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2022年3月17日(木)

若者に大流行!“常時接続SNS”
デジタル社会の近未来は?

若者に大流行!“常時接続SNS” デジタル社会の近未来は?

若い世代を中心にSNSの使い方に大きな変化が起きています。
仲間同士で、互いの位置情報を共有する「Zenly」や、知らない人同士が音声通話でつながる「Yay!」など、誰かと常につながっている=“常時接続SNS”が、急拡大しているのです。若い世代の人間関係・コミュニケーションに何が起きているのか探りました。

出演者

  • 成田 悠輔さん (イェール大学助教授)
  • 高橋 暁子さん (成蹊大学客員教授・ITジャーナリスト)
  • 井上 裕貴 (アナウンサー) 、 保里 小百合 (アナウンサー)

※放送から1週間はNHKプラスで「見逃し配信」がご覧になれます。

つながり続ける"常時接続社会SNS" 友人・見知らぬ人と何時間も!

井上 裕貴キャスター:
インターネットやSNSを使って、常に人とつながれる時代。

ツイッターやインスタグラムなど、世界規模で使われているものは有名ですが、今回私たちが注目するのは「常時接続SNS」です。

保里 小百合キャスター:
例えば「Zenly(ゼンリー)」というアプリですと、仲間どうしで常に位置情報を共有し、お互いの居場所が分かる仕組みになっています。

もし井上さんがまだ駅の近くにいる、遅刻しているというときにはすぐに分かってしまうというわけです。

井上:
遅刻も「見える化」ですか。

保里:
そして、今度は「Yay!(イェイ)」というアプリです。

例えば音楽ですと「歌いたい人、集まれ」とか、アニメだと「推しについて話そう」といった、テーマ別にSNS上に自由にグループを作って見知らぬ人どうしが何時間でも音声で会話を楽しめるアプリなのです。

井上:
つながる若者たち。一体どんな使い方をしているのでしょうか。

位置情報を"常に"共有 その理由は…?

今、若者たちの間で流行しているのが、互いの居場所を常に共有するSNSアプリです。

大阪に住む19歳の松田さんたち3人組。学校や地元で知り合った仲間と、位置情報を共有しているといいます。

松田さんの友人
「位置情報を見て、誰かがそこにおったら会えるし、何も言わんでもそこにいる。(位置情報を共有している人は)僕で80人、70人くらい」
松田篤真さん
「LINEより見るんちゃう」

どのように使っているのか、松田さんの家を訪ねました。

例えば、真ん中の青い丸の松田さんの家の周辺には、7人の友達がいることが分かります。

さらに、移動速度や滞在時間まで分かるため、互いに何をしているか予想がつくといいます。

松田篤真さん
「32キロ出てるんですけど、これはたぶん車で移動してる。速かったら車やし、遅かったら自転車か歩きか」

松田さんは、家でも外出先でも友達の家でも、朝から晩まで常に仲間と居場所を共有しています。

取材を始めて1時間。この日、取材があることを知っていた友人たちが、位置情報を見てやってきました。

松田さんの友人
「近くのコンビニいてて、3人はもともと集まってて。この2人の位置情報見たら集まってたんで、ちょうど暇やし」

位置情報を常に共有し合えば、ことばでのコミュニケーションも必要なくなるといいます。

松田篤真さん
「コロナかかって食材を持ってきてくれたり、家の前に置いといてくれたり、そのときはもうありがたいなって」
友人
「(位置情報見て)何日間も家おったらわかる」
松田篤真さん
「今の時期やったらコロナ以外ないやん」

さらにこのあと、アプリの位置情報で近所に友人がいることを知った松田さんたちは早速向かいました。

松田さんは、妻の里奈さんとも位置情報を共有しています。それが時に、けんかの原因になるといいますが…。

妻 里奈さん
「(位置情報を共有することで)うそついたりできなくなるので、次第にうそつかなくなったり、それで信頼が出てくるかな。けんかは増えるけれど、ないしょごととか」
松田篤真さん
「勘違いはあんまりされなくなりますね」

24時間、互いの位置情報を共有できるというこのアプリ。ここ数年、急速に利用者をのばし、全世界のダウンロードは1億回に及んでいます。

中央大学国際情報学部 教授 岡嶋裕史さん
「技術の進化もあって、仮想世界のコミュニケーションもありですよ、と、技術側が提案してきた。それが社会の中で受け入れられていくためには、おそらく10年20年必要だったのが、コロナによって時計の張りがすごく進んだ印象は持っています」

見知らぬ人との"常時接続" 身の上話・悩み相談も!?

全く会ったことのない人と長時間、ネット上でつながり続けるアプリまで登場しています。

2年前に登場し、利用者が500万に上る、このアプリ。ゲームやアニメ、音楽など自分の好きなグループに入って見知らぬ人と音声通話をやりとりします。

なぜ、若者たちに人気なのか。

今回番組の取材であることを伝えた上で、番組ディレクターが多くの人とグループ通話で話しました。

<番組ディレクターのグループ通話 ※許可を得て収録しています>

通話相手
「あー、トクジさん」
番組ディレクター
「じゃあ、おそろいかな、みなさん」
通話相手
「何時間ぶりやろ、3時間ぶりよ」

ちょっとした雑談や、趣味の話をする人がほとんどでしたが…。

<番組ディレクターのグループ通話 ※許可を得て収録しています>

通話相手
「友だちとか親友にはなるけど、恋愛には発展させない。自分は別に嫌いになろうとしている意図はなくて、でも何か嫌いになっちゃう」

身の上話や悩み相談まで、時には一晩中、話し込む人もいることが分かりました。

このグループ通話が居場所の一つだという、中学3年生に取材することができました。ネット上でつながって半年になる、仲のいい友人もいるといいます。

<利用者(15歳)のグループ通話>

利用者(15歳)
「最近なに作ったの?」
通話相手
「(バレンタインで)チョコつくった。あげようとして大量に作って、その日オンラインになってバレンタインの日、学校行けなくて、1人で悲しみながら泣きながらぱくぱく食べた」
利用者(15歳)
「ショックだね、それ」

使い始めたきっかけは、学校など身近に好きな音楽の趣味が合う友達がいなかったことでした。アプリの仲間とは一緒に歌ったり演奏したり、何時間も接続することも。リアルなしがらみがない見知らぬ人どうしだからこそ、気軽に過ごせるといいます。

利用者(15歳)
「直接会ったことはないけれど、会話も長く続くし、楽しい。やっぱり誰か待っててくれるんですよ。だから居場所なんじゃないかなと思いますね」

多くの若者が利用する理由について、アプリの開発者は既存のSNSと違って発信するハードルが低いのではないかと分析しています。

アプリ運営会社 社長 石濵嵩博さん
「(既存のSNSは)もうちょっとよい写真を出すとか、そういう使い方になってきている。この瞬間、誰かと自分の思ってることを共有したい、あるいはゲームしたい、Youtubeを一緒にみたり、雑談したいとか、そういう目的のもと集まっているので、もう圧倒的に素が出せる」

"常時接続"のネット仲間 しかし時には…

気軽に自分の居場所を見つけられる、「常時接続SNS」。しかし、そこでの人間関係は常にもろさと隣り合わせです。

父親の仕事の都合でニューヨーク近郊に住む、14歳のゆいなさん。日本の友達を作りたいと2年前からアプリを始め、さまざまな人と日々2~3時間通話するのが日課です。

ゆいなさん(14歳)
「こういう考え方をしているんだなとか、親に対してどう思ってるんだなとか、そういうのを聞いて、納得する部分もあったり、いろんな人を知れる場所として結構使うことが多いです」

しかし、時には思うようにいかないこともあります。

半年前に知り合ったあるネット仲間と意気投合し、仲よくなっていったゆいなさんは毎日のように通話していました。ところがこの日、ゆいなさんのグループ通話を訪ねたところ…。

<ゆいなさんのグループ通話 ※許可を得て収録しています>

ゆいなさん
「返信おっそいしなあー。ケンカ中にちょっと待っててと電話を切って行ったから。ケンカの話をしてるのに。泣くつもりなかったけど、ママの顔を見たらね、泣けてきちゃったの」

最近けんかが続き、仲たがいしてしまったというのです。どうすればいいのか、ほかのネット仲間に相談していました。

母親ののぞみさんは、ネットを通じて常に誰かとつながることができる娘をどう見守ればいいのか難しさを感じています。

母 のぞみさん
「変な人に引っかかったらどうしようとか。(子どもを)ずっと見張っているわけにもいかないし。そういう話もしながら、こういう人は気をつけなよ、自分で判断しなさいねって。何かあったらすぐ教えてねっていう形で。でも心配ですね」

なぜ常時つながりたいのか?

<スタジオトーク>

井上 裕貴キャスター:
きょうのゲストは、経済学者でデータ科学がご専門の、イェール大学助教授、成田悠輔さんです。

成田さん、この若い世代が「常時接続SNS」にここまで乗り込める理由はなんでしょうか。

スタジオゲスト
成田 悠輔さん (イェール大学 助教授)
専門はデータ・アルゴリズム

成田さん:
ひと言でいうと「安くて、早くて、うまい」みたいな単純な理由なのではないかなと。

井上:
三拍子ですね。

成田さん:
リアルの世界で人と会うと、まず待ち合わせ時間と場所を決めなくてはいけない。電車に乗って、お金を使って、わざわざそこまで出かけていって、何百円か何千円かかけて、話してみたら意外に話が合わなくて、ちょっと気まずくなって、つらくなって帰る。結構よくあると思うんですよ。こういうのが全部キャンセルできるのが、ネット世界なのかなと。

なので、その場でただで簡単に会えて、もしちょっと合わないなと思ったら簡単に切れる。これにのめり込むのはごくごく自然なことではないかなと思います。

井上:
これは世代の違いなんですかね。おじさんからすると、ここまでつながりたくないなと思ってしまうのですが、皆さんはどうしてこんなにつながりたいのでしょうか。

成田さん:
これはずっと続く歴史の法則なのではないかなと思うんです。というのは、僕たちの生活でも仕事でもコミュニケーションでも、だんだんとそれを機械に委ねたり、コンピューターに委ねたり、ネットに委ねたりするじゃないですか。

僕たちの世代でも、前の世代の人たちがリアルでやっていたものをメールでやったりするわけですね。それと同じことが今、生活全体に起きているぐらいの話なのではないかなと思います。

保里 小百合キャスター:
常につながり続ける。リアルがネットに置き換わっていく社会にはどんなメリット、デメリットがもたらされると思いますか。

成田さん:
メリットは、理想の自分にとっての部活みたいなものを見つけられている感じなのかなと思うんです。どういうことかというと、これまでだったらすごい変わった趣味を持っている人とか、あるいは生身の人間とやり取りするのが苦手な僕みたいな人間とかだと、学校とかで似たような人を見つけるのって難しいじゃないですか。

保里:
リアルだとなかなか難しい場合もある。

成田さん:
だけど、ネットだったら盆栽が趣味の小学生がいたとして、同じような趣味の小学生を全国津々浦々から見つけてくることができます。そういう意味で言うと、自分に合ったいちばんいいコミュニティーを作れるというのがメリットかなと。

デメリットは、自分にとっていちばんいい空間というのはぬるま湯のたこつぼという部分もあるので、同じような人たちと戯れているだけで終わっちゃう。そこに突然予想しない形で入ってくるランダムな出会いとか、予期しなかった偶発性みたいなものがなかなか入りにくい。これがデメリットかなと思います。

保里:
「常時接続SNS」のリスクについて、先週、警察庁から発表されたSNSの犯罪被害に関する調査結果では、去年1年間にSNSをきっかけに児童売春や児童ポルノなどの犯罪に巻き込まれた18歳未満の子どもは1,812人。

加害者と知り合ったSNSの内訳がこのようになっていまして、VTRにあったSNSも含まれています。

こうした状況に対して、音声通話アプリの運営会社はアカウントを作る際の個人認証を強化したり、未成年には1対1の会話を制限するといった対策をしているということです。

井上:
そしてもうひと方、ITジャーナリストの高橋暁子さんにもお聞きしていきます。

高橋さん、以前この番組でもSNSでの犯罪のリスクをお話しいただきましたが、この「常時接続SNS」に対してはどういう新たなリスクが考えられますか。

スタジオゲスト
高橋 暁子さん (成蹊大学 客員教授)
若者のSNS事情に詳しいITジャーナリスト

高橋さん:
音声SNSというのは、やはりリスクが高めだと思うんです。仲よくなりやすくて個人情報も漏らしやすいので、「じゃあ、会いましょう」ということになりやすいわけです。
対策はされていると思うのですが、実際出会うきっかけにはなってしまっているので、もう少し制限を厳しくするとか、対策をしていただけたらと思います。

また位置情報SNSですが、自宅や学校とか、今いる場所が分かってしまうわけです。それを不特定多数の人とつながって公開している子どももいるんです。そうなりますとストーカー被害に遭ったり、家まで来られてしまったり、そういう子が実際にいるわけです。そういうリスクを考えて、もう少しルールなどをサービス会社で定めていただけたらと思います。

井上:
親も心配ですよね。

高橋さん:
親のほうが「心配だから使わないで」と言いたいと思うんですが、ここまで人気になるとちょっと無理なんです。じゃあどうしたらいいかというと、最低限これだけは約束で取りつけてもらいたいなと思います。

・個人情報を出さない
・裸の写真を送らない
・なるべく会いに行かない

まず、仲よくなっても「裸の写真を送る」とか、「自宅などの個人情報は送らない」。それから、なるべく会いにいってほしくないんだけれども、それでもどうしても会うんだったら「いつ、どこで、誰と会う」ということを言って、日中、人が多い場所でなるべく複数の友達などと会って、自分の身の安全を守った状態で会ってほしいと子どもに伝えるのがいいのではないかと思います。

保里:
リスク管理の重要性をぜひ認識してほしいと思いますが、いつでも人とつながれるようになることによって現実社会、そしてネットとの距離感に戸惑う人も出てきています。

"つながり過ぎ"が息苦しい… SNSをやめる人も

東京渋谷にある商業施設。訪れる客の多くが10代から20代のいわゆるZ世代といわれる若者たちです。

長田麻衣さん
「109のものなんですけど、アンケートをやっていて。2人はどうやって知り合ったの?」
若者
「インスタグラム」
長田麻衣さん
「インスタなんだ」

Z世代を中心とした若者マーケティングの調査を行っている長田麻衣さんは、今の若者たちはネット上のふるまいにこまやかな気遣いを求められていると分析します。

長田さんのチームが行った調査では、若者の6割以上がSNSに対して疲れを感じていると回答。

「周りの目が気になって投稿しにくい」、「常に周りとつながり続ける感覚がストレス」などの理由が上位にきました。

長田麻衣さん
「SNSネイティブの子たちなので、(投稿を)読み取る力だったり、コミュニティの調和みたいなところをすごく重視する世代なので、この投稿をしたら周りからどう見られるかだったりとか、常に周りの目と共に生活している状況に少し疲れてしまうケースもあるかな」

こうした中、若者たちの多くがSNS上で学校の友達用や趣味でつながる用など、複数のアカウントを使い分けているといいます。

長田麻衣さん
「アカウントは何個持っている?」
若者
「5個か6個。普通の友だちとつながってる用と、オタク用と、そんな感じで分けてます」
若者
「学校用だとオタクのストーリーとかを上げたりできないです。みんな興味がないので」
若者
「向こう興味がないのに話すと『あっ』みたいなのが、申し訳なくなっちゃう」

途切れることなくつながることに疲れを感じる人の中には、ネット上の交友関係をリセットする人もいます。

名古屋に住む25歳の女性は、おととし、7年間使ってきたインスタグラムのアカウントを削除しました。

高校生のときに始めた、インスタグラム。当初は、投稿することや友達とのやりとりが楽しかったといいます。

しかし、楽しそうにしている友人の写真など、絶えず周りの情報が入ってくる状況を次第に息苦しいと感じるようになりました。

SNSのアカウントを削除した女性
「ひとりの時間も必要なのに、SNSを見てるとそれが否定されてる感覚になりましたね。つながるのが当たり前になっちゃって、境界線が曖昧になっていく感じ。人とつながり続けるというのは、自分で息の根っこを止めているみたいな感じがします」

SNSのつながりを、負担に感じるようになっていった女性。その後、つきあっていた男性と別れたことをきっかけに、SNSのアカウントを削除しました。

SNSのアカウントを削除した女性
「(アカウントを)消したらアイデンティティーが消えちゃうかなと思って、それだけは不安でしたけど意外と消してみたらぜんぜん、すっきりしたなという感じでした。リセットというか」

若い世代の間では、ネット上のつながりをブロックして解除する「ブロ解」や、リムーブを意味する「リムる」といった行為が日常的に行われています。

常につながることができる時代。心理学の専門家は、つながりやすさに加えて関係の切りやすさもSNSが若者に支持される理由だと分析します。

東京未来大学こども心理学部 教授 藤本昌樹さん
「そもそも人にとっては、誰かから傷つけられたりとか、攻撃を受けないという"心理的安全感を持てる場所"というのが非常に重要なものになっています。心理的安全感としてのネットの場所というのもあるでしょうし、もしそこで傷ついたりどうしても駄目だったら切ってしまう。いつでもリセットできて、また最初からやり直せるというSNSの特徴が、ある種の"安心感の保障"になっている」

近未来のデジタル社会の姿は?

<スタジオトーク>

井上 裕貴キャスター:
高橋さん、今見てきたように息苦しさを感じる人も中にはいるわけですが、使う側は「常時接続SNS」とどう向き合っていかないといけないと思いますか。

高橋さん:
四六時中、人の目を気にしながら使ったら疲れるのは当たり前ですよね。だから休んだりやめたりしていいと思うんです。疲れている時点でSNSの使い方が間違っているので、SNSは別に義務でもなんでもないので、リセットしてしまって仕切り直ししてもらえたらいいのかなと思います。

保里 小百合キャスター:
成田さん、急速にテクノロジーが進化していって、そこについていけない人たちも出てきている。この社会にどんなことが必要になってくると思いますか。

成田さん:
社会全体として、SNSデトックスみたいなものが必要になってきているのかなと思います。これまでSNSは、新しくて新鮮味のあるもので、とりあえず行け行けどんどんで、やれることはやってみる。つなげられるものはつなげてみるという感じでやってきたと思うんです。

それによって、リスクとかいろいろな問題が発生してもいると。なので、これからは過去に僕たちがジャンクフードとか薬とかアルコールみたいなものを試してみて、徐々に規制を入れてきたのと同じように、SNSを通じた情報とかコミュニケーションにも徐々に安全装置をつけていくことが必要なのではないかなと思います。

保里:
健全に楽しむために必要な規制ということですね。

成田さん:
そうですね。

井上:
さらに近い将来ですが、自分自身が仮想空間のアバターを通じて、いつでも誰かとつながれるメタバースの世界が当たり前になるといわれています。

成田さん、こうした世界も含めて「常時接続社会」というのはどんな方向に向かっていくと思いますか。

成田さん:
多分、これからは僕たちの心とか体とか生活、すべてが常につながっているような社会になっていくのではないかなという気がするんです。

これまでのSNSで何をつないできたかというと、ことばとかあるいは画像、動画音声。それから今でいう位置情報、こういった情報ですよね。これからはこれがもっともっと広がっていくと思うんです。

つまり、僕たちが今ここで感じているにおいとか光の感じとか、あるいは握手したときの体感とか、僕たちが五感で感じているすべてのものをデジタルデータに変換して、それをシェアしたり接続したりすることができるような社会というのが訪れるのではないかなと。そうなると、すべてが常時接続されるような社会になるのではないかと思います。

井上:
リアルとデジタル、どっちに軸足が行くでしょうか。

成田さん:だんだんリアルの世界というのは効率が悪くて速度が遅い、ちょっと残念な空間という感じが流れ出してくるのではないかなと。だんだんとバーチャルのほうの比重が増していって、リアルとバーチャルの足し算した生活全体とか、世界全体というのはどんどん豊かになっていく感じなのではないかなと思います。

井上:
ありがとうございました。

保里:
ありがとうございました。

井上:
さて、クローズアップ現代+ですが、私たち二人でお伝えするのは今回が最後となります。

番組を通して出会ったたくさんの声、そしてたくさんの問い、またたくさんの英知に本当に感謝と敬意の気持ちしかありません。答えの先に必ずまた新たな問いがありました。この先もまた新たな問いを追いかけていきたいと思います。短くも忘れがたい1年、本当にありがとうございました。

保里:
私たちの社会を一歩前に進めるために必要なこと、この先の未来を一緒に考えてくださった皆さん、本当にありがとうございました。

クローズアップ現代は4月から月、火、水の夜7時半からの放送です。ご期待ください。


見逃し配信はこちらから ※放送から1週間はNHKプラスで「見逃し配信」がご覧になれます。

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