クローズアップ現代

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2021年5月13日(木)
ヤングケアラー いま大人がすべきこと

ヤングケアラー
いま大人がすべきこと

家族の世話や介護を担う「ヤングケアラー」。先月、国が公表した調査結果によれば1クラスに2人程度の割合でいることが分かった。取材から浮かび上がったのは、当事者たちが苦しみを周囲に打ち明けられず、孤立していく実態。長期にわたるケアが人間関係や就職活動に深刻な影響を及ぼすケースも明らかになっている。声を上げられないヤングケアラーたちに、私たち大人はどう気づき、支援することが出来るのか。当事者や支援者たちの言葉からヒントを探る。

※当事者の取材記事などはこちら
みんなでプラス「ヤングケアラーをどう支える?」

※放送から1週間は「見逃し配信」がご覧になれます。こちらから

出演者

  • 濱島淑恵さん (大阪歯科大学教授)
  • 井上 裕貴 (アナウンサー) 、 保里 小百合 (アナウンサー)

ヤングケアラー "SOSを発信できない" いま大人がすべきこと

慣れない手つきで野菜を切る、小学6年生の女の子。うつ病を患う母親に代わり、家事を担う「ヤングケアラー」です。

小学6年生の女の子
「(家事は)ほぼ毎日してる。お手伝いするのは、当たり前」

小学6年生の女の子
「ママ。はよ、来て」

誰にもSOSを発することもなく、誰にも頼ることができず、1人で母親の世話を続けています。

病気や障害のある家族の世話や家事を担う、ヤングケアラー。先月、国が公表した全国調査によれば、中学生の17人に1人、クラスに2人程度いることが分かりました。そこには大きな特徴が。周囲に相談した経験がない生徒が、7割近くに上るのです。

母親と祖母の介護に明け暮れ、進学も就職もままならなかった40代の男性。気付いてくれる大人はいましたが、具体的なサポートにはつながりませんでした。

追い詰められても声を上げない、ヤングケアラーたち。私たち大人は、その存在にどう気付き、支援の手を差し伸べていけるのか。具体的に考えていきます。

孤立するヤングケアラー "SOSを発信できない"

なぜヤングケアラーたちは、みずからSOSを出さず、孤立を深めていくのか。

琴愛さん(仮名・24)
「(家族の輪の中に)入りたい」

物心ついたときから、家族のケアを担ってきた琴愛(ことあ)さん、24歳です。

琴愛さん
「公園で遊んでいるって、幸せな家族像みたいな感じしませんか。そういうのしたかったなって思います」

精神疾患が疑われる母親。琴愛さんは買い物など、日々の生活をサポートしてきました。時には暴言を浴びせる母親に寄り添い、悩みを抱えながら支え続けてきたのです。

琴愛さん
「急に態度が変わって攻撃的なことばを浴びせてきたり、刺激しないように母の機嫌をうかがうことをずっとしていました。私が母の分と、自分の分のお総菜をスーパーに買いに行っていたんですけど、やっぱり家の近くに行くと同級生の家族とかに会うことも多くて。親が病気だからとは言えないし、母を責められているようで、すごくつらかった」

学校の友達や先生に相談することもなく、何事もないかのようにふるまってきた琴愛さん。家庭の事情を知られたくないと、みずからSOSを出すことはありませんでした。

琴愛さん
「親からも、家のことは『周りに絶対に言うな』と言われていた。隠さなきゃいけないものだと思っていたので、誰かに相談というのは全く発想になかったです」

母親の世話と、家事を担い続ける毎日。精神的に不安定になり、自傷行為を繰り返すようになりました。

今も人間関係をうまく築けず、定期的にカウンセリングに通っています。

琴愛さん
「怖いと感じてしまったら、それが前面に出て声がうまく出せなくなってしまったり、うまく関係が築けないというのがあるかなと思います」

ヤングケアラーに支援が届かない 周囲が気づいているのに…

ヤングケアラーの存在に周囲が気付いていても、支援につながらないケースも少なくありません。カズヤさん(仮名)、42歳です。

カズヤさん(仮名・42)
「何か食べないといけないので、今はこんな形ですけど」

30年にわたる家族の介護で摂食障害になったため、パンや野菜ジュース、コーヒーなどをミキサーにかけたものしか受け付けません。

3歳の頃、父親を交通事故で亡くしたカズヤさん。小学生の頃には、心臓病を抱える母親のケアに加え、祖母の介護も。こうした生活が、母親が亡くなる38歳まで続きました。

なぜカズヤさん自身に、支援の手が届かなかったのか。実は、チャンスがなかったわけではありませんでした。その一つが、定時制高校で欠席が増えた頃のことでした。

カズヤさん
「急に(学校を)休みだしたんで、(先生は)どうした?みたいな感じで」

しかし先生にできたのは、出席日数やテスト結果への配慮まで。介護については、頑張っていてえらいね、ということばだけだったといいます。

カズヤさん
「お母さんが大変なことは分かってくれていたんですけど、先生も、その時はやりようが無かったんじゃないかなと」

実は、ほかにもカズヤさんの介護の大変さに気付いていた人がいました。

カズヤさん
「これが介護の記録です」

祖母のケアマネージャーが書いた記録です。孫息子だけで介護の対応が十分にできないと報告されていたのです。

しかし、介護サービスを受けられるのは病気や障害のある本人だけ。家族は含まれておらず、カズヤさんへの支援にはつながりませんでした。

カズヤさん
「だんだん(自分のことを)諦めていくということですかね。(社会との)つながりがどんどん無くなっていくというか、細くなっていった。どうしていいか分からないような状態でした」

4年前、祖母と母親をみとったカズヤさん。40代になるまで、就職したことがありませんでした。

「ほんなら先に出してください。ごめんね」

カズヤさん
「はい、すみません」

去年、スーパーで働き始め、ようやく社会とつながる生活を送ることができるようになりました。

いま、カズヤさんは、ヤングケアラーの当事者どうしが語り合う集いにも参加しています。この日、初めてみずからの体験を語ったカズヤさん。強調したのは、周りの人へのメッセージでした。

カズヤさん
「お母さんと二人で山奥で暮らしているような、この世で二人だけで生きているような感覚でした。社会との関りがあれば、よかったと思います。周りの人は、おせっかいでもいいので積極的に関わっていってほしい」

ヤングケアラーの支援 大人がすべきこと 子どもの"小さな変化"を見逃さない

SOSを発信できないヤングケアラーの存在に、大人はどう気付き、手を差し伸べればよいのか。

兵庫県・尼崎市では、市内61の学校に、9人のスクールソーシャルワーカーを配置しています。

スクールソーシャルワーカー 黒光さおりさん
「最近どうなん?大丈夫?」

その一人、黒光さおりさんです。掲示物や持ち物などを細かくチェック。子どもたちのささいな変化に気を配っています。

黒光さおりさん
「文字がこう、がーっと黄色ほど乱雑に塗っているようなところとかは、ちょっとなんかこう、すっきりしていないところがあるんかなと。きーっとなっているかなって、気にするようにしています」

黒光さんがいちばん大切にしているのは、子どもの目線に立つことです。

黒光さおりさん
「小さい子やったら、折り紙、トランプ、ウノ。七つ道具です」

何気ないしぐさや、やり取りから、隠された本音に気付こうとしています。

黒光さおりさん
「うまく安心な関わりができるように、いつもアンテナを張り巡らせている感じです。(子どもの)『大丈夫、大丈夫』ということばだけには惑わされずに、しっかり変化に気が付きながらサポートすることが大切だなと」

実は、黒光さんもまた、小学生の頃から病気の母親のケアを担う、ヤングケアラーでした。当時、苦しみを周囲に打ち明けられなかった経験から、とにかく大人が働きかけることが重要だと考えているのです。

黒光さおりさん
「この子はヤングケアラーで、本当にすごくしんどい危いところを持っているんだなと、みんなが気が付いて自覚して見守っていくことが大事かなと思っています。笑顔の裏には、しんどさがあるんだと分かっていて関わっていくのと、分からずに済ませてしまうのは全然違うかなと」

ヤングケアラー "SOSが発信できない" 支援のために大人がすべきこと

井上:病気や障害のある親の世話をする、18歳未満の子ども「ヤングケアラー」。先月、国が公表した調査。ここまで大規模な調査は初めて行われたのですが、深刻な事態が浮かび上がってきています。

保里:中学生の17人に1人。高校生の24人に1人という結果です。介護などの身体的なケアだけでなく、買い物や料理といった家事。親だけでなく、幼いきょうだいの世話なども含まれます。そのケアにかけている時間は、中学生が平日平均4時間。高校生は3.8時間。1日に7時間以上、家族の世話をしていると答えた人も1割に上りました。

井上:ヤングケアラーの実態に詳しい、大阪歯科大学の濱島淑恵さんに聞いていきます。濱島さん、なかなか自分から言い出せず孤立する子どもが多い中、黒光さんの「子どもの大丈夫に惑わされないでほしい」ということばがありました。これはつまり、大丈夫ではないということですね。

濱島淑恵さん (大阪歯科大学 教授)

濱島さん:そうですね。ヤングケアラーたちというのは物心ついたときからケアを担っていて、別の家庭と環境を比べるということができませんので、今の状況が通常になってくるわけです。そうすると、「大丈夫?」と聞かれると、「大丈夫」というふうに答えるのは当然のことであって、しかしそれが本当とは限らないということがあると思います。そういった形で負担があるにも関わらず、それを自覚していない、自覚があったとしてもなかなか理解者がいない中で知られないようにしなければいけない、知られたくないというような思いが出てくるということもあります。そういった中で、なかなか本人からは発信できないということがあるわけです。それが、なかなか気付きにくいというところの一因になってくるかと思います。

保里:実際、今回取材に応じてくださった方々、琴愛さん(仮名)は「誰かに相談する発想は全くなかった」と話しています。そしてカズヤさん(仮名)も、「おせっかいでいい、周りの人は積極的に関わって」と話してくれました。こうしたことばからも、アプローチが必要なんだということですね。

濱島さん:なかなか見えてこないというのは当然のことですので、感度のよいアンテナを持つと同時に、やはり周りが積極的にアプローチしていくということは非常に重要かと思います。元ヤングケアラーたちの話を聞いても、いつどこで心を開くかというのは本人たちも分からない。しかし、どこかで突然、この人に話してもいいなというタイミングがあるわけです。それだけに、周囲のほうから常に見守り続け、声をかけ続けるということが非常に重要になってきます。そして私には話していいんだよ、家のこととか何かあったら話していいんだよ、ということを発信し続けることが重要になってきます。そうしますと、ある何かのタイミングのときに、この人には話そうかなといったときにしっかりとキャッチをして、支援につなげていくということが可能になってくるかと思います。

井上:声をかけ続けるというところですが、私たちの中で介護や家事をしている子どもは偉いとか、あるいはことばの中でも「偉いね」、ということばもあると思います。この考え方だったり、ことばを変えていかないといけないということなのでしょうか。

濱島さん:非常に難しいところなのですが、家族のケアを担うということは、それはそれで本当にすばらしいことですし、尊いことですし、本当によく頑張っているというところは認める必要があるわけです。評価することが大事だと思います。ただ、そこで終わらないということです。やはり頑張っててすばらしいのだけれども、ちょっと負担に感じることはない?とか、何か学校生活で困っていることはない?という形で、負担にも注意を払うということです。彼らの家事と負担、その両方を私たちは認識していく必要があると思います。

保里:私たち一人一人が気付くべき大切なことが見えてきたのですが、実は、より子どもたちと密接に関わっている場所でさえも、その把握が難しいという現状があるのです。まず、学校はもし本人の悩みや不安を聞けても、家庭への介入ができない。そして行政のほうも、ケアマネージャーなどを通じて家庭の状況を把握できても、子ども本人の問題までなかなかたどりつけないというのが実情です。

こうした中で、どうすればヤングケアラーを支えることができるのか、模索が始まっています。

ヤングケアラー いま大人がすべきこと 学校で・介護現場で…どう手を差しのべる

みずからがヤングケアラーだった経験を基に活動する、スクールソーシャルワーカー・黒光さおりさん。いま、学校の教員たちに、困っている子どもを見つけ出す力になってもらいたいと活動しています。

スクールソーシャルワーカー 黒光さおりさん
「ヤングケアラー、めっちゃ見つけにくいんですよ。『なんか困っていない?』と聞くと、『いや全然、大丈夫大丈夫』って言うし、何となくうまくやってそうに見える」

黒光さんは、外からは見えにくいヤングケアラーの悩みに気付くことが、何よりも重要だと訴えました。

黒光さおりさん
「実は共通して、絶対に悪いものが1つあるんですよ。何やと思われますか。貧困でしょうか。能力でしょうか。実は、孤立なんですよ。すべての問題につながっているのは、孤立です。ケアを少ない人数の家族とか、子どもが抱え込んでしまうところに問題がある」

参加した教員
「ヤングケアラーという、ことば自体あまり知らなかったんですけれど。日々出会っている子どもたちにかけることばとか大事なんだなと、改めて実感させてもらいました」

参加した教員
「孤立化している部分については、学校現場に勤めているとなかなか気付かない。しっかり子どもたちの困り感に寄り添っていくのは、本当に大事だなと感じました」

黒光さんは学校だけでなく、行政や児童相談所など関係機関と連携し、ヤングケアラーの支援につなげようとしています。

この日、訪ねたのは、生活保護の申請窓口。母親が体調を崩し、ヤングケアラーとなった児童の家庭のため、相談に訪れたのです。家族全体を支えることで、児童の負担を軽減するねらいです。

黒光さおりさん
「ケアの負担を減らして、その子が進路や将来に向けて、ちゃんと取り組めたり、部活や友達関係も楽しめたりする環境にもっていくことが大事だなと。いろいろな関係機関を使って、ケアをみんなで負担していこうとしています」

介護現場などを巻き込み、ヤングケアラーを支援しようと動き出したのが神戸市です。この日行われていたのは、介護事業者向けの啓発動画の撮影です。

「子ども・若者ケアラーであった子どもたちは、誰にも相談できず問題を抱え込んでしまう可能性があります」

取り組みの背景には、2年前に起きたある事件がありました。女性が介護の負担に耐えかね、認知症の祖母を殺害。介護サービスを使っていましたが、女性への支援にはつながりませんでした。

神戸市内には、およそ3,000か所の介護事業所があります。それぞれの事業所は、神戸市の動画をインターネットで試聴するよう求められています。

地域包括支援センタースタッフ
「(ヤングケアラーの)具体的なイメージは全く持っていなくて、そこまで目がいっていなかったことがあるだろうなと思っています」

神戸市は全国に先駆け、ヤングケアラー専門の部署を新たに立ち上げています。「子ども・若者ケアラー支援担当課」では、3人のスタッフを新たに雇用し、対応に当たっています。ヤングケアラーについての情報が寄せられると、この担当課が一元的に受け付けます。そして、介護保険、障害者支援など、8つの部署と連携。病院や障害、介護など、家庭によって異なる事情に組織の壁を越えて対応していこうとしています。

子ども・若者ケアラー支援担当課 岡本和久課長
「1つの部署だけでできる課題ではなく、横断的に教育の現場、医療の現場、高齢者、障害者、横につながりながら情報を共有し、若者のケアラーの支援という観点を新たに入れ、改善できるような方策を作っていきたい」

ヤングケアラーになる前が大切 "先進地"イギリスに学ぶ支援

保里:ヤングケアラーについての相談窓口や、さらに多くの当事者の声については、関連記事からもご覧いただけます。

井上:ここでぜひ皆さんに知っていただきたいのが、国を挙げての対策にいち早く乗り出した、イギリスの取り組みです。12人に1人がヤングケアラーと社会問題化する中で、2014年に法律を制定しました。地方自治体に対して、ヤングケアラーを適切な支援につなげることを義務づけたのです。20年以上にわたり5,000人以上のヤングケアラーを支援してきた、サラ・ゴーウェンさん。サラさんは、いかにこのヤングケアラーを見つけだし支援につなげるか、ヤングケアラーになる前が大事だと指摘します。

ヤングケアラー支援団体 サラ・ゴーウェン代表
「ヤングケアラーになる前に、危機的状況に陥ってしまう可能性を認識しておくことが大切です。親など家族に慢性的な症状があると診断された時点から、子どもたちへの介入を始めるのです」

井上:もう一つあります。ヤングケアラーがみずからSOSを発信しやすいように、秘密の場所を作ることが大切だといいます。

サラ・ゴーウェン代表
「本当のことを自由に話せる、『秘密で』、『安全な』場所を作ることが大切です。家庭とは違う場所にです。他のヤングケアラーとも話せる場であると、さらによいですね」

井上:実はイギリスでは、秘密の場所として当事者どうしがつながる場ができたことが、大きなうねりになっていったのです。「ヤングケアラーナショナルボイス」という、イギリス全土のネットワークに発展しまして、国を動かすまでの一大勢力になったのです。例えばですが、すべての学校に支援員の配置の義務を求めたり、対応マニュアルを自分たちが作ったりしました。

濱島さん、イギリスのこの取り組み、当事者みずからが動いているというところがポイントですよね。

濱島さん:そうですね。当事者たちの声がきちんと届いていくというところが、非常にすばらしいところだと思います。特にいま拝見している中で、イギリスの取り組みとしてすばらしいところ、3つのポイントがあります。

まず1つは、ヤングケアラーの発見支援の仕組みというのがきちんと法制化されて、仕組みとして存在しているというところになります。日本においても当然、個人的にヤングケアラーに気付いた先生ですとか、専門職が個人的に支援をするということはあるわけですが、それですと偶然に左右されてしまうと。そういった人に出会えたヤングケアラーには支援が行くけれども、出会えない多くのヤングケアラーには支援が行かないというようなことが起こってきてしまうわけです。しかし、その仕組みを作ることによって、多くのヤングケアラーたちがちゃんと支援に結び付きつけられていくということができると思います。また、予防的なアプローチの大切さというのが述べられていましたが、やはり予防的なアプローチができるというのも、そういった仕組みがあるからこそだと思います。
そして2つ目に、支援メニューの充実ということがあります。先ほどもヤングケアラーたちの集える場があるというような話がありましたが、それ以外にも例えば、レスパイト(一時的にケアから離れる)サービスですね。ケアから離れてちょっと休める。カヌー体験とか、子どもらしい時間を過ごすことができる。そういったサービスというのも整えられています。そういった豊富な支援メニューがある。その仕組みがあるということ、支援メニューがあるということ、その両方があることによって両方を生かしてるということが言えると思います。
そしてさらに、そこに当事者たちの声が届くということですね。ヤングケアラーたちが社会的に認識されて、そして彼らの声を発信する場がある。そしてそれが政策に反映されていく、そういったところが非常にすばらしい点かなと思います。

保里:日本では、厚生労働省と文部科学省が中心となってプロジェクトチームを立ち上げ、今月中には支援のための報告書を作成する見込みとなっています。濱島さん、日本がこの問題に向き合っていくために、今後何が必要だと考えますか。

濱島さん:やはり非常に重要なポイントとして、ヤングケアラーに関わる問題というのは子どもの人権に関わる事柄ではあるのですが、子どもの問題ではないのです。子どもの問題でもあるんですが、それだけではない。その背部にある、大人の問題に注意を払っていく必要があると思います。高齢者福祉、障害者福祉の問題、または貧困ですとか社会的孤立、社会的排除の問題、そういったさまざまな問題が絡んできている。そしてその問題が解決されてこない中で、そのしわ寄せが子どもたちに行っていると。そこでヤングケアラーたちがさまざまな困難を抱えることがあるということです。そういった意味で、ヤングケアラーの支援には児童福祉や教育というところだけではなく、非常にさまざまな領域にまたがった包括的な支援というものが必要になってきます。そういった意味では、国にはぜひそういった包括的な支援のビジョンというのを示していただきたいなと思いますし、それを法制化して予算化していくといった取り組みを期待していきたいと思っています。

井上:濱島さん、ヤングケアラーの子どもたちが生きやすい社会、これはどんな姿をしていますか。何を求められますか。

濱島さん:さまざまなことがありますが、やはり一番大事なのは「理解」だと思います。ヤングケアラーたちが、ケア経験によって得た価値。そして価値だけではなくて、それでもなかなかしんどいことがある、さまざまな負担・困難、その両方を理解している人々がたくさんこの社会にいるということ。それが、暮らしやすい社会を作るための第一歩になるのではないかなと思います。

井上:そして、どんな言葉を子どもたちにはかけたほうがいいと思いますか。

濱島さん:やはり彼らには大変さもあるかもしれないけれども、あなたたちには価値もあるということ、その両方を見ながら一緒に考えていこうということを、ぜひ声をかけてあげてほしいと思います。