クロ現+
2020年3月30日

広がる輪 つながる若者たちの思い

2月下旬、全国から高校生・大学生など約100人が東京・渋谷に集まりました。開かれたのは気候変動について情報を共有したり、意見を交換したりする講習会、その名も「学生気候危機サミット」です。
環境問題についていままで個々に活動していた若者たちが集まって、話をすることでどんどん思いがつながっていくのを目の当たりにしました。
その後、新型コロナウイルスの拡大の影響で今後どんな形で活動を続けられるのか、 不透明な部分もありますが、新しいものが生み出されるようなパワーを感じた講習会の様子をお伝えします。

若さあふれる「講習会」




講習会が行われたのは渋谷のビルのワンフロア。
部屋に入ってみると、驚くことに約100人の学生たちが床にマットを敷いて座っていました。衝撃を受けたのもつかの間、講習会が始まるやいなや司会から発せられたのは、「元気ですか~?」という掛け声。会場からは「イエーイ!」という声が返ってきて、ライブさながらの状態になりました。この講習会、一体どんなものになるのだろうか?と思いながら取材してみると、またまたビックリ。明るいながら、本当に内容の濃い3日間でした。


(2日目のスケジュールより)

3日間ともスケジュールは午前9時すぎから午後7時ころまでとびっしり。自分がどんな活動をしているのかという自己紹介から始まり、いま科学的に何が起きているのかなど専門家による知識のインプット、環境問題で実際活動している先輩からのアドバイスもありました。最後には自分たちがいつまでに何ができるのかを具体的に考え、発表する時間まで設けられていました。これらの内容を考え、専門家などを呼んできたのも大学生を始めとする学生たちです。
参加した若者たちは聞いたことを忘れないようにメモを取ったり、隣り合った人と環境問題について活発に意見を交わしたりしていました。その足元には持ってきたマイボトルが置かれていました。



講習会が開催された背景に危機感

しかし、なぜ今このような講習会が開かれたのでしょうか? そこには、学生たちの危機感がありました。去年9月にはグレタ・トゥーンベリさんの影響で、学生たちの有志による集まり「Fridays For Future Tokyo」が呼びかけたデモには2800人が集結。東京都に「気候非常事態宣言」を出すように求めた11月のデモでも600人以上が参加しました。中には学校を休んできた学生やSNSで活動を知って初めて参加したという人の姿も見られ、環境問題に対する若者の動きが顕著となっています。

(11月に行われたデモ)

(初めて参加したという10代の姉妹)

しかし、Fridays For Future Tokyoではデモの参加者が海外のように増えていかず、思うほどに活動が広がっていかないことに焦りを感じていたのです。

どうしたらこの気候変動への関心を高めてもらえるかー。 同じ思いを感じていたのがこの講習会を主催したうちの一人、慶應義塾大学4年の能條桃子さんです。



能條さんは若者の政治参加を呼びかけるためSNSを中心としたネットワークを立ち上げ、活動を行っています。今回、この講習会を開くきっかけとなったのが能條さんが去年参加した元アメリカ副大統領のアル・ゴアさんが主催する講習会(講習会についてはTOPIC⑧ グレタさんの言葉に触れて、立ち上がった若者たち2)でした。そこでFridays For Futureのメンバーやほかに環境問題を訴えて活動している人たちと出会いました。話をしていくうちに、行動をしている人たちが全国各地にいることや活動が広がっていかないという同じ思いを抱えていることを知りました。そこで活動を広げていくためにはデモという形だけではなく、情報を共有できる場を作ることが大切だと考えたのです。

(ゴアさんの講習会でFridays For Futureのメンバーらとともに 一番前右から3番目が能條さん)


能條桃子さん
「ゴアさんの講習会に出席した時、同じ情報を共有したことで自信を持って行動できると感じました。何をしたらいいのかと考えている各地にいる学生たちを集め、情報を共有することで若い人たちが連携していくことができると思いました」


そこで開くことにしたのがゴアさんの講習会の学生版、学生気候危機サミットでした。高校生や大学生らを対象にした講習会を開催するとSNSで告知したところ、続々と応募があり100人の参加枠が1週間で埋まったといいます。

つながる若者たち 講習会への参加が自信に!




なかでも興味深かったのが高校生たちです。
講習会の最終日、気候変動に取り組んでもらうためにどこに働きかけるかという議題が与えられました。働きかける先として国会や地方自治体、企業、学校が挙げられた中で高校生たちは自分たちも通っている高校を選んだのです。なぜこの問題に関心を持ってもらえないのかについて話し始めると、高校生からは抱えている悩みが出てきました。

田中まなみさん(千葉県立佐倉高校1年)
「気候変動の話をすると『まじめだね』と言われるのが嫌」
「同じクラスで台風の被害にあった子がいたが、そういうことがあってもその原因について考えることをしていない」


西川優嗣さん(千葉県立船橋高校2年)
「学校では教科の勉強をするけれどテストに関わらない“生きていくための勉強”はしない」


高校生たちの間には、環境問題が自分たちの未来に大きく関わってくるという危機感があります。大きな問題なのになぜ同じ学校の生徒たちが関心を持たないのか、またどうしたらそうした生徒にも考えてもらえるようになるのか。



話し合いの中で田中さんが提案したのが「ランチセッション」でした。
毎週金曜日の昼休みにピクニックを開き、そこでいろいろな話をしていくというものです。 誰が来てもいいような雰囲気をつくることで学年問わずに話ができ、自然と気候変動についての話もできるようになるのではないかと考えました。
田中さんは、別の高校に通う西川さんたちと一緒に、いま、高校生たちでFridays For Future Chibaというグループを作って、同時に活動していくことを考えているといいます。

さらに3月中旬、学校が休校になった期間に、田中さんは同級生7人とごみ拾いを行いました。講習会に誘ってくれた同級生の緒方諒さんの提案で高校の近くの川沿いを4時間かけて散歩をしながらごみ拾いを行う「おさんぽごみひろいマーチ」を行ったのです。
拾ったごみはごみ袋60袋にもなったそうです。





緒方諒さん(千葉県立佐倉高校1年)
「散歩をするということでごみ拾いを楽しく続けることができるのだと思いました。
自分たちが高校でできること、Fridays For Future Chibaとしてできることをこれからも考えていきたいです」


デモから始まった若者たちの動き。
自分たちにできることを考えている若者たちがつながり、大きなうねりになるかもしれません。

(地球のミライは私たちの手に 取材班 ディレクター酒井利枝子)



↓合わせて読みたい これまでの若者たちの動き↓
TOPIC⑧ グレタさんの言葉に触れて、立ち上がった若者たち2
TOPIC② グレタさんの言葉に触れ、立ち上がった若者


取材後、新型コロナウイルスの感染が世界中に広がる中で、学生たちの行動も、 大きな影響を受けています。 ただ、気候変動に対して、何か行動したいという学生たちの熱量が社会をどう変えていくのか、今後も取材を続けていきます。