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2020年3月13日
【性暴力を考えるvol.65】小児性犯罪と児童ポルノの闇
「児童ポルノは加害の引き金になる。」
去年11月に出版された「『小児性愛』という病―それは、愛ではない」(ブックマン社)からの言葉です。

この本は、1月23日に放送した『クローズアップ現代+ データが浮き彫りに!知られざる痴漢被害の実態』のスタジオ出演者の1人で、長年、性加害者の再犯防止プログラムに携わる斉藤章佳さん(40)の著書です。子どもへの性加害を行う「小児性犯罪者」150人以上が語った言葉などから、彼らの実像を明らかにしています。数々の性犯罪者を診てきた斉藤さんからしても、小児性犯罪者の更生の難しさは、“別格”といいます。

新型コロナウイルスの影響による臨時休校で、子どもの安全が問われている今、斉藤さんの著書とインタビューを通して、小児性犯罪と児童ポルノの闇について考えます。

(さいたま放送局 記者 信藤敦子)

※この記事は、小児性犯罪の実態や加害者の心理について詳しく触れています。被害をイメージした画像やイラストもあります。フラッシュバックなどの症状のある方はご留意ください。

治療につながるまで14年

(斉藤章佳さんの著書)

著書のベースになっているのは、斉藤さんの勤務する榎本クリニック(東京都豊島区)で、去年5月までの13年間で受診し「小児性愛障害」と診断された小児性犯罪者117人のデータです。出版社によると、子どもを対象とした性的嗜好(しこう)のある「小児性犯罪者」について、これだけの規模でデータがまとめられた本は、ほとんどないということです。

117人のうち、初診時の年齢は30代が最も多く、34%を占めます。次いで20代が25%、40代が24%と、20~40代が8割を超えています。最少年齢は17歳、最高年齢は62歳ということですが、これはあくまで初診時の年齢であって、初めて子どもに加害行為をした年齢ではありません。



斉藤さんの調べでは、さまざまな性加害者が問題行動を始めてから治療につながるまでの期間の平均は、盗撮は7.2年、痴漢は8年でしたが、小児性犯罪では14年と、大幅に跳ね上がります。その原因を斉藤さんは、「被害に遭った子ども自身が何をされたか自覚しづらいため、問題行為が周囲に発覚しにくいからではないか」と指摘しています。

児童ポルノが引き金に
本の中で衝撃を受けたのは、冒頭でも紹介した「児童ポルノは加害の引き金になる」という一節です。榎本クリニックで診断された、子どもへの性加害経験のある患者の95%以上が、子どものわいせつな写真や動画のみならず、マンガやアニメなども含め、なんらかの児童ポルノを自慰行為に使用したことがあるそうです。

また、斉藤さんがクリニックで「小児性愛障害」と診断がついた小児性犯罪者は、「児童ポルノが加害行為の引き金になったか」という問いに対し、80%以上が「引き金になった」と答えています。



本の末巻の対談で登場するケンタロウさん(仮名・50代)は、大学生の時、成人男性が思春期前の少年に性虐待を行う内容のコミックを、書店の成人雑誌コーナーで初めて見て、「これだ!」と体中に電撃のようなものが走ったといいます。

「これが自分の求めていたものだ、自分はこのために生きるんだ!というのが一瞬にしてわかったという感じです。いまでも一番ときめくのは、思春期前、小学6年生くらいの男の子です。」(「『小児性愛』という病―それは、愛ではない」より)

ケンタロウさんはその後、2000年に強制わいせつ未遂で逮捕・起訴されるまで、複数の男児への性加害行為を繰り返していたそうです。

“児童ポルノ天国”の日本

(斉藤章佳さん/精神保健福祉士・社会福祉士)

実際に児童ポルノの影響で、子どもたちへの加害行為に及ぶか及ばないかの差はあるということですが、重要なことは小児性犯罪者に限らず、多くの性加害者の中に「児童ポルノが、自分の性嗜好(しこう)に気づくきっかけになった」という人が、決して少なくないということだそうです。しかも、彼らにとっては実物の写真や動画だろうと、アニメやマンガだろうと、区別はないといいます。また、児童ポルノが自らの性嗜好(しこう)を正当化する言い訳にもなっていたと答えています。

一方、恐ろしいことに、性加害者の中には「児童ポルノは加害行為の抑制になる」と考えている人が少なくないそうです。斉藤さんは本の中で、加害者たちの実際の発言を紹介しています。

▼「児童ポルノがあるから、現実の子どもに行かなくてすんでいるんだ。なければ、子どもへの性犯罪はもっと増えているはずだよ。」
▼「現実とファンタジーの区別はついている。児童ポルノを愛好しているからといって、実際の子どもを襲うことはない。」
▼「現実の子どもには害がないのだから。全く問題がないよね。」


斉藤さんに言わせると、日本は“児童ポルノ天国”だといいます。日本の今の法律では、子どもを性的な対象として描いていても、マンガやアニメなどの“二次元”の創作物であれば、処罰には当たりません。むしろ市場には氾濫しています。こうした状態こそが “天国”として、欧米諸国から奇異の目で見られているゆえんでもあります。この問題に関して、「表現の自由」を訴える人も多く存在しますが、斉藤さんは苦言を呈します。

「児童ポルノが性加害の引き金になっている実態がある中で、子どもを性的な対象として描いている創作物が、“守られるべき表現の自由”に果たして値するのでしょうか。」

児童ポルノが加害行為の抑制になるわけではなく、むしろパンドラの箱を開いているといえます。児童ポルノを通して、彼らは『子どもは性的な存在である』というメッセージを受け取り、学習し、加害行為とともに認知をゆがめていくのです。たとえ1例でも加害行為につながり、1人でも被害者が出ているのであれば、児童ポルノの罰則や規制についてもっと真剣に議論するべきです。」

小児性犯罪者の半数以上は いじめを経験
斉藤さんは本の中でもう一つ、興味深いデータを紹介しています。小児性犯罪者117人に学生時代のいじめ被害について聞いたところ、半数以上の54%が「ある」と答えたといいます。



斉藤さんは、小児性犯罪者特有の傾向だと指摘します。

「多くが学校内でかなり激しいレベルのいじめに遭っていました。これは痴漢や盗撮、強姦など他の性犯罪の加害者にはなかった傾向です。」

中には、同性間の性的ないじめを受けた被害者もいて、女子生徒の前でズボンを脱がされたり、同級生の前で自慰行為を強要されたり、性器をもてあそばれるなどして、不登校になった人もいるそうです。

「恨みの感情が、自分より弱い者を虐げたいという欲求に変換されることがある。いじめの被害経験者が、小児性犯罪者につながる理由の1つになっているのではないか。」

こうしたことを受け、斉藤さんは、教育現場との連携に力を入れていきたいとしています。

「いじめが起きた際に、なるべく早い段階で発見し、被害者を適切にケアすることで、子どもたちを未来の加害者にしないための教育ができる可能性があります。また、加害者の早期発見・早期介入も重要な課題です。」

0歳から12歳の男児被害も


斉藤さんは、小児性犯罪の被害者に関する重要なデータも提示しています。前述のケンタロウさんのように、男児を加害対象にしている小児性犯罪者は相当数いるという事実です。

「大型商業施設では、男子トイレの個室にスマホのゲームなどでおびき寄せて連れ込み、巧妙にパンツを脱がせて写真を撮ったり、性器を触らせたり触ったり。中には、口淫(こういん・口を使って性器を刺激)させるケースもあります。本命は女の子ですが、女の子は日ごろから注意喚起されていて声をあげられるリスクが高いため、あえて男の子を狙っているという人もいます。男の子の方が被害に遭うことについて周りも認識していないし、本人も警戒していないので、被害自体が明るみになりにくく埋もれやすい傾向があります。」

斉藤さんの診てきた小児性犯罪者の中には、「男の子の方がかわいい」という人もいるそうです。男の子の方が無邪気で素直だからという理由のようです。

本の中には、強制わいせつの被害者数の20年間(平成7年~26年) の推移が、性別および年齢層別にグラフで示されています(「法務省商務総合研究部報告55(※NHKサイトを離れます)『法務省:性犯罪に関する総合的研究 より 性犯罪の動向』(P.14 2-1-13図)」引用)。それを見てもわかるように、強制わいせつの被害に遭った男の子は、0歳から12歳までが ほとんど半数以上を占めています。 

「身体がまだ小さいうえに体力もないため加害行為をしやすいというのは もちろんあるでしょうが、女児でも男児でもどちらでもいいという理由で被害に遭うのは、第二次性徴(思春期に性ホルモンが増えやすくなるなどの体の発達)が始まる前のこの年代だけでしょう。」

これはぜひ男の子の保護者の方々に広く知っておいてほしい事実です。

休校期間は 子どもたちが狙われるリスクが高い…
斉藤さんは、最近、小児性愛障害の治療グループで、幼い子どもが行方不明になった事件をテーマにとりあげて話したとき、大きな衝撃を受けたそうです。心を痛めるニュースだったにも関わらず、みな一様に『興奮した』と言ったというのです。

「彼らにとっては、被害に遭った子どもの痛みを想像するよりも、自分の性的ファンタジーを想起する対象だったということでしょう。」

また、先日のセッションでも、小児性愛障害の一人が「コロナの時期は危ないよね」とつぶやいたら、周りのみんなもすごい勢いでうなずいていたと言います。

「確かにそうですよね。この休校期間、保護者は子どもたちを家に置いておくことはできずに 公園などで遊ばせておくはずです。子どもたちも いつもはいない時間帯に地域のいたるところにいます。一方、加害者もテレワークなどで自宅にいて、自由が利く時間が多い。

つまり、あまり考えたくはないですが、今こそ、小児性愛障害の人たちが加害行為に及ぶリスクが高まる期間であると想像できます。」

※休校中、子どもを守るために、親や周りの大人はどんなことに気をつければいいのか。「心構えのポイント」については「Vol.62 今こそ考えたい 子どもたちと性暴力」を参照ください。

取材を通して、小児性犯罪者のあまりにひどい認知の歪みに戦慄を覚えると同時に、子育てをする一人の親として、こういう加害者から子どもを守るために何が出来るのだろうと考え込んでしまいました。

みなさんは、子どもを対象にした性犯罪について、どう思いますか?
記事への感想や、差し支えなければ ご自身の体験などを、下の「コメントする」か、 ご意見募集ページから お寄せください。
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