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2020年6月5日
"新型コロナ時代" をどう生きるか  C.W.ニコルの遺言
4月に直腸がんのために亡くなった作家のC.W.ニコルさん。信州・黒姫山の麓で35年に渡って森の再生に取り組んできたニコルさんは亡くなる直前、新型コロナウイルスに翻弄される私たちに向けて、あるメッセージを発表しました。

今回、生前つながりがあった脚本家・倉本聰さん、解剖学者・養老孟司さん、地域エコノミスト・藻谷浩介さんに、ニコルさんが遺した言葉を読み解いてもらいながら、私たちが“新型コロナ時代”をどう生きればいいのか、ヒントを探ります。

(この内容は5月29日「知るしん 信州を知るテレビ」(長野県域)で放送されました)

ニコルさんが遺したメッセージ「バランス」


新型コロナウイルスの感染拡大に心を痛めていたニコルさんが、亡くなる6日前に英字新聞で発表したコラムです。

生命体はあまねく すばらしい競争のなかにあります
カモシカと草 カモシカとライオン アリとアリクイ
食べる側 食べられる側の間にある競争は ウイルスも同じです
ウイルスから私たちが身を守るには まずは免疫を付けることです
その上で感染者を隔離する努力は当面は必要でしょう
しかし強制を伴う隔離は 長く続けることはできません
そうしたなかで私たちに今 求められているのは「バランス」なのです

C.W.ニコル「免疫、隔離、そしてバランス」

新型ウイルスに対し、各国が進めた都市封鎖などの隔離政策。しかしウイルスを完全に隔離することは困難だとして、「バランス」が必要だと訴えたのです。

「バランス」 ニコルさんの原点


ニコルさんが、新型コロナと向き合う上で必要だと訴える「バランス」。
実は、ニコルさんは人の自然との関わり方を語る時、常々この「バランス」という言葉を用いてきました。

「大木があって、いろんな動物や植物が、何千何万年も一緒にバランスをとって共生していきているのは森です。それで我々が入って手入れして、目的は原生林に近い状態にしようと。これこそ森なんです」

(2003年「NHK人間講座」のインタビュー)


ニコルさんが30年以上かけて取り組んできたのが、黒姫山の森の再生です。
1985年にニコルさんが買ったこの森は、もともとは、終戦直後の開拓で、いったんは耕作地になったものの、作物が育たず、長年放置されていた土地でした。
そのころ日本はバブル景気の直前で、開発に伴う環境破壊が社会問題となっていた時代。
黒姫山でも開発が進められようとしていると聞き、その自然を守ろうと考えたのです。

ニコルさんの「バランス」の考え方。それは、一緒に森の再生に取り組んできた松木信義さん(84)から学んだものでした。松木さんは15歳から森の仕事に携わり、木こりや炭焼きなど、森と生きる暮らしを続けてきた「森の達人」です。
2人で下草を刈り、木を間引いて森の環境を整えていくなかで、太い木ばかりを残そうとするニコルさんに、松木さんが口を酸っぱくして伝えたのが、「動植物の数や種類のバランスこそが森にとっては大切なんだ」ということでした。
あえて人が手を入れることで自然のバランスを保つ。それはまさに、かつて日本の里山で大切にされてきた考え方でした。



人の命を奪うウイルスに対し、私たちはどう「バランス」をとっていけばいいのか。
ニコルさんの言う「バランス」がどういうことなのか、コラムではそれ以上、語られていません。
養老孟司が読み解く「バランス」 ~排除から共存へ~


その言葉をまず読み解いてくれたのは、解剖学者の養老孟司さん。14年前に東京都の森づくりを考える委員会で出会い、意気投合。5年前には対談本も出しています。
ニコルさんが伝えたかったのは、ウイルスを排除する社会から、ウイルスと共存する社会への転換だと考えています。

養老孟司さん
「ニコルさんは、病気は悪いものだと決めつけて、それを潰そうとする立場はとらないんですね。“共存”です。
社会全体を人として見れば、頭でっかちの人ができてしまって、体の方が薄くなった、そこをウイルスに突かれてしまった。人類は、ほかの生き物と“共存”ではなく、全部を廃棄してきたんですね。だから社会に異物が入ってくると排除してしまう。新型コロナは典型です。

森に行ったら意味のわからないものはいくらでもあります。石ころは転がっているし、それこそミミズは死んでいるし、草は生えているし、いちいち意味が分からないもの同士が“共存”しています。」

藻谷浩介が読み解く「バランス」 ~地域の実情に応じた“間合い”~


地域エコノミストの藻谷浩介さん。ニコルさんの考えに共鳴し、ニコルさんが副委員長を担うNPOの理事を務めています。
平成の大合併前の全国3200の市町村を全てめぐり地域から日本のあり方を提言してきた藻谷さんは、地域の実情に応じた“間合い”が求められていると感じています。

藻谷浩介さん
「我々も含めて下の世代は、都市に偏りすぎて暮らしていて、自然との間合いの取り方を勉強していないんですよね。それを本当は勉強しなくてはいけないんだよということをニコルさんは言っていました。ニコルさんや養老孟司先生もですが、小さいときから自然に囲まれて生きてきた人というのは、理屈じゃなくて感覚として『今はこれぐらいの感じだよね。今度こうなってきたときはこれぐらいかなって、ちょっとやってみてダメだったら考え直そう』という自然との“間合い”の感覚を肌感覚で身につけているように思います。

今回はっきりしているのが、東京・首都圏と地方において、感染状況が全然違うということです。日本で亡くなった人の半数以上が、1都3県です。東京・首都圏の密のなり方が、ある一線を越えて極端に密だということなんです。
東京という狭い土地に、ものすごく見事に人間と緑を詰め込んで、かろうじて生きていける環境をつくってあるわけです。この芸術作品が逆に、できすぎていたということがわかったんですね。

間合いを取りながら、対処するところには きぜんと対処し、しかし過度に怖がらずに行動できるでしょ、自分の頭で考えて体で体験しようよということをニコルさんは言っていたはずなんです。」

倉本聰が読み解く「バランス」 ~本当の豊かさとは~


40年来の友人、脚本家の倉本聰さん。
「今の日本は、経済至上主義になっていないか」、そうニコルさんは考えていたと、倉本さんは語ります。

倉本聰さん
「ニコルさんが原点にしているのは、故郷のウェールズの炭鉱なんです。彼は自然破壊のすさまじさと、それに対する怒りみたいなものが幼いころから身についていたんだと思います。資本主義経済の進みや発達と、それによって自然が破壊されていくことを、ずっと彼は、心の中に怒りとして持っていて」

木材や石炭の供給基地となり、森の木は切り倒され、石炭のくずが山と積まれ、荒れ果てたふるさとを見ていた幼い頃のニコルさんは〝本当の豊かさとは何なのか〟ずっと疑問を抱いていたのです。

そして、倉本さんは、今こそ私たちは価値観を変えるべきだと言います。

倉本聰さん
「今回、経済と人命が てんびんにかかりましたが、今、かかりつつありますが、経済社会の恐ろしさは、今、行き過ぎているということだと思うんです。
ニコルというのは、僕は時代遅れのトム・ソーヤーだという気がします。僕は時代遅れのハックルベリーだと思ってしまいます。いくら叫んでみても、世の中の動きは仕方がないし、それに逆らうことは難しいという気がするんですね。
ただ、このコロナ騒ぎがこれだけあって、果たして人間、日本人は変われるだろうか、変わっていないだろうか、ということが一番問題だと思います。」

自然と経済の「バランス」への挑戦


ニコルさんは晩年、ある挑戦をしていました。「自然を大切にする生き方」で「経済的」にも成り立たせるということです。
5年前から森で2頭の馬を飼い始め、かつて日本の各地でみられた、馬を使って森の木を運ぶ「馬搬」の文化をよみがえらせようとしていました。

アファンの森でも ホースロギング(馬搬)で丸太を切り出し
それから製材機で 建材 ホダ木 薪などを作るつもりだ
そのような仕事ができれば
数人の若者が生活できるぐらいの収入を得られる
森には宝の山がある
それは私たちの心を豊かにして 生活に恵みを与えてくれる
森がよくなれば経済もよくなり そして人間が元気になる
私はアファンの森でそれを実践していく

(「C.W.ニコルの生きる力」より)




「馬搬」では大きな富は得られなくても、地域の人が暮らしていくだけの収入は得られると考えていたのです。
現に、ニコルさんのふるさと・イギリスでは、「馬搬」を生業にする組織が70以上作られ、人々の雇用や所得に結びついています。

“新型コロナ時代” 地方の見直しを
ニコルさんが目指した森を中心とした生き方や考え方は、コロナ時代を生きる私たちへの問いかけでもあります。

養老孟司さん
「新型コロナの発生率を見ても分かります。大都会は危険です。暮らしいい条件のあるところに人間が動くと考えたら、地方に動くのがごく自然じゃないでしょうか。ある程度、自然に触れるというか、そういう生活をしたほうが自分のためでもあり、子どものためでもあり、社会のためでもあります。生活のなかで、何が中心かということをもう一度考え直す機会になるんじゃないでしょうか。」

藻谷浩介さん
「現実に新型コロナの騒動になってわかったことは、庭に畑があったり、井戸があったり、場合によってはそもそも裏山の清水で水道をまかなっている人とかは、実は生活がほとんど変わっていないんですよね。1%でも1割でも、畑を自分でつくっていれば、それだけで格段に強くなるんです。
都市に住んでいても、ちょっとだけでいいから近所に公園がある。あわよくば小さな坪庭がある人と、まったく緑がないところでエレベーターに乗って暮らしている人では、今、受けているストレスが全然違います。
ほんのちょっとでいいので、ゆとりを持っていて、ちょっとでもいいから自然が目の前に見える環境に暮らしていることは、大都市でもできるし、それは重要なんです。」



誰よりも森を愛し、生涯にわたって、人類が進むべき道を探り続けたC.W.ニコルさん。 新型コロナ時代を生きる私たちに遺した文章は、こんな一節で結ばれています。

すべての生命は唯一無二の存在だが
お互いに結びついています
私たちは今こそ 尊敬と謙虚さを学ぶ必要があるのです


あなたが“新型コロナ時代”に生きるために実践している生活やヒントはありますか? コメント欄にぜひお寄せください。
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