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みんなでプラス > “性暴力”を考える Vol. 1~40 > 【性暴力を考える vol.36】親に被害を知られて…
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2019年11月27日
【性暴力を考える vol.36】親に被害を知られて…
性暴力の被害に遭った子どもたちの中には、親の受けとめ方によって さらに傷ついてしまうというケースもあります。母親から、「被害について誰にも話さないほうがいい」と言われたという大学生のエリナさん(仮名)を取材しました。記事とインタビュー動画で伝えます。

※この記事では、性暴力の実態を伝えるため、被害の具体的な内容に触れています。フラッシュバックなどの症状のある方はご留意ください。

(クロ現+ディレクター 飛田陽子)

言い出しづらくなった 私の被害


エリナさんが性暴力の被害に遭ったのは、高校1年生の夏。午後3時、学校から習いごとへ向かう途中でした。普段は親に車で送り迎えしてもらっていましたが、この日は予定が合わず、ひとり電車で向かいました。駅近くの人通りの少ない道を歩いていたら、突然 複数の男たちに取り囲まれ、力づくで近くの公衆トイレに連れ込まれて、無理やりに性交を強いられたといいます。

「まさか自分がそんな被害に遭うとは思っていなくて、あっという間にたくさんの男たちに囲まれ、襲われて、とにかく”怖い“、”痛い“と感じたことだけ覚えています。そこから先のことはショックが強すぎて、記憶が飛んでしまっています。でも、今も、あの時 たたきつけられたトイレの床の冷たさと硬さの感覚は強く残っています。」

被害の直後、公衆トイレに置き去りにされたエリナさんは、呆然(ぼうぜん)としながらも、着ていた制服の汚れを水道で洗い流し、習いごとへ向かいました。教室が始まるまで屋外で待っている間に突然 気絶してしまいました。教室のスタッフが慌ててエリナさんの親に連絡を入れますが、貧血か熱中症と勘違いした両親はエリナさんを車で迎えに行き、帰りに病院にも行きませんでした。そして、エリナさんは被害のことを言い出せなくなってしまったといいます。

「あの時もし病院に行って、知識のある人に気づいてもらえていたら、何か違ったかもしれないと思います。でも、両親はまさか私が被害に遭っているなんて思いもよらなかったでしょうから、それは両親の非でもないし、周りの人の非でもない。そうなると、誰も責めることができない…。もちろん悪いのは犯人ですが、『被害に遭った私が悪い、恥ずかしい、汚い』と自分を責めるしかなくなって。よけいに誰にも言えなくなりました」
被害を知った母 まず懸念したのは “世間体”だった


その後、エリナさんは眠れなくなって体調が悪化。突如フラッシュバックに襲われることが増える中、大好きだった高校にも通えなくなり、出席日数が足らずに退学を余儀なくされました。そんなとき、エリナさんが つらい気持ちを唯一吐き出せることができた相手は、中学の時の同級生でした。LINEを通じて、被害のことも打ち明けていました。しかし、被害から半年以上たったある日、母親に、そのLINEやりとりが見つかってしまいます。その時の母親の反応は、エリナさんの思いもよらないものでした。



「こんなこと、どうして人に話したの?恥ずかしいことだし、悪いことなのに、ほかの人たちに知られたらどうするの?」

被害に遭った自分のことよりも、まず世間体を心配する母親の姿に、エリナさんは深く傷つき、どうして自分が責められなければいけないのかと、混乱しました。頭では、「母もショックを受けて、事実を受けとめきれていないのかもしれない」と思いながらも、さらに自分が傷つけられるのが怖くなり、反論せずに黙っていました。すると、さらに追い打ちをかけられます。「近所の人にバレたら恥ずかしい。あなたは結婚もできなくなるし、就職も不利になる。どうするの?」

「そうやって親に言われたら、そうなのかなと思ってしまって。私はそういう恥ずかしい事情を抱えているんだと。当時16歳だったので、母親の言葉はそのまま『真実』として、胸に突き刺さりました。そして『それなら、私はこの苦しみをずっと一人で背負って抱え込んで、自分だけでどうにかしていかなきゃいけないのか』と思いました。」
被害を打ち明けたとき 母に言ってほしかったことは…
被害を打ち明けたとき、エリナさんは母親から どんな言葉をかけてもらいたかったのか。また、家族や周りの人にどのように受けとめてもらえたら、支えになるのか、話してくれました。



母娘だけで向き合う限界 支えてくれたのは専門機関
被害を知った母親はその後、エリナさんの気持ちや意思を確認することなく、警察に被害届を出そうとしたこともありました。また、「ウソをついてるんじゃないの?」と疑ったり、「どこまで何をされたの?相手はどういう人だったの?」と詰問したりする母親に対し、エリナさんは失望を深めていきました。「詳しく話したところで、母は味方になってくれない…。」母娘の間に、埋めがたい溝ができていきました。

エリナさんの精神状態に変化をもたらすきっかけになったのは、性暴力被害者の救援を行っている 地域のワンストップ支援センターに相談したことでした。エリナさんの話を聞いた同センターの相談員は、まずは被害後のつらい症状を治療する必要があると判断し、精神科を紹介しました。そこでエリナさんはPTSDと診断され、3か月ほど入院することに。しばらく家族と距離を置く中で、次第に心の落ち着きを取り戻していったといいます。

「PTSDの診断が出たときに、実はすごくほっとしたんです。自分の混乱に名前がついたというか…。『ああ、これを治すことができれば生きていける』と思いました。母との関係についても、精神科の先生に『親であっても、あなた自身ではないのだから、分からないことはある。それに、一番の理解者が母親でない場合もあるよ』と言われて、少しずつ冷静に、母も動揺していたのだろうな、と考えるようになりました。あのまま母と私だけの間にとどめていたら 解決できなかった。お互い、もっとボロボロになってしまっていただろうと思います。」



被害に遭ったあなたと その家族へ、伝えたいこと
最後に、エリナさんに 自分と同じように被害に遭った人に伝えたいことは何ですか?と問いかけると、“心身の回復に向かうためには、2つの存在が必要になることを知っておいてほしい”という答えが返ってきました。

「私には、自分の心に寄り添って話を聞いてくれる人と、PTSDや被害のトラウマを回復させていくために専門的に診てくれる人、両方の存在が必要でした。被害者と家族だけで孤立する状況は一番つらいし、長続きすることではありません。もし今 悩んでいる人がいるなら、少し勇気を出して、ワンストップ支援センターなどの第三者に相談してほしい。今すぐ相談に行けなくても、そういうところがあることを知っているだけで、違うと思います。」

“センター試験の2日前まで入院していた”というエリナさん。いまは大学に進学し、法学部で刑法について学んでいます。自分が性暴力に遭った経験から、被害者に優しい社会をつくるために行動できる人間になりたいと考えています。そして、「いつか母親と、被害に遭った当時に自分が感じていたことを改めて話せるようになりたい」と話していました。つらい被害に遭ったことは、エリナさんの人生の中で“なかったこと”にはなりません。それでも、エリナさんのような人たちが、これまで一人で抱え込んできた苦しみを言葉にしていくことで、きっと社会は変わっていく――。問われているのは、その言葉を 家族や私たちみんなが受けとめる姿勢にかかっていると感じました。

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