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2019年12月6日

【身体拘束は減らせない?】⑥急性期病院で身体拘束の削減に挑む ~調布東山病院の取り組み(後編)~

10月16日に放送した「徹底討論! それでも必要?一般病院の“身体拘束”」。放送後、番組にお寄せいただいた意見の中で目立ったのが、急性期病院で身体拘束を削減することの難しさを訴えるものでした。前編に引き続き、一般急性期病院で身体拘束の削減に取り組む、調布東山病院の医療者に話を聞きました。看護部長の福地洋子さんが、身体拘束削減の取り組みを教えてくれました。



★身体拘束の削減には何が必要か
患者さんの人権を考え、「不必要な身体拘束は行わない」「拘束を当たり前と思わない」と考えています。救命のため、一時的措置として必要な時はあると思いますが、拘束が安全であると思う固定観念にとらわれないで、患者さんへの十分なサポート体制が必要であると思います。

患者個々のおかれた情報を共有し、日々どう向き合うか、最善の方法を多職種チームが一丸となって考えていく必要があると思います。患者に寄り添うことで、「なぜベッドから降りようとしているのか。なぜチューブを抜こうとしているのか」患者のニーズを把握し、看護師の気づきができ、点滴の管などの自己抜去防止の工夫、環境整備、安眠促進の工夫をすることで、ベッドサイドケアの充実に繋がり、QOL(生活の質)を維持し、安心した療養環境が送れます。上手くいった場合は、看護師のやりがいにも繋がります。

★認知症に対応するためのさまざまな取り組み
2013年にBPSD(行動心理症状=暴言・暴行などの認知症の症状)で、私達の技術では手に負えない2事例を経験し、病棟看護師に疲弊感があり、看護師のモチベーションが低下したことがあります。認知高齢者の入院要請があると、病棟責任者は、「個室とかスタッフステーション近くの病室でなければ受け入れられない等」こと細かい点について要求していました。

その後も、高齢者の緊急入院が増え続け、看護師がやりがいを持って働くためには何ができるかを考え続けていました。1~2名参加の研修では全体になかなか浸透しません。高齢者・認知症患者ケアに不安なく対応できる看護の必要性を感じ、以下の取り組みを始めました。

①認知症ワーキング(勉強会)、「患者さんも職員もより良い日々を送るために」 と言うテーマで、2013年から各病棟6名ずつ参加して月1回認知症勉強会を始めました。事例検討を中心に個人・チームで考え病棟で実践し、次回勉強会で評価する方法でした。回数を重ねる度、患者さんの立場に立った発言が増え、安心して療養できる環境の工夫作りが始まりました。

②ユマニチュード導入、哲学の基礎、4つの柱、5つのステップの技術を学びケアを実践し、効果も見られ、患者さんも人間らしさを取り戻し、せん妄予防(せん妄を起こしても軽度)に繋がっています。

③医療安全の勉強会では、身体拘束のあり方、拘束の3原則を考える機会になりました。 SMT(セーフティマネージメントチーム)が2014年9月に立ち上がり 点滴の自己抜去時のインシデントレポートは中止になり、点滴での拘束は激減しました。
一方、ベッドを柵で覆う四点柵は時々あり、四点柵をしていた患者さんより、「私はサルではない・・・」と言われ、大きなショックを受けました。

④当直管理者による適正抑制か評価を2018年8月から開始し、必ず勤務帯で患者さんのラウ ンドをしています。

⑤認知症サポートチーム(DST)による活動として、カンファレンス・ラウンドを2018年9月から患者情報・治療方針を共有し、身体拘束患者の見直しを行っています。


複合的な取り組みを継続的に行うことで、スタッフの意識も変わり、身体拘束は、かなり減ります。

職員の入れかわりもありますので、今後も、組織全体で考え続けることが重要です。 理事長・院長・看護部長の方針、組織としての統一は絶対に必要と思います。当院は、理事長の理解、バックアップがあり、色々なことが進められました。

★患者家族との良好な関わりも大切
入院すると、病院任せで面会に来ない家族もおりますが、反面、骨折や頭部外傷等のアクシデントが起こると、「看護師は何をみていたのか?」とクレームが寄せられることがあります。しかし、普段から、患者・家族と関わりを持ち、情報共有し、信頼関係を築いておくことが大切と思います。アクシデント発生時に説明に立ち会いますが、日頃からの関わりが良いと家族も納得します。

理想と現実のギャップは大きく、一筋縄ではいかないのが現状ですが、組織的に多職種の協力の下で、患者・職員にとっても、安全で安心な医療が提供できるよう取り組んでいきたいし、身体拘束をしない時のリスクを認める社会になることを望みます。国民、社会の意識を変える啓蒙活動がもっと必要と思います。

急性期病院で不要な身体拘束は減らせるのか?あなたのご意見をこのトピックにお寄せください。