クロ現+
2019年11月18日

シリーズ 男性の性被害③【vol.30】

被害に遭った男性のみなさん そばにいるみなさんへ

「男性の性被害」第3回は、男性から被害の相談を受け付けている専門家から、被害を受けた男性のみなさん、そして、周りにいる みなさんに向けて、メッセージをいただきました。

(報道局社会番組部 ディレクター 神津善之)





被害を受けた男性のみなさんへ
「被害に遭うのは“おかしいこと”ではない」


被害の相談を寄せてくださる男性の中には、「男性なのに性被害に遭うなんて…」、「男なのに抵抗できなかった…」、「自分はおかしいのではないか…」と考えてしまう人が多いんです。でも、現実には、性暴力は性別・セクシュアリティにかかわらず起きています。実際に、私のところには、10代から60代まで、さまざまな年齢の男性が相談に訪れます。みなさん、被害に遭うまでは、ごく当たり前の日常を過ごしていた人たち。容姿も、背が高い人もいれば低い人も、マッチョで強そうに見える人もいれば痩せている人もいます。特別な男性だけが被害を受けるわけではないのです。

また、性被害に遭ったとき、自分の「体の反応」に混乱し、「強い恥」を感じてしまう男性が少なくありません。「体の反応」とは、性的な興奮や快感が生じること。自分の意思に反した行為をされたにもかかわらず、体が反応してしまったことを恥じている男性たちには、必ず「それは自然なこと」と話しています。

熱いものを触ったときにやけどをするのと同じように、性器を触られて勃起したり射精したりするのは、あなたの意思とはまったく関係がない。あくまでも自然な体の反応。だから、あなたがおかしいわけではないんです。もし、あなたの体が反応したとしても、あなたが望まない性的な行為であったならば、それは性暴力です。

そして、苦しみがなかなか癒えないと感じている男性たちに強く伝えたいのは、「あきらめなければ回復できる」ということ。相談に訪れた人たちの中には、カウンセリングを受けて不安や恐怖が軽減されていった人、フラッシュバックが徐々に減り、最終的には症状がなくなった人もいます。

性暴力は人の尊厳を傷つけます。被害に遭った人が負う傷は非常に深くて大きいです。でも、そこから回復することができることも、ぜひ知ってほしいと思います。


男性から被害を打ち明けられた みなさんへ
“被害は誰にでも起こりえます”




あなたの身近な男性から被害について打ち明けられたら、「否定しない。男性でも被害に遭うということを理解する」ことが何よりも重要です。被害を受けた男性が苦しみ続ける大きな理由の一つは、被害そのものに加えて、周りから「被害を理解してもらえない」こと。打ち明けたのに、「男性が性被害に遭うわけがない」と信じてもらえなかったり、「(性的な)経験ができてよかったじゃないか」とかわされてしまったり・・・。周りから、被害として認識してもらえないケースが少なくありません。

被害は、誰にでも起こりえます。それは男性であっても。私のもとに寄せられる男性被害の相談は、全体のほんの一部にすぎません。誰にも相談できずに苦しんでいる人が、あなたの近くにいる可能性があるんです。

もう一つ、男性から性被害を打ち明けられたときに大切なことは、「今、何に悩んでいるか、何が心配か、聞いて寄り添う」こと。相手がいま抱えている苦しみを共有することが、心の大きな支えになります。そこから、専門家や支援機関に相談するなど、回復に向けての大きな一歩を踏み出せる可能性も生まれます。一方で、被害の内容を聞くときに気をつけてほしいこともあります。それは、聞きすぎないこと。具体的にそのときの状況などを詳しく質問しすぎることで、被害者は当時の出来事を再体験し、フラッシュバックを引き起こすなど、より つらくなることがあるからです。「いつ、誰から、何をされたのか」程度に話を留めることを勧めています。

でも、実際に、自分の家族や大切な人から被害を打ち明けられたら、冷静に対応することはなかなか難しいですよね?被害を打ち明けた子どもに対して否定的な言葉をかけてしまったという親も多いです。もし、一度、相手を否定してしまった場合でも、“伝え直す”ことで、被害者が救われることもあります。

“この間は、取り乱してしまってごめんね。話してくれてありがとう。あなたの話を信じているよ”など、改めて伝えることで、被害者の気持ちはかなり楽になります。周りが受けとめて 寄り添うことは、被害を受けた本人の傷を癒やしていく上で、とても大切なことです。だから、周りのみなさんも、あきらめずに寄り添い続けることが大事です。

<男性の性被害を取材して>
セクハラ、レイプドラッグ、子どもの頃の性的虐待・・・。男性、女性などの性別に関係なく、性暴力は日々私たちの社会の中で起きているという現実を、今回の取材を通して痛感しました。いつ、誰に、どのような状況で性暴力が起きたとしても、最もショックを受け、最も苦しんでいるのは、被害を受けた本人です。女性だけでなく男性であっても、被害の苦しみはその後も続きます。そばにいる誰もが、被害者の性別に関係なく 性暴力の実態を理解し、寄り添うことが、その人たちの苦しみや悲しみを少しでもやわらげるために何よりも大切ではないかと感じました。

男性の性被害について どう思いますか? 男性から性被害を打ち明けられたことはありますか? もし打ち明けられたら どうしますか? あなたの思いや考えを、下に「コメントする」か、ご意見募集ページから お寄せください。