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2021年11月24日(水)

ピーター2.0
サイボーグとして生きる

ピーター2.0 サイボーグとして生きる

全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病ALSと診断され、余命2年と告げられたイギリス人のピーター・スコット-モーガンさん。選んだのは、呼吸や消化、会話など失われていく体の機能を、次々と機械に置き換え、全身をサイボーグ化することで難病を克服する道。日本のメディアとしては初めて、ピーターさんの日常にカメラで迫る。人はどこまで肉体にテクノロジーを取り込んでいくのか…。未来のAIと人類のあり方を考える。

出演者

  • ピーター・スコット-モーガンさん
  • 稲見 昌彦さん (東京大学 先端科学技術研究センター教授)
  • 井上 裕貴 (アナウンサー) 、 保里 小百合 (アナウンサー)

※放送から1週間はNHKプラスで「見逃し配信」がご覧になれます。

人類初のサイボーグ テクノロジーで命をつなぐ

井上:全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病、ALSに自らをサイボーグ化することで立ち向かおうという、ピーター・スコット-モーガンさん。イギリスのご自宅からご参加いただきます。お会いできてうれしいです。

保里:ご出演ありがとうございます。

ピーター・スコット-モーガンさん

ピーターさん:こんばんは、日本のみなさん。まだ私の翻訳ソフトが十分ではないので、ひどい日本語かもしれませんが、これぐらいなら何とか話すことができます。ネオ・ヒューマンこと、ピーター2.0からのごあいさつでした。

井上:日本語でありがとうございます。実はピーターさんは、このアバターで会話をされるんですけれども、なぜそうされているのか。それはこのあと詳しくお伝えしていきます。そしてピーターさんのパートナー、フランシスさんと、おいのアンドリューさんにもおつきあいいただいています。お二人ともよろしくお願いします。

保里:皆さん、ようこそ。

フランシスさん:こちらこそどうも。

アンドリューさん:会えてうれしいです。

井上:そしてスタジオには、東京大学先端科学技術研究センター教授、稲見昌彦さんをお招きしております。稲見さんは、人間の体をテクノロジーでどうアップデートしていけるのかという、まさにサイボーグにつながるテーマを研究されています。稲見さん、そもそもサイボーグというのは何なんでしょうか。

稲見 昌彦さん (東京大学 先端科学技術研究センター教授)

稲見:はい。サイボーグとは簡単に言いますと、人が機械と一体化して機能しているシステムのことをサイボーグといいます。そういう意味では実は、私もサイボーグなんです。

井上:すごい!1、2、3、4、5、6本!これ大変気になりますけど、稲見さんのこの装備について後ほど詳しくお伝えしていきます。

保里:ピーターさんの試みを、2つのポイントからひもといていきます。まず、ピーターさんはなぜサイボーグとして生きる道を選んだのか。日本のメディアとしては初めて、ピーターさんの日常にカメラで迫りました。

自分の体を機械やAIに置き換え

イギリス南部の海沿いの町、トーキー。ミステリー作家、アガサ・クリスティを生んだこの保養地は、今やサイボーグが暮らす町として知られています。ピーターさんのパートナー、フランシスさんが出迎えてくれました。

ピーター・スコット-モーガンさん
「NHKのみなさんですね。お会いできてうれしいです」

この日、ピーターさんのサイボーグ化を進めるチームがリモート会議を開いていました。主なメンバーはアメリカの半導体メーカーや、中国のパソコンメーカーなど、名だたるIT企業の技術者たち。企業の壁や国境を越えて、技術を持ち寄っています。

ピーター・スコット-モーガンさん
「インテルの参加は本当にありがたいです。」

アメリカの半導体メーカーが提供したのは、最新のAI、人工知能を組み込んだ会話システムです。AIは、ピーターさんが声を失う前に録音した30時間分の音声を学習しています。

手が動かないピーターさんは、目の動きで文字を入力。文章が出来上がると、AIがかつてのピーターさんさながらの声で話します。

ピーター・スコット-モーガンさん
「AIのおかげで今でも歌えます。♪~がれきの中を歩く 割れたガラスを踏みしめて 皆 私を迷惑だという でもそれはもう過去のこと~」

ピーターさんがALSと診断され、余命2年と告げられたのは4年前のこと。絶望的な状況の中、希望の光となったのは、かつて博士号まで取ったロボット工学の知識でした。

医学で命を救えなくても、最新のテクノロジーを駆使すれば難病を克服する道を開けるのではないか。

<2018年>

ピーター・スコット-モーガンさん
「この宇宙のどんな問題も解決できると確信しています。賢明で勇気があり、最高にクールなテクノロジーがあれば。私の人生をかけた実験です」

ピーターさんとフランシスさんは、長年に及ぶ社会の風当たりを乗り越え、イギリスで初めて公式に認められた同性のカップルです。

ピーターさんはフランシスさんと共に、再び常識の壁を打ち破る闘いに臨みました。2018年、協力してくれる医師を探し当て、プロジェクトが始まりました。

前代未聞だったのは、病状が進む前のまだ機能している肉体に先手を打つように次々とメスを入れ、機械に置き換えていったことです。

物を食べられなくなってからでは遅いと、胃に直接栄養を送り込むための装置を取り付けました。

同時に、排せつを処理するシステムも装備しました。

更に、ALSの死因の一つが嚥下障害による誤嚥性肺炎であることに注目。それを防ぐために、ここでも先回りして食道と気管を切り離し、空気を送る装置を気管に接続しました。

こうした生命維持の装置を全て格納しているのが、ピーターさんと一体化した車いすロボットです。

ピーターさんのおい アンドリューさん
「この装置でピーターの呼吸を支えています」

アンドリューさん
「このポンプがピーターに24時間、水分を補給しています」

ピーター・スコット-モーガンさん
「こんなにきちんと水を飲むのは、サイボーグになってからだよ」

更に、ピーターさんの顔を3Dスキャンし、AIの音声に合わせて表情を変えるCGのアバターも制作しました。

ピーター・スコット-モーガンさん
「とても感激です。ありがとう」

ピーターさんのサイボーグプロジェクトは、まだ道半ば。

これが、ピーターさんが描く未来の姿です。腕には、かっちゅうのように身につけるロボットアームが装備され、胸には会話用のアバターを表示するモニターが取り付けられます。

そして、コントローラーも兼ねたAI搭載の仮想現実グラス。仮想空間で、世界旅行や宇宙遊泳まで楽しめることを目指しています。

常識を打破!?ピーターの決断

井上:では早速、ピーターさんにお話を伺いたいと思います。ご覧いただきましたようにピーターさんは目の動きでことばをつむいでいくため、私たちは事前に質問をお送りして、それを準備していただきました。
ピーターさん、自らの運命に挑み、サイボーグになるという想像を絶する決断はまるでSFの世界を見ているようですが、ピーターさんにとって自分自身が生き続けること以外にも何か成し遂げたい大きな動機、目的があったのでしょうか。

ピーターさん:私は、自分の肉体に閉じ込められてしまう現実を変えたかったのです。ALSだけでなく、事故や病気や生まれつきの障害、老化や認知症もそうです。究極的には、誰もがそういう不自由さから解放されるべきです。幸運にも私はその第1号となりました。"ネオ・ヒューマン"として、未来に飛躍する最初の実験です。もちろん怖いですよ。しかし、絶望のさなかでも常識を打ち破り、宿命にあらがい、自ら運命を切り開くことで生きた証しを未来に残せるかもしれません。そのとき、私たちはすべてを変えられるのです。

井上:ピーターさんは自らを実験台にして得られたテクノロジーを、さまざまな障害がある人々が利用できるよう財団も設立されています。本当に壮大な試みですが、一方でピーターさん自身にはどうテクノロジーを使っても、やはり元のようには生きられないというもどかしさはありませんか。

ピーターさん:元のように生きたいとは思っていませんよ。10代に戻った気分です。当たり前と思っていた「常識」を打ち破れるのですから。例えば、眠りながら食事ができます。夜中にトイレに起きることもない。どんな言語も話せるでしょう。プロの歌手より音域も広い。つまり、私の生活の質は変わったのです。さらに、わくわくすることがあります。コンピューターやAIの性能が上がれば、私のパワーも上がるからです。コンピューターは2年で2倍進化します。たった20年で1000倍の進化を遂げているでしょう。私の生活の質はどんどんよくなっていくでしょう。

保里:ただピーターさん、体の機械化が進んだとして、大切な自分の感情をこのようなアバターで思うように全て伝えることができるんでしょうか。

ピーターさん:では、未来から来た人を紹介しましょう。"ネオ・ヒューマン"こと、未来の私です。私は日々進化するサイボーグです。これが進化した私です。こんにちは。ピーター2.0です。未来へようこそ。

井上:稲見さん、ピーターさんはテクノロジーで手にした力を自分の能力のように語っている感じがするんですけど。

稲見さん:それがまさにサイボーグ技術というものを語る時に、非常に重要な観点なんですよね。自分の意思によってやりたいことをやりたいようにできるようになる、活躍できるようになる。これが一つのサイボーグという条件なのかもしれません。実はこの…。

井上:何ですか?これ、すごいですね。

稲見さん:ある意味サイボーグ的なものだと言えるんですが。実はロボットによる6本目の指なのですが、私の腕の部分に取り付けられたセンサーで腕の筋肉の動きを読み取って、それによって思いどおり動かすことができるんです。これ外してしまうと、今度はちょっと喪失感があるというか、何か残念な気持ちになってしまうんです。大がかりな装置でなかったとしても、スマートフォン、それこそ「歩きスマホ」ということばが問題になっているように、ある意味われわれの身体の一部として、能力の一部として使いこなしていますよね。そういう意味では既にサイボーグ化というものは生活の中に溶け込み始めていると言えるかもしれません。

井上:ピーターさんにちょっと聞いてみましょうか。最近自伝を出版されたことで、ピーターさんの挑戦に対する注目や賛同の声が寄せられていることと思いますが、一方でその挑戦が常識からかけ離れていることで、疑問や批判の声も届いているのではないかと思うのですが。

ピーターさん:最もバカげた批判は、私の挑戦が正しいとは思えないというものでした。しかし、常識は変わります。女性の役割や老い、障害や同性愛についても常識は進化してきました。常識を打ち破る存在、それが人間です。そしてどの常識を守るのか、その合意こそが文明社会を作るのです。

井上:ピーター・スコット-モーガンさんについての詳しい情報は、以下のリンクからアクセスいただけます。

クロ現 取材ノート
ピーターさん 常識と闘う人生

また、番組を最初からご覧になりたいという方は「NHK+」でもご覧いただけます。

保里:稲見さん、振り返ればピーターさん、人生においてもさまざまな常識を覆してきた人生だったわけですよね。

稲見さん:そうですね。ピーターさんはご自身がゲイであることを公表されていらっしゃるんですが、このように社会的な常識にも立ち向かう、そういうピーターさんの姿勢が、今までのように徐々に緩やかに死を迎えていくということではなくて、テクノロジーの力で医療の限界というのを突破したい。そしてまた新しい考え方、新しい生き方ということを世に問いたい、そういう前向きな姿勢から、われわれも学ぶことがたくさんあるんじゃないかと思いました。

井上:その点で言うと、ALSの方も含めて誰しもがピーターさんのようになれるわけではないとは思うのですが、自分を変えていくことだけではなくて、同時にその姿を周りに見せていくことで環境そのものを、私たちの意識を変えていこうとしているのかなと思ったんです。

稲見さん:そうですね。

保里:さあ、そのピーターさんが目指しているのは自らの脳と人工知能、AIをつなげることです。そして今、世界各地では脳波など、脳の活動を示す信号をAIに学習させることによって、人間の脳に秘められた力を引き出そうという研究が始まっています。

脳とAIが融合する近未来

保里:脳とAIが結び付く感覚を体験できると聞いて、脳科学者の藤井さんを訪ねました。

ブレインテック・コンソーシアム 藤井直敬代表理事
「藤井です。よろしくお願いします」

保里
「ずばり、何ができる場所なんでしょう?」

藤井直敬代表理事
「超能力を手に入れる感じ。考えただけで、ものが動かせる」

井上:そんなことできるんですか?

保里:そうなんですよ。 フランスに本社があるベンチャー企業が開発した、この装置を使うんです。

井上:何ですか、これ。あっ、頭に?

保里:これを頭の後ろに取り付けて、しばらくなじませますとこんなことができるようになったんです。見てください。

藤井直敬代表理事
「4つの数字を入力します。銀行のPINコードみたいな。集中していってください」

保里:これから9606という4つの数字を頭の中で念じるだけで、画面に表示してみせます。

井上:念じるだけですか?

保里:念じるだけです。見ていてください。

井上:え~、目の動きでやってるわけじゃないんですよね?

保里:違うんですよ。 念じてるんです。正直、私も驚きました。

井上:どうやったんですか?

保里:実はですね、私が数字をイメージしている時に脳の後ろの方から微弱な電気信号、いわゆる脳波が出ているんです。この脳波の意味をAIが読み解いて、どの数字をイメージしているのかを画面に出してくれるということなんです。

井上:その脳波の意味をAIって読み取れるんですね。

保里:そうなんです。

井上:え~。

井直敬代表理事
「今までは、ただ(脳波を)計測するだけだった。その意味をいかに抽出する、そのプロセスにAIが入ってくれていることで、今までできなかったような応用が広がってきている」

保里:続いてはこちら、ピーターさんと同じ難病のALSで手が動かなくなった男性です。この方も、念じるだけでパソコンで検索をしたり、文字を打ったりできるということです。

井上:この流れから来ると、やはりこの方も脳波を読み取る装置をつけるってことなんですか?

保里:この方がつけているのは、これです。

井上:金網?針金?何だ、これ。

保里:実はですね、血管を広げる時に治療で使うステントの形をしたセンサーなんです。

井上:えっ、すごい頭の中に入れているんですか?

保里:カテーテルを使って、脳の血管に入れるんです。

井上:信じられませんね。

保里:センサーが捉えた脳波は、首元に埋め込まれた発信器まで送られます。

井上:それで?

保里:それを今度は皮膚の外側から信号をキャッチして、またまたAIが読み解いて、パソコンを動かしているということなんです。

井上:これもつまりAI。

保里:そして最後に訪れたのが、AIで脳の力を引き出そうという研究分野で今、最も注目されている企業の一つです。ここで開発されているのが…。

井上:ヘルメットですか?

保里:そうです。

井上:これも脳波を読み取るってことですか?

保里:いえ、これはですね、レーザー光線を使って大脳皮質を流れる血液と酸素の量の変化を詳細に捉える装置なんだそうです。

井上:う~ん?

保里:脳波の計測に比べて、脳の情報をはるかにたくさん得られるそうなんです。その大量の情報をAIに学習させて、脳の全容を解明しようというんです。

井上:何ができるんですか?

保里:例えば、脳の状態に合わせて何を食べるべきか、誰が書いた本を読むべきか、どんなテレビ番組を見るべきかといったことまでAIがおすすめしてくれるようになるそうです。

井上:ということは「『クロ現プラス』を見て」とか?

保里:まさに。

井上:いいですね。

カーネル ブライアン・ジョンソンCEO
「脳は人体で唯一解明できていないものです。目のすぐ後ろにあるのに、面白いでしょう?AIなどの最先端技術を駆使すれば、脳を解明できるところまできています」

究極の姿は…新たな人類!?

井上:保里さん、気付かないうちにここまで進化しているんですね。

保里:そうなんですよ。驚きました。手で入力するわけでもなく、なんだか感じたことのない自分の能力が拡張していくような感覚、不思議な感覚でしたよね。

井上:ピーターさんに聞いてみましょうか。人間の脳をAIにつなげることで、何を目指しているんでしょうか。

ピーターさん:私のロボット工学の本は、こんなことばで終わっています。「人類はいつの日か、ぜい弱な肉体を半永久的に機能する機械に置き換え、知性をスーパーコンピューターで強化するだろう」1984年に書きました。以来私は、AIをライバルではなく、パートナーにすべきと主張してきました。AIと人類がともに曲を奏でるように、調和するということです。

保里:わくわくする一方で、不安も感じます。AIとつなぐことで、脳にダメージはないのでしょうか?思考がAIに操られるなど倫理的な問題もあるかと思いますが、どう考えますか?

ピーターさん:私とAIとの関係は、フランシスとの関係に少し似ています。支配される関係ではありません。あくまでパートナーです。AIが私をよりよい方向へ導いてくれるなら何の問題も感じません。むしろ物忘れが改善するならありがたい。もちろん、AIに意思を無視されたくはありません。フランシスのようであってほしい。でも自分の意思を、ある程度手放してでもAIと協調したいのです。

保里:またしてもはっとさせられましたけれど、稲見さん、ただ私が体験をした時には慣れない中でちょっと怖さも感じたんですよね。私が考えていることをAIに読み取られてしまうということは、その脳の情報がいずれAIに読み取られていってしまって、例えばコピーされてしまう。

稲見さん:実際研究としては、人の行動履歴や脳活動等をきちんと記録して学習させることによって、ある人と同じように判断するようなデジタルクローン、いわゆるヒューマンデジタルツインといわれるような技術も今、研究が始まっているとこなんです。

保里:やはり期待と怖さと両方感じますけれど。

稲見さん:逆に悪いことに使おうと思えば使えてしまうわけです。そういう悪影響も含めてさまざまな課題、もしくは メリットとデメリットの部分というのをきちんと洗い出して、それを分かった上で利用していく。そういう考え方が大切なのではないかなと思いました。

井上:ピーターさん、未来の話をさせてください。AIの劇的な進化によって、自分自身のコピーまで作れる可能性が現実のものとなってきています。たとえ脳や体がなくなっても、あなたをコピーしたAIは生き続けることになります。そのAIは「あなた」だと言えるんでしょうか。

ピーターさん:いい質問ですね。もしあと20年私が生きたなら、AIは私の活動の大部分を担っているでしょう。認知症の私を助けてくれているかもしれない。私の肉体が死を迎えても、驚くほど小さな違いしかないと思います。残されたAIのピーターは、本物の人間と同じです。慈しむ心や、常識を打ち破ること、そして愛。これらがあれば、生物かAIかなんて、ささいな問題です。

稲見さん:フランシスさんに質問です。ピーターさんのAIを、ピーターさんと同じくらい愛せますか?

フランシスさん:面白い質問ですね。間違いなく愛せます。40年以上誰かを愛したら、その人の死で愛が消えることはありません。愛情は心の中に残ります。それに、ピーターによればAIのピーターの方が賢くて面白くなるそうです。こちらのピーターは冗談が下手ですけどね。とにかくとても興味深い状況です。私は機械と相思相愛になるのかもしれません。

井上:アンドリューさんは?

アンドリューさん:私の子供や孫が、ピーターが亡くなったあともピーターに会えると思うとワクワクしますね。

稲見さん:SFの世界が現実に起こっているなというところを感じましたし、いわゆる生身か機械かというところを超えた関係性の永続性みたいなものを感じてしまいました。

井上:ピーターさんの人生のゴールとは何でしょうか。

ピーターさん:私は人間という存在に、革命を起こしたいのです。今、人類は進化できずにいます。一方、AIとロボットは加速度的に進化している。私は、人類が進化の波に乗り遅れてほしくないのです。私たちは、老いや障害によって力を失う恐怖から逃れられる時代の夜明けにいます。貧しい地域でもAIとともに生きるようになる。中には私のようにAIと融合し、人類の定義を広げる人もいるでしょう。そして人間とAIが融合する"ネオ・ヒューマン"は、理想の自分を実現するのです。これは遠い未来ではなく、たった数十年後の話なのです。

井上:ピーターさん、フランシスさん、アンドリューさん、ありがとうございました。

フランシスさん:どうもありがとう。出演できて光栄です。

アンドリューさん:とても楽しかったです。

ピーターさん:ありがとう。また会いましょう。サヨナラ。

井上:最後は日本語でごあいさついただきました。さて、ピーターさんのアバターの動画は、今回お伝えし切れなかったものも含めて全て以下のリンクから、また稲見さんへのインタビュー記事も掲載していますのでどうぞご覧ください。

稲見さん、なかなか刺激的な時間でしたね。

稲見さん:そうでしたね。こういうテクノロジーと人との関係性を考えていく時に、人間ということばを「人」という漢字と、あと「間」という漢字で分けて考えるといいと思っていて、恐らくこういう技術というのは人間の「人」の部分、身体の部分というところは今後もどんどん変えていくと思うんですよね。
ただ、今回ピーターさんとフランシスさんの話を両方ともお伺いして、人と人との間の部分ですね、人間の「間」の部分。そこは例えば愛情とか、信頼とか、そういったものは逆に技術が進んだとしても普遍なのかなと感じましたね。

井上:私も稲見さんに同意見で、やはりピーターさんの次の進化の姿がすごく楽しみですし、また多様な社会を目指す中で、そこに今回サイボーグが加わるという社会。社会の幅も広がりますし、今後どういう社会像を描くかというのは本当に試されているんだなと感じましたね。本当に近い近い未来をお伝えしました。稲見さん、本当にありがとうございました。

稲見さん:どうもありがとうございました。


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