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2021年11月30日(火)

卵の値段が上がるかも!?
“アニマルウェルフェア”って何?

卵の値段が上がるかも!? “アニマルウェルフェア”って何?

食卓に欠かせない卵に今、大きな変化が起きています。世界では、家畜にとってストレスや苦痛が少ない飼育環境をめざす「アニマルウェルフェア」が拡大。EUでは狭いケージでの養鶏は禁止され、アメリカではマクドナルドなど大手企業が「ケージフリー」飼育の卵への切り替えを宣言しています。背景には環境・社会への配慮を打ち出すことで、企業価値を高めようとする戦略がありました。生産コストや衛生面での課題から出遅れているとされる日本は、この新たな潮流にどう向き合えばよいか考えます。

出演者

  • 新村毅さん (東京農工大学教授)
  • 河口真理子さん (立教大学特任教授)
  • 保里 小百合 (アナウンサー)

※放送から1週間はNHKプラスで「見逃し配信」がご覧になれます。

卵の値段が上がる!? "アニマルウェルフェア"って何?

保里:私たちの食卓に大きな変化をもたらすかもしれない、世界の潮流「アニマルウェルフェア」をご存じでしょうか。
動物の福祉という意味で、最終的には命を頂く家畜に対しても、生きている間はストレスや苦痛を和らげ、快適性に配慮した飼育方法のことで今、世界中に急速に広がっているんです。

詳しい情報は、以下のリンクからもご覧いただけます。

“アニマルウェルフェア”とは?
「アニマルウェルフェア」のポイントを解説

日本人、一人あたりが年間に食べる卵の量は340個。これはメキシコに次いで、世界第2位の消費量です。卵は別名、「物価の優等生」。戦後、食料全般の物価が上がってくる中、卵だけは一貫して低価格を維持。私たちの食卓を支えてきました。

その卵に今何が起きているのか、最前線を取材しました。

"物価の優等生"卵に影響 アニマルウェルフェアとは

物価の優等生、卵。どのように生産されているのか。

フュージョン 代表取締役 赤木八寿夫さん
「これが、従来型の鶏の飼育システムです」

「バタリーケージ」と呼ばれる、飼育システム。日本の卵の9割以上が、この方法で生産されています。

1羽あたりのスペースは20センチ四方ほど。およそ1年半をここで過ごします。

赤木八寿夫さん
「たくさん鶏を飼育できるという大きなメリットがあります」

鶏の運動量も少なくて済み、餌代を抑えられます。更に…。

赤木八寿夫さん
「フンは床が網になってますから、網でフンは下に落ちる。卵はその前を転がって、ここに出てくる」

卵がフンと触れることがないため、サルモネラ菌などが付着するリスクが低く衛生的だといいます。

宮崎県で養鶏場を経営する、赤木八寿夫さん。250万羽を飼育し、年間7億5,000万個もの卵を生産しています。

赤木八寿夫さん
「戦後から平成にかけて進化していったのが、このスタイル。いま流通されている安いお手頃な卵はこういうシステムで生産されている」

しかし今、鶏の飼育方法を巡って世界で大きな変革が起きています。

卵が値上がり!? 欧米で拡大 アニマルウェルフェア

20世紀後半、畜産の大規模化が進んだヨーロッパでは効率を優先するあまり、生き物を酷使していると批判が高まります。

そこで登場したのが、鶏が動けるスペースを広げ、卵を産む巣箱などを用意した「ケージフリー」という方法でした。

9年前からEUでは、従来型のケージでの飼育は全面的に禁止。消費者のSDGsへの意識の高まりとともに、アニマルウェルフェアは社会に根づいていきました。

そして今、このヨーロッパの流れは大国、アメリカにも及んでいます。3年前、カリフォルニア州で行われた卵の生産を巡る住民投票。投票の結果、ケージでの飼育と販売が来年1月から一切できなくなりました。

このスーパーでは法律の施行に先駆け、全ての卵をケージフリーのものに切り替えています。生産コストがかさむため、価格は1ダース12個入りで400円から600円ほど。

それでも、消費者に徐々に受け入れられつつあります。

消費者
「ちょっと高いけど、健康面の価値はあります」

消費者
「動物らしい生活を送り、食品になったものを食べたい。動物が受けたストレスは肉や卵を通して伝わると思うんです」

アニマルウェルフェアの波は、アジアにも広がっています。養鶏が盛んなタイでは、大手食品企業がケージフリーを推進。韓国では、鶏1羽あたりの飼育スペースを定めた新たな法律が施行されました。

こうした動きが進むと、国際的な鶏の飼育基準が厳しくなり、日本での生産にも影響すると見られています。

広がるアニマルウェルフェア 日本はどうなる?

日本でもアニマルウェルフェアの潮流をいち早く捉え、新たな付加価値として打ち出している生産者がいます。埼玉県で養鶏業を営む、一柳憲隆さん。

設備を入れ替え、鶏が自由に動き回れるケージフリーでの飼育に取り組んでいます。

ナチュラファーム 代表取締役 一柳憲隆さん
「ここで床下にアプローチしたり、床下から屋外へアプローチするエリア」

一柳憲隆さん
「ちょうどあそこで砂浴び」

砂浴びや羽ばたきなど、鶏本来が持つ欲求を満たすことができます。

一柳憲隆さん
「羽を広げるという行為も、鶏にとって本来やりたい行動」

一柳さんは養鶏農家の4代目。25年前、視察に訪れたスイスの養鶏場でアニマルウェルフェアに初めて触れました。驚いたのは、鶏たちの様子。それまでの養鶏の常識が覆ったといいます。

一柳憲隆さん
「これまでケージの飼育で、鶏舎の中にわれわれ作業者だったり視察の方を入れたとしても、鶏って多少なりともざわつくというか、落ち着きのない状況になる場合があるんですけど、それが騒ぐどころか好奇心を持って鶏たちが足元に寄ってくる。ということ自体がもうあり得ないというか、それが非常に衝撃的でした」

一柳憲隆さん
「全然触っても、驚かないし」

一柳さんは消費者の共感が今後広がっていくことを期待し、ケージフリーでの生産の割合を増やしてきました。

一柳憲隆さん
「面白いでしょ。なかなかこういう体験はできない、ケージ(飼育)じゃ」

広がるアニマルウェルフェア 日本での課題は?

一方、ケージフリー飼育の課題を指摘する声も。九州最大規模、250万羽を飼育する赤木さん。

3年前、全体の1割にあたる20万羽をケージフリー飼育に切り替えました。大手養鶏会社の中では、先駆けとなる試みでした。

養鶏会社 社長 赤木八寿夫さん
「ケージが1羽当たり360に比べて、こちらは1,000平方センチメートル。3倍ありますので、コストが逆に言うと3倍かかるということになります」

更に…。

赤木八寿夫さん
「ここですね。こういう所にも産んでます。通常の卵からすると非常に汚れています」

赤木八寿夫さん
「鶏さんがもう自由に動けるスペースになりますので」

中には、決められた場所以外で卵を産む鶏も。感染症リスクを避けるため、鶏舎内をこまめに掃除しなければならず、人件費がかさんでいきます。

現在販売しているケージフリーの卵の値段は、通常の1.5倍から2倍。それでも赤字が続いています。

「湿気が多い日本で鶏の病気を防ぎ、生でも食べられる卵を生産することは容易ではない」と赤木さんは言います。

赤木八寿夫さん
「動物の快適性を求めれば、その分コストもかかるし、手間もかかる。卵の値段は今のままで、でも動物を快適にしてあげて下さいって、じゃあ誰がそのコストの面倒を見るんですか。どういう過程を経て、どういう育て方をされて、どういうふうに皆さんの手元に届いてるかという仕組みを知った上で選択してもらうのがいい」

卵が値上がり!? どう向き合う"アニマルウェルフェア"

保里:鶏の行動学、そしてアニマルウェルフェアがご専門の新村毅さんに伺っていきます。新村さん、このアニマルウェルフェアの世界的な広がり、日本にいるとまだなかなか実感が湧かないという方も多いと思うんですが、どのようにご覧になっていますか。

新村毅さん (東京農工大学教授)

新村さん:世界がグローバル化する中で、やはりSDGsへの関心が高まってきた。その中でやはりアニマルウェルフェアもグローバルスタンダードになってきたということが言えると思います。私自身も日本の外に一歩出た時、例えばヨーロッパに行った時にスーパーに行きますと、全ての卵の一つ一つにラベルがつけられているんです。ケージなのか、ケージフリーなのかということが分かる状態で、やはりヨーロッパの消費者というのは動物がどう飼われているかというのを判断して買っていくということに私自身も非常に驚かされました。

保里:とはいえ、日本では卵の自給率も9割以上という中で、これまでのやり方を続けるわけにはいかないものなんでしょうか。

新村さん:これまでのやり方をこの先ずっと続けていくというのは、なかなか難しいかなと思います。と言いますのも今、国際機関の中でアニマルウェルフェアの世界基準というものを作っているんです。例えば止まり木ですとか巣箱というものを設置してあげましょうというのを推奨する基準になるんですが、その国際機関に日本も含め93%の国と地域が加盟してるという状態ですので、日本だけがグローバルスタンダードというものに対応しないというのはなかなか難しいのかなと思います。

保里:そうした中で、アニマルウェルフェアについて国は一体どのようなスタンスなのか、農林水産省は次のように話しています。

農林水産省 畜産振興課 犬飼史郎課長
「(ケージやケージフリーなどの)各方式には、それぞれアニマルウェルフェア上のメリットとデメリットがある。そういうものを一概に比較して、どれが『最も優れている』ということは難しい。ハード、ソフト両方を備えた総合的な取り組みですし、多様な取り組みは認められるべき」

保里:つまり国としてはアニマルウェルフェアの趣旨には賛同しているけれど、いろいろなやり方を認めるべきだということなんでしょうか。

新村さん:ケージフリー=アニマルウェルフェアではないということなんだと思います。アニマルウェルフェアというのは動物の状態のことで、その動物の状態を理解するために5つの観点から理解する、5つの自由というものがあるんです。

ケージフリーは例えば正常な行動ができる自由というものが十分に満たされるわけなんですが、例えばつつき合いによってけがが多くなったり、あるいは病気が出てきたり、そういった痛みやけがや病気からの自由というものについてはやはりデメリットが大きくなるということなんですが、一方でケージ飼いは正常な行動ができる自由というものは大きなデメリットがある。更にそのデメリットを解消するというものも、非常に難しくなっているというのがあると思います。一方でそのケージフリーというものは、もし本当にけがとか病気、そのリスクというものを解消することができれば、やはり総合的にはアニマルウェルフェアのレベルというものはケージフリーで高くなる可能性が高いということが言えると思います。

保里:生産者の方からは、日本で進めていくのは難しいんだという切実な声もありましたが、日本ならではの独自の課題というのもあるんでしょうか。

新村さん:大きく2つありまして、1つはアジアはモンスーン気候ですので、温暖湿潤な気候の中で細菌が増殖しやすい、病気のリスクが高くなるというのがあると思います。もう1つは生食文化ですね。私たちは生卵を食べるという独特な食文化がありますので、やはり卵の殻についたサルモネラ菌のリスクが高くなってしまう。ただ、そのサルモネラ菌のリスクは解消することができるんですが、リスクを解消するためのコストがどうしても高くなってしまうということが問題だと思います。

保里:そして気になる味や、栄養についてはどんなことが言えますか。

新村さん:アニマルウェルフェアを確保することで、動物の健康の状態が高くなる。そうすることで、鶏の体の中の代謝産物というものが変わってきて、それが血中を通じて卵黄に蓄積していくと。卵黄中の栄養がよくなることが私たちの研究で分かりつつあります。もう1つは、動物の健康の状態がよくなることで、動物に投与する抗生物質の量を減らすことができるということも分かってきています。(※日本では、産卵中の採卵鶏への抗生物質の使用は禁止されています)

保里:そうした中で続いてご覧いただくのは、アニマルウェルフェアを重視するグローバル企業の思惑についてです。その背景には何があるのでしょうか。

"アニマルウェルフェア宣言" 拡大の背景に何が?

年間20億個もの卵を調達する、大手ファストフードチェーン。

"2025年までに、全ての卵をケージフリー卵に切り替えます"

今アメリカでは、スーパーや外食チェーンを中心に、こうした表明をする企業が相次いでいます。その数300社以上。いずれもアニマルウェルフェアを経営課題の大きな柱と位置づけています。その背景にあるのが「ESG投資」と呼ばれる新たな投資の潮流です。

投資先を考える際、CO排出などの環境問題、社会問題への取り組み、企業統治などの課題について企業がどう取り組んでいるのか評価しようという考え方です。実は、アニマルウェルフェアもESG投資の重要な指標の一つとなっています。

これは食品関連企業150社についてアニマルウェルフェアへの取り組み度合いを評価し、6段階で格付けしたリポート。こうした情報が、投資する企業を選ぶ材料とされているのです。

ESG投資に特化した金融商品を扱う、投資会社の副社長アンドリュー・ニーブラーさんです。

保里
「ケージフリー卵への切り替えが進んでいますが、ESG投資が大きな影響を与えたのでしょうか?」

ESG投資会社 共同創始者 アンドリュー・ニーブラーさん
「ケージフリーが業界の標準となったのは、ESG投資の広がりによるものです」

ニーブラーさんは、ESG分野に消極的な企業は、投資の引き上げや不買運動など大きなリスクにさらされると指摘します。

アンドリュー・ニーブラーさん
「マクドナルドの消費者や、顧客のすべてがケージフリー卵を使うことを評価しているわけではありません。しかし長期的に見れば、そうすることによって企業の先見性や危機管理能力をアピールすることができるのです。もし取り組まなければ企業は顧客を失い、評判を落とし、市場を丸ごと失うことになるかもしれません。これはリスクマネジメントの問題なんです」

広がるアニマルウェルフェア 日本の食はどう変わる?

日本の企業は、アニマルウェルフェアとどう向き合っていくのか。企業に対し、アニマルウェルフェアに取り組むよう働きかけを行ってきたNPOの代表岡田千尋さんです。

NPO法人アニマルライツセンター 岡田千尋さん
「これはケージフリー宣言をしてくれた企業の一覧です」

去年からケージフリー宣言を行う企業が急増。3年前の7倍以上になっています

岡田千尋さん
「企業の拒否感がなくなってきた。アニマルウェルフェアというものが、SDGsとかそういった文脈の中の重要なものの1つになって、ここら辺が日本のアニマルウェルフェア元年」

アニマルウェルフェアに取り組むことで、企業価値の向上につなげたい。群馬県で50年続く老舗旅館です。

松本楼 若おかみ 松本由起さん
「こちらの卵を2027年までにケージフリー卵にすべて切り替えます」

旅館の食事に欠かせない卵。この旅館では、食品ロスやプラスチックの削減など、SDGsを経営方針に掲げてきました。今月新たな目標として加えたのが、卵のケージフリー宣言でした。

松本由起さん
「私どもは人や環境に優しい旅館をずっと目指すってことをやってきましたので、そこに動物を加えさせて頂いた形ですね」

一方、理想と現実の狭間で揺れる企業も少なくありません。この日、動物保護団体が訪れたのは、全国900か所で社員食堂や給食事業を展開する企業。食材調達の担当者に対し、ケージフリーへの切り替えを打診しました。

ザ・ヒューメイン・リーグ・ジャパン 上原まほさん
「御社ではそういった方針は出されますか?」

給食事業会社 塚平高裕部長
「正直言うと『ぜひやってください。(ケージフリー)宣言を出してください』って言ったら、なかなか正直出せないところはありますよね」

上原まほさん
「鶏が一番の当事者だと思っているんですよね。声を出せない鶏のために私たちが存在しているので、やっぱり譲歩はできない」

この企業では、既に1店舗でケージフリーの卵を導入しています。しかし調達先の確保やコスト面の課題が大きく、更なる拡大には慎重にならざるをえないと言います。

塚平高裕部長
「やっぱり伸び伸びと動物らしく卵を産んで頂いたものを食べたほうが、僕らとしては本当は一番いいとは思ってるんですよね。ただそうは言っても企業は利潤を追求しないといけないところがあって、悩みながら進んでいるというのが本音ですね」

広がるアニマルウェルフェア 背景に"ESG投資"?

保里:ESG投資については、以下のリンクからより詳しくご覧いただけます。

「ESG投資」とは?
世界で加速ESG投資 投資家に聞く

ESG投資などに詳しい、河口真理子さんにも伺っていきます。河口さん、この世界の投資の中でESG投資というのは今どれくらいの割合を占めているのでしょうか。

河口真理子さん (立教大学特任教授)

河口さん:2020年の数字ですが、世界全体で見まして36%、3分の1強ということになります。

ただ地域によって結構差がありまして、先行しているヨーロッパでは気候変動のような環境情報というのは当たり前になってきていて、もうデータを取る必要はないんじゃないかということも言われるようになってきていて、質の勝負となっています。そうなると、環境の中でももっとほかの要素で、今回のお話のあったアニマルウェルフェアですとか森林破壊ですとか、こういったテーマも加味したファンドというのがより重視されるようになってきています。

保里:そうした大きな流れの中で、SDGsに則した考え方というのを投資家も無視できなくなってきているということなんでしょうか。

河口さん:そうですね。多くの投資家は無視できなくなっているということもありますし、ESG投資を推し進めてきていた世界の主要な年金基金などは逆にこのESG投資を使ってSDGsを推進するというようなことも考えて、それでESG投資とSDGsを両方推進するということもやっています。

保里:「利益だけを追い求める」にとどまらないということなんですね。

河口さん:そうですね。投資家がある意味、我慢強くなっているけれども欲張りになってきていると。欲張りになってきているということは、利益も当然稼いでいただきたいんですが、そのために社会にいろいろと害をなしてはいけない、社会によいことをしてほしい、だけどそれは簡単にはすぐに成果は出ないので長期には待つけれども利益と社会貢献、この両建てを投資家が求めるようになってきています。

保里:新村さん、そうした中で実際の生活の中では安い卵が生活の支えになっているという人も決して少なくありません。そうした中で私たちは、このアニマルウェルフェアというものを一体どれくらい重視していかなければいけない状況なんでしょうか。

新村さん:難しいところだと思うんですが、動物の状態がやはり連続的なものである以上、0か100かということではないと思うんです。少なくともアニマルウェルフェアを配慮することによって、生産コストがどうしても増加してしまうと。その増加した生産コストを誰が負担するのかといえば、生産者ではないと思うんです。生産者はやはり消費者が求めるものを作りますので、そういう意味では消費者がまず知ってもらう。特に日本の消費者はスーパーにある卵の価格というものに目を向けがちだったんですが、これからはやはりその卵の向こう側にある鶏の状態というところに目を向けていただいて、まずアニマルウェルフェアとは何かというのを知って、考えて、そして選んでいただくというところが非常に重要かなと思います。

保里:河口さん、今のお話も踏まえて私たち消費者もこの身近な食というものについて、いま一度見つめ直す時に来ているということなんでしょうか。

河口さん:そうですね。SDGsのゴール12は「つかう責任 つくる責任」となっています。なので、企業が作ったものをどう使うかというのは消費者の選択肢で、アニマルウェルフェアの情報が今までなかったけれどもそういう情報を知ったら何を選択するかというのはまさに私たち消費者に委ねられていまして、かつその消費者の動きによって企業も変えることもできますし、社会も変えることができるんだと思います。

保里:この大きな流れの中で、このアニマルウェルフェア、卵一つから分かることというのは私たちにどんなメッセージを投げかけていると考えますか。

河口さん:たかが卵なんですが、されど卵。やはりその命ということを考えますと、その命の大事さというのをどう考えるのか。経済的な面でいろいろなハードルは高いと言いながらも、毎回全部の卵をケージフリーにする必要はなくて、例えばお誕生日だから、きょうはすき焼きだからとか、そういうことで少しずつちょっといい卵を食べてみようかなとか、そういう形で消費者が少しずつ入っていくことでマーケットも広がっていくし、社会の認識も変わっていくのではないかなと思っております。できるところから消費者としてはスタートしていくというのが大事かなと思っています。

保里:ありがとうございました。


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