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2022年6月21日(火)
いま音楽にできること 桑田佳祐66歳 “同級生”と平和を歌う

いま音楽にできること 桑田佳祐66歳 “同級生”と平和を歌う

桑田佳祐さんと同級生の大物ミュージシャンたちによるチャリティソング「時代遅れのRock’n’Roll Band」が大きな話題を呼んでいます。桑田さんと世良公則さんの親交をきっかけに始まったプロジェクト。ウクライナ情勢や長引くコロナ禍の中で、音楽に何ができるのか。桑田さんと同級生たちへの独占インタビューで迫りました。さらにボブ・ディランの名曲「風に吹かれて」の弾き語りも。桑田さんが自ら訳した歌詞にも注目。

出演者

  • 桑田 佳祐さん (ミュージシャン)
  • 桑子 真帆 (キャスター)

※放送から1週間はNHKプラスで「見逃し配信」がご覧になれます。

桑田佳祐 独占インタビュー 歌に込めた思い

桑田佳祐さん、66歳。

同い年のミュージシャンたちと発表したチャリティーソングが、今話題を呼んでいます。今回、渋谷にある老舗のロック喫茶で桑田さんへの独占インタビューが実現しました。

桑子 真帆キャスター:
今回の「時代遅れのRock'n'Roll Band」。格好いいですし、素敵だし、楽しそうだし、本当に幸せな気持ちになりました。曲名が「時代遅れのRock'n'Roll Band」ということで、『時代遅れ』とあえて付けたのはどうしてなのでしょうか。

桑田佳祐さん:
『時代遅れ』は、我々の年齢のこともありますし、「どうせ最先端じゃございません」ということと、それこそ「No More No War」じゃないけど、今時ね、「そういう表現というのは古いよ、おじさん」と言われるかなと思って。まあ、言われてもいいかなと。

桑子:
今回の曲を聴いて、ここまでストレートに投げかけてくるか、というのを感じました。"平和"という言葉だったり"No More No War"もそうですが、歌詞を書く上での迷いは無かったですか。

桑田さん:
あんまり無かったですね。コロナのこととか、ウクライナのこととか、安全保障に対する危機感みたいなものが高まっているというのが、今の時代の空気感だと思うんです。そんな中で、今、音楽界ではそこに対しての動きがあまり目立っていなかった。あるんでしょうけど、あまり聞こえて来なかった。

桑子:
そういう時、皆さんが静かになりがちかもしれないですね。

桑田さん:
私もそうなんですよ。だけどやっぱり音楽人として、音楽で意思表明しないといけないタイミングかなと。これはもう、音楽人としての本能的なものだと思うのですが。

桑子:
本能ですか。

桑田さん:
だと思うんですけどね。直観的な。

桑田佳祐が呼びかけ 66歳"同級生"が集結

不安に満ちた時代。

一人では何もできないと感じた桑田さんは、危機感をストレートに表現した歌詞を同い年のミュージシャンたちと共に歌いました。

全員66歳。今なお第一線で活躍し続ける、レジェンドたちです。

世良公則
22歳 世良公則&ツイストでデビュー
歌謡曲全盛の時代にロックで衝撃を与えました
Char
21歳 デビュー
日本のロックギターの第一人者です
野口五郎
15歳 デビュー
アイドルとして一世を風靡(ふうび)。実は、すご腕ギタリストの一面も
佐野元春
24歳 デビュー
常に時代をリードする、革新的な音楽を作り続けてきました
桑田佳祐
22歳 サザンオールスターズでデビュー

半世紀近く音楽界の第一線を走り続けてきた、いわば同級生の5人。実は、共演は今回が初めてです。

<5月24日 ミュージックビデオ撮影の現場>

桑田佳祐さん
「Charさん、何日?誕生日」
Charさん
「来月。だから67になっちゃうんだよ」
世良公則さん
「(みんな66歳は)ここしかない」
Charさん
「大丈夫。ダブるから(笑)」
世良公則さん
「年齢にダブりがある。だったらまだ35歳くらいだよ」
Charさん
「17」
世良公則さん
「17ちゃい(笑)」

60代の同級生による異例のコラボレーション。きっかけは、桑田さんと世良さんの久しぶりの再会でした。

世良公則さん
「桑っちゃんが何小節か、僕のギターを持って、『こんな曲、なんとなく頭の中でモヤモヤしてるんだけど』っていう発想が彼の中にもうあって。
今ね、ずっとコロナ禍で日本中が不自由な部分もあったし、遠くの国ではやはり争いが絶えないし、気持ちがふさぐような、圧力みたいなものをみんな感じてる時なので」

「共に歌おう」。世良さんの共感を得た桑田さんは、交流が途絶えていた同級生たちにも直筆の手紙を書きました。

野口五郎さん
「レコーディングしてる時に、スタッフの方から(桑田さんから)手紙を頂いてるって聞きまして、とにかくすぐ会いたいと思ったんです」
Charさん
「(手紙をもらったあと)桑田くんが、わざわざうちまで来てくれて、『こういう企画で、こういう詞で、こういう曲なんだ』と聞いたときは、もう『やった』と思って、『よく桑田くん立ち上がってくれたな』と思って。
やっぱり同じこと考えてるなっていうか、今の世の中を音楽で何か変えたいというよりも伝えたい、それはひとりじゃできないって桑田くんも思ったと思うし、俺もそう思ってたし、他の3人もそう思ってたから『わっ』って(集まった)」

同時代を走り続けてきた、ソングライターである桑田さんと佐野元春さんは、今回初めて声を合わせて歌います。

<レコーディングの現場>

桑田佳祐さん
「佐野くんの言葉とかね、やってることとか、俺、結構覚えてるんだよね。マネしてみようとかさ、影響受けているところあるんですよ」
佐野元春さん
「でも本当に僕らの世代、桑田くんと僕の世代は、今回これで桑田くんが集めてくれて、ようやく点と点が線になったね」

不安に満ちた時代に、何かアクションを起こしたい。

桑田さんの思いに共感した同級生たちは、すぐに意気投合。手紙からわずか1か月という異例の早さで、曲を発表しました。

佐野元春さん
「同じ時代に生きて、同じ景色を見ているミュージシャン同士っていうのは、言葉で交わさなくても、音楽だけで通じ合えるという」
野口五郎さん
「僕たちってギターと、歌ってきた同級生ってだけで、これだけ一瞬のうちにできてしまう」

ミュージックビデオの撮影には、ベースのハマ・オカモトさん、ドラマーとして大友康平さん、そして原由子さんも参加しました。

ミュージックビデオで共演 ハマ・オカモトさん
「(自分も)音楽やっていてよかったなっていうところに、感情を持っていかれたので」
ミュージックビデオで共演 大友康平さん
「どっこい、おじさんたちもなめんじゃねえぞ、みたいな気迫を感じましたね」

チャリティーソングとして、収益は子どもを支援する国際団体に寄付されます。

佐野元春さん
「今回のこの曲は、桑田佳祐ソングライティングだよね。メインストリームの表現だと思う。誰からも愛される良い曲だと僕は思いますね」

桑田さん:
撮影の時、初めて会ったんですよ、5人。

桑子 真帆キャスター:
どういう空気感だったんでしょうか。

桑田さん:
みんな、さすがエンタメの王者。やっぱり、そこはうまく回すんですよ。

桑子:
あと、セッションがめちゃくちゃかっこよかったです。「お前、どう来るんだ」って見合って、ブルースが。

桑田さん:
みんな次、弾きたがるんだよね、ブルースを(笑)。

桑子:
楽しくてしょうがないという感じが。

桑田さん:
最高です!

桑子:
あと、お手紙を直筆で書かれたと。

桑田さん:
スタッフも含めて、コロナ禍で大変ご苦労されてるということもしたためましたし、とにかくこういうご時世の中で早く形にしたい。まあ、こっちの勝手な思いがあったので。

桑子:
そこから期間が短かったですよね。

桑田さん:
そうですね。同じようなことを、皆さん考えていたと思うんです。Charさんも言ってらっしゃいましたけど、「ひとりじゃできないけど、みんながいればできるかな」という。

音楽に何ができるか 桑田佳祐の葛藤

桑田さんはこれまで、人々の暮らしが揺るがされたとき、歌を届けてきました。東日本大震災の際には、地震から半年後に被災地で復興支援ライブを開催。新型コロナ感染拡大のさなかでも、大規模な無観客配信ライブを行いました。

今、果たして歌うべきなのか。桑田さんは常に葛藤を抱えていたといいます。それでもエンターテインメントの可能性を信じて歌い続けてきました。

桑子 真帆キャスター:
エンターテインメント。こういうときだからこそ持つ力は、どういうものだと思いますか。

桑田さん:
やっぱりエンターテインメントというのは、自分たちの今の考え方を外に向かって表現することだし、音楽というのは、やっぱり世の中のイメージなりムードなりを共鳴させるというか、反響させて表現することだと思うので。

ニュースを最近見ていますと、「断絶」とか「排除」とか、そういう言葉をよく耳にして、それに反して同時に聞こえてきたのは「協調」とか「協力」とか「リスペクト」とか。そういう言葉も聞こえてくるようになった気がして。

そういうことを誰に、我々は誰に教わってきたのかなっていうね。それはやっぱりライブをやりながらとか、テレビに出ながらとか、ツアーをやりながらお客様とか、ファンの皆様とか、あとスタッフですよね。そういう「協調」、「協力」ということばがあったおかげで、我々の業界、我々の世界はここまでやってこれた。

ファンの方たちとスタッフの皆さんと一緒に音楽を楽しめる状況というのは、口はばったくなりますけど、平和な世の中というのがないと、だめなんだろうなあといいますか。だから今回、「一緒にやる?」という仲間がいてくれたんでね。

桑子:
それはきっと皆さんが桑田さんから発せられた思いに賛同して、それがエネルギーになったんでしょうね、きっと。

桑田さん:
そうですね。

桑田佳祐が歌う 現代版「風に吹かれて」

桑田佳祐さんが最も影響を受けたという、メッセージソングがあります。

ボブ・ディランの「風に吹かれて(Blowin' in the Wind)」。

曲が生まれたのは、1962年。アメリカでは、人種差別撤廃を訴える公民権運動が高まっていました。「風に吹かれて」は、自由を求める人々の心に刺さり、さらにベトナム戦争が激化すると、反戦を象徴する曲になっていったのです。


Yes, 'n' how many times must the cannonballs fly
Before they're forever banned?
The answer, my friend, is blowin' in the wind
The answer is blowin' in the wind
どれだけ砲弾が飛び交えば
永遠に武器が禁じられるのだろう
友よ その答えは風に吹かれている
答えは風に吹かれている

Bob Dylan「風に吹かれて(Blowin' in the Wind)」より一部抜粋

桑田さん:
「答えは風に吹かれてる」って、戦争のことを歌っているみたいだけど、「結論ははっきり言わないんだ」と思ったのを覚えているんですよね。「風に吹かれてる」ってね。

でもそれは、「あなたの胸の中に答えはあるでしょう、分かってるだろう?」ってことなんだろうなって、中学、高校ぐらいのときに思ったんですよ。そういうことなんでしょうディランさん、と思っていたんですが、最近はそうではなくて、ディランさんが言いたいのは「もしその答えが導き出せるんだったら、やってごらん?」って言ってるんじゃないかなって。「答えなんかないよ」って。

桑子 真帆キャスター:
そういうふうに今は受け止めていらっしゃるんですね。

桑田さん:
はい。

桑子:
今回、桑田さんがご自身で日本語バージョンの歌詞を作ってくださったということで。

桑田さん:
ちょっとやってみましょうか。

桑子:
お願いしてもよろしいですか。

桑田さん:
それで、桑子さんね、最後ハモってほしいんですけど。

桑子:
ハモるんですか?いやいや、いやいや。

桑田さん:
気軽に、リラックスして。

桑子:
気軽に…。いやいや、ありがとうございます。

桑田さん:
私が勝手に和訳した曲、「風に吹かれて」。


どれだけ道を歩いたら
人として生きられる!?
どれだけ遠くへ逃げたなら
静かに眠れるだろう
どれだけミサイル撃ったなら
過ちに気づくだろう!?
その答えは風の中
風に吹かれてる

差別や弾圧に耐えながら
咽び泣く人がいる
どれだけ命を無駄にすりゃ
自由を手にするだろう!?
そんなに見て見ぬふりをして
我々は幸せかい!?
その答えは風の中
風に吹かれてる

この世に平和が来る日まで
この地球は耐え切れるか!?
どれだけ犠牲を払ったら
あの人は微笑むだろう!?
あとどれだけ人が死んだなら
戦争を止めるのか?
その答えは風の中
風に吹かれてる
その答えは風の中
風に吹かれてる

Bob Dylan「風に吹かれて(Blowin' in the Wind)」訳詞 桑田佳祐

桑子:
ありがとうございます。

桑田さん:
最高です。

桑子:
いや、しかし、この歌詞は新しい息吹というか、命が吹き込まれるような感じがしますね。

桑田さん:
私も、もう50年以上聴いてきているんですが、この歌を和訳して今歌うとは思わなかったですね。私がこの曲を初めて聴いた時も、遠い世界の歌だと思っていたし、戦争とか平和とかは、ずいぶん遠いところにある単なる物語かなと思っていたんですけど。

桑田佳祐と"同級生" 次の世代に託した夢

桑子 真帆キャスター:
今回の「時代遅れのRock'n'Roll Band」の歌詞も、ビリビリと刺さるものがあって。「子供の命を全力で大人が守ること それが自由という名の誇りさ」というところとか、今を歌っている歌ながら、次の時代や次の世代のことにも目を向けていらっしゃるんだなと思いまして。

桑田さん:
我々66歳が集まってできたこともよかったんですけど、実際、ミュージック・ビデオを作ったり、仕切ってくれているのは若い人たちなんですよね。形にすることは、我々だけではもちろんできないので、若者たちはやっぱり宝物だと。われわれ同級生は、そういう意識でいると思います。

桑田佳祐が明かす エンタメの原点とは?

音楽人として今、何ができるのかを考え続けてきた桑田佳祐さん。自らに問い続け、行動を起こし続ければ答えは風の中に見つかるかもしれない。そんなメッセージをいただいた気がしました。そしてそこには、仲間たちの存在が欠かせないということも。

最後に桑田さんは、歌の持つ力についてこんなエピソードとともに語ってくれました。

桑子 真帆キャスター:
桑田さん自身が、エンターテインメントに救われた経験というのは?

桑田さん:
ありますよ。

桑子:
そうですか。

桑田さん:
60年代は「エンターテインメント」という言葉が無かった時代ですからね。

桑子:
そうですよね、確かに。

桑田さん:
深夜放送、「紅白歌合戦」。

桑子:
ああ、ありがとうございます。

桑田さん:
今で言えば「SONGS」。

桑子:
ありがとうございます。

桑田さん:
もちろんです。それこそ、僕の時代でしたら「夢であいましょう」とか。「夢であいましょう」なんですよね、エンタメっていうのは。誰でも夢見るし、そこに行きたいと思う胸の高まりですから。

今でも僕は「夢であいましょう」に出ているサザンオールスターズや自分みたいなものを夢想して曲をつくったりするんですよ。だから、テレビ歌謡とかテレビバラエティとか、ラジオで自分の曲が流れるとか、そういう『ハッ』となる衝動というんですかね。それを求めてやっているんです。だからミーハーなんですよ、基本は。

桑子:
まさか聴かせていただくだけではなくて、一緒に歌わせていただくなんて本当にありがとうございました。

桑田さん:
ご無理を申し上げました(笑)

桑子:
いえ、とんでもないです。一生忘れません。


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