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2020年5月27日

ストレス治療の専門家 小山文彦さん【安心のヒント③】

緊急事態宣言が全国で解除されましたが、外出自粛やイベントの開催制限は段階的に緩和されるなど、以前と同じような日常に戻るにはまだ時間がかかると見られます。

先が見えない不安やストレスを乗り越えるためにどうすればいいか。“最前線のプロ”に聞く「安心のヒント」、今回はストレス治療が専門の東邦大学医療センター教授・精神科医の小山文彦さんです。「非日常」と向き合うためのヒントを教えてもらいました。

(※小山さんが出演した4月30日放送の『“ストレス危機”をどう乗り越える? ~新型コロナ・奮闘する現場は~』特集ダイジェストはこちらから

ストレスや不安を感じて当然
Q: 大人から子どもまで、大勢の人が不安やストレスを抱えている今の状況をどう見ますか?

新型コロナウイルスの影響で、学校やイベントなど普段だったらあるはずのものがないとか、外出自粛や在宅勤務などで身近な人や職場の人との会話が乏しいといった 普段だったら自由にできていたことがなかなかできない日々が続いています。「日常性のピンチ」、「日常性ロス」のような状況だと思います。人は、このように、いつもと違う、少し苦しい状況を受けとめていく心理過程の中で、最初は「どうしてそんな事になっちゃうんだ」とか「そんな事はあるはずない」と思ったり、人のせいにしてみたりと、怒り・非難・批判・否認などが浮き彫りになりがちです。

そういう心理状態でいながらも、見えないウイルスの恐怖から自分を守っているわけで、「心ごとガードを固めているような状態」になります。このようなときに、人が近づいてきたり、咳(せき)こんだりすると、それだけで心が、敵対するような、いらだちのポーズを取ってしまう。こうした過程を経ることは、人間として自然なことだろうと僕は考えます。


(在宅勤務が増えるなど “日常性ロス”が続く日々)

身近な人への気遣い「ありがとう」が心の支えに
Q:どうすればストレスや不安を和らげることができますか?

今後、友人たちと集まるにしても、3密になりやすいお店などに行くことが以前に比べて非常に難しい状況ですが、本来、そういう場所や環境といった「箱」の中に僕らは何を入れていたのかというと、それは「人と人との交流」だったんですね。

新しいものではないけれど、普段から持っているはずの、人への気遣いやおもんぱかりを、僕らは「箱」の中で、一緒に楽しんだりしていた事が今はままならないので、「箱」の中身だけは、見えないストレスや恐怖に負けることなく、心に持ち続けないといけないと思います。

一方で、人と直接交流する機会が減っている今こそ、友人や家族など、普段、自分の身近にいる人たちのありがたさを再確認する いい機会でもあるんです。

友達にしても、普段はいがみあっている家族にしても、自分の目の前にいない今こそ、その人がどんな表情をしていて、どんな思いで毎日暮らしているのかなと想像してみる。そして、その後、電話で声を聞いてみたり、メールやオンラインでコンタクトをとってみたりすると、実際に近くにいたり、いがみ合ったりしている時よりも、逆に、その相手に対して気遣いだったり、おもんぱかりを強く持つことができたり、「ありがとう」と言うことができたりするんです。また、そうした身近な人への気遣いや「ありがとう」が人の心を支え、また、自分を支えてくれるように思います。

一人一人が、今、暮らしと家族を守っている。そんな「大仕事」をしている毎日だからこそ、互いにねぎらい、「ありがとう」を伝えましょう。不安を感じているときは、一人で悩まずに、精神的にも手をたずさえることが大事です。震災のときは、心の結びつきがいかに大事なものかが広く理解され、絆という言葉があらためて大切にされました。

絆をより、あたため、強くするにはどうすればいいか。次のことをおすすめします。

絆をあたため、強くするために…
・本当の気持ちをできるだけ隠さずに話し合う
・互いをねぎらう
・相手に長所短所があっても、その人が共にいてくれることに感謝する



(診療する小山文彦さん)

Q:家族で過ごす時間が増える中、家庭内でイライラがたまり、いがみあうことも少なくないと思います。どうすればいいでしょうか?

そんなときは、相手と自分とを結びつけるものを辺りにあえて転がしておくといいかもしれないですね。ケンカして、ふと相手の姿が目の前から消えたとき、相手の好きなものや脱いだばかりのソックスなどが床に転がっていると、ふと愛らしくなって笑ってしまう、そんなことを経験する人もいるのではないでしょうか。

あるいは、いがみ合っていても、おなかがすいたら一緒においしいものを食べ始めたら、機嫌が直り、おいしいねってなることもあるのではないかと思います。そこで、次のことを心がけるといいでしょう。

食事のときに…
・「おいしいね」と、言いましょう。
・「作ってくれて、ありがとう」と言いましょう。
・そう言われたら、「そう?よかった」と言いましょう。


未来の“良いシナリオ”を描き 実行する
Q:特に、先の見えないことに対する不安には、どう対処すればいいですか?

人は、大半の不安は、過去に遡るのではなく、先行きに対して抱くものなんです。例えば、「これからもずっとウイルスの感染は続くのか?」とか、「夏や秋になっても3密を避けなければならない状況は変わらないのか?」など。こうした出口のないような先行きへの不安は、人が自ら描いた心理的な脚本、シナリオにすぎません。

そこで、そうした不安を和らげるために、違うシナリオも描いてみるんです。例えば、「夏をあきらめなければならないのか?」というシナリオの代わりに、「夏にどんなものを着ていたいか?」と考えて、実際にタンスから着てみたい服を取り出してみる。好きなTシャツを広げる、白いスニーカーを真っ白に洗う、など。精神的な衣替えが出来ればいいと思います。家族みんなで衣服や靴などタンスなどの整理をしてみるのもいいかもしれません。 出口の先にあるだろうものを手元でしっかり確かめる。あるいは、それをイメージしてみることもいいでしょう。

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