クローズアップ現代

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2021年6月8日(火)
最新報告 変異ウイルス VS.ワクチン

最新報告
変異ウイルス VS.ワクチン

変異ウイルスがまん延する中、コロナ重症者病棟では異変が起きている。従来の治療法が通用しない事態が相次いでいるのだ。さらに感染対策を徹底していても、保育所など児童福祉施設でクラスタ―が増加。現場では感染対策と保育の両立の難しさに直面している。こうした中、ワクチンの優先対象に保育園や幼稚園などの職員を独自に組み込む自治体も。新たな脅威となりうる“インド株”、そして一刻も早く導入が求められる国産ワクチンはどうなるのか…現場からの最新報告。

※放送から1週間は「見逃し配信」がご覧になれます。こちらから

出演者

  • 長谷川秀樹さん (国立感染症研究所 インフルエンザ・呼吸器系ウイルス研究センター センター長)
  • NHK記者
  • 井上 裕貴 (アナウンサー) 、 保里 小百合 (アナウンサー)

最新報告 変異ウイルス VS.ワクチン 従来の治療法に難題が…"ワクチンしかない"

高齢者へのワクチン接種が進む中、若い世代への接種も早く進めてほしいという声が上がっています。主に重症患者を受け入れる、川崎市の大学病院。重症患者14人のうち、60代以下が急増し、9割を占めています。

聖マリアンナ医科大学病院 救命救急センター長 藤谷茂樹医師
「若い人たちが多いね。まだワクチン接種が進んでないからな」

多くが変異ウイルスに感染したと見られ、自力で呼吸ができない危険な状態。しかも、これまで有効だった治療法が通用しないケースが相次いでいるのです。

藤谷茂樹医師
「いままで治っていた人たちが、なかなか治らない。治療戦略を少し変えていかないといけないのかなと」

変異ウイルスに感染したと見られる、40代の男性。

藤谷茂樹医師
「6日でですね、症状が出てから、あっという間に変化」

発症から僅か6日。白く見える炎症が、肺全体に広がっています。従来のウイルスでは見られなかった速さだといいます。

男性には、すぐに炎症を抑えるステロイドなどが投与されました。これまで治療の要となってきた薬です。しかし呼吸機能は低下し、意識のない状態が続きました。

なぜ治療の効果が見られにくくなったのか。

突起の構造が変化した変異ウイルス。従来のウイルスに比べ、細胞にくっつきやすく、より多く感染すると見られています。そのため、肺の炎症が広い範囲で起こる可能性があるのです。

症状の改善が見られない、40代の男性。医師は家族に、最後のとりでといわれる人工心肺装置=ECMOを使わなければ、命が危ないと告げました。

医師
「われわれが経験しているなかでも、極めて速い速度で状態が悪くなっています。われわれとしては、きょう、今から(ECMOを)始めた方がいいと判断しています。それぐらいの勢いで、ご本人さんの今の呼吸の状態は悪くなっているという判断です」

若い世代も重症化する変異ウイルスから命を守るには、ワクチン接種のスピードアップが欠かせないと訴えています。

藤谷茂樹医師
「できるだけ急速にワクチン接種をして、ウイルスを撲滅するような動きをしていかなかいと、もうカギとなるのはワクチンしか今はないんじゃないかと思いますね」

最新報告 変異ウイルス VS.ワクチン ワクチン接種は誰を優先?高齢者だけでなく…

保里:変異ウイルスの拡大で今、問われているのがワクチン接種の進め方です。現在、進められているのは高齢者への優先接種。1回目を終えた人は23%余りで、国は来月末までに2回の接種を終える目標です。

井上:しかし今、高齢者以外にも一刻も早く、優先接種の対象を広げてほしいという声が上がっているのです。

最新報告 変異ウイルス VS.ワクチン ワクチンを打てない子ども 保育・教育現場の声

優先接種を求めているのが、子どもの保育や教育の現場です。4月に職員と園児、25人のクラスターが発生した保育所の園長です。イギリスで確認された変異ウイルスが広がったと見られています。

クラスター発生の保育所 園長
「(感染の広がりは)速かった。もうすごく速くて驚いたというか、本当に何が起こっているの?何で急に?という状況でした。消毒も換気も、密にならないような工夫もしてきたつもり」

最初に感染が確認されたのは、職員2人。その後、別の職員7人の感染も明らかになりました。園児全員もPCR検査を受けたところ、16人の感染が判明しました。保育所は、2週間の休園を余儀なくされました。

12歳未満の子どもは、ワクチン接種の対象にはなっていません。保育所は、クラスターを防ぐには保育士たちの接種を急ぐべきだと訴えます。

クラスター発生の保育所 園長
「保育所は、絶対に休園にはできないところなので。でもクラスターが起きたら休園せざるを得ない場所なので、子どもたちを預かっているところで大人がうつさないようにしないといけない。今のところワクチンしかないのかな」

変異ウイルスの拡大以降、子どもの感染が急増しています。先月に感染が確認された10歳未満の子どもは5,900人余りと、僅か1か月で去年1年間の人数を上回りました。

大勢の子どもたちが集まる保育所や学校では感染対策の強化を進めていますが、それでも限界があるといいます。

先月、小学校でクラスターが発生した地域の担当者は…。

小学校のクラスターが発生した自治体のコロナ対策担当者
「一番感染リスクの高い給食の時間には、児童のそれぞれの机に3方を囲うアクリル板を設置して、飛まつが飛ばないように給食のときには黙って食事をする、黙食がしっかり実践されていました。学校の先生方に、これ以上頑張れと言っても、なかなか難しい部分があろうかと思います。まずは学校に感染を持ち込まないためにも、小中学校の先生方に、いち早くワクチンを接種することも必要かと思います」

クラスターを経験した、全国の現場からも。

関係者の手記より 北海道・クラスターが発生した小学校 校長
「安心安全という観点において、教職員も含めて接種が一刻も早くなされることを望んでいます」

関係者の手記より 関東・クラスターが発生した保育所 園長
「通常どおりの開所を求められる施設であるならば、ワクチン優先接種の職種として認めていただきたいと切に願います」

最新報告 変異ウイルス VS.ワクチン 保育士・教職員も優先接種"カギは夜間"

こうした中、7日に保育士らへの接種をいち早く始めた福岡市。初日は386人が接種を受けました。

福岡市 高島市長
「子どもたちへの接種ができない分、その子どもにつながる教職員というところを、しっかり接種をして少しでもガードしていくことが大事」

新たな優先接種の対象者は、保育士や教職員など、およそ3万7,000人。来月末までに完了を目指す、65歳以上の接種を遅らせずに両立させる独自の方法を導入しています。

集団接種の会場では、これまでどおり11時から夕方5時まで高齢者の接種を実施。その後、夜10時まで時間を延長し、保育士らを対象に夜間接種の枠を新設したのです。

ワクチン接種を受けた保育士
「優先していただいたのは、大変うれしい。働きながらでも時間を止めないで、仕事を止めないで接種を受けていける、進めていけるということはすごく大きいと思う」

夜間接種を加えることで、新たに合わせて900人近くの医療従事者を確保することもできました。

医師
「このような時間帯に手伝うのが一番、私としてはやりやすい。きょうも昼に、かかりつけの患者のワクチン接種をやっているが、それを数十名やり終えたうえで、きょう、こちらに回っています」

福岡市は来月から、64歳以下の市民の接種も始めるとしています。

高島市長
「これ(夜間接種)ができることによって、高齢者への納得感と、プラス(他に)接種することの両立ができる」

最新報告 変異ウイルス VS.ワクチン 相次ぐ変異"解くべき課題がリアルタイムに変わる"

一方、インドで最初に確認された変異ウイルスが国内で見つかるなど、今、新たな変異が次々と確認されています。

東京大学医科学研究所の佐藤佳准教授です。全国のさまざまな専門分野の研究者とチームを立ち上げ、世界各地で確認された新たな変異の分析を急いでいます。

「ベトナムの変異ウイルスの情報が、昨晩アップロードされていました」

東京大学医科学研究所 佐藤佳准教授
「解くべき謎、課題がリアルタイムに変わる。謎も変わっていく中で解明する。"懸念すべき変異株"になる前に、この株は危ないという兆候を早くみつけて、その原理をリアルタイムで研究解析していくことが大事」

佐藤准教授が注目しているのは、アメリカ・カリフォルニアやインドなどで見つかったウイルスが持つ、L452Rという新たな変異。アジア人に多い免疫システムの一部を、すり抜ける特性があるといいます。

佐藤佳准教授
「L452Rという変異は、日本人に比較的多い細胞性免疫の免疫が認識されない特徴を持っている」

さらに、L452Rによる感染力の変化について細胞実験を行うと、イギリスで確認されたN501Y変異などと比べ、2倍余りに上ることが明らかになりました。

次々と変異するウイルスに翻弄される、医療現場。何が起こるか見通せない中、危機感を募らせています。

聖マリアンナ医科大学病院 救命救急センター長 藤谷茂樹医師
「ウイルスがさらに変異を起こして、ワクチンが効かないという事態につながってしまうので。できるだけ早期のワクチン接種を大量にして、新規の感染症患者を断つことが必要になってくるんじゃないかと思います」

最新報告 変異ウイルス VS.ワクチン "接種のスピードアップ必要"その理由は

保里:変異を続ける新型コロナウイルスに対して、ワクチン接種をどのように進めていけばいいのか。ウイルス研究が専門の、国立感染症研究所・長谷川秀樹さんに伺います。よろしくお願いいたします。
ワクチンを優先的に接種する対象について長谷川さんは、高齢者など感染が命に関わる人に加えて、クラスターが起きやすい場所で働く人を上げていますが、これはどういうことなのでしょうか。

長谷川秀樹さん (国立感染症研究所 インフルエンザ・呼吸器系ウイルス研究センター長)

長谷川さん:クラスターが起こりやすい場所で働いてる方、例えば介護施設とか、最近では保育所や学校などにも当たりますが、ワクチンは使い始めた当初は病気の発症や、重症化を予防することが証明されて使い始めました。ところが、使用が進むにしたがって、感染防御、または感染の抑制の効果があるということが明らかになってきました。そういった意味で感染を媒介する場を抑える、そういうことによってワクチンを接種していない人、もしくはワクチン接種ができない子どもたちの命を守ることにつながると考えていますので、クラスターが起こる場所で働く方を優先するのがいいと考えています。

保里:これが、さらなる変異が起きることを防ぐことにもつながる。

長谷川さん:そうですね。クラスターで増えることによって、そこでのウイルスの変異は起こり得るので、変異自体も抑えることができると考えます。

井上:社会部の本多記者にも聞いていきます。本多さん、やはり見えてきたのは、変異に対応するためには高齢者世代以外の人たち、この人たちをどう戦略的に接種を進めていくかだと思うのですが、国の今の戦略はどう見ていますか。

本多ひろみ記者(社会部):まず原則として、高齢者の優先接種というのは優先的に進めるという大方針は変えません。これは7月末までに終わらせる目標でいます。さらに今月21日からは、職場や大学での接種を始めます。その上で、ほかにも高齢者の接種に影響のない範囲で、優先接種の対象を広げるということを認めています。
例えば新宿区ですと、行動範囲が広いとされる20代から30代の若者。そして観光客が多く訪れる奈良市では、バスやタクシーの運転手、そして宿泊施設などで働く人などの接種を始めることにしています。

井上:当然、地域差は出てきますよね。

本多:そうなんです。こうした動き、徐々に広がってきてはいるのですが、まだ一部に過ぎません。まさに今、高齢者以外の接種をどう進めていくか、考える時期に来ていると思います。優先接種の対象を拡大する場合というのは、やはり接種を行う担い手の確保をしなければならず、自治体は早目早目に動き出す必要があると思います。国も自治体の相談に応じたり、具体的な進め方を直接アドバイスするなどして、地域に応じたワクチン接種を後押しするということが求められると思います。

井上:地域によって、若い人が高齢者より先に打つということも今後出てくるということですね。

本多:そうですね。大前提としては、高齢者の接種が優先的にして行われるものですが、状況によってということはあると思います。

井上:もう一つ見ていきたいのは、変異についてです。これから注意していきたいのが、長谷川さんに聞いたところ「逃避変異」ということなのですが、変異が逃げる、これはどういうことなのでしょうか。

長谷川さん:ウイルスの変異には大きく2つありまして、1つはウイルス自身の増殖や感染性に関わる変異。あともう1つは、われわれがワクチン接種や感染によって得た免疫から逃れる、免疫があっても増えることができるようなワクチンに変異するという変異があります。

ワクチンや感染などによって、免疫を持っている人と持ってない人が集団で長期間一緒にいると、そこが変異を助長するような場になってしまうということがあります。ですから、できるだけ面的にワクチン接種、もしくはそれによる免疫獲得を進めて、社会全体での免疫力を上げていくということが重要になってくると思います。

井上:あとは人流抑制ですよね。

長谷川さん:はい。

保里:変異が相次ぐ中、求められるのがワクチン接種のスピードアップです。そのカギはどこにあるのでしょうか。

最新報告 変異ウイルス VS.ワクチン 相次ぐ変異に"大胆な対策" イギリスの模索

すでに18歳以上の75%以上が、1回はワクチンの接種を済ませたイギリス。変異を繰り返すウイルスとの闘いにおいても、臨機応変に対応してきました。

ワクチン接種が始まったのは、去年12月。ちょうどそのころから、N501Y変異ウイルスによる感染が広がりました。ここでイギリス政府は、思い切った方針を打ち出します。

イギリス ハンコック保健相
「2回目ワクチンを、12週間後に打ってもらいます」

3週間の間隔で2回接種することが推奨されていた、ファイザーのワクチン。この間隔を、最大12週間空けると発表。それによって、少しでも多くの人に1回目のワクチンを打とうと考えたのです。

この方針の決定に関わった、アンソニー・ハーンデン教授です。国の専門家委員会のメンバーで、ワクチン接種に関する戦略を政府に助言してきました。

英予防接種・免疫合同委員会(JCVI)副委員長 アンソニー・ハーンデン教授
「これは、他国でとられていた対応とは全く違うものでした。まずは可能なかぎり多くの人たちに早く1回目の接種をすることで、入院したり、亡くなる人を防げると考えた」

もう一つの課題は、短期間に多くの人にワクチンを打つための人手です。これについても、大胆な対策が取られました。専門家委員会は、去年夏の時点から打ち手が不足することを予測。イギリス政府は、法律を改正。一定の訓練を受ければ、ボランティアにも注射を打つ資格を与えたのです。

注射をするボランティア
「医療とは無関係の、小さな慈善団体で働いています。毎日80人ほどにワクチンを打っています。訓練を受けたし、困ったときはすぐに周りの医師に聞きます。全く心配ありません」

厳しいロックダウンや、スピードを重視したワクチンの接種。その後、感染者数は大幅に減少しました。

今月下旬には、あらゆる規制が解かれる予定に。ところが…。

イギリスBBC
「インドで確認された変異ウイルスによる感染者が、増加しています」

インドで最初に確認された変異ウイルスがイギリスでも広がり、再び感染者の数が増加に転じているのです。専門家委員会は、この変異ウイルスに対しては2回接種することが有効性が高いことを確認。そのため政府は、12週間に広げていた接種の間隔を、重症化のリスクが高い50歳以上については8週間に短縮。新たな変異に応じて再び方針を転換したのです。

アンソニー・ハーンデン教授
「私たちは、これまでの経験から政府に適切な助言をすることができ、政府もその助言を聞いてくれる。今後、流行する変異ウイルスに対抗する、新たなワクチンが必要になる可能性もある。撲滅はできない。共存の道を探し続けるしかない」

最新報告 変異ウイルス VS.ワクチン 国産ワクチン実現は?立ちはだかる壁…

一方、ワクチンの接種が立ち遅れた日本。現在、すべてのワクチンは海外から調達する計画です。しかし今後、新たな変異ウイルスに対応する上で重要となるのが、国産ワクチンの開発です。

開発を進める企業の一つ、塩野義製薬の手代木(てしろぎ)社長です。いまだ実用化に至っていない、国産ワクチン。日本で新たな変異ウイルスが発生した場合などに迅速に対応するためには、国産ワクチンが不可欠だといいます。

塩野義製薬 手代木功社長
「1国のみのニーズに対して、グローバルに全体供給しているメーカーが、日本向けを優先的に(ワクチンを)デザインしようというふうに言っていただけるかはわからない。これに対応するためには、こういうワクチンをこういうスピードでこのぐらいの量を作ろうというのに対して、やっぱり応えていくのが国民を守るために必要だと思っています」

現在、国内メーカーでは4社が臨床試験に進んでいます。安全性や有効性を確かめるため、3段階に分かれた試験を経て、実用化されるワクチン。今、大きな課題に直面しています。すでに実用化されたワクチンの接種が進んでいるため、臨床試験のハードルが高くなっているというのです。

通常、最終段階では開発中のワクチンを接種するグループと、ワクチンに似せた偽の薬を投与するグループに分け、効果を比較する大規模な試験を行います。しかし、すでに実用化されたワクチンがある中で、偽の薬を使うことは倫理的に難しいといいます。

手代木功社長
「製品として市中に出回っていて、それなりの時間の範囲内で接種できるような状況下で、製薬会社側としてもその方(参加者)にメリットがないと、倫理的にもかなり問題がある。強くお願いをできない。どう次のワクチンの開発をしていくのか、これはグローバルに非常に大きな課題だと思います」

そこで今各社は、緊急時の対応として新たな臨床試験の方法を模索しています。例えば、開発中のワクチンを接種した人の精密な検査を行い、免疫の数値が上がったかを確認する方法などです。

取材に対し各社は、「ワクチン開発に関する、国の具体的な動きに注目していきたい」、「安全性や有効性を担保した上で、承認プロセスの迅速化を期待する」などとしています。

塩野義製薬では、こうした対応が実現すれば、年内の国産ワクチンの実用化を目指したいとしています。

手代木功社長
「まず、安心して国民の方に打っていただくように、最後の最後まで行っていこうと思っております。将来に向けての、われわれの義務ではないかと思います」

最新報告 変異ウイルス VS.ワクチン ワクチン戦略 いま何が必要なのか

井上:国産ワクチンですが、医薬品の審査を行うPMDAは、「大規模臨床試験と並んで、『有効性や安全性を評価・確認する方法』を海外の規制当局とも協議しながら検討を進めている」としています。

長谷川さん、これはこれでハードルが高いものはあると思うのですが、長谷川さんも複数の企業と国産のワクチン開発をしているとのことですが、改めてその重要性をお願いします。

長谷川さん:まず今のワクチンが、免疫がどれぐらいの期間持続するかというのがまだ分からないということです。ですから、インフルエンザワクチンのように、もしかしたら毎年打たなくてはならないかもしれないというようなことも1つ、あります。あともう1つは、日本特有の変異ウイルスが万が一できた場合、海外の企業が日本のためにテーラーメードのワクチンを作ってくれるかという保証が今のところないわけです。そういったときのためにも、国内での生産体制というのをきちんと作っておくということが、やはり日本のために重要なことだと思います。

保里:そうした中で、日本は諸外国と比べて国産ワクチンの開発が遅れてしまった。これはどうしてでしょうか。

長谷川さん:日本には国内にない感染症のワクチンを開発して、さらにそれを臨床として使うというような仕組みが今までなかったわけです。

海外では、例えばエボラ出血熱ですとか、MERSといったものに対するワクチンの臨床治験が進んでいたわけです。今回、欧米ではそれで非常に速くできたというわけです。国内でも通常5年から10年以上かかるワクチンのプロセスですので、2、3年というのは速いわけですけれども、今回改めて海外で1年以内での実用化というのを目の当たりにしてしまったので、今後はそういうことが可能な仕組みというのを検討していくことが重要かなと思います。

井上:そして本多さん、リバウンドを心配しながらになると思うのですが、このワクチン接種、スピーディーに進めていくためにはどういうことに注意し、何が必要になってきますか。

本多:主なポイントは2つあると思います。まず、担い手の確保。そして、感染を抑えることだと思います。
高齢者の接種でも、担い手に苦労する自治体というのがかなり出ていました。そこで国は、医師や看護師、歯科医師に加えて、今回新たに救急救命士や、臨床検査技師も一定の条件のもとで接種ができるようにしました。ただ、研修や通常業務との両立が必要になってきますので、一体どのぐらいの人が担い手になれるのかというのは、まだ具体的に示されていないのです。

また担い手を拡大する場合、接種を安全に、そして正確に進めていくことが求められてくると思います。そしてもう一つが、ワクチン接種の進捗(しんちょく)は、感染状況に左右されるということです。感染が広がってしまうと、医療従事者の方というのは治療に専念しなければならなくなりますので、接種の体制にも影響が出てきてしまうのです。なので引き続き私たち一人一人は、感染対策を徹底していくことが求められると思います。

保里:そうした中で日本は新規感染者数が減少傾向にありますが、その一方で緊急事態宣言が延長されてから人の流れも増えてきています。

長谷川さん、ワクチン接種を受けるときには個人の選択が尊重されるべきですが、今改めて何が必要だと考えますか。

長谷川さん:まずウイルスは、自分自身の生存のために増殖するとか、そういった変異を続けていきます。われわれはその病原性に変化があるとか、感染性に変化があるか、またはワクチンから逃れるというようなものを監視していくということが、非常にわれわれの立場としては重要になります。国民の皆さんの立場としては、できるだけ早く希望する方にはワクチンを接種して、闘っていくということが重要になるかなと思います。