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クロ現+
2019年11月15日

突然の炎上から2年 今も続くデマ情報との戦い【前編】

インターネットの投稿や記事などに対して、非難や中傷が多数寄せられる「ネット炎上」。 中には、全くのデマ情報を拡散されたことで、身に覚えのないバッシングを受け、実生活にまで影響が及んだ被害者もいます。いま、誰もがこうしたデマの被害者になったり、軽い気持ちで拡散することで加害者となったりする可能性があります。「同じような経験をしたことがある」「被害者や加害者にならないためには」など、あなたのご意見をコメント欄かご意見募集フォームにお寄せください。

(フェイクバスターズ取材班)

「犯人の父親」身に覚えのないひぼう中傷が1日100件

今回、取材に応じてくれた、石橋秀文さん(49)。福岡県北九州市にある従業員およそ10人の電気設備工事会社を経営しています。異変が起きたのは、おととし10月11日のことでした。この日、秀文さんは、出張で東京に来ていました。会社の事務所には、妻が一人。すると、事務所に突然、身に覚えのない電話が殺到したのです。

「おやじを出せ」「なめるな」と罵声を浴びせるものや無言電話など、1日に100件近くかかってきました。妻は慌てて出張中の秀文さんに連絡。中傷の電話が始まって6日後、ようやく会社に戻ってきてみると、依然として中傷の電話は鳴り続けていました。

「夜中の2時とか3時とか朝方まで着信がありました。もし、会社にきた電話が自宅や携帯電話に転送されるように設定していたら、気が狂っていたと思います・・・。」

原因は、その4か月前に起きた事件。神奈川県の東名高速道路で、あおり運転をきっかけに一家4人が死傷した事故でした。電話がかかり始めた前日の10月10日、事故の原因は、別の乗用車が一家が乗るワゴン車の進路を妨害して停車させたことだとして、乗用車を運転していた男が逮捕されました。逮捕されたのは、秀文さんの会社の隣の市に住む、建設作業員の石橋和歩容疑者(現在は被告)。「石橋」という名字が同じで、容疑者の住所が会社に近いという理由で、関係のない2つがネット上で結びつけられ、秀文さんが「容疑者の父親だ」というデマが広がったのです。

襲撃予告も・・・ 見えない相手からの攻撃

デマは、ツイッターや匿名掲示板、そしてそれらの内容を引用する形で掲載する「まとめサイト」によって拡散されていました。11日の昼頃に、会社の住所や電話番号がネット上に書き込まれ、その翌日には、公開していない秀文さんの自宅の住所までもが明らかにされました。さらに書き込みの文言も、時間の経過とともに過激さを増します。

「親も親。いっしょに死んでくれ」「自殺に追い込め」
「石橋建設の社員、石橋の親族を徹底的につぶす」

危害を加えるようなことを匂わせるものまで出てきはじめ、ついには、自宅の前に不審車両が停まっているのを見かけるようになりました。身の危険を感じた秀文さんは、事務所を閉鎖し、4人の子供たちには学校を休ませました。

「襲撃予告などもありました。実際はそこまではやり切らないと思いますけど、もしそれが本当にあったりしたら恐ろしい。向こうからは我々が見えているけど、我々からは相手が見えないので・・・。」



ネットで反論も ますます炎上

当時、秀文さんは、ネット上にまん延する疑惑を晴らすことは、簡単だと思っていました。 石橋和歩容疑者(現在は被告)とは無関係であることを、証明することができたからです。

秀文さんが調べたところ、確かに2人の住所は近いものの、出身地は異なりました。また容疑者と妻の年齢を照らし合わせると、妻が13歳の時に出産していないと計算が合いませんでした。さらに秀文さんは戸籍謄本まで取り寄せて、容疑者とは遠い血縁すらないことも確認できていました。

ネット上で「容疑者とは無関係である」と、デマ情報を打ち消すための投稿を始めた秀文さん。しかし、反応は想像を絶するものでした。

「このコメントをしているやつは偽物だ」「こいつ、犯人か?」
「離婚歴がある。前の奥さんとの子供だ」

「反論して、さらに炎上したのにはビックリしました。違うって言っているのに、信じないわけですからね。当の本人が『私の息子でもないし、うちの社員でもない』って言っているのに。僕は離婚歴なんてないので、ねつ造ですよね。そうやってストーリーを作り上げるんですよ、勝手に想像して。」

効果を発揮しなかった打ち消しの投稿。秀文さんを中傷するネット上の書き込みはどんどん増え、嫌がらせの電話も鳴り続けました。

家族や社員だけは守りたい



身に覚えのない中傷にさらされながらも、秀文さんはせめて自分の家族と会社の社員の安全だけは守ろうと考えました。ネットで炎上しはじめてすぐに、秀文さんは、子供達の通う学校の校長に電話。子供がいじめの対象とならないように、ネットの書き込みは全て嘘であることを学校内で周知してもらうようお願いしたのです。

また、近所への挨拶回り、会社の取引先への事情説明も、即座に行いました。ネット上で出回っているデマを目にするよりも先に、自らが行動することが、信用してもらう上で大事だと考えたからです。

「中傷が自分に来るだけならいいけれど、子供だとか、うちの会社の社員に向く可能性もある。弱い者の方に行くのが怖いんですよ。会社だって、取引先から仕事を止められるというのは一番致命傷なので、全てにおいて、まず手は打ちました。」

さらに秀文さんは、メディアからの取材依頼にも全て応じるようにしました。すると、中傷する書き込みは減り始め、反対に、擁護するコメントが増えたと言います。秀文さんのとっさの対応。そのおかげもあり、実生活への影響は最小限に留めることができたのです。

突然、“フェイクニュース”の被害者になってから2年。秀文さんは、書き込みをした人を相手に、刑事告訴と民事訴訟を続けてきました。後編では、秀文さんの2年におよぶデマ投稿との戦いについてお伝えします。

突然の炎上から2年 今も続くデマ情報との戦い【後編】