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2022年1月5日(水)

“地元の逸品をプロデュースせよ”
生まれ変わる地域金融機関

“地元の逸品をプロデュースせよ” 生まれ変わる地域金融機関

動画投稿サイトでのラーメン食リポ、ダチョウ牧場のソロキャンプ場化!いま信用金庫や信用組合など地域金融機関が、コロナ禍で苦しむ中小企業のために新サービスを次々にプロデュースしている。中には、融資などの数値目標を撤廃し、社員のように取引先に入り込む金融機関も現れた。さらに、企業の福利厚生や海外進出など、新たなビジネスモデルも。果たして金融機関が“地域再生の請負人”へと変身できるのか。試行錯誤に密着。

出演者

  • 坊垣佳奈さん ((株)マクアケ 共同創業者 取締役)
  • 片岡利文(NHKディレクター)
  • 井上 裕貴 (アナウンサー) 、 保里 小百合 (アナウンサー)

※放送から1週間はNHKプラスで「見逃し配信」がご覧になれます。

地域の逸品をプロデュース 生まれ変わる地域金融機関

保里:こちらにずらりと並んだのが、地元の金融機関が販売を後押ししている各地の商品です。

北海道のジンギスカン、そして富山のブラックラーメン、さらに広島の化粧筆、そして長崎は五島列島の椿油など。もう多種多様な商品ですよね。

井上:金融機関といいますと、ドラマだったり小説を通じて中小企業に対してちょっと冷たいというイメージ持たれている方もいるかもしれません。けれども今、お金を貸すよりもこうした商品をプロデュースするなど、これまでなかった動きを見せているんです。
背景にあるのは、地域金融の要となる信用金庫と信用組合を合わせた数が、この30年ほどで半分以下にまで減っているという厳しい現実なんです。

保里:そこで今回まずご覧いただくのは、「取引先の"社員"になって本業を支援せよ」。そんな号令をかけた東京の信用金庫の取り組みです。

"融資ノルマを撤廃" 取引先の"社員"になれ

東京・巣鴨。商店街を回るのは、巣鴨信用金庫の営業マンです。


店を立て直すための補助金の交付が決まり、喜ぶ靴屋さん。この信用金庫では、コロナ禍でダメージを受けた取引先に足しげく通い、サポートしています。

中小零細企業2万3,000社の経営を支える地域のインフラ、巣鴨信用金庫。ことしで創業100年。大変革の真っただ中にいます。コロナの終息が見通せない中、今取引先を救わなければ手遅れになる。2年前、理事長は「金貸し」からの脱却を打ち出しました。

巣鴨信用金庫 田村和久理事長
「融資の残高や、新規先数を競っている場合ではない。業績の数値目標を一切設けず、お客さまの本業のお手伝い、改善、改革に全力で取り組む」

融資や預金などのノルマを廃止。取引先の業績を引き上げる「本業支援」に最大限の力を注ぐよう、全職員に伝えたのです。

田村和久理事長
「地域の方々とは運命共同体。地域が良くならなければ、われわれも存続できない。数字だけでの判断だったら、信用金庫が本当に使命を果たせない」

重要なミッションを託されたのは、本店にある「すがも事業創造センター Sーbiz(エスビズ)」。社内公募で集められた精鋭部隊です。

支店の力だけでは立て直せない、難しい案件が持ち込まれます。

この日、寄せられたのは…。

新座支店 担当者
「新座市内でダチョウ牧場を運営されているお客様です」

コロナ禍で来客数が3分の1に激減した、ダチョウ牧場。エスビズが支店の担当者に求めたのは、新たな融資を行わずに経営を立て直す、という難題でした。

目に留まったのが、併設されたバーベキュー場。コロナ禍でも家族連れを中心に一定の利用があることが分かりました。

これを生かして経営を立て直せないか。エスビズに報告が上がりました。

すがも事業創造センター 浅見忠愛係長
「"バーベキュー場にダチョウがいる"だと、これは付加価値になるんじゃないか。もっと言えば、今キャンプがはやっているので、"ダチョウのいるキャンプ場"みたいな見せ方にしたらどうだろうか」

エスビズが提案したのは、ダチョウを見ながらバーベキューを楽しめ、キャンプまでできる「複合エンターテインメント」です。

コロナ禍で密を避けたい人が多く、はやるに違いないと読みました。

ダチョウ牧場 並木大治社長
「そういうのが気づかない。分からない。お客さん目線が分かっているつもりなんですけどとっても参考になりました」

本業支援といってもまだまだ不慣れな仕事。ブレーンとして招いたのが、元銀行マンで中小企業約7,000社を再生してきた小出宗昭さんです。

中小企業支援家 小出宗昭さん
「みんなが考えるのは、消費者目線。消費者目線を徹底すること」

強調するのは、「金を貸すだけ」という意識からの脱却です。

小出宗昭さん
「これまでのような、数字を重視するような目線じゃダメだと思うんです。セールスポイントを伸ばすこと」

財務諸表は見ない、お金はかけない。そして、経営者が気付いていない「強み」を見つけ出す。金融機関の常識を根底から覆すものでした。

すがも事業創造センター 山本浩治次長
「正直言って、自分の両腕をもぎ取られて仕事をしろっていうような感じに思えました。(信用)金庫人生の中でそういうことがなかったので、すごい自分としては衝撃的でした」

しかし、信用金庫の職員にとって、意識を変えて消費者目線に立てと言われても、効果的なアイデアがなかなか思いつきません。

50年にわたり、地元で愛されてきたクリーニング店。テレワークの普及により、スーツやワイシャツなどの注文が大きく落ち込んでいます。担当の西谷和也さん。この半年間、試行錯誤を繰り返しました。

最初に考えたのが、フリマアプリ向け「クリーニング証明書」。はくをつければ注文が増えるに違いないと期待しました。

しかし…。

すがも事業創造センター 志村幸輝常務理事
「アイデアは良かったよね。なんでダメだった?」

全く引き合いがありませんでした。

山本浩治次長
「(この店)にしかないサービスって、もう一度考えてみたら何だろうね」

改めてこの店の仕事を観察し直した、西谷さん。

目に留まったのが、シミ抜きの高い技術でした。ほかのお店で落ちなかったシミ。社長の手にかかると。シミだけでなく黄ばみもきれいになります。

しかし、それだけの技術がありながらシミ抜きは無料。当然、PRもしていません。

すがも事業創造センター 西谷和也主任
「社長のシミ抜きの良さを知ってもらうために、新たに"本気のシミ抜き"ってプラン作ったりとかいうことも考えていくと、よりこだわっている感は出るのかなと」

まずは知ってもらわなければ。西谷さんは、みずからチラシを作ることにしました。キャッチコピーは「諦めていたシミ 抜きます」。デザインも写真もすべて独学です。

クリーニング店 佐藤修社長
「タダでこんなに親身になってくれる人いないと思うんですよね。僕も何とかこう自分の業績を上げたいのはもちろんですけど、西谷さんの期待に応えたい」

西谷和也主任
「すごい、うれしい限りです。また頑張らないと」

商店と地域金融は「運命共同体」 "融資ありき"から本業支援へ

井上:まず、取材しました片岡ディレクターです。この信用金庫の本業支援ですが、実際どんな成果が出ているのでしょうか。

片岡利文ディレクター:例えばこれ、最後まで木から落ちなかったリンゴだけで作った受験生注目のリンゴジュースです。コロナで経営が厳しくなった取引先の旅行代理店が、信金職員のアイデアをもとに窮余の一策として作った商品なんです。まだありますよ、こちら靴下ですね。すごく伸びるでしょう。

これも信金職員のアイデアをもとに取引先の靴下工場が作った商品なんですが、リウマチなど足に障害のある方に優しい靴下なんです。

保里:いろいろありますけど、本業支援をタダでやっているというのに驚いたんですが、信用金庫にとってビジネスとして成立しているのでしょうか。

片岡:金融機関によっては有料のサービスとしてやっているところもあるんですが、今とにかく取引先は実質無利子・無担保の融資でなんとか命を、息をつないでいる状態で、本当に窮地に陥る前にポストコロナに向けて本業を立て直しておくことが金融機関にとって今最優先の課題になっているんですよ。経営がよくなれば、また融資で稼ぐこともできるという考えなんです。

井上:そして、ベンチャー企業の共同創業者でクラウドファンディングの仕組みなどを活用して中小企業などの新商品の販売や広報をサポートされている、坊垣佳奈さんです。坊垣さんも全国の金融機関100以上と連携されているそうですが、実際本業支援で成功を左右しているものは何だと思いますか。

マクアケ 共同創業者 取締役

坊垣さん:本業支援といいますけど、非常に難易度が高いことをやろうとしているわけなんです。なぜかというと、当然ながら経営者がいらっしゃって、苦労していること、課題があることを客観的に把握して、まさに経営コンサルのように入り込んで変えていくことをしなきゃいけないわけなんです。優秀な行員さんが何人かいて成り立つということではなくて、組織ぐるみで変えていかなきゃいけないですよね。なので経営者のトップ層、金融機関のトップ層が意識から変えていくということが非常に重要かなと思ってます。

井上:そこがまずなぜ大事なんですか。

坊垣さん:優秀な行員さんが何人かいれど、そのお客様しか救えないということになってくるわけですよね。なので目利き力だったりとか、プロデュース力だったりとか、しっかり売れる商品を生み出していく、売れるサービスに仕立てていくみたいなことを行員の皆さんができるようにしていかなきゃいけないので、そこの教育だったりとか、あとは評価制度も変えていかないと、なかなか行員さんは動いていけませんので、本業支援でしっかり結果を出している行員さんを評価していくだったりとか、体制を変えていく、仕組みを変えていくみたいなことが必要かなと思います。

井上:そういう企業文化を変えていく環境整備が大事なわけなんですね。

坊垣さん:はい。

片岡:本業支援をなかなか金融機関ができなかった背景というのは、先ほどVTRにも出た元銀行マンの小出さんにうかがったところ、バブル崩壊以降まさに金融機関にとってはみずからの生き残りが最優先で、なかなか利益につながりにくい本業支援よりも厳しい査定によってリスクをぎりぎりまで減らした「融資」によって確実に利益を得ることが第一になってたんですよね。その中でなぜ巣鴨信金が今できているかというと、2008年のリーマンショックのときに取引先に対してなかなか大した処方箋を提示することができなかったという苦い経験を受け止めて、そこから本業支援のノウハウをコツコツと積み上げてきたので、今コロナの中でこういうふうに動くことができているということなんですよね。

井上:とはいえ坊垣さん、例えば地域差があってなかなか本業支援ができないという金融機関もあると思うんですが、そういう中で坊垣さんが連携されている金融機関とかはどういうことを大事にしながら進めていますか。

坊垣さん:先進的なインターネット企業とか外部の企業と連携しながら新しい仕組みをまず行員さんが勉強会で学んだりとか、実際に勉強会を通して知ったことを行員さんと一緒に学びつつ商談会をやって、実際に商品をプロデュースしていくみたいなことをやり始めている金融機関さんはすごく増えています。その結果、私たちみたいなところにも当然ビジネスマッチングによるご紹介というのも増えていまして、それで生まれてきた新商品というのも増えているわけなんです。
その例をお話させていただくと、まず1つ、熊本信用金庫さんがおつなぎされて、地元のカステラを作られている方と不動産屋さんを経営されていた女性がコラボして新しいカステラ商品を生み出すというような取り組みがあったりとか。

あとは佐賀共栄銀行さんがおつなぎになられて、有田焼を作られていた窯元さん、中にプリンが入っているんですがプリンを作られているところが旅館でして、こことコラボをさせて新しい付加価値をつけて生み出していくことをやられていたりしますね。

井上:コラボ、連携が大事だということですが、こういうプロデュースをする上ではどういったことがポイントになってくるのでしょうか。

坊垣さん:実は、ないものをゼロから生み出そうとすると非常に難しいんですけれども、素材はあったりとか技術はあったりするんですよね。それらをうまく組み合わせていく。あとは実際に売れるものに仕立てていく、それを魅力的に見せていく、みたいな工夫が非常に必要です。実際に金融機関さんというのはやっぱり長年その地域でその企業に入り込んで歴史を知り、成功も失敗も知っていらっしゃって、現状の課題もよく分かっていらっしゃる。なのでいろんな外部の企業さん、それこそ東京とつなぐということも含めていろんなところとつないで新商品を生み出したり見せ方を工夫していくということが地元の金融機関さんだからこそできるというのが非常にポイントかなと思いますね。

片岡:つなぐとか、マッチングとか、外部とつながるという話があったのですが、一方で異なる地方の金融機関どうしが結び付く、つながることによって本業支援の輪を広げていこうという取り組みが始まっています。

各地域の逸品がカタログに 海外展開めざす動きも

「商品のPRタイム、島根銀行さん、お願いします」

保里:リモート会議ですね。

片岡:そうなんです。月に一度、全国21の異なる金融機関が集まって、こんな取り組みを始めているんです。

七島信用組合 宮川卓也さん
「こちらのヨーグルトは完全自然放牧で飼育した、ジャージー牛の生乳のみを使用しており、添加物等は一切使用していません」

筑波銀行 ビジネスソリューション部
「手前どもはですね、水戸市の名産である納豆のご紹介をしたいと思います」

片岡:各地域の金融機関が支援している取引先の商品を、このようなカタログにまとめて全国で販売しようという集まりなんです。

保里:はい。

片岡:北は北海道から南は沖縄まで。各地の金融機関が協力することで、主に地元でしか売られていない商品の販路を全国に広げようという取り組みなんです。

保里:金融機関が協力するってそんなに珍しいことなんですか。

片岡:そうですね。地域の金融機関は主に地域の「中」で仕事をしてきましたからね。

金融機関連携の仕組みを運営 天間幸生さん
「外と連携するということは、今までなかなかなかったんですね。でもこれからは販路拡大支援というテーマで、みんなが連携しながら、それぞれの地域の事業者さんを支えていく。こういう時代になるんじゃないかと思っています」

片岡:この地域連携の仕組み、なかなかおもしろいんです。諏訪湖周辺に21の店舗を構える、諏訪信用金庫で詳しく見ていきましょう。信用金庫の次長、奥山眞司さん。自らカメラの前に立ち、カタログに載せる商品のPR映像を作っているんです。

片岡:カタログ商品の購入を持ちかける相手は、主に地元の企業です。社員への福利厚生として提案します。

保里:福利厚生ですか?

片岡:そうなんです。会社持ちで好きな商品を選べるところが社員たちに好評なんだそうですよ。

電子基板メーカー 成瀬一実常務
「どうやって従業員に還元しようかという中で、家族で『これがいいね、あれがいいね、これ食べてみたいね』。これが1番いいんじゃないかと思って」

片岡:実は、会社にとっても福利厚生だと経費で落とせるのでありがたい提案だそうです。

保里:それなら進んでいきそうですね。

片岡:そしてここ、ちょっと注目です。

諏訪信用金庫 奥山眞司次長
「ぜひほかの地域のものを、"諏訪地域以外のもの"をご選択いただけるように」

保里:以外ですか?

奥山眞司次長
「みちのく銀行の『炎のジンギスカン』。非常に売れてますね」

保里:自分たちが支援している地元の商品を勧めないということですか。

片岡:いい質問ですね。実は販売促進の成果に応じて金融機関には手数料が入るんですが、ほかの地域の商品を売ったほうが手数料が高くなるんです。これは商品がほかの地域で売れるようにするための仕組みなんです。

保里:そういうことなんですね。

奥山眞司次長
「本当にいい仕組みだと思います。結構、金融機関って自分のところの商品ばかり売りたがるんですよね。相互扶助の精神を基本としていますので、そこがいちばん大事なところだと思います」

片岡:ということで、奥山さんが支援する地元の商品はほかの地域で売れているんです。地元諏訪では知らない人がいないというこの店のうなぎは、カタログの中でいちばん人気の商品となりました。

保里:おいしそうですね。

片岡:でしょ。

奥山眞司次長
「注文入りましたので」

うなぎ店 小林時男社長
「ありがとうございます。お受けいたしましょう」

奥山眞司次長
「青森県八戸市、岩手県…」

保里:確かに、遠く離れたところから続々と注文が入ってますね。

片岡:奥山さんはパソコンが苦手な社長に代わって、受注関係の仕事を一手に引き受けるなど、うなぎ屋さんの社員のようになってサポートしてきたんです。

小林時男社長
「これぼくの"上司"。経営者っていうのは、要するに孤独なんですよ。経営者に客観論だろうが何だろうが、意見を言ったり、『これはよせ、これはやれ、これはGO!』って言ってくれるのが彼なんです」

片岡:この地域連携の仕組みへの参加を決めたのは、この方。理事長の今井誠さんです。

諏訪信用金庫 今井誠理事長
「うちは何社出たわけ?」

奥山眞司次長
「2社出ました」

今井誠理事長
「2社?2社だけ?」

奥山眞司次長
「すみません」

今井誠理事長
「ずいぶん見劣りするね」

奥山眞司次長
「厳選したつもりなんですけど、ちょっと数が少なかったと思います」

今井誠理事長
「準備不足じゃなかったのかな?」

保里:厳しい指摘ですね。

片岡:奥山さんを地域連携の担当にすることで、ほかの金融機関から剌激を受けてほしいと考えているそうなんですよ。

今井誠理事長
「自身の反省も含めてね、一般企業の大変さを肌で感じている職員はほとんどいないんですよ。よその同業金庫の職員と交わることによって少し成長するというか、そういうことは肌で感じるんですよね」

片岡:奥山さんの信用金庫が参加しているネットワークを作った、天間幸生さん。天間さんが次に考えているのが、カタログ商品の「海外展開」です。

保里:海外へ。

片岡:かつて地方の銀行員だった天間さんは、日本の産品をロシアなどに輸出する仕事をしていました。そのとき築いた人脈を生かして、カタログ商品の販路を海外にまで広げようという構想です。そんな中、地域連携に参加する福井の銀行から、あるカタログ商品を海外に出せないかと相談が持ちかけられました。

保里:お、柿ですか?

片岡:これただの柿ではありません。福井の山里で450年の歴史を持つ、つるし柿。それをさらに煙でいぶしたいぶし柿です。

保里:あー、このよさが伝わるでしょうかね。

片岡:天間さんと銀行の担当者が協力し、シンガポールのおすし屋さんとの商談会にこぎ着けました。

いぶし柿を作っている 三浦政勝社長
「海外輸出、私の大きな夢でありまして」

片岡:海外の商談相手を自力で探すことは、地方の小さな事業所にとってなかなか難しかったそうです。

保里:うーん、この商談うまくまとまるでしょうか。

シンガポールのすし店主
「いぶし柿のくん製が入ることで、うちの焼き物からおすしに流れるその間に打ち込める。実際に試してみたらやっぱり味もとてもマッチして、これはばっちりハマったな。あの商品でしたら絶対に動けます」

三浦政勝社長
「うれしいおことばです」

保里:うまくいったということですね。

片岡:いきました。輸出されたいぶし柿は、こんなふうに先付けとして出されるそうです。

保里:鮮やかで美しいですね。

三浦政勝社長
「自分の夢っていうのかね、目指したものが実現していくっていう喜びですね。これは本当に肌身で感じて思っています」

地域金融機関がハブに 新たな産業を興すには

保里:今回スタジオに集まったこの商品の多くも、この仕組みを使って全国展開を目指している商品なんですよね。地域連携の仕組みを使った新たな構想などがあるんですが、その記事は以下のリンクから。

そして「NHKプラス」では番組を初めからご覧いただけます。

坊垣さん、地元では地道に営業する。ただ、ほかの地域ともリモートでつながる、そうした姿が印象的でしたね。

坊垣さん:このコロナ禍で、もう無理やりにでも金融機関のDX化が進んだというのはすごくポイントかなと。

保里:デジタルトランスフォーメーション。

坊垣さん:そうですね。金融機関さんはもともとは「ファックスで営業していました」、「メールが個人に割りふられていませんでした」みたいな時間も時代も長かった中で、金融機関がまずはDX化して、それこそ東京のような先進的エリアとつながって、その情報を実際に地域に落としていくと。このようなつながりを非常に生んでいるのではないかと。

保里:地方と東京も結び付いていくと。

片岡:情報で東京と結び付くというお話だったんですが、お金で東京と結び付いているという話でこんなことをされている方がいらっしゃるんですよね。

片岡:この吉岡さん、先ほどのいぶし柿の輸出を後押しした福井の銀行の方なんですが、今東京の建設ラッシュに注目して、東京の不動産会社に的を絞って資金需要があるかどうか電話で営業をかけているんです。
東京方面への融資の営業をかけた一覧表なんですが、なんとこの方、1年半強の間に1人で200億円の融資を実行したというのです。

これは、この福井の銀行の32支店の1年分の融資総額の1割に当たる金額ということなんです。もちろん融資は回収していくらなんですが、東京で稼いでそのお金で地元の本業支援をするという発想なんですよね。

井上:デジタル社会でも1本の電話は強いということですよね。

片岡:強いということですね。

井上:改めて坊垣さん、今見てきました地域金融機関の生まれ変わり、どんな意味だったり、どんな期待がありますか。

坊垣さん:一つ一つの動きは小さいように感じるかもしれませんが、地域というのは地域の中でのつながりが非常に強いわけです。そうすると1つの成功例が出ると周りに連鎖していく。周りの企業もそれを見て新しいものを見いだしていく流れにつながっていく、そういうこともありますよね。

井上:それがまた次の融資が決まったりとか、半歩ずつ進んでいけるような感じなんですかね。

坊垣さん:そうですね。実際の例をご紹介したいのですが、十六銀行さんの「くさび」。

これも実際に金融機関さんがおつなぎになられて、これはもともとは金型を作ってたメーカーさんで下請けがメインだったので、すごく目立たないビジネスをやられてたかなと思うんですが、新商品を生み出したいという思いからキャンプのはやりの流れを受けてこの「くさび」を生み出して、マクアケで500個も売れたというような実績ができています。

井上:好循環になっているわけですね。坊垣さん、ありがとうございました。


見逃し配信はこちらから ※放送から1週間はNHKプラスで「見逃し配信」がご覧になれます。

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