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2021年7月13日(火)
「取り残された被災者」を救えるか~ 新たな支援『災害ケースマネジメント』

「取り残された被災者」を救えるか~
新たな支援『災害ケースマネジメント』

地震、台風、豪雨-。近年、毎年のように大規模災害が発生している中、住宅や生活再建が進まず「取り残された被災者」の存在が明らかになっている。高齢、障害、病気や生活困窮など様々な困難を抱える被災者が、支援制度を活かせない実態があるのだ。 背景にあるのは災害対応が何十年も前に作られた古い法律に基づき、復興があくまで道路や建物などハード中心なこと。被災者の生活には目が向けられないまま、家の損壊状況だけで支援が決まることにある。また、これまで災害に直面したことのない自治体職員が、他の地域での災害の教訓を共有できず、対応の中心的責任を任されている構造も大きな課題だ。 そのような中、被災者一人ひとりに寄り添い、災害NPO、弁護士、建築家、介護などの専門家が連携して生活再建を支える「災害ケースマネジメント」と呼ばれる新たな取り組みが、被災地を中心に広がり、期待されている。 東日本大震災から10年が経った今、災害大国ニッポンのあるべき災害支援の仕組みについて考える。

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※放送から1週間は「見逃し配信」がご覧になれます。こちらから

出演者

  • 菅野拓さん (大阪市立大学大学院 准教授)
  • 斉藤容子さん (関西学院大学 准教授)
  • 井上 裕貴 (アナウンサー) 、 保里 小百合 (アナウンサー)

復興から取り残された被災者 支援制度と現実のはざまで…

去年7月、記録的な豪雨に見舞われた熊本県・人吉市。市内を流れる球磨川が氾濫。死者20人、全半壊2,000棟以上の深刻な被害が出ました。

この日、県内の大学のボランティアチームが生活の再建が進まない被災者を訪ねました。

こちらの70代の女性。壊れた自宅で暮らし続ける、いわゆる在宅被災者です。

被災した女性(70代)
「2回のベランダからです」

自宅は、1階の天井近くまで浸水。壁や天井はむきだしのまま放置され、今も雨漏りする状態です。大量の泥や、がれきが残された自宅の損害割合は「全壊」と認定されました。

家を失った場合、被災者には「災害公営住宅」と「被災者生活再建支援金」が用意されます。しかし家が残り、修理を選んだ場合、受け取れるのは「応急修理制度」と「生活再建支援金」、合わせて最大260万円です。

自宅を修理することを選んだ女性。費用を見積もったところ、およそ1,000万円に上り、トイレや台所などしか直せませんでした。

被災した女性(70代)
「やっぱ年金だけしかないから、いまさらもう借金はできないんですよね。借り入れて返すってことは」

熊本学園大学 高林秀明教授
「こちらやるだけで259万じゃ足りないですよね」

被災した女性(70代)
「だから一番お金のかからない方法が、これ(放置)なんです」

避難生活で生じるさまざまな個別事情に、制度が柔軟に対応できないケースもあります。

夫婦でお店を経営していた、80代の女性。

高林秀明教授
「当時、この辺はどれくらい水が来たんですか?」

被災した女性(80代)
「あの線が入っている。あそこまでだから、相当でしょ」

仮住まいで避難生活を送りながら自宅の修理を始めたところ、思わぬ壁にぶつかりました。3階近くまで浸水したにもかかわらず、鉄筋構造だったため、損害割合は「半壊」と認定。

半壊では家を解体しないかぎり、「災害公営住宅」に移れません。その上、「生活再建支援金」は出ず、受け取れたのは「応急修理」の59万5,000円だけでした。

女性がこの制度で自宅を修理したところ、市から「応急修理をしたら半年以内で避難先を退去するのが原則だ」と伝えられたといいます。

夫は避難生活中にがんが見つかり、ことし1月に手術をしたばかり。引っ越しは負担が大きいので、退去期限を延ばしてほしいと伝えましたが、個別の事情はなかなか認められませんでした。

被災した女性(80代)
「もう少し置いてくれということを(市に)お願いしたけど、それができない。人間の生命に関わることをね、私が訴えてお願いしているのに、お役所というところは『こういう制度になっています』、それで終わってしまうわけですね」

多くの被災者を支援してきた高林教授は、被災者を救うための制度が生活再建に十分に生かされていない点を問題視しています。

高林秀明教授
「本当高齢の方とか、生活再建のところ、ふだんの生活のところでの支援がやっぱり届かない状態で、かなり無理されてる。そこになかなか支援が届かないっていう現状はありますよね」

なかには、人生の支えとなるペットのために、先行きの見えない選択をした被災者もいます。

この女性は2年前、夫に事故で先立たれて以来、犬と猫と暮らしてきました。しかし、避難先の仮住まいではペットが飼えません。家は全壊のため、災害公営住宅に入居できますが、申し込むことを諦めました。

被災した女性(60代)
「毎日こうやって様子見に来て、また雨が降ったら思い出すもんだから、もし水があがったら、このひとたち死んじゃうと思って」

「見積もりを出してもらったのが、これ」

被災した女性(60代)
「363万円」

一刻も早く自宅を修理してペットと暮らすことを望んでいますが、受け取れる支援金では足りません。

そこで、工具を初めて自分で買い、慣れない修理をすることにしました。

被災した女性(60代)
「出過ぎた」

年金暮らしで家のローンの返済も残っているため、出費をできるだけ抑えたいのです。

被災した女性(60代)
「制度こういうのがあります。これもありますよ。これだけ支援しますよと言われたときは、『よかった、これで修理ができる』と思ってすごく喜んだのに、次から次へダメになっちゃって、一切自分に当てはまらない。もうあきらめました。全てあきらめました」

避難先に住み続けられるのは、あと1年あまり。それまでに自宅の修理が間に合うか、不安だといいます。

被災した女性(60代)
「期日が来たら、もう無条件で出されちゃいます。とにかく帰りたい、早く修理ができればな、もうそれだけですよ、毎日」

被災者が生活の再建から取り残される実態を、どう見ているのか。市の担当者に問いました。

人吉市 被災者支援対策課 和泉龍二課長補佐
「全員を救っていくような方向で進めていきたいと感じておるところなんですが、どうしても法律、制度というところで基準を満たさないと、その制度が利用できない。なかなか救えないところというのも、実際あるのではないかと感じております」

なぜ復興から取り残されるのか

井上:熱海の土石流災害や、山陰地方での豪雨被害など、被災された方々、本当に不安な日々を送っていらっしゃると思います。今、誰もが被災者になり得る状況の中、大切な情報をお伝えしていきます。

保里:なぜ、被災者が制度から取り残されるのか。そして、そうした被災者を救う手だてとして注目される、「災害ケースマネジメント」について詳しくお伝えしていきます。関連記事からは、災害時に利用できる制度、そして支援団体などについての情報もご覧いただけます。

井上:スタジオには防災や復興政策が専門の、大阪市立大学大学院准教授の菅野拓さんにお越しいただいています。菅野さん、よろしくお願いします。

菅野さん:よろしくお願いします。

井上:今、見てきたように、現行の今の制度では被災者が十分に救済できていないという状況がありましたが、どうしてこういうことが起きてしまうのでしょうか。

菅野拓さん (大阪市立大学大学院 准教授)

菅野さん:やはり、古い法律を使っているということが非常に大きなことかと思います。災害救助法といいまして、戦後すぐにできた法律を使っているのです。それをベースにして、継ぎはぎのように被災者支援を組み合わせていまして、そこが非常に大きな問題だと思います。
また、被災者支援のさまざまな制度の基準が、たまたま住んでいた家の壊れぐあい、それによっているということなのです。そういった非常に古くて、困難をあまりちゃんと反映できないような制度。まさに、継ぎはぎだらけのクラシックカーを運転するような状況で、災害対応をしなければならない社会にわれわれがいると。そういうことだと思いますね。

井上:なかなか被災者に向いていない制度ということなのですね。

菅野さん:そうですね。本当に戦後すぐにできて継ぎはぎで作ってしまったので、運用するのになかなか難しく、困難を1つ1つ見ていくというのは難しいということだと思います。

保里:そうした中で、こちらをご覧いただきたいです。今後懸念されている首都直下地震では、全半壊の被害を受ける1都3県で最大290万世帯の住宅のうち、およそ7割が壊れた自宅で過ごしたり避難所生活が長期化するなど支援を受けられないと試算されているのです。菅野さん、どう受け止めますか。

菅野さん:今のままだと、恐らく大混乱してしまうと思います。やはり、法律やルールをしっかりと変えていかないと対応できないと思ったほうがいいと思います。

井上:そして、もうお一方聞いていきます。かつてNGOや国連職員として災害支援に携わり、人吉市にもフィールドワークに行かれました、関西学院大学准教授の斉藤容子さんです。斉藤さん、私自身もこの10年余り、さまざまな被災地で取材してきましたが、やはり聞かれるのが、先ほどあったような半壊と全壊との線引き、または人的な被害は出ていないけれど、なかなか声高に住宅の被害のことは言えないというようなこともありました。実際、どういう問題が現場で深刻だと考えていますか。

斉藤容子さん (関西学院大学 准教授)

斉藤さん:人吉市のほうに行かせていただいたのですが、再建できる人とできない人との格差が広がっているように感じました。リフォームされて新しく家を再建された人もいらっしゃる一方で、仮設住宅にお住まいの特に高齢者の方、ここを出ていかないといけないからどうしたらいいんだろうという不安を抱えていらっしゃる方もいたわけです。困難な人ほど取り残されてしまうという現状があるかと思います。

井上:なかなか被災者自身も自分から情報を取りに行く、そういう難しさもありますよね。

斉藤さん:そうですね。被災者はさまざまな支援の制度があるのですが、その支援制度はかなり複雑になっています。被災者はそれを理解した上で申請しないといけないわけですが、当然申請しないと助けてもらえないわけです。理解をする前に、申請の期限があったりするわけです。そうすると焦って申請をして、そのあと困るというようなことも起きています。

菅野さん:災害というのが、ある地域にたまにしか来ない問題だ、ということが非常に大きなことだと思います。それがいわば対応に慣れていない自治体の皆さんが、構造的に支援に当たらないといけない。そうすると当然慣れないことですので、自治体の皆さんも制度をちゃんと理解できないままに運用してしまうこともあります。そういった問題が、さまざまな被災地でずっと繰り返されているということだと思います。

井上:今、そういった一部の課題を見てきましたが、こういった中で注目されているものが、「災害ケースマネジメント」です。これはボランティア団体ですとか、NPOなど、支援する側から被災者を訪ねて、専門家と再建をサポートするものなのです。

"復興からひとりも取り残さない" 災害ケースマネジメント

東日本大震災で甚大な被害を受けた、宮城県・石巻市。ここを拠点に、災害ケースマネジメントをいち早く手がけてきたボランティア団体の代表・伊藤健哉さんです。

災害ケースマネジメントでは、ボランティア団体などが被災者のもとへ出向き、抱える事情や悩みを聞き、課題を整理します。ポイントは専門家どうしが連携することで、その人に最もふさわしい支援計画を立て、生活再建へと導くことです。

チーム王冠 伊藤健哉代表
「最大の問題は、家がもう傾いて」

この日、伊藤さんは弁護士や建築士などの専門家と共に、ある被災者を訪ねました。専門家は、ボランティアで参加しています。

80代の女性が暮らす家です。地震の影響で傾いたままのため、災害公営住宅への入居を希望しています。

伊藤健哉代表
「弁護士の先生たちも、今動いてくださっているので」

まず、弁護士が問題の詳細を聞き取ります。

女性(80代)
「(震災直後)もう私、死ぬ思いだったんだけど、本当に独りでね。それで役場に電話したけど、断られたから終わりかなと思って。あとはそれっきり自分で(修理)して、一切電話してない」

弁護士
「じゃあ、り災証明書って今言われても、どんなもんかも分かんないよね」

女性(80代)
「分かんないね…」

この女性は支援を受けるために必要な、り災証明を申請していませんでした。しかも、この地域は津波を免れたため、行政から見逃され、被災者とすら見なされていなかったのです。

女性(80代)
「全体的に(床が)下がっているから」

次に、建築士が家の傾き具合を調べていきます。

建築士
「ここが、こっちに傾斜していますから。こちらに傾斜しています。これが測ると1,000分の24。普通は1,000分の3が許容範囲」

「8倍ぐらい(の傾き)ということ?」

建築士
「そうですね。住める傾斜じゃないってことですね。多分、基礎から変形している。それは地震の影響だと思うんです。危険というのを完全にオーバーしていますから」

弁護士
「生活する上では、健康を害するレベルを超えているからね」

医師
「今(手の)まひは大丈夫なの?」

さらに、医師の意見も仰ぎ、女性を災害公営住宅に入居させたいという提案を町に行いました。

「どうでした?」

弁護士
「基本的には、一般公営住宅の申し込みは可能だと。役場の中の手続きとしては難しくない」

町からは、「被災者としては認められないが、入居させる道を探る」という回答を得ることができました。

伊藤健哉代表
「災害は家を壊すだけじゃなくて、生活そのものを壊していく。その人その人で必要な支援が違ってくるので、災害ケースマネジメントという考え方で取り組まなければ、被災者の再建とか復興というのはない」

災害ケースマネジメントの担い手として、自治体が関わるケースも生まれています。

西日本豪雨で被災した倉敷市真備町では、市が支援体制を整えました。市の予算で、被災した地区すべての世帯を調査。支援が必要な人を見つけ出しました。調査をもとに、ボランティア団体が被災者を訪ね、必要な支援を行いました。

岡山NPOセンター 詩叶純子さん
「ちょっと大工仕事とか、お手伝いできるメンバーがおって。ここに電話してくれたら、みんなでお助けできるので」

浅田文男さん(88)
「廊下の方がちょっと雨降って、ダワダワしよんですわ」

こちらの夫婦は、258万円の支援金を得ましたが、寝室のひと部屋以外は直せませんでした。

浅田文男さん
「壁なんかも、こんな」

詩叶純子さん
「ああ、やばいな」

「下からやるんか、上からやるんか?」

詩叶純子さん
「いや、生活するスペースと目に見える所をきれいにして、それで快適になったってことを体感してもらって、ちょっと前向きに直していくっていうふうに向いてもらうような」

被災者と話し合い、必要なサポートを行うことで計画的に生活再建を進めます。

「お父さん、これどうするん?」

「これここに置くん?床直したあと」

浅田文男さん
「これは向こうに」

「向こうに置く?」

浅田文男さん
「これ(荷物)いっぱいあるから、こっちに移動しようかなと。そうせんと、ここが何もできんし」

修理に必要な材料は、市の予算も活用して調達することにしました。

浅田清音さん(88)
「ここ(靴を脱いで)上がれるんじゃな」

浅田文男さん
「上がれるようになるでしょうね」

1年後。夫婦の家を再び訪ねました。かつて、靴を履かないと行けなかった隣の部屋は、くつろげるスペースになっていました。

浅田文男さん
「この上の天井も、はりも若い人が上がってきれいに掃除してくれて。きれいに(床板も)張ってもらいましてな。ほんまに良うなって」

諦めていた家の修理が進むことで、気持ちも前向きになったといいます。

浅田清音さん
「風が通ったら、ここにおって、腰掛けとったら涼しいけ。ほんと良うなっとるわな」

この取り組みをさらに進めているのが、鳥取県です。

5年前、大きな地震に見舞われた経験を踏まえ、平時からの準備を整えることにしました。ことし4月、全国で初めて常設の組織を立ち上げたのです。

「日野町です。聞こえます?」

「よろしくお願いします」

災害が起きる前から、被災者の把握方法や福祉スタッフの派遣のしかたなどの体制を構築。「その日」に備えるのです。

鳥取県 危機管理局 西尾浩一局長
「どういった形で訪問調査なり、お困りごとを聞くような仕組みを作るかっていうことを日頃から考えておいて関係性を保っておかないと、なかなかできないと思うんですね。それをするためには常設の組織を作って、それぞれの市町村の皆さんとどういうやり方をしたら、よりそれに近づけていけるのか考えていきたいなと」

新たな被災者支援の試み 災害ケースマネジメント

井上:被災して生活再建に取り組んでいる方々が利用できる、災害ケースマネジメントでも多く使われている制度がこちらです。
まず、「災害リバースモーゲージ」。これは高齢者でも融資を受けられる制度です。自宅を担保にして、その融資を受けて、死亡時に自宅を売却して返済に充てるシステムです。

また、「被災ローン減免制度」。これは二重ローンの負担を減らす制度です。もともとあった住宅ローンが減額だったり、免除されて新しい家や改修のためのローンが可能になります。

こういった情報も関連記事から詳しくご覧いただけます。

保里:菅野さん、一人一人の生きる暮らしに寄り添う災害ケースマネジメント、これまでの災害対応と異なる重要なポイントはどんなところでしょうか。

菅野さん:災害を災害だけでやらない。そういうことだと思いますね。例えば弁護士であるとか、建築士の方、あと福祉の専門家、まさに平時からさまざまな支援や専門性のあることに関わっていらっしゃる方が災害支援、被災者支援に参加されると。それが非常に大事なことかと思います。
もう一つが、やはり伴走型で支援をしていくということです。被災者の方が何に困られていらっしゃるのか。また、どんな選択肢が生活再建までにあるのか、分からない方もいらっしゃいます。そういうところを解きほぐしながら、いろんな制度につなげていくと。そういった伴走型の支援をすることで、いわば餅は餅屋の災害対応を行えるということだと思います。

保里:一方で、財政的な面でも課題がありますね。

菅野さん:そうですね。やはり体制がなかなか整わない。鳥取県のように取り組まれていらっしゃるところはあるのですが、やはりどうしても手弁当でやってしまうことになってしまいます。平時から災害が起こったらこういう被災者支援、災害ケースマネジメントをするんだよということにしておかないと、なかなか参画できないということになりますね。

保里:鳥取県のように平時から備えていく自治体が増えていくことは、暮らしやすい町が増えていくということだと思うのですが、私たち一人一人が平時からできること、備えるべきことは何でしょうか。

菅野さん:例えば福祉サービスを使われていらっしゃる方、事業所さんと災害時のことをぜひ相談ください。最近ですと、ケアプラン、避難行動のことを一緒に考えるという取り組みも始まっていますので、そういった相談をしていただくというのが非常に大事かと思います。つながりを作っておかないと、なかなか支援を受けることもできないと。そう思っていただいたほうがいいかと思います。

井上:財政面だったり、公費負担、税金も含めてですが、斉藤さんは海外の災害現場でも活動してこられましたが、この点についてはどう捉えていますか。

斉藤さん:例えば、私の研究しているイタリアの災害復興があるのですが、災害が発生すると、国、州、市町村、ボランティア団体が連携する仕組みがあります。
ボランティア団体がキャンプ運営を担い、温かい食事がすぐさまふるまわれます。それは決してぜいたくということではなくて、人として最低限の権利というふうに考えられています。

また、被災家屋も公費で修復がなされるのですが、それについても国民がそれでいいんだというふうなコンセンサスが取れていることが重要かと思います。
当然、日本の災害とも規模も頻度も違いますので、イタリアの災害対応がすべていいというわけではないのですが、やはり災害国の日本において、どこまでなら税金で被災者の個人財産を救済することができるのかということは、きちんと議論をしておかないと制度もできていかないのだろうなと思います。

井上:まさに日本のことを伺おうと思ったのですが、菅野さん、なかなか実効性を持たせることは難しいと思うのですが、どういうことが大事ですか。

菅野さん:ルールを変えなければしんどいかなと思います。90年前の避難所の写真を見ると、今と様子が変わらないです。

今の制度の枠組みでやっていますと、こういうことが起き続けてしまうと。なので国も率先して、まずルールを変えていかねばならないと思います。また、斉藤さんもおっしゃられていましたが、人権の問題なのです。ナショナルミニマムといいますか、そういった被災者の生存権を守っていく取り組みなのだということもしっかりと理解して、みんなで取り組みを進めていかなければいけないなと思います。

井上:本当に行政や制度の限界を、支援の限界にしてはいけないですよね。ありがとうございました。

保里:ありがとうございました。