クローズアップ現代

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2021年5月12日(水)
ルポ・少年院 ~少年の更生現場で何が?~

ルポ・少年院
~少年の更生現場で何が?~

20歳未満で罪を犯した少年が矯正教育を受ける少年院。最近では虐待を受けたり、発達障害に対する周囲の無理解などから社会に適応しづらい少年が多く入所する。課題は再犯の防止。退院後の更生支援は薄く、NPOなど民間の協力団体も出てきているが、コロナの影響で運営が壁にぶつかっている。18歳と19歳に対して、強盗などの罪によっては少年審判ではなく、検察官に送致できるようにする少年法の改正案が今、国会で審議されている。少年の更生に今何が必要なのか考える。

※放送から1週間は「見逃し配信」がご覧になれます。こちらから

出演者

  • 石井光太さん (作家)
  • 須藤明さん (駒沢女子大学教授)
  • 井上 裕貴 (アナウンサー) 、 保里 小百合 (アナウンサー)

ルポ・少年院 更生の実情とは

保里:少年が犯した重大な事件が報道されるたびに、どうしてこんなことが起きたのかと驚き、怒りを覚えることがありました。その罪自体は、決して許されるものではありません。犯罪が繰り返されていくことを防ぐためにも、何が求められるのか考えていきます。

井上:少年事件の件数そのものは、この10年間をみますと減少の一途をたどっています。一方で、少年院を出た人が5年以内に再び少年院や刑務所に入る率は22.7%で、2000年以降ほぼ横ばいで、5人に1人が再び罪を繰り返しています。

少年の事件は減少しても、なぜ罪は繰り返されるのか。背景には、家庭や社会の中で居場所を失った、少年たちの厳しい現実がありました。

ルポ・少年院 虐待・性被害…変わる更生の現場

神奈川県にある、久里浜少年院です。在院者は70人。強盗や傷害などの重い罪や、再犯を繰り返す少年たちを教育しています。

19歳のとき、窃盗の罪で少年院に入ったタナカさん(仮名・20)。生まれてすぐ祖父母に引き取られ、両親を知らずに育ちました。小学生のとき母親のもとに帰りますが、母親は別の男性と結婚していました。タナカさんは、義理の父親から虐待を受けました。

タナカさん(仮名・20)
「殴る蹴るはもちろんのこと、熱湯をかけられたり、あとは物で殴られたり、自分の存在を否定されるかのような言葉だったりとか」

中学のころ家出。その後就職しますが、非行を重ねある日、衝動的に職場の車を盗みました。

タナカさん
「正直、自分のしたことがどうこういうより、その現実から逃げること、楽な方に行くことに必死で。こういう人生になっているのは、すべて父親のせいなんだ」

指導教官と交わす日記には、父親への恨みがつづられていました。

法務省の調査によると、在院中の少年で身体および精神的な虐待を受けたと答えた人は、この5年間で増え続けています。特に、女子のほうが虐待を多く経験していました。

女性だけの少年院、群馬県の榛名女子学園です。ここでは虐待だけでなく、性被害を受け、自己破壊的な感情が強い人への対応も課題となっています。

18歳のスズキさん(仮名)。友人や異性との人間関係でつまずき、リストカットなどの自傷行為を繰り返してきました。

高校中退後、非行グループと関わりを持ち、覚醒剤に手を染めました。

スズキさん(仮名・18)
「薬やると、本当に忘れられる、私の場合は」

「罪の意識はあった?」

スズキさん
「罪の意識?(当時は)別に思ってない」

スズキさんの中に、大人への強い不信感を感じた担当教官は、面談を重ね、信頼関係の構築に努めます。

担当教官
「最近どう?どんなこと考えるの?」

スズキさん
「過去」

担当教官
「思い出すんだ?」

スズキさん
「少年院に来たとき、本当に嫌だった」

担当教官
「嫌だったんだ?」

スズキさん
「嫌だった。でも先生たちも、私が思っていた先生たちじゃなかったから」

担当教官
「そうなの?」

スズキさん
「違う、違う。いい意味で」

担当教官
「いい意味で?」

スズキさん
「相談とか、話聞いてくれるじゃないですか」

スズキさんは、それまで心に秘めていた性被害の苦しみを、教官に打ち明けました。

スズキさん
「私、今まで誰にも言ってこなかったんですけど、少年院に来て、自分が信用できると思った先生にはレイプのこと話した。自分自身が汚いなと思ってたけど、先生たちは『全然汚くないよ』みたいな。そういうことを言ってくれているから、話して本当にほっとしました、私。そういうところでは、少年院に来てよかったかな」

法務省 少年矯正課 課長 西岡潔子さん
「虐待や発達上の課題とか、実は法務省の統計も、最近そういう形でとるようになった。周りとの関りを警戒してしまう。自分の気持ちを、言葉で言い表してこなかったお子さんが多い。じっくりと関わらなければいけない子どもたちが、やっぱり多いのかなと思う」

さらに今、障害のある少年たちへの対応が喫緊の課題になっています。

19歳のとき、強盗未遂で少年院に入った、サトウさん(仮名・20)。職業訓練の作業が、大の苦手です。

担当教官
「何?」

サトウさん(仮名・20)
「こっちの方がやりやすい」

担当教官
「いやいや…」

サトウさん
「はい、終わった」

担当教官
「終わってないよ。イライラして、ガコンバコンってやると、あとあと汚く仕上がっちゃう」

教官から注意されると舌打ちし、反抗することもしばしばです。サトウさんは、発達障害と診断されています。人との関わりが苦手で、こだわりが強いなどの特性がある発達障害。サトウさんは養護施設で育ちましたが、障害への適切な支援は受けられませんでした。施設では、暴力を振るうなどの問題行動を繰り返しました。

サトウさん
「僕は結構、カーッて怒っちゃうほうなので、こいつは頭がおかしいだろうなとか見られていて、結構荒れてた」

その後、施設にいられなくなったサトウさん。人間関係のトラブルが続き、自暴自棄の果てに強盗に及んだのです。周囲に理解されにくい発達障害。注意や叱責を受け続け、心が深く傷ついていくことも少なくありません。それが時には、うつなどの二次障害を引き起こしたり、非行や家庭内暴力などにつながることもあります。

担当教官
「ずっとこの角度でやっているから、これがうまくできるようになったら、取れるときパッっていくから。そうそう、気持ちいい。いいじゃん、結構よくない?」

サトウさん
「やりやすいっちゃ、やりやすい」

担当教官が心がけているのは、ありのままのサトウさんを受け入れること。

サトウさん
「やっぱり自分の弱さだったりというのを、認めたくなかったのもありますし、他人の意見を聞き入れる。少し不安な面はありますけど」

担当教官
「発達障害を抱えて、二次障害的に傷を負って負いまくって育ってきている。彼を縛りつける形ではなく、彼の存在を尊重する。そういう形で約1年ぐらい過ごしてきて、徐々に日を追うにつれて、変わっていった」

義理の父親から暴力を受け、日記に恨みをつづっていたタナカさん。担当教官は、父親との楽しかった思い出とあえて向き合わせます。

担当教官
「中学校の部活動でサッカーをしていて、お父さんは熱心やな?お父さんってサッカーに対して、どう指導してた?」

タナカさん
「自分の練習に対する取り組み。やる気だったり、そういうのを結構言われたりもしました。もっとがむしゃらに行け、みたいな感じ」

担当教官
「虐待を受けていたわけですけど、それが彼が最初に社会で会った大人像になる。やはりそこと決別して、自分の人生を作っていく上で割り切ることは、必要なプロセス」

少年院に来て半年後、日記の内容に変化が生まれました。

『親のせいにすることが最大のごまかしでもあった』

タナカさん
「一緒にサッカーをやった記憶だったり、そういうのを考えると、自分の父親として頑張ってくれてたんかなって。うらみや憎しみという気持ちに、とらわれることがなくなって。暴力、その行為自体は許せないところはあるんですけど、そこで初めて許す。許すってわけじゃないけど、これで終わりにしようかなって気持ちが出てきた」

久里浜少年院 首席専門官 坂入慎悟さん
「18とか19歳、そのくらいの年齢の子でも未熟な子が多いので、きちっと育て直しをしていく、みんなで面倒を見ていく。そういうビジョンを持って、子どもたちを暖かく見守っていく」

ルポ・少年院 変わる更生の現場

保里:少年院や更生の現場を数多く取材されてきた石井光太さんは、この少年院の実情をどのように受け止めていますか。

石井光太さん (作家)

石井さん:少年院の中の子どもたちの変遷についても、僕は考えないといけないと思います。本当に一時代前は暴走族の子みたいな形で、反社会を掲げて暴走行為をしたりカツアゲをしたり、捕まってくるというイメージだったと思います。最近はそうではなくて、本当に社会的弱者、例えば虐待を受けたり、精神疾患を抱えていたり障害を持っていたり、あるいはいじめを受けていたり、貧困だったり。そういったような子どもたちが、どうしていいのか分からないという生きづらさを持っているけれども、その人たちを悪い大人が利用して売春させて、麻薬を売らせて、特殊詐欺をやらせて、そうして入ってくるということがほとんどです。本当に今は反社会の強者が入ってくる場所ではなくて、社会の本当に弱い人たちが入ってきている場所なのです。そういう部分をきちんと考えないと、少年院に何が必要なのかが見えてこないのではないかなと考えています。

保里:少年の非行や更生の現場に詳しい、須藤明さんにもお越しいただいています。須藤さん、少年院では今、どのような教育が求められているのでしょうか。

須藤明さん (駒沢女子大学 教授)

須藤さん:少年院ではこれまで、グループを単位としての指導と、個人を単位としての指導、そこをうまく組み合わせて指導してまいりました。ただ昨今は、少年の特質の変化がございまして、グループよりも個別的な指導に重点を置くようになってきているかと思います。その背景は、家族のいろいろな問題が抱えていることに加えて、コミュニケーションがうまく取れない、他者との関係がうまく取れない。そういったところがあるので、社会に出てからの基礎をどうやって作るかということが、少年院の先生たちが苦労していることかと思います。

井上:個別的な指導の中で、例えば犬との触れ合いがあったと思うのですが、コミュニケーション力が重視されているというのはどういう事があるのでしょうか。

須藤さん:犬との交流は、まず他者と交流する第一歩というふうに位置づけられています。そこから積み上げていって、コミュニケーションの話に行くと思います。あと、発達障害の対応というのが喫緊の課題になっていまして、2015年から支援教育課程というのが設けられ、発達障害とか知的な問題とか、さまざまな子どもの特性に応じた指導がされるようになってきているのが昨今の状況だと思います。

井上:指導も変わってきているんですね。

須藤さん:そうですね。

保里:さまざまな形での教育が必要とされている少年院の実情について、石井さんはどう見ますか。

石井さん:罪を犯した人が、こんな甘いことをやっていてどうするんだという声もあると思います。でも僕は、少年院は病院における緊急治療室みたいな形だと思っていて、ICUみたいなところですよね。どういうことかというと、少年たちはリストカットして、薬物の後遺症でわけが分からなくなって、パニックになっている状態で保護されてくるのです。その子たちを半年ないし、1年間保護して、心を落ちつかせて、そしてその子が抱えている問題をきちんと見つめさせて、その先の道筋を作っていく。そういう場所が必要なのです。ただ問題は、数か月間そういうことをしても、じゃあ外へ出ていってくださいね、社会に出てくださいねといっても、なかなかうまくいかないです。そこは少年院の限界であり、そしてそこから先が、社会の責任の部分ではないのかなと思っています。

保里:まさに少年院を出たあと、どんな課題があるのでしょうか。

少年院を出た後…社会に求められる支援

九州に暮らすヤマダさん(仮名・27)は、これまで少年院に3度、送致されました。最初に少年院を出たのは15歳のとき。その後、親からも見放され、居場所を失い、傷害事件を起こします。21歳のとき3度目の少年院を出て、更生保護施設に入りました。しかし、施設でトラブルを起こし、そこにいられなくなりました。

ヤマダさん(仮名・27)
「もう誰もこんな自分を見てくれていない、手を伸ばしてくれない。じゃあ、もういいやって。もう一体全体どうしようかなと、本当に追い込まれてました」

そんなヤマダさんに、転機が訪れます。行き場のない少年たちを引き受けていた、NPOとの出会いです。専務理事の室田斉さんです。東京で貿易会社を営んでいた室田さんは、知り合いの弁護士から誘われ、NPOを立ち上げました。

NPO法人クラージュ 専務理事 室田斉さん
「まだ20歳くらいですから、感性が鋭いので今のうちにいろんなものを見せる。吸収力すごいですよね。一緒に成長したいし、みんなで幸せになろうよと」

室田さんは少年たちに働く場を提供するため、新たに建設会社を作ります。寮も完備し、多いときには12人を受け入れました。食事を共にするなど、家族のような一体感を大切にしました。

九州から室田さんのNPOにやってきた、ヤマダさん。建設会社で営業を任されます。仕事がうまくいかなくても、室田さんは見守ってくれたといいます。

ヤマダさん
「すごく居づらかったんですよ、その時。もう給料泥棒じゃんぐらいの。でも室田さんは、『お前が営業売れなくても、他の子が売るから気にすんな』って。『誰かがやるから大丈夫だよ』って。家族っていうのを今まで感じなかったんですけど、本当に家族みたいな」

ヤマダさんは2年前に結婚し、今は故郷の工場で働きながら家族を支えています。

ヤマダさん
「室田さんと出会ってなければ、絶対また悪さしたり捕まったりして、なかなか立て直すってすごく難しくて、出会ってから性格とか、人とのつきあい方とか、自分の生き方とか、すごい変わりました」

室田斉さん
「皆、今まで見てきた人生がすべてだと思うんですよね。実は違うんですよ、無限大なの」

しかし今、室田さんの活動は壁にぶつかっています。コロナ不況のあおりを受け、建設会社は去年11月に倒産。寮も閉鎖せざるを得ませんでした。

新たな寮の物件を探していますが、まだ見つかっていません。

室田斉さん
「NPOで申し込むと、少年院(から出た)という理由で断られる。(支援者が)何人もいて面倒を見るシステムを作らない限り、きついですね。現実ですよ、これが」

少年院を出たあと、社会でどのように支えていくのか。そのネットワーク作りに取り組む人がいます。井村良英さんです。ひきこもりの若者を長年支援してきましたが、8年前から少年院を出た人の見守りを行っています。

井村さんは少年院と協力し、院内にいるうちから少年と関係作りを始めます。

NPO法人 育て上げネット 執行役員 井村良英さん
「ちょっとお願いがあって。少年院を出て、その日のうちにできれば午前中に、そこの電話番号に電話してほしい」

少年
「電話して、なんて言えばいいですか?」

井村良英さん
「井村さん、いますか?って」

社会に出たあとも定期的に対面して、近況を確認します。

少年院を5年前に出た男性とも、ずっと連絡を取り合っています。会うときは構えず気軽に話せるよう、井村さんはよくゲームをします。

少年院を5年前に出た男性
「困っていることを積極的に聞きに来るというより、遊びの延長線上で聞いてくれる感じ。あんまり相談できない部分は、全然無い」

この男性は社会に出てすぐ、心身の不調から仕事と家を失います。見かねた井村さんは、生活保護につなげました。しかし、井村さん一人で見守りを続けるには、限界があると感じていました。そこで新たに始めたのが、クラウドファンディングです。活動への出資者は、100人近くに上りました。

さらに少年たちの相談相手になってほしいと呼びかけたところ、12人が応じてくれました。

少年院を5年前に出た男性
「どこどこのどういう人と知り合いになったから、ちょっと会ってみない?と言われて。いいですよと言って会うと、なんだかんだ解決につながる。次のステップにつながる」

井村さんは、相談相手になれる大人が社会の中に多くいる環境を作りたいと考えています。

井村良英さん
「本人たちが、もう一回頑張ってみようと思ってもらえるためには、応援も多様な応援が必要だなと思っています。小さな活動なので、大きな広がりをもって広がっていくのは、まだまだこれからかなと思う」

少年院を出た後…社会がどう受け止めるのか

保里:石井さん、理解のあるNPOの支援も始まっていますが、課題もあるわけですね。

石井さん:そうですね。出院者たちが、もう1回非行してしまう率は非常に高いです。NPOはありますけども、まだまだ足りない、社会が非常に生きづらいのだと思います。それは、少年たちが持っている抱えている問題を見てみれば分かると思うのですが、虐待のトラウマだとか、精神疾患だとか、薬物の後遺症だとか、あるいは働いても貧困で稼げない、友達もいない、親もいない、そういったような状態です。これは少数のNPOがちょっと何かをやったとしても、足りないんです。やはり社会全体で、もっときちんとこの問題と向き合って、取り組んでいく必要があると思います。

保里:石井さんが見た少年の更生現場に関する記事は、関連記事からもアクセスできます。そして須藤さん、少年院の中での保護、そして出たあととの支援のギャップ、これが大きいわけですね。

須藤さん:その点は、私が家庭裁判所の調査官になった1980年代からずっと続いている、大きな課題でもあります。少年院を出院したときには、保護観察所から支援も受けられますけど、期間が数か月から半年と限られていますし、その後が途切れてしまうわけです。ですから、民間の方のいろんな参入というか、そういった形で切れ目のない支援をどう確立するかというのが、本当に課題となっていると思います。

井上:少年の更生に関してですが、国会でも今、大事な審議が行われています。少年法の改正案についてです。これまでは20歳未満は原則、家庭裁判所で審判され、故意の殺人のケースは検察に送致されました。改正案では18歳と19歳に対しては、検察に送致できる事件の対象を、強盗や放火などにも拡大するということです。

須藤さん、これについては改正案賛否がありますが、この議論はどう受け止めていますか。

須藤さん:犯罪被害者のご遺族からすれば強い怒りの感情とか、いろんなさまざまな感情があるのは十分承知しております。そういった気持ちも大切にしなければいけない。一方で、18歳・19歳はまだまだ未成熟です。というのは、最近の脳科学の知見でも衝動性をコントロールする前頭葉の発達というのが、25歳前後まで続いていると。つまり、18・19というのは、発達途上であるということがあるわけです。ですから、そういったことを踏まえてアメリカでは、適応年齢の引き上げというような動きも出ている状況であります。少年法は甘いから、厳しく対処すれば問題解決になるんだというのは極めて短絡的な発想になります。そこは十分考えて、少年の問題に応じた処遇をしているという現在の少年の矯正の現場も、今回を通じてぜひ皆さんに理解していただきたいと思っています。

井上:罪を繰り返さないために、私たちごととして、社会としてはどういうふうに考えていったらいいと思いますか。

須藤さん:諸外国の例をとれば収容保護だけではなくて、社会内の処遇というのに力を入れてます。つまり社会の中で居場所をどう作るのか、そして社会とのつながりをどう作るのか、この2つがキーワードになっているわけです。ですから、犯罪とか非行の問題は、社会的排除だけでは何ら解決には結び付かない。結局そういった人たちを、われわれがどう迎えいれ、そしてその人たちにどう更生していただくのか。つまりそれは、本人の更生のためでもあるし、われわれ社会のためでもある。そのような受け止め方が大事だと思っています。

保里:石井さん、改めて少年の更生にとって、私たちは何が大事だと受け止める必要がありますか。

石井さん:法改正とか環境が変わることは、非常に難しいのです。ただし、更生した少年たちに、「何であなたは更生できたの?」と聞くと、皆さん口をそろえるのが、「本当にいい人と出会えたから」と言うんです。僕の言うことをきちんと聞いてくれたとか、あるいは僕のことを信頼して何かを頼んでくれたとか、そういうふうに言うんです。これはそんなに難しいことではないんです。だけど、彼らはそういった人たちが周りにいなかったから犯罪を犯してしまったわけなのです。逆に言うと、僕たちは彼らに対して怖がったり、突き放したりするのではなくて、そういったような温かい形で触れ合うことが大切かなと思っています。

保里:社会を構成する私たち一人一人の大人が、身近でできることがある。そのことをあたたかく受け止めたいと感じました。