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2019年11月15日

突然の炎上から2年 今も続くデマ情報との戦い【後編】

ネット上で突如、いわれのないひぼう中傷を拡散され、個人情報までさらされた石橋秀文さん。書き込みをした人物との戦いは2年たった今も続き、法手続きの過程では予想外の壁にぶつかってきました。

(フェイクバスターズ取材班)

突然の炎上から2年 今も続くデマ情報との戦い【前編】

悪質な投稿 11人を刑事告訴

2017年10月。あおり運転がきっかけで一家4人が死傷した事件で、「容疑者の父親だ」というデマを流され、ネット上で炎上した秀文さん。1日100件近くの嫌がらせの電話だけでなく、襲撃予告などもあり身の危険を感じたため、すぐに警察に相談。刑事事件として、悪質な投稿をした人物を訴えようと考えていました。

しかし、投稿をした人物の特定は期待していた通りには進みませんでした。炎上から5か月後。警察による家宅捜索などを経て、告訴までこぎつけられたのは、11人だけでした。

「アクセスログの保存期間」が捜査の壁に

実は、投稿した人物の特定には“タイムリミット”があります。特定するため必要なのは、「○月○日○秒に●●社の携帯電話回線でツイッターにログインしていた人物」などといった、携帯電話会社やインターネット回線会社などが持っている「アクセスログ(履歴)」。このわずかな情報だけを頼りに、人物を割り出していきます。

しかし、唯一の手がかりでもある「アクセスログ」の保存期間は、各携帯電話会社やインターネット回線会社によって異なるものの、ほとんどが3か月~6か月。個人情報保護の観点や、サーバーのデータ保存容量の観点から、その期間を過ぎてしまうと、自動的に消去されてしまうのです。

警察による捜査であっても、弁護士をたてた民事訴訟であっても、データ自体が消えてしまっていれば、手の打ちようがありません。ネット上の人物の特定は、迅速に進められなければ、時間切れとなってしまうのです。

「警察の方に、『他にも(書き込んだ人が)たくさんいますよね?その人たちもお願いします』と言ったんですが、『ログが消えてしまうので、これ以上は捜査できません』と言われました。」

「納得できない」 全員不起訴に

わずかながら特定できた11人は、その後書類送検され、いずれも容疑は認めていました。ところが、事件から10か月が経った2018年8月。検察の判断は、11人全員不起訴。「別の投稿内容をコピーして掲示板に投稿したにすぎない」「起訴するに足りる十分な証拠が得られなかった」などという検察の判断でした。

「(被告は)当然、私の息子でもないし、身内でもないし、うちの社員でもない。どこを誰がどう調べてくれてもいいよって言う状態。その人間がいきなり、ひぼう中傷されて、個人情報の漏えいまでされて、司法は不起訴って言う判断で。納得いかないですよね。書き込みは残り続けますからね、一生消えないですからね。」



「泣き寝入りはしない」検察審査会に申し立て

不起訴という処分結果は、報道などを通じて、すぐに話題となりました。秀文さんが見た、不起訴を伝えるウェブニュースのコメント欄には、「やっぱり不起訴か」などといった内容のコメントが、いくつも書き込まれていました。

「このまま、泣き寝入りしていいのか・・・。」
秀文さんは、不起訴は不当だとして、検察審査会に審査を申し立て。その間、民事訴訟で徹底的に戦いながら、検察審査会の判断を待つ覚悟をしました。

「本当に、長い戦いですよ。いろんな方には相当な心配をかけていると思います。ただ、とにかく、前例を作っちゃいけないなと思ったんです。その前例を作ってしまうと、これと同じような事件があったら、全部不起訴になるだろうし。だから、迷いもなく検察審査会にあげました。」

デマ被害から2年 ようやく光が見えた

そして、不起訴となってから1年2か月が経った、ことし10月。秀文さんのもとに、検察審査会から連絡が来ました。検察審査会による議決は、「起訴相当」。「不起訴とすれば、同じような犯罪への社会の認識にも多大な影響を及ぼす。刑罰による抑止力でインターネット社会に警鐘を鳴らす必要性は決して小さくない」などとして、検察庁に捜査のやり直しを求める内容だったのです。

「正直、半分くらいは『もう不起訴で変わらないんだろうなぁ』っていう気持ちはあったんですよ。なので、今回の議決はすごくありがたかったです。ちょっと光が見えた気がしました。」



デマの被害者になってから2年。今なお戦い続ける秀文さんが、ネットを使う人に強く伝えたいことがあると話してくれました。

「悪質なコメントを流すこと、それがデマであろうが何であろうが、それを流すことによってどれだけ人に心配や迷惑にかけるのかをわかってやってほしい。ネットやSNSって、正しい情報が流れていればすごく便利なツールだと思うんですよね。だからこそ責任を持って、絶対に間違った情報っていうのは流しちゃだめだし、ちゃんと責任感を持って使って欲しいです。」

(終わり)

※コメントは編集部で内容を確認の上、掲載させていただきます。