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生徒指導提要とは?12年ぶりの改定のポイント 校則で大きな変化も

「生徒指導提要(せいとしどうていよう)」。この名前を聞いたことがあるでしょうか?
“生徒指導のガイドブック”とされる手引きで12年ぶりに改訂され、早ければ来月にも公開される予定です。

学習指導要領と比べると聞きなじみの薄い印象の、生徒指導提要。日常の児童生徒との関わり方から不登校・いじめへの対応など、学校現場で起こるさまざまな課題に対する指導方法や心構えが約280ページにわたり記されています。

今回の改訂では、行き過ぎた内容があると問題視されていた校則について“学校ホームページで公開するのが適切”とするなど、専門家からは“大幅な改善だ”と評価する声も。

この生徒指導提要、実は教員でも「存在を知らなかった」という人が少なくありません。しかし読んでみると、子育てする親が参考になりそうな情報もつまっていました。

識者と改訂のポイントを解説します。

(報道局社会番組部ディレクター・藤田盛資/報道局社会部記者・戸叶直宏)

生徒指導提要って何?“生徒指導のガイドブック” その中身とは

(2010年版の生徒指導提要)

そもそも皆さんは「生徒指導」という言葉にどんなイメージを持ちますか?
筆者にとっては、身だしなみを厳しく指摘されたり、登下校時の行動を注意されたり、日常生活に近い指導のイメージでした。

一方、今回示された生徒指導提要の案ではこう記されています。

生徒指導とは、社会の中で自分らしく生きることができる存在へと児童生徒が、自発的・主体的に成長や発達する過程を支える教育活動のことである。

少し難しい表現ですが、筆者の勝手なイメージより広義な、あらゆる指導を指すようです。実際に生徒指導提要を読んでみると、学校運営のノウハウをはじめ、いじめ・非行・虐待・自殺・不登校への対応など、さまざまな課題について細かくまとめられています。

例えば「自殺」の項目では“自殺直前のサイン”として具体的な子どもの行動を例示。その後の対応方法も掲載されています。

(2022年「生徒指導提要(改訂案)」196ページより)

改訂版は、多忙な教員たちが使いやすいようデジタル化を意識し、関連法令などのページに飛べる仕組みを加え、閲覧性も高められています。

12年ぶりの改訂 校則について大きな見直しも

生徒指導提要が作成された2010年以降、「いじめ防止対策推進法」をはじめ関連法令が整備されるなど学校を取り巻く状況は変化し、今回12年ぶりに改訂されることに。特に大きく見直されたのが“時代にそぐわない”と問題視されてきた「校則」についてです。

「校則見直しガイドライン」を独自に作成してきた日本若者協議会の室橋祐貴代表理事に改訂のポイントを3つあげてもらいました。

(日本若者協議会・室橋祐貴 代表理事)

まずは“校則を学校のホームページ等で公開すること”

日本若者協議会・室橋祐貴 代表理事

「これまで各学校の校則は公開されていなかったため、子どもたちはどういう校則があるか知らないまま入学するケースが多くありました。今後は校則に外の目が入り、保護者や地域住民とも“この学校にはこういうルールがある”という共通認識を持てるのは大きな意義があると感じています。学校には明文化されていない校則も結構あり、“先生によって言うことが全然違う”という生徒の不満もありましたが、それも明確になると思います」

そして“校則を制定した背景について示すこと”
学校側が決めたルールを一方的に押しつけるのではなく、児童生徒が自主的に校則を守るようになるためにも、背景を示すのが適切だと記されています。


3つめが“校則を見直す場合にどのような手続きを踏むべきか、その過程を示すこと”

日本若者協議会・室橋祐貴 代表理事

「校則は学校の法律のようなものですが、校則はどうやって変えられるのかというルールが明文化されていない学校が多くあります。生徒側からすれば声をあげようというインセンティブが働きにくかった。今後見直しのルールが明確になれば生徒も声を上げやすくなります。
学校はひとつの社会です。自分たちで対話しながら学校を作っていく“学校内民主主義”の経験を積むことで、将来的な主権者として育成されていくと考えています」

改訂内容を現役教員はどう見る?“校則改革”を訴えた高校教師は

今回の改訂内容を受けて、学校現場はどう変わるか。
岐阜県の高校で教員を勤めながら、2021年から校則見直しに向け署名活動や執筆に取り組んできた西村祐二さんに聞きました。

西村さんは「活動を始めたころと比べて天と地ほどの進歩だ」としたうえで、国としての指針が示された以上、これまで以上に学校や教員が責任を持って校則に向き合う必要があると指摘します。

(岐阜県の高校教員・西村祐二さん)
高校教員・西村祐二さん

「僕が思った以上に踏み込んだなと感じたのは“校則を制定する背景までちゃんと明らかにせよ”という部分です。学校が特殊なルールを設けるのであれば、合理的理由や教育的理由を必ず明らかにしないといけない。“説明責任”が学校にはあると確認されました。生徒の権利を過度に制限しないために、これから大事になると思っています」

校則のホームページ公開が与える影響は

高校教員・西村祐二さん

「私が勤める岐阜県では全国に先駆けて校則のホームページ公開を3年前に始めていて、うちの学校も現場でかなり議論がありました。これは外に出して大丈夫かというものもあり、そのときにある程度見直しが図られたわけです。
制服も、なぜ着用しなければいけないのか、その理由を説明するのは実はかなり困ると思うんです。もう“ボールは現場に委ねられる”わけなので、私たち教師こそが突きつけられた問いに対して各学校で答えを出していかなきゃいけないと思っています」

一方で西村さんは、教員の長時間労働が常態化している今、働き方を改善しない限り教員の意識をアップデートするのは難しいとも話します。

高校教員・西村祐二さん

「私はこの生徒指導提要、校則見直しを訴える前はちゃんと読めていませんでした。おそらく多くの学校で、生徒指導部の重要な立場の先生くらいしか読んでいないんじゃないかと思います。それくらい学校は余裕がありません。ちゃんと現場に浸透させるためにも、教員を“定額働かせ放題”にしている給特法含め、国は働き方の改善に取り組んでほしいと思います」

“生徒指導で最も大切なのは、家庭とのパートナーシップ”

改訂版の生徒指導提要では「チーム学校」という概念も掲載されています。
子どもに関わる課題が複雑で多様になる中、生徒指導には教員だけでなく学校外の専門家や地域の大人とも協力して取り組む必要があると示されています。

文部科学省の改訂会議に参加した神奈川県立湘南高等学校の池辺直孝校長は、“家庭という最も重要な教育機関とどう連携できるかが大事”と強調します。

(神奈川県立湘南高等学校・池辺直孝校長)
神奈川県立湘南高等学校・池辺直孝校長

「子どもたちの成長を支えるために一番大切なのは、学校がいかに家庭とのパートナーシップを結べるかです。いま学校は「サービス業」のように、家庭・地域・社会全体の要望を背負いこむばかりになっているように感じます。いじめ問題などは、学校と家庭が対立構造に陥り、残念ながら訴訟になるケースも増えています。本来はそうじゃなくて、家庭・学校・地域社会が、互いにやれること・やれないことを補い合いながら子どもの成長を支えていくのが理想だと思うんです」

令和の時代に求められる生徒指導とは

神奈川県立湘南高等学校・池辺直孝校長

「“生徒指導”という言葉はマイナスなイメージを持たれていますよね。昔の“荒れた時代”の生徒を追いかけ回すような。でも生徒指導の本当の目的は、生徒のエネルギーを押しつぶすんじゃなくて、「成長のチャンス」と捉えて、どうやって未来に向けていくかなんです。現代でいえば、閉塞感があって多様性が生まれにくい社会で、それを乗り越える子どもをどう育てるか。
例えばいじめは、ひとりひとりの“違い”をはやしたてるところから始まります。ものをはっきり言い過ぎてしまって誤解されやすい、とか。その違いを、理解はできなくても尊重できるように指導する。多様性の本質は、互いを理解しようとする集団にできるかどうか。それができれば、いじめが重大化することも減ってくると思うんです」

“不適切な指導をなくすため、生徒指導提要をよく読んでほしい”

さらに、この生徒指導提要の内容が学校現場に根づくことを強く願っている人もいます。

「安全な生徒指導を考える会」。
教員の不適切な指導によって子どもが自殺に追い込まれたとする“指導死”の遺族たちです。
生徒指導提要が改訂されることを知り、不適切指導の具体例も載せるよう、8月、国に要望書を出しました。

( 8月24日 文部科学省で会見した「安全な生徒指導を考える会」 )

「生徒指導提要はよい内容。もっと現場に知られていれば、息子の自殺もなかったのではないか」

会見の冒頭でそう語ったのは、高校1年の男子生徒を亡くした遺族。

高校1年の男子生徒を亡くした遺族

「不適切指導の具体例を載せることで、周りの先生が指摘したり、自分の指導が該当していないか振り返ったりしていただきたいという思いがあります。不適切な指導の末に不登校や自殺があることを、守らない先にこういうことがあるんだということを書いてもらうことで、現場の先生が生徒指導提要を読んでもらうきっかけにしてほしいです」

不適切な指導の例として、児童生徒の言い分を聞かず事実確認が不十分なまま思い込みで指導することや、組織的対応をせず1人の教員の判断で指導すること、なだめ役を作らないことなど8項目を例示。

こうした要望を受けて、改訂された生徒指導提要には不適切な指導例が示され、「指導を行った後には、児童生徒を一人にせず、心身の状況を観察するなど、指導後のフォローを行うことが大切」という一文も書き加えられました。

高校1年の男子生徒を亡くした遺族

「指導に思いやりがあっても、不適切な要素が無自覚に混ざると子どもが亡くなってしまうことがあると知ってほしい。生徒指導提要をよく読んで、適切な指導を行ってほしいです」

多くの願いが込められた生徒指導提要。
これを教員たちに丸投げするのではなく、多忙を極め課題山積の学校現場でどう実現するか、さらなる議論が求められます。

担当 藤田Dの
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