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2020年1月20日

2020年日本のエネルギーはどこへ? 石炭火力と脱炭素への道

不名誉な「化石賞」2度受賞 日本の状況は

日本が2度"化石賞”を受賞した時の様子


2020年、地球温暖化による異常気象の頻発などを食い止めるために世界各国が二酸化炭素の排出量を削減する「パリ協定」が本格スタートしました。脱炭素への道は、“待ったなし”です。日本のエネルギー政策は、果たして世界の期待にこたえられるでしょうか? しかし、去年12月にスペインのマドリードで開かれた温暖化対策を話し合うCOP25では、日本は残念ながら1300の環境NGOでつくるグループが温暖化対策に消極的だと判断した国や地域を選ぶ不名誉な“化石賞”を2つも受賞してしまいました。 なぜ日本に、この皮肉な賞が贈られたのでしょうか?
1つめは梶山経済産業大臣が「石炭火力発電など化石燃料の発電所は選択肢として残していきたい」と述べたことがあります。国連のグテーレス事務総長がCOPの開幕にあたって温暖化対策の強化と石炭火力発電の利用をやめるよう各国に求めたその翌日に、化石燃料を継続していくことに言及したのが理由です。
2つめは、閣僚級会合で小泉環境大臣が行った演説で石炭火力発電からの脱却や温室効果ガスの削減目標を引き上げる意思を示さなかったためです。



今の日本の電源構成を見てみると、国内の石炭火力発電所による発電が約3割を占めていて、さらに石炭火力発電所の新設計画や海外への輸出の計画もあります。そうしたことから世界の環境NGOはこうした計画を見直すよう、繰り返し求めてきました。そんな中で日本の閣僚の発言に、「化石賞」が贈られたわけです。
石炭ではなぜダメか?


どうしてこれほど石炭火力に対して厳しい目が向けられるのでしょうか?
実は、石炭は石油や天然ガスなど化石燃料の中でも最も炭素集約度(エネルギー消費量単位あたりの二酸化炭素排出量)が高く、効率の悪いエネルギーだからです。国際社会は、パリ協定で気温の上昇を産業革命前に比べて1.5度未満に抑えようと努力しています。その目標達成のために、世界が共通の指標としているのが「カーボン・バジェット(炭素予算)」という考え方で、今後出せる二酸化炭素の量の上限が科学的に明らかになっています。すでにその上限まで、もう残りわずかしかありません。もし効率の最も悪い石炭をガンガン炊けば、化石燃料全体の炭素予算をあっという間に使い果たしてしまいます。しかも、石炭は大気汚染への影響も大きいのです。もちろん一気に再生可能エネルギーなど二酸化炭素を出さないエネルギーに転換できればベストですが過渡期がありますし、文明を維持するためには一定量のエネルギーが必要です。ですから、まずは石炭から卒業することで、限られた炭素予算を大事に使って過渡期を乗り切ろうと、世界は動いているのです。
日本は東日本大震災が起きたこともあり、原子力発電所も一部しか稼働していないし、再生可能エネルギーが高いので火力発電に頼るのは仕方ないのでは?という声もあるかもしれません。しかし、震災からまもなく9年です。この間、世界の再生可能エネルギーの発電コストは劇的に安くなり、新設案件ではなんと石炭火力や原子力発電よりも安くなっているのです。火力や原子力に頼らなくてもエネルギー転換を進めることが可能な時代になっています。



世界では“脱炭素”への流れは加速しています。
日本と同じようにこれまで石炭に頼っていたドイツも、2019年に発電量に占める再生可能エネルギーの比率が初めて化石燃料と逆転しました。太陽光や風力などの再生可能エネルギーは2018年から5.4ポイント上昇して46%となり、石炭など化石燃料の40%を上回ったのです。
イギリスでは、2050年の脱炭素(二酸化炭素排出量の実質ゼロ)を法律で定めていますが、去年の第3四半期(7~9月)、最初の発電所が稼働し始めた1882年以来初めて、再生可能エネルギーによる発電が化石燃料による発電を上回りました。大規模な洋上風力発電などによる効果が大きかったとのことです。
また、石炭火力発電は経済の観点からみてもリスクがあると言われています。専門家たちの試算によると、日本では再生可能エネルギーのコスト低下によって、石炭火力発電関連施設には最大710億ドル(約7兆円)相当の「座礁資産(市場・社会環境激変により価格が大幅に下落する資産)化リスク」があるというのです。いったん石炭火力発電所を作ると数十年運転しないと元が取れないのですが、このままでは7兆円以上をドブに捨てることになると警告されています。

「環境先進国」の日本になるために

ことし元日のNHKスペシャルでもお伝えしましたが、温暖化がさらなる温暖化を招く悪循環に陥らないために多くの科学者が人類の防衛ラインを+1.5度に設定しています。このためには2030年までに二酸化炭素の排出量をほぼ半減し、2050年には実質ゼロにしなければなりません。しかし、世界の排出量は2018年も増えてしまいました。2020年には、排出削減に転じなければ間に合いません。箱根駅伝でいえば、今すぐ山登りを終えて、山下りをしなければならないのです。
こうした状況で、石炭火力に頼り続ける日本の政策は、ガラパゴス化しているといえると思います。一刻も早く見直さなければ、とても「環境先進国」とは名乗れません。2020年は、脱石炭への移行を実現するための具体的なロードマップを立てることが必要です。そうすることで「化石賞」ではなく、地球を救う道筋を開いたことに胸を張れる素敵な賞をめざしていきたいと思います。

(地球のミライは私たちの手に 取材班 プロデューサー 堅達京子)


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