難しくなってしまいます。」

店ではチョウさんの周りに自然と人が集まってくる

常連客のミャンマー人たちも、次々とチョウさんのもとに相談にやってきます。飲食店で働く人も多いため、コロナの影響で仕事を失ったり、収入が減ったりと、行き場をなくした人も多いのです。留学生などは、帰りたくても飛行機が減便となった、飲食店でのアルバイト代が激減して飛行機代を工面できないなどの問題に直面しているといいます。

コロナの影響で働いていた飲食店が4月に閉店し、突然職を失ったミャンマー人の男性。今は、毎日ハローワークに通っていますが、全く仕事が見つからない状況が続いています。雇用保険も切れてしまい、小学生の子どももいるため、「これからどうなるのか不安がつのるばかりだ」といいます。別のミャンマー人の男性も飲食店で働いていますが、仕事が週3日、1日5時間だけに減少。収入が減り、これまで住んでいた家の家賃が払えなくなり、家賃の安いところに引っ越しをするなど苦しい状況に陥っています。

コロナで職を失ったミャンマー人の男性
「仕事を失った日本人も多いので、ハローワークには毎日たくさんの人が来ています。求人も少ないし、外国人を雇わないところもあるので、なかなか仕事が見つかりません。でも、ハローワークが混んでいるので、感染も怖いです。チョウさんには、週1~2回会いに来て、話を聞いてもらっています。チョウさんの方がもっと大変だと思いますが、話すと安心できます。」

チョウさんが、特に気にしているのは支援が届きにくい難民認定申請中の人たちです。就労不可の在留資格の場合、働くことはできず、日本に「ただいるだけ」という状況です。そこで今、チョウさんは、特に困窮している人たちに、店で食事を提供するなどの支援もしています。

難民認定申請中の男性:
「チョウさんには食事を食べさせてもらい、本当に助けられています。ありがたいです。チョウさんは、お父さんのようです。」

コロナの流行後、チョウさんの店でときどき食事を提供してもらうようになった難民認定申請中の男性は、収入面に加え、医療面での不安も話してくれました。男性が持つ在留資格では健康保険に加入できず、病気になると医療費は全額負担で、「目が痛くて病院に行ったら2万円かかった」とのこと。
また、住民基本台帳に記録されていれば、外国人でも1人10万円の「特別定額給付金」が受けられますが、男性はその対象にもなっておらず、あらゆる支援を受けられない状況にあるのです。

チョウチョウソーさん:
「難民認定申請中の人たちに対する支援は何もないような状況になっています。もし、彼らが感染したらどうなるのでしょうか?日本国内にいる人たちなのだから、このコロナの時期だけでも特別に考えてほしい。日本人、外国人、難民認定申請中、留学生、技能実習生とか関係なく、みんな同じ“人間”として考えてほしいと思います。」

「困ったときはお互い様」日本人と協力して再起へ
チョウさんの店の危機に立ち上がったのは、講演に来てもらったり、一緒に日本語活動をしたりと、これまでチョウさんとのつながりを持ってきた日本人たちです。

2011年の東日本大震災の時には、岩手県陸前高田市の被災地に駆けつけ、ボランティアでミャンマー料理の炊き出しを行ったチョウさん。ミャンマー人、日本人に関わらず、「困っているときにはお互いに助け合うこと」を常に大切にしてきました。




陸前高田市に駆けつけボランティアで炊き出し(写真提供:チョウチョウソーさん)

いま、その姿勢に共感する多くの日本人たちが、店を支援するため、寄付をつのったり、アイデアを寄せたりしています。

まず始めたのは、テイクアウト弁当。ランチの時間帯に1,100円で行っているランチビュッフェから好きな料理を詰めて、600円で持ち帰れるようにしました。店の周辺にはオフィスも多いので、会社員もターゲットにチラシ配りをして、まずは店を知ってもらおうとしています。店の再起に協力する大学教員からは、その弁当を、コロナの影響で仕事を失った人たちに、配達してもらってはどうかという案も寄せられました。


東京都の感染防止徹底宣言ステッカーを取得 テイクアウトも可能

さらに、難民支援の活動をしている大学生たちが中心となって、クラウドファンディングの立ち上げ準備が進められています。集まったお金は、高田馬場のミャンマー料理店に寄付するのに加え、感染が拡大する今は店に足を運びづらいという客にも認知してもらえるように、「リトル・ヤンゴン」を詳しく紹介するホームページを作る資金にも充てられる予定です。


クラウドファンディング立ち上げに向けた話し合い

店の再起に協力する東京大学大学院 佐藤安信教授:
「チョウさんの店を存続させなければ、そこにある大切なコミュニティーが失われてしまいます。コロナの影響で、自分のことだけに目が行きがちですが、脆弱な人たちが犠牲になったり、見捨てられたりしないようにしなければなりません。いま問われているのは、『お互い様』の精神で、それがコロナ後に根付くように、相互理解と相互扶助を実践する時だと思っています。」

チョウチョウソーさんに話を聞いていて、特に印象的だったのは、自分の店が厳しい状況にある中でも、周りの人たちへの心配りを忘れずに、できる支援をし続ける強い責任感でした。また、とりわけ苦しい状況にある難民認定申請中の人たちに心を寄せ、「今は、日本人、外国人とわけるのではなく、同じ“人間”として考えてほしい」という言葉も胸に刺さりました。自分の悩みや心の内を、素直に安心して話せる場所は、今この時期にこそ必要だと思います。チョウさんが大切にしてきた「助け合い」「困ったときはお互い様」という気持ちを心にとめ、この苦境を乗り越えていくためのアイデアを今後も伝えていけたらと思います。

【2020年11月追記】
大学生たちが準備してきた、高田馬場のミャンマー料理店を応援するクラウドファンディングが進められています!(11月30日まで)


今を乗り越えるだけでなく、アフターコロナも見据えた取り組みやアイデアをこれからも紹介していきます。この記事への感想や、あなたの周りで始まっている「withコロナを生きる」ヒントをぜひコメント欄にお寄せください。


【あわせて読む】
・わたしたちが「黙って歩いた」意味 在日ミャンマー人によるサイレントデモ
・「集まってしまって、ごめんなさい」在日ミャンマー人の若者 民主主義への思い