クローズアップ現代

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2021年5月20日(木)
それでも私は踏み出した コロナ禍の"新人"看護師

それでも私は踏み出した
コロナ禍の"新人"看護師

変異ウイルスが猛威を振い、緊迫する医療の現場。その過酷な現場に覚悟をもって飛び込んだ新人看護師たち。長引く新型コロナの影響で、昨年度、学校では実際の患者と接する実習をほとんど受けることができなかった。初めての採血、初めての患者との会話…。何から何まで初めてという不安。それでも患者に笑顔を向けようと奮闘を続けている。新人看護師たちを駆り立てているのは一体何か。この春、新たに社会に出た若者たち、そしてコロナ禍に生きるすべての人たちにその姿を届けたい。

※放送から1週間は「見逃し配信」がご覧になれます。こちらから

出演者

  • 仲本りささん (看護師・イラストレーター)
  • 井上 裕貴 (アナウンサー) 、 保里 小百合 (アナウンサー)

新人看護師 実習受けられず現場へ 不安と志と…患者が教えてくれたこと

これまで220人以上のコロナ患者を受け入れてきた、日本医科大学付属病院。

4月、この病院に123人の新人看護師がやってきました。篠原ありすさんです。配属になったのは、一般の患者が入院する消化器などの内科病棟です。配属から2週間、先輩についてもらい、初めて患者を受け持つことになりました。

篠原ありすさん
「うまくできるかなって、緊張してます」

12年目 指導担当 田頭(でんどう)真理さん
「じゃあ行ってみよう」

篠原ありすさん
「失礼します。おはようございます。きょう担当します、篠原です。よろしくお願いします。血圧測りますね、失礼します」

田頭真理さん
「あとは何を測るのかな?」

篠原ありすさん
「呼吸数。これって一緒に測った方が?」

田頭真理さん
「その方がよかったかもね」

篠原ありすさん
「すみません。呼吸数を測りたいので、そのままリラックスしてもらっていいですか」

患者
「何もやってないで、測れるんですか?」

田頭真理さん
「胸の動きで回数だけ見たので」

指導に当たっている、先輩の田頭真理さんです。コロナ禍で学生時代を過ごした新人たちを、特に気にかけていました。

田頭真理さん
「本人たちが1年間、病院(での実習)に行っていないから、不安が強いのではないかなと。だから自信がないというのが、あるかなと思います」

篠原さんは、初めて患者と接したこの日のことを日記につづっていました。

「手際が悪くて患者さんを不安にさせてしまっている気がする。もっと自信を持って患者さんと接することができるようにしたい」

この病棟には、終末期の患者も入院しています。指導に当たる田頭さんが急きょ、新人たちを集めました。

田頭真理さん
「きょう、私が受け持っている方が亡くなったので、これからエンゼルケアに入るの。初めてだと思うから、一緒に入ってもらっていい?」

患者の遺体を整える、エンゼルケア。看護師として患者と過ごす、最後の時間です。

篠原ありすさん
「亡くなっていても生前と変わらない。(田頭さんが)声をかけ続けていたのが印象的で、『からだ拭きますね』であったり、『からだ動かしますね』っていうのも、絶対に声をかけるようにしているのを見て、私もそういう関わりをしたいなって」

田頭真理さん
「やっぱり関わりが多ければ多いほど、悲しいとか、もっとこうしてあげたかったなとか。これからたくさん患者さんと関われば、そういうことを自然と考えるふうになっていくんじゃないのかなと」

篠原さんは、この春から寮で1人暮らしを始めました。仕事で学んだことを毎日振り返っています。

篠原ありすさん
「これは国試かな。国家試験勉強のノートです。(コロナで)学校に行けなかったので」

最終学年で進路を決めたとき、感染と隣り合わせの医療現場で働くことに、家族や友人からは心配する声もありました。しかし、看護師になる夢を諦めることはありませんでした。幼いころからの、強い憧れがあったからだといいます。

篠原ありすさん
「弟が幼いころ、けっこう病気で入院する機会が多くて、母が弟につきっきりで、すごくさみしい思いをしていたんですけど、看護師さんが『大丈夫だよ』とか、『一緒に頑張ろうね』、『お姉ちゃん偉いね』って声をかけてくださって。それがすごく気持ち的にうれしくて、私も患者さんだけじゃなくて、患者さんの家族にも気を配って看護ができるような看護師さんになりたい」

東京に3度目の緊急事態宣言が出された、4月下旬。

「マスクどうした?そこに置いたよね。落ち着けば大丈夫だから。ゾーニング終わったので、すみません、よろしくお願いします」

篠原さんの病棟では、新型コロナの疑いでコロナ病棟に搬送される患者も出ていました。

篠原ありすさん
「おはようございます。ふだん音楽聴かないんですか?」

患者
「もっぱらクラシック、私は」

篠原ありすさん
「クラシック全然聴かないから、わからないです。何かおすすめありますか?」

病院ではすべての病棟で面会を禁止にしたため、患者たちは家族に会えない日々が続いていました。

先輩看護師
「(きょうの患者さんは)ケア度が高いので、負担がかからないように」

篠原さんが新たに受け持つことになったのは、肝臓のがんを患っていた60代の男性です。

篠原ありすさん
「このまま、お背中拭き?」

先輩看護師
「提案してみたら」

篠原ありすさん
「このまま、お背中拭きだけしたほうが?」

患者
「もしできるようなら、お願いします」

入院して2週間、男性も家族に会えていません。

患者
「うちは代々、床屋なんですよ。僕は末っ子だから違う仕事を」

男性は、都内で飲食店を営んでいたといいます。

患者
「大変だね、肉体労働で」

篠原ありすさん
「大丈夫です。飲食店も、ずっと立ちっぱなしですよね?」

患者
「立ってるほうが楽。疲れちゃうよ、1日座っていたら。俺なんか1時間座っていたら寝ちゃうもん」

篠原ありすさん
「私、おばあちゃんも飲食店を経営していて、全然地方なんですけど」

患者
「どちらなんですか?」

篠原ありすさん
「島根県」

患者
「とっても行きたい所ですね。こっちから一番遠いじゃん、行くのにね」

篠原ありすさん
「おつかれさまでした。すみません、長々と」

患者
「ありがとうございます」

篠原ありすさん
「ゆっくりして下さい。またうかがいますね」

4月23日 篠原さんの日記
「患者さんは、コロナ禍で家族に会えないことがつらく、看護師さんとお話しすることを楽しみにしている」

4月24日 篠原さんの日記
「きょうも、昨日と同じ患者さんを受け持った。昨日のケアでの注意点を思い出しながら、スムーズにケアを行えた。患者さんに『車イスを押すの上手くなったね』と言われて、うれしかった」

新人の自分を気にかけてくれていた男性。このあと容体が急変し、息を引き取りました。

篠原ありすさん
「新人に対しても優しく声をかけてくれるような、すごくすてきな方だったので、退院したらやりたいことをすごいお話しされていて、その夢がかなうといいですねという話をしたばっかりだったので、悲しかったです。もっと時間とれたんじゃないかなとか、気づけることほかにもなかったのかな。次に出勤したときに、この患者さんが絶対にいるっていう保証はないんだなと」

篠原さんは今、1人で4人の患者を受け持つようになっています。看護師になって、ひとつきがたちました。

篠原ありすさん
「患者さんの思いに寄り添いながら、コロナによって生じていることにも目を向けて、精いっぱい患者さんと関わったり、ケアができるようにしたいなと思っています」

看護師 春からコロナ病棟に "第4波のいま 私ができることは"

コロナ病棟にも、この春、新しい看護師たちが次々と配属されています。看護師になって2年目の、大川愛乃(ちかの)さんです。大川さんは、みずから進んでコロナ病棟に異動しました。

大川愛乃さん
「看護師が不足しているって部分はあったと思いますし。いま最前線で関わっている看護師がいる中で、力になれたらいいなという気持ちもありました」

主に中等症の患者を受け入れる、専用病棟。看護師は患者が重症化しないか、24時間体制で確認しています。4月、以前のように増えてきた患者に、大川さんたちは不安を募らせていました。

「マックス何人いたんですかね、ここの病棟、患者さん」

「10何人持ってたって言ってたよ、ペアで」

「そのとき(第3波)はすごい大変だった。休憩、入れなかった」

「そんなに忙しいんですか?」

「コロナ増えないで欲しい」

コロナ病棟では感染リスクを下げるため、通常よりも短い時間で看護に当たらなければなりません。

「大川さんって、いま一緒でした?」

「一緒だった。1回出たほうがいい?」

「出たほうがいいので」

先輩看護師
「ちょっと(レッドゾーンに)入りっぱなしだと、やっぱり感染リスクもあるので。まだ慣れるまで私たちもけっこう大変だったので、最初は」

先輩看護師から交代を求められた、大川さん。気付かないうちに、患者との接触が長時間に及んでいました。

大川愛乃さん
「早く環境に慣れたいという気持ちがあったのと、2年目だったので戦力としては一番低いじゃないですか。なので、少しでも頑張ろうという気持ちはありました」

コロナ病棟に来て2週間。慣れない仕事が続く大川さんを心配した先輩が、声をかけました。

先輩看護師
「夜中まで起きてて、そのあとも寝てないの?」

大川愛乃さん
「なかなか寝つけないのと、途中で目が覚める。熟眠感はない。で、寝て2時間くらいで起きる。目が覚める」

先輩看護師
「絶対2時間くらいで覚めちゃうの?」

大川愛乃さん
「覚めちゃいます」

そのことを聞いた看護師長は大川さんと話し合い、焦らなくてもいいと伝えました。

北里大学病院 コロナ病棟 看護師長 佐藤佐都美さん
「頑張り屋さんですよ。非常によくできます。使命を持ってここにいるというふうに、プレッシャーはかなり感じていると思います。できないことがあっても当たり前なので」

大川愛乃さん
「自分が積極的に動こうっていう考え方は変わらないんですけど。まだまだわからないこともいっぱいあるので、これからそこは学んでいけたらいいかなと思います」

コロナ病棟では、これまでの経験が通用しない難しさがあります。

大川さんと同期の佐野岬さんも、ことし配属になりました。当初は、コロナ病棟での勤務を希望していませんでした。異動を告げられたとき、頭が真っ白になったといいます。

佐野岬さん
「お母さんには(異動を)言われた日の夜勤明けに帰り道、電話して泣きながら。お母さんも泣いちゃって、そうかって。コロナに対して怖いイメージがあったし、もし自分がかかっちゃったらとか、もし重症化して死んじゃったらどうしようとか」

佐野岬さん
「日勤に代わります。担当の佐野です。よろしくお願いします。夜ちょっと眠れなかったって聞いたんですけど。ちょっと深呼吸お願いします」

看護は常に、感染のリスクと隣り合わせです。コロナ病棟に来る前、佐野さんが目指してきたのは、できるだけ患者のそばにいて安心感を持ってもらう看護でした。しかしここでは、短時間しか患者に接することができません。

佐野岬さん
「患者さんに何かしてあげられたのかなっていうモヤモヤがあって、最低限のことしかできていないというか、業務しかできていないなって思ったんです。看護ができていないなって」

4月中旬、病院に、県内で起きたクラスターの一報が入りました。

「何?クラスター?」

「クラスター、クラスター。いま23人陽性で散らしています」

入院患者も、日を追うごとに増加。変異ウイルスの感染拡大に伴い、重症化しICUに運ばれる患者も相次ぎました。

病棟が慌ただしくなる中、患者への対応を話し合う「カンファレンス」が開かれました。一日に何度もナースコールを鳴らす、高齢の患者への対応が話し合われました。

「『ちゃんと(うちに)戻れるんだよね』という不安があって、1日に4~5回、確認をすごくするので」

ベテランの看護師が解決の糸口にしたのは、患者の何気ない行動でした。

「毎回あそこ(病室)出てくるときに、カレンダー見てますよね」

患者専用のカレンダーに、退院の目安日を書き込んではどうかと提案したのです。

「この日めがけて頑張ろうねっていうのは、いいのかもしれない」

「じゃあそれでカレンダー作り、(患者に)提示する感じでやってみましょうか」

佐野さんには、なかった気付きでした。

佐野岬さん
「すごく、なるほどなって思ったし、実際本人もそのカレンダーを見て、何回も『この日までに帰るんだ』みたいな。コロナの患者さんだからこう、みたいなそういうのじゃなくて、やることとしては本当に普通の病棟と変わりない。この短い関わりの中で、できることってあったんだなと実感しました」

病棟のベッドは、満床に近づいています。
コロナ禍で自分ができることは何か。懸命な毎日が続いています。

佐野岬さん
「誰かがやらなきゃいけないことなので、その人員になれているってことは、世の中の役には立てているんじゃないかなと。ここの時間、絶対自分にとって無駄にはならないなと感じているので。一刻も早く落ち着いて元に戻れることを祈って、それまで頑張ります」

コロナ禍 看護師の胸の内 何を感じ 何を考え 看護現場に?

井上:コロナ禍の今、医療現場で働く看護師の等身大の姿を描き、共感を集めている本があります。看護師になりたての頃からの喜びや悲しみ、仕事のやりがいなどが書かれています。

去年4月には、こんな本音がつづられていました。

「医療現場で闘う人たちに向けて、感謝の拍手を送る取り組みが始まった。拍手なんてもらっていいんだろうか。だって本当は病院に来るどころか、外に出たくないと思っている。みんなのためなんて、純粋に思えているわけじゃない。少し荷が重く感じてしまう」

井上:作品を手がけたのは、一般病棟で働く看護師でイラストレーターの仲本りささんです。仲本さん、お忙しいところありがとうございます。よろしくお願いします。

仲本りささん (看護師・イラストレーター)

仲本さん:お願いします。

井上:それぞれの新人の姿、少し先輩として、うんうんとうなずかれて見ていましたが、どんなことを感じられましたか。

仲本さん:率直に言うと、1年生・2年生、すごい頑張ってるなという印象を受けました。私自身も病院で働いているのですが、私は実際、コロナ病棟ではなく外科病棟という形なのですが、防護服が増えれば増えるほど、患者さんから遠くなるんじゃないかなというのを何となく思っていました。でもVTRを拝見して、防護服を着ていてもフェイスシールドをしていても、現場の皆さんは人対人という看護を目指して、「カンファレンス」とかでもすごい前向きに頑張っていらっしゃるなというのを感じました。

井上:仲本さんも病院のほうでは今は教育側として皆さんを指導しているわけですが、新人たちの様子をどういうふうに見ていますか。

仲本さん:VTRでもあったように、この春入ってきた1年生たちは臨床での実習の経験がすごく少なくなってしまっていて、患者さんに接するという緊張感はすごい高いのかなというのを感じています。その辺のギャップとかをできるだけ埋めてあげられるような関わりをしていきたいなというのは今、感じていることですね。

保里:仲本さんはコロナ禍でも等身大の思いを発信してこられたのですが、この1年は看護師を巡っては看護師の不足とか、看護師の方の離職とか、社会的にもクローズアップされて大きな問題にもなってきたと思います。今、現場で立っていてどんなことを感じていますか。

仲本さん:第1には1年間、病院に出続けることができてよかったなというのは思っています。VTRの中の2年生の子が言ってたような、誰かがやらなくちゃいけない仕事というのをできてて、1人の人員にはなれているのではないかなという感想を私も同じように抱いてて、自分がやりたいということを仕事で体験したいときもあったのですが、この1年に関して本当にできたことは少なかったかもしれないですが、臨床で1人としてできたということは、よかったことなのではないかなと思ってます。

井上:今回、実は仲本さんに今、感じていることをイラストで書いていただきました。関連記事からもご覧いただけます。

「桜がことしも咲いて、1年たったんだ…と。
『こんなときこそ!!』とか、『誰かのために!!』とか、そういう強い使命感があったわけでは正直ない。
及第点を下げることでしか、自分を守れない日もあった。
それでもココ(臨床)に居続けようと思った理由は何だったんだろう。
新人さんたちにはコロナ禍だろうがなかろうが、看護っていい仕事だなという部分は、臨床にあるってことが伝わればいいなと思う。
少しでもこの仕事を選んでよかったなと思ってもらえればいいなと…。
だから私もまだまだ折れられない」(抜粋)

井上:仲本さん、この「及第点を下げることでしか生きられなかった」ということば、とても胸に残ったのですが、「まだまだ折れられない」という最後のことばには、どんな思いを込めたのでしょうか。

仲本さん:忙しくなってしまったとか、余裕がなくなってしまったということで、以前だったら10使えていた力が5しか発揮できなかったりという日々が続く中で、できなかったなという気持ちは残るのですが、もし10できなかったとしても、私自身が現場にいた先輩・同僚がきょうも頑張っているということにすごく支えられてきたので。私も、たとえ10できなくても、きょう頑張って出勤して、同僚にとってそういう存在になれたらいいなっていうのは感じてやってきました。

保里:今、同じく頑張ってる人たちに、どんなことばを届けたいですか。

仲本さん:これからも頑張って、明るいほうを見ながらやっていけたらいいかなと思っています。

保里:こうした皆さんの頑張りに本当に支えられていること、改めて実感しましたね。

井上:ありがとうございました。