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2019年12月13日

デマや誹謗中傷を訴えたいと思ったら・・弁護士が教える手順

弁護士の神田知宏さん。ネット炎上に関する訴訟を数多く担当する、まさに“フェイク・バスターズ”です。弁護士になる前はIT社長としてプログラミングやウェブデザインもこなしていた異色の経歴を持ち、ネットやITの世界に精通しています。これまで1500~2000件ほど、ネットトラブルの裁判手続を扱っていますが、もっとも多いのは、デマやひぼう中傷を拡散された被害者からの相談だといいます。

さっそくですが、もし、自分が悪質なネットデマの被害にあったらどうしたらいいのか、神田さんに聞きました。

Q 弁護士には何をお願いできるの?
デマを書き込んだ人や拡散した人に関する情報開示を請求し、特定できた場合は慰謝料を請求する訴訟を起こします。サイト運営会社などへの削除要請も行います。

Q 相談するときにどんな準備が必要?
アクセスログと呼ばれる通信記録は3ヶ月から6ヶ月しか保存されないことがほとんどなので、訴訟を起こすにはスピードがとても大事です。とにかく早く弁護士に相談してください。また、デマやひぼう中傷の書き込みは、必ずプリントアウトしておいてください。自分で削除請求する人も多いのですが、それだと裁判官に見せるための証拠がなくなってしまい、発信者を特定できないことがあります。

Q 相談したらすぐに解決するの?
開示請求をしても、プロバイダなどから情報が出るまで時間がかかることが多く、手続きがスムーズに進まない場合もあります。個人情報を開示させるまでに裁判が1~3回必要となり、さらに慰謝料請求の裁判も半年~1年くらいかかるため、少なくとも1年以上、たいていは2年以上の長期戦になります。

Q どれくらい慰謝料を請求できるの?
もちろんケースによりますが、これまでの裁判例では、悪質なデマをリツイートした人に対し、数十万円の慰謝料支払いを命じたものがあります。ネットの投稿による慰謝料は30万、50万、70万というのが相場です。これに開示にかかった弁護士費用が加わり、100万円を超えるケースもあります。

一方で、神田さんは被害者だけでなく、デマを拡散した“加害者”の弁護をすることもあります。ほとんどの人は、まさかリツイートしただけで訴えられるとは夢にも思っておらず、「おもしろい」からと深く考えずリツイートしたり、「許せない」といった正義感でリツイートした人が多いといいます。

「拡散する際にウソの情報なのかどうか一度立ち止まって考えてほしい。特に誰の個人情報なのかがわかる表現や中傷的な言葉など刺激的なコメントがある投稿はリツイートする際に注意が必要です。」



IT社長からIT弁護士へ 異例の経歴
神田さんは、中学生の頃パソコンにのめり込み、大学卒業後は起業して、プログラミングやパソコンの入門書を書く仕事をしていました。

その後、司法試験に合格したのは39歳のときでした。初めてネットに関する訴訟を担当したのは、弁護士になって2年目。ネットの掲示板にひぼう中傷を書き込まれた被害者からの相談でした。掲示板の運営会社に情報開示請求をし、書き込んだ人を特定しました。この時期を境に、ネットトラブルに関する相談が相次ぐようになりました。
ネット社会の法整備を進めたい
2017年、神田さんは大きな注目を集めた訴訟を担当しました。ある男性が、自分の個人情報が検索結果に表示されないよう、グーグルに対し検索結果の削除を求めた裁判です。最高裁まで争い、結果として棄却されましたが、決定の中で「表現の自由より、プライバシーの保護が明らかに優先される場合は検索結果を削除請求できる」という基準が初めて示されました。これは、その後のネットトラブルに関する裁判に大きな影響を与えています。

IT 分野に注力する弁護士として、数多くの案件を扱ってきた神田さん。日本はネットに関する法整備が現実に追いついていないと感じています。たとえば、アクセスログの保存期間が現在、3ヶ月から6ヶ月ですが、被害者救済のためには、より長期間の保存を法律で定めるべきだと考えています。

「人の社会にルールを作るのが“法”です。人の集まるところにはルールがないとうまくいきません。色々な訴訟や判例を積み上げていくことで、もっとネット社会がうまく回るようにしたいと思っています。」