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みんなでプラス > “性暴力”を考える Vol. 1~40 > 【性暴力を考えるvol.26】刑法改正への思い
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2019年11月9日
【性暴力を考えるvol.26】刑法改正への思い
10代のときに父親から性暴力の被害を受けた経験をもち、現在、性暴力の被害者などで作る団体「Spring」の代表をつとめる山本潤さん(45)。現在の刑法は性暴力被害の実態に即していないとして、見直しを求めるキャンペーンを全国で展開しています。10月半ば、名古屋市で開かれたイベントを取材して、山本さんの刑法改正にかける思いに迫りました。



人生で一番のショック “性被害を知らない人たちが法律を作っている”

10月14日、雨にも関わらず、会場には被害者や支援者たちを中心に60人以上が集まりました。山本さんがまず語ったのは、今年3月、愛知県で、実の娘に性的暴行をした罪に問われた父親に出された「無罪判決」。名古屋地方裁判所岡崎支部は1審で、「娘の同意がなかった」ことは認めた一方、「相手が抵抗できない状態につけこんだ」という有罪の要件を満たしていないとして、無罪を言い渡しました。(先月末から2審の裁判が始まっています。)この「無罪判決」をきっかけに、山本さんは被害者などの仲間と一緒に、刑法改正を求める声を集めて国などに積極的に届けてきました。

そんな山本さんですが、実は数年前までは刑法に問題を感じながらも、“自分にはどうにもできない遠い世界の話”と思っていたと言います。意識が変わったのは、2015年。法務省で行われていた刑法検討会で委員たちが話し合っている内容を聞いたことでした。「親子間でも真摯な同意に基づく性的な関係が全く起こらないとはいえないのではないか」といった議論がされていたのです。

それは“人生でいちばんのショックだった”と振り返ります。「性暴力被害の実態を全く知らない人たちが、被害者に大きな影響を与える法律を作っている・・・。」大きな危機感を抱いた山本さんは、被害当事者の会を立ち上げ、刑法改正に関わる議論の場に参加し、議員たちを積極的に訪問しました。そして、「被害者が加害者に抵抗できないのは、ショックなどで体が凍りついてしまうから」など、被害者の実態を具体的に伝え、「抵抗していないことを同意とみなされてしまうのはおかしい」と繰り返し訴えてきました。



刑法改正後も残る課題

その後、2017年に刑法は改正されました。それまでの強姦罪の名称は「強制性交等罪」に変更され、被害者を女性に限っていた規定も見直されました。さらに、18歳未満の人を監督・保護する立場の者がその影響力に乗じてわいせつな行為をした場合は、暴行や脅迫がなくても処罰できる「監護者わいせつ罪」が新設されました。明治40年の制定以来、110年で初めての大幅改正でした。

しかし山本さんは、まだ課題は山積していると指摘します。そのひとつが、今回、見直されなかった「暴行脅迫要件」です。性行為を犯罪として処罰するには、「相手が同意していないこと」だけでなく、加害者が被害者に暴行や脅迫を加えるなどして、「抵抗できない状態につけこんだ」ことが立証されなくてはなりません。いかに「暴行脅迫要件」が加害者を野放しにしてしまうか、山本さんは、実際にあった被害のケースを例に話しました。



被害者は、知り合いの男から強いお酒を何杯も飲まされ、気づいたときには無理やり性交させられ、携帯電話で動画撮影をされていました。「やめてください、撮らないでください」と泣き叫んで言いましたが、男から頭に毛布をかぶせられ、息ができなくなりました。しかし、検察側はその動画を見て、「女性が動画を撮らないでほしいと言っているのは分かるが、性行為を嫌がっているかどうかは分からない」として、男は不起訴になりました。一方、被害者は、被害のあと、学校に行けなくなった上に、いつまた加害者と遭遇するか分からない恐怖におびえる日々を送り続いているそうです。

その後、山本さんは続けました。「私たちの提案は、性犯罪の構成要件とされている『暴行・脅迫を用いて…』という箇所を、『同意なく、もしくは明示的な意思に反して・・・』と変えることです。同意なく性交してはいけないということを、社会のルールにしたいんです。」

「暴行脅迫要件」を撤廃すると、えん罪を生みやすくなるとの指摘もありますが、海外では犯行に至る過程や、加害者が優位な立場を利用したかなどから、同意か不同意かを見極めているそうです。



山本さんが指摘する、もうひとつの課題が、刑法改正には盛り込めなかった「時効」の廃止や延長です。強制性交等罪は10年、強制わいせつ罪は7年を過ぎたら、加害者に罪を問うことができません。山本さん自身、13歳から父親に被害を受けていましたが、他人に話せるようになったのは20年以上経ってからでした。その経験より、7年、10年という期間は短かすぎると感じています。

一方、イギリスやアメリカの一部の州では時効そのものがありません。ドイツでは被害者が満30歳になるまで時効は停止され、その後20年間は訴えることができるようになっています。「性暴力の罪をどう社会がとらえているか、“子どもへの加害は時が経ったからといって許されるものではない”という考えが社会にあるかないか。それが各国の刑法に現れているのだと思います。」

当事者の声よ 届け!

いま、山本さんたちが期待をかけているのが、「刑法改正の見直し」です。2017年の改正では、3年後、すなわち2020年をめどに、見直しを検討することが盛り込まれました。

「でも、誰かが声を上げなければ、検討会は開かれず、何も変わらないかもしれない。“見直しが必要”という世論を盛り上げていかなくてはいけません。」山本さんは講演の終わりに、会場に集まった人たちに、性暴力について思うことや刑法改正について望むことを書いてほしいと呼びかけました。「One Voice」と印刷されたシートを手渡された参加者たちは、それぞれの思いや要望をその場で書き出していきました。

「まずは知ること 学ぶこと」
「被害者をまん中に 寄り添える法改正を!」
「誰も ひとりぼっちにさせない社会」


最後は、それぞれの思いを書いたシートを胸に、みんなで記念撮影が行われました。



「性暴力の実態や被害を知る人の思いを、見える形にして届けることで、刑法を改正したい。」
山本さんが笑顔まじりに力強く語ってくれた言葉がとても印象的でした。

山本さんたちSpringが主催する、刑法改正をめざして「One Voice」を求めるイベントは、あす10日に東京で、12月に岡山で開催される予定です。

あなたは、刑法改正について、山本さんたちの「One Voiceキャンペーン」について、どう思いますか?下に「コメントする」か、ご意見募集ページから、お寄せください。
#性暴力#MeToo#Withyou#性被害者のその後
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