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みんなでプラス > withコロナを生きるヒント > 安心のヒント④ 家族間のイライラ 解消するには
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2020年6月23日
安心のヒント④ 家族間のイライラ 解消するには
子どもの虐待やDV=ドメスティック・バイオレンスの相談は、後を絶ちません。虐待・DVの加害者と被害者支援を行うNPO「女性・人権支援センター ステップ」では、4月の緊急事態宣言が出されて以降、オンライン会議システムを通じて、加害者更生のグループワークを実施していますが、毎週のように新たに参加する人が増え、4月~6月の新規参加者は去年の同時期と比べて6倍の24人に上ります。特に、最近、妻からの相談が増えているそうです。

家族間のイライラや不安とどう向き合えばいいのか。NPO「ステップ」理事長の栗原加代美さんやグループワークの参加者への取材から、ヒントが見えてきました。

(報道局社会番組部 ディレクター 白瀧愛芽)


“子どもも ひとりの人間”

(NPO「ステップ」理事長・栗原さん オンラインによる加害者更生のグループワークの様子 今年4月 撮影)

4月上旬、緊急事態宣言の出された日の週末から、NPO「ステップ」は、それまで活動スペースで実施してきた加害者対象のグループワークによる更生プログラムを、オンラインに切り替えて行っています。

私は、このオンラインのグループワークに参加した男性に、後日、話を聞くことができました。40代のこの男性は、去年の秋頃、「わが子への虐待をやめたい」とステップに相談。それから毎週のように更生プログラムのグループワークに参加していたそうです。


(わが子への虐待をやめたいとNPO「ステップ」に相談した父親 40代 オンライン・インタビュー)

男性は、ステップに通うようになる前は、小学生の子どものことを「所有物」のように考え、「自分が子どものときにできなかったことをさせたい」という思いが強かったそうです。例えば、洋服は自分の買ってきたものだけを着させたり、本人が好きなスポーツの練習に通わせるよりも英語の勉強をさせたりして、子ども自身の興味や個性を認めようとしていなかったといいます。しかし、ステップに通い、「相手は子どもでも、全く別の人間であり対等な存在であること。そのため、コントロールしようとすることで、健全な関係性が失われていく」ということを学ぶことで、自分の考え方が変わっていったそうです。

父親(40代)
栗原理事長から「子どもだって、ひとりの人間なんだよ」という話を聞いたときに、はっとしました。それまで、わが子に対しては「親としての責任がある」と考えるがあまり、子どもを「ひとりの人間」として認めるよりも、「所有物」という感覚を強く持っていました。そして、食事のマナーや会話の時の返事などについて「こうあるべき、こうするべき」と厳しくしつけていました。ところが、次第に子どもが家庭内でゴミ箱を蹴り飛ばしたり、包丁を持ちだして自傷行為をしようとしたりするようになり、自分の接し方が子どもに悪い影響を与えていると気づきました。

ステップで学んだことで、子どもにもプライバシーやパーソナリティがあり、彼らの人生なのだからむやみに踏み込んではいけないと思うようになりました。「子どもはこうあるべき」という考えがなくなり「最低限のことを守ってくれればいい」と思うようになると、イライラする理由がなくなりました。


“思考の癖“を直すために・・・
再び取り戻した家族との穏やかな関係。しかし、ことし3月、新型コロナの感染拡大の影響で、男性がテレワークを始め、休校で家にいた子どもたちと24時間一緒にいる生活が続く中で、絶えない兄弟げんかにカッとなり、暴言を吐いてしまいました。6週間、ステップの更生プログラムへの参加を自粛していたことで、考え方の癖が戻ってしまっていたといいます。オンラインであっても、参加し続けることの大切さを実感したそうです。

父親(40代)
徐々に悪い時の感覚に戻っていることに自分でも驚きました。家族にもストレスを与えているんだなと、正直反省する限りです。以前までは、参加した後の1週間、とても穏やかに家族と接して、自分よりも相手の気持ちを思いやることもできたのですが、自粛している間に、再び、自分の考えを優先するように思考が戻っていました。

こういう時だから、子どもは静かにするべきとか、いい子じゃないといけないという自分の「(こうある)べき」を押し付けるのではなくて、子どもはうるさくてもいい、子どもなんだし兄弟ゲンカもする、こういうときはしょうがないよねと、自分の中の「(こうある)べき」の基準を下げることがとても大事と思います。

NPO「ステップ」理事長の栗原加代美さんによると、“思考の癖”は習慣化しているため、なかなか簡単には直らないそうです。そのため、イラっとしたら、立ち止まり、マイナス思考をプラス思考に変えることを習慣化していくことが大切だといいます。

栗原 加代美さん(NPO「ステップ」理事長)
更生プログラム参加者には一度でなく、毎週参加し続けることを勧めています。学んで訓練しないと一人では習慣化することは難しいのです。自分でできることとしては、例えばテレビドラマや新聞、本などから、プラス思考に変えるきっかけとできるような「良い言葉」を書き留めておくことです。例えば「悲しいとき、笑うことで悲しみが消える」とか、「何でもあり」など。普段からプラスの言葉にアンテナを張って、書き留めておけば、マイナス思考になったときに、見返したり、思い出したりすることができます。


急増する妻からの 加害・被害相談
6月、ステップの相談者の顔ぶれにある変化が起きていました。妻からのDV相談が増えているというのです。女性加害者からの相談は4月からの間に10件。2か月間にこれだけ多くの女性から相談を受けたことはないそうです。「ストレスから夫をどなってしまった。自分は加害者ではなないか…」。あるいは、言葉や行動の暴力に至らないまでも「自粛期間中、夫を怒らせないように機嫌をとりすぎて疲れた」という声もありました。テレワークをしていた夫が再び出社するようになり、一人の時間ができたことで、ようやく相談できたという女性が少なくないといいます。

ストレスや不安を感じたとき、どうすればいいのか、栗原さんに聞きました。


(NPO「ステップ」理事長 栗原加代美さん)

栗原 加代美さん(NPO「ステップ」理事長)
女性でDVや虐待をした経験をもつ人の多くは、罪悪感が強く、悩みに悩んだ末に相談してこられます。できれば、悩みすぎる前に相談していただければと思います。自分だけで悩まないで、オンラインや電話相談で、自分のストレスを吐き出していただきたいです。ただ吐き出す、自分の中に起きている負の感情や思考を言語化することでも、だいぶ自分が楽になるため、他の弱いものにストレスや怒りが向かわないようになります。可能であれば、ステップに来て、マイナスの考え方をプラスの考え方に変える方法、ストレスから解放される方法を学んでいただきたいと思います。


“まあ いいか” 家族間の衝突を避けるヒント

(「ステップ」には、“夫が特別定額給付金を独り占めしようとする”という相談も)

悩みすぎる前に相談することが大事なのは、被害者も同じです。栗原さんのもとに、先日、「特別定額給付金を夫が独り占めしようとしている」という妻から相談が寄せられました。40代の妻は、3人の子どもと夫と5人暮らし。結婚当初から、主婦である妻は、夫から、「だれのおかげで生活できていると思っているんだ、子どもの学費を払っているのは俺だ」と言われるなど、経済的なことで心身に負担を与えられてきたそうです。さらに今回、特別定額給付金の申請がきっかけで、金銭的な自由を奪われかねないなど、“経済的DV”がひどくなったと感じ、以前、テレビで知ったステップに連絡したといいます。

栗原さんが妻から聞いた話によると、きっかけは、「家計簿のつけ方」でした。夫は、自分が望むような形式で家計簿がつけられていないからという、一見ささいな理由で、給付金を渡さないと主張し始めたそうです。さらに「俺が一生懸命働いてきたのだから、俺が使って何が悪い」とどなられ、互いに口を開けば、ののしり合うようになっているということでした。

これに対して、栗原さんは、相手を変えられないが、自分の思考と行為を変えることはできると伝えました。「なぜ夫は給付金を渡してくれないのか、自己中心的だ、ひきょうだ」と夫を責めたり非難したりするのではなく、「相手は、何かしらの理由があって、ああいう行動をとっている。相手にとって最善の行動なのだ。まあ、いいか」と考え、まずは自分自身の機嫌を直し、自分の夫に対する接し方を穏やかにすることを優先してはどうかとアドバイスをしたといいます。

栗原 加代美さん(NPO「ステップ」理事長)
その女性は、「まあ、いいか」と口にしてみることで、意外にも怒りがおさまっていくのを感じたそうです。夫に対して穏やかに「何に使いたいの?」と聞いたり、「あなたがそんなに使いたいならどうぞ、今まで私たちを経済的に支えてくれてありがとう」と伝えたりしてみることも選択肢の一つです。けんかしないで話し合いで折り合いをつける夫婦を目指していただきたい。そして、ゆくゆくは夫と一緒にNPOにきてほしいと、その女性に伝えました。

その結果、女性は、「まあいいか、給付金のことで言い争えば、いま夫から月々渡されている生活費さえ もらえなくなってしまうかもしれない。また、争いを子どもに見せるのは良くない。お金より家族関係が大切だ」と考え直し、「夫婦関係が良くなることを目指して、夫の行為をプラスに考えようとすることにチャレンジしたい」と言って、電話を切ったそうです。

栗原さんは、夫婦や親子の間で口論や衝突を避けるために、以下のことを心がけるよう、アドバイスしています。

夫婦や親子の“衝突”を避けるためのアドバイス
・「過去と相手は変えられない、変えられるのは、自分の思考と行為と未来」と考える
・相手を非難せず、行動に対する理由を聞く
・相手に感謝の言葉を口にする


取材して・・・
私はこれまでもDVや虐待の加害経験をもつ人たちを取材してきましたが、新型コロナの影響によるストレスや不安がきっかけで、DVや虐待などの家庭内の問題が一気に深刻化、顕在化しているように感じます。加害者の更生支援の現場では、加害行為の背景に、「自己肯定感の低さ」や、「相手に期待しすぎる自分」があるなどといわれます。日頃から自分を大切にできていなかったり、相手が「~してくれない」と不満を募らせたり ストレスをためたりしている人たちは、“新しい生活様式”が求められる今、ちょっとしたことがきっかけで暴力や暴言に走ってしまいやすいのかもしれません。

もし、小さなことでも引っかかることがあれば、大ごとになってしまう前に、迷わず相談の扉をたたいてほしいと思います。

DVや虐待の相談を希望される方は…
●NPO法人 女性・人権支援センター ステップ https://www.npo-step.org/(※NHKサイトを離れます)
10時~20時 電話:045-439-3620 / 080-5530-8047  
メール相談も可
クローズアップ現代「“ストレス危機”をどう乗り越える?」(4月30日放送)でも取材しました。
●DV相談プラス(内閣府) https://soudanplus.jp/(※NHKサイトを離れます)
24時間対応電話:0120-279‐889 
SNS、メール、チャット相談、外国語対応も可
●DV相談ナビ(内閣府)
電話:0570-0-55210 最寄りの配偶者暴力相談機関につながります。

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#新型コロナウイルス#ストレス#コロナ ストレス危機
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