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2021年5月6日(木)

親を捨ててもいいですか?
虐待・束縛をこえて

親を捨ててもいいですか? 虐待・束縛をこえて

親を捨てたい…。近年、親との絶縁をテーマにした書籍の出版が相次ぎ、話題を呼んでいる。介護や葬儀の代行サービスにも関心が集まり、ある事業者には40~50代の子供世代からの問い合わせが相次いでいる。取材で浮かび上がったのは、過去に親から虐待や束縛を受けた人々が年齢を重ね親の介護に直面する現実。過去の辛い記憶が蘇るなか「親を大切に」との社会通念に苦悩する当事者たちの声とともに親子関係のあり方を考える。

※放送から1週間は「見逃し配信」がご覧になれます。こちらから

出演者

  • 信田さよ子さん (臨床心理士)
  • 井上 裕貴 (アナウンサー) 、 保里 小百合 (アナウンサー)

親を捨ててもいいですか?

「お線香を1本たむけていただいた後、ご出棺とさせていただきます」

中部地方の葬儀場。70代男性の葬儀が行われていました。喪主を務めていたのは、実は家族ではありません。亡くなった男性の家族から依頼を受けた、代行業者です。

「いま火葬場で、火葬が終わりました」

依頼した娘
「あっ、そうですか」

「(お骨は)このまま私の方でお預かりする形にしますので」

LMN代表理事 遠藤英樹さん
「死後事務と言われている手続きとか、いろいろな片づけとか、そういうものに関しても、私たちが全部やらせていただく」

介護から葬儀、納骨までの手続きを代行するというこのサービス。今、高齢の親を持つ40~50代からの相談が相次いでいるといいます。

相談者
「妻もいるし、子どももいるし、これ以上親を面倒見る余裕もないし。『親を捨てる』っていう言い方もあれですけど、どうにか出来ないのかな」

"親を捨てたい"。言葉の裏には複雑な事情がありました。

子供の頃に苦しんだ、親からの束縛や虐待。その親が高齢になり、介護や同居を迫られる中、再びその事実に向き合わざるをえなくなっているのです。


「(母といると)お母さんあのときに、私にこうしてくれなかったじゃない。恨みつらみのようなものが、ワーッと自分の心からあふれてきちゃって、止めることができないんです。その感情を」

親を捨ててもいいですか?苦悩する胸の内に耳を傾けました。

親を捨てたい 近年関心高まるテーマ

井上:「親を捨てたい」。誰しも少なからず親子関係に悩んだことがあると思いますが、この言葉、さすがにショッキングでした。ただ、実はいま、こうした考え方をする人は少なくないというのです。

保里:近年出版された本や漫画のタイトルには、「親を捨てる」、「親から逃げる」といった文言が並んでいます。どれも良好ではない親子関係について扱ったものですが、こうしたテーマにいま、関心が高まっているということです。子供時代に虐待や束縛などに苦しみ、いま高齢となった親と向き合っている人たちそれぞれが、ひと言では言い表せない葛藤を抱えている現実が見えてきました。

母親の束縛から逃れられない

母親への複雑な感情を、漫画に描いて吐露している人がいます。40代の白川さん(仮名)。

実家の母親が 去年難病を患い入院。病院に身の回りのものを運ぶなど、母親の世話をする機会が増えました。

白川さん(仮名)
「(母は)どなるし、言っていることはむちゃくちゃ。突っ込めば逆ギレする。あと手が出ます」

昔から、かんしゃく持ちだったという母親。期待に応えないと、よく手を上げたといいます。白川さんは口答えせず、いつもつらい気持ちを抑えて理想の娘を演じてきました。

白川さん
「物心がついたときから、そうなっている。なかなかそれは変えられない。いまだに親に逆らうということは怖い」

結婚後は、母親と距離を取っていた白川さん。しかし去年の入院以来、再び関係が急接近。気付くと子供の頃のように感情を押し殺し、理想の娘を演じてしまっていたといいます。

白川さん
「怖いのに、逃げたいのに、なぜか近くにいる。『そんなの逃げればいいじゃん』、『やりたいことをやればいいじゃん』って言うけど、それが出来ない精神状態。世間的にはいい親御さんなわけで、世間的ないい親御さんを自分は捨てちゃうのかという罪悪感。根っこにはずっとそれがあるので、一生取れないんじゃないかなと思うぐらい根深い。」

友人との会話でも、口をつくのは母親への悩みです。

友人
「(実家に)行かなきゃいいのにと思うけどね」

白川さん
「行かざるを得ないんだって」

友人
「そこなんだよね」

友人もまた、親との複雑な関係に苦しんだ一人。

友人
「(実家に行かなくても)死なないよ」

白川さん
「何も問題ないんだけど、自分がこんなになっちゃって、娘は顔も出さないっていう体裁が悪いでしょう?」

友人
「たぶん、すごく人の目が気になる。『子孝行してなくても、親孝行はしなさい』なんていう世の中の風潮だから、親から大事にされなかった子は困る。大事にしかたが分からない。教えてもらってないから、親から。『親孝行しなさい、それが正しい』なんていうのがなくなれば、もっと楽なのかなって思う」

虐待した親が高齢に 長期化する苦しみ

親との関係を断ち切ろうにも断ち切れず、長年苦しみ続けている人がいます。子供の頃、両親からの虐待に苦しんだ高橋さん(仮名・50代)。

高橋さん(仮名)
「帰ってきたよ」

この日、親と過ごした実家の処分に訪れていました。

不動産処分のアドバイザー
「ここのものは、全部処分して大丈夫?」

高橋さん
「ここだけちょっと自分のやつなので、あとは基本的に処分して大丈夫です」

不動産処分のアドバイザー
「ご自身でされるの限界なんで」

高橋さん
「限界ですね」

不動産処分のアドバイザー
「いっぱいいっぱいになっちゃうから」

10年ほど前、父親が心不全で他界。以来、認知症の母親の介護を高橋さんが担ってきました。

「お母さんは、いまもご存命?」

高橋さん
「おかげさまで存命で、東京のそういう施設に、病院もある施設に入ってます」

両親の虐待が悪化したのは、高橋さんが小学5年生の頃。もともと気性が荒かった父親が難聴を患い、暴力が加速したといいます。

高橋さん
「聞こえないと言って殴りましたね。こぶしで頭をガンガンで、いまだにちょっと後ろに人がいると、殴ってくるんじゃないかなという恐怖がいまもありますね。母親は言葉とどう喝というか、専業主婦でもともとお嬢様育ちだったので、母親のほうがきつかったですね、ある意味。ほんとに言葉があれなんですけど、殺してやりたいと思いました。両親とも殺してやりたいと。そういう感情はありました」

実家を出てからは、極力関わらないようにしてきました。しかし、父親の他界を機に一人っ子の高橋さんは仕事を辞め、認知症の母親と向き合わざるをえなくなりました。

高橋さん
「面倒見てやっているのに、怒り出す。そればっかりでした。憎まれ口をいっぱい、たたきますので。昔のこう、どう喝というものを、母親がまたよみがえってきて、自分も潰れるなと思いました」

虐待をきっかけに、長年患っていた、うつ病も更に悪化。現在も通院を続けています。

「親との関係を断つのは、出来ないですか?」

高橋さん
「それは捨てたいですよ。それじゃ無責任じゃないですか。すごい言葉はよろしくないんですけど、ごみだって分別しないと捨てられないじゃないですか、いまの世の中じゃ。どんなに嫌いでも、あとから後悔はすると思いますね、捨てたら。罪悪感が出て」

5年にわたる在宅介護を経て、母親は施設へ。コロナ禍の今も、高橋さんは母親の様子を気にかけています。

高橋さん
「もしもし?」

母親
「喉が痛い」

高橋さん
「あ~、ちょっと苦しそうだね」

脳梗塞を患い、今はほとんど食事もとれないという母親。

高橋さん
「痛いですか?喉、痛いですか?もう多分、分からない。分からないかな、やっぱり」

母親
「ありがとうございます、ありがとうございます」

高橋さん
「久しぶりにポジティブな言葉が出てますね」

母親
「ありがとうございます」

高橋さん
「ちなみに私にね、ありがとうなんて言ったことほとんどなかったですね」

高橋さん
「嫌な過去はいっぱいありますけど、いま苦しんでいる実際の人間がいるわけで。それに比べれば過去のことではあるので、あまりそれをいまは考えたくないです」

親と離れられない難しさ

井上:スタジオには、カウンセラーとしてこれまで数多くの親子問題に向き合ってきた、信田さよ子さんにお越しいただきました。信田さん、よろしくお願いします。

信田さよ子さん (日本臨床心理士会 理事)

信田さん:よろしくお願いします。

井上:これまでさまざまな親子の相談に乗ってこられたということですが、実際、親と離れたくても離れられない。これはどんな事情があったり、どんな難しさがあるのでしょうか?

信田さん:一つは、社会の常識でしょうか。やはり親子は切っても切れないよねとか、そういう社会の常識と、あとは親とうまくやることが私たちが大人になることだみたいなものもありますので、親から離れるのは大変難しいことだと思います。

井上:なかなかそこは、やはり離れられないですか?

信田さん:好きだから離れられないんじゃなくて、離れちゃいけないんじゃないかって思うわけです。そういう世間の常識とか、あとは自分として、人間としてどうなのかと思ったりするので、離れることは難しいと思います。

井上:まさに責任感だったり、世間体に縛られながら皆さん向き合っていらっしゃると思うのですが、そういった中でどういう対策や解決策というのは考えられるのでしょうか。

信田さん:こんな変なことを考えるのは、自分一人じゃないかって思っていらっしゃるんです。同じような人がいっぱいいる。先ほど紹介にあった本もそうですけど、日本中にたくさんの人がいるんだって思うだけで結構楽になったりします。あとは親の介護でしたらケアマネージャーさんとか、介護の方とか。例えばカウンセラーでもいいですが、第三者の専門職の人に相談してみるのもいいことじゃないかと思います。

井上:やはり第三者にオープンすることは違いますか?

信田さん:そうですね。 依存して力を借りることがすごく大事だと思います。

保里:決して一人で抱え込まないということですね。親を捨てたいと考える人がたくさんいる、これにはどんな時代背景が関係しているのでしょうか。

信田さん:振り返りますと、1990年代の半ばに「AC=アダルトチルドレン」という言葉が多くの人に共有されました。

このころに子供の虐待も日本で表面化してきて、これはどういうことだったかというと、自分が生きづらいのは親との関係に由来するんだと認めた人が、ACというふうに自分を定義する。自己定義というんでしょうか、そういう言葉だったんです。そういう言葉は日本の中で初めてだったんです。ですから、この虐待問題が出てくる、それから親との関係で生きづらかったことを言うようになった人、この人たちが25年たって、いまや介護をする世代になったということが、親を捨てたいということの背景になっているのではないかと思います。

保里:簡単に理解できるとは決して言えないぐらい、本当に複雑な親子関係における感情と向き合って苦しんでいる方がたくさんいる。その一端が、かいま見えてきた気がするのですが、ただ一方で、どんな親だとしても、例えば親が亡くなる時、葬儀の場などに立ち会うことによって、これまでの経験を整理できたりとか、何か次への一歩を踏み出すきっかけになりえないのか。そんなことも思ってしまうのですが。

信田さん:なってほしいですよね、ドラマみたいに。でも現実はそんなふうにいかないんです、なかなか。葬儀に出て、親のひつぎの顔を見ればいいというものでもなくて、むしろ親を大切にすべきとか、葬儀に出たらこれで仲よくなれるでしょ、許せるでしょ、という常識がとてもその人を苦しめる。だから出ないという人が多いです。

井上:親の死後を見届けたあとは、どういう影響があったりするのでしょうか。

信田さん:親が亡くなれば全てが終わるわけではなくて、VTRにもありましたけれど、親のことを許すかどうかっていうことと、親が何をしたかっていうの別の問題ですから。自分の記憶の中にある親からされたことっていうのは、なかなか消えないんです。ですから、親となんとかうまくやっていくっていうことと、親からされたことの記憶が全然自分の中で整理できないっていうのは、両立してしまうんです。

井上:必ずしも、「じゃあ、許す」という感情にはならないということですか。

信田さん:許さなくてもいいんです。何か表面上、うまくやってればいいだけの話ですから。

保里:親が亡くなってもなお、その心の傷、記憶の中の苦しみから逃れられないまま苦しむ。

信田さん:戦争が終わったら戦争のトラウマが消えるわけじゃないように、親が死んでも時間がかかりますね。

保里:この問題の根深さが少しずつ見えてきたのですが、今回取材させていただいた中には、介護をきっかけに親子関係を見直そうと努力している方もいました。

複雑な親子関係 介護をきっかけに変化が

関東地方に暮らす理恵子さん、55歳です。母親の認知症が進み、2年前から同居して身の回りの世話をしています。

母親
「(1人暮らしの)最後、お菓子とかしか食べなかった」

娘・理恵子さん
「お菓子とかしか食べなくなったんで、私と一緒に暮らすことになったんだよ」

母親
「そうだっけ、忘れた」

理恵子さん
「良かったね、忘れて。大変だったんだから」

母親
「でも良かったよ、ここへ来て」

かつて、母親との関係に悩んでいた理恵子さん。小学生の時、父親が借金を残し家庭を放棄。苦しい生活の中で始まったのが、母親による暴力でした。

理恵子さん
「母親もイライラすると歯を食いしばって、眉間にしわを寄せながら私をこう殴る。早く自分で生活能力を身につけて、もうここを出て、母親とはもう家族の縁も切りたい気持ちでいました。自立してからは、全然家には近寄らなくて」

そんな中、突然降りかかった母親の認知症。介護を始めた当初は、互いに怒りをぶつけ合い、衝突することも少なくありませんでした。ところがある日…。

理恵子さん
「一緒に暮らして2か月たったときに、いきなり真夜中にパジャマでやって来て、通帳と印鑑を私に渡したんです。『これで後は全部、お任せしていいのね』って言って」

その時、母親はどこかホッとした表情を浮かべていたといいます。

理恵子さん
「その母親を見て、不安だったんだって気付かせてもらった。不安でイライラしていたんだ。母親は母親で、借金を繰り返していく夫に対して借金を返さなきゃいけないし、やくざは来るし、積み上げてきた財産は全部なくしていくし、それはそれでつらかったんだなと、だんだん感じられるようになってきた。そうならざるを得ない人生背景もあったんだなと分かってきて、そこから少しずつ関わりが変わってきた。だんだん笑顔が見られるようになって、かわいい母親に変わっていった」

「昔の理恵子さんのこととか、いま覚えていらっしゃいます?」

母親
「昔?覚えてないね。覚えてないです。いろんなことがありすぎて、もう忘れることが良いことだと思ってます。まあ、ちょっと、もういい」

理恵子さん
「何で?お母さんのこと聞いているのに。昔のこと聞かれるの嫌なの?」

母親
「嫌だっていうか、もう忘れたね」

親を捨ててもいいですか?虐待・束縛をこえて

井上:関連記事からは、番組で紹介しきれなかった体験談や情報にもアクセスできます。どうぞご活用ください。

保里:信田さん、取材に応じてくださった理恵子さんは過去を忘れることはできないと、いまだ葛藤を抱えつつも母への憎しみが減りつつあるとおっしゃっています。どのように思われましたか?

信田さん:いまの言葉は、とても含みが多いと思います。お母さんは全て忘れているわけですから、そのこと自身が本当にショックはショックなのですけれど、やはりお母さんを許すことと、過去にお母さんがしたことを忘れるっていうのは全然別の問題なんです。ですから忘れられないけれど、目の前にいるお母さんとなんとかうまくやるっていうことは、この方のすごい努力だし、それはできると思いますね。許していい関係になることがゴールではなくて、いま一緒に暮らしていて、お母さんも見送れて、最後の2年はなんとか平和に暮らせたなと思い出を作ることが、この方にとってはすごく重要なのではないかと思います。それは決して許したことではないと思う。

井上:その一歩というのは、どういう意味合いが出てくるわけですか?本人にとっては。

信田さん:世間の常識からいけば、よい子供をやったと、みんな認めますよね。そしてもし彼女にお子さんがいたら、自分のお母さんは「あのようなおばあちゃんといろんなことがあったけど、最後はああやって2人で穏やかに暮らしたね」と、「介護をしたね」っていうことを示すことができる。だからいろんな意味ですごくいいことなんです。だけど彼女の中で許してるかどうかは分からないし、許すべきことだとは私は思わないです。

保里:今回こうして取材をすると、母親との関係に悩んでいる娘。こうした関係がとても多かったんです。

信田さん:母と娘の問題は、2008年ぐらいからすごく大きな問題として浮上してきて、これは女の問題だというふうにするのではなくて、私は背後にあるお父さんの問題と隣り合わせというか、裏表の関係だと思います。だから、家族の中でお父さんがほとんど機能してこなかった。うちは妻に任せとけばいいとか、母と娘はこうやってるからまあいいじゃないかと。家族の中でちゃんと父親がやるべきことをやり、責任を取り、ちゃんと自分の母が娘に過干渉しないように、ちゃんとお母さんを支えなきゃいけない。こういうことが、私は家族の歴史の中で本当に問われる時代になったと思います。そして、こういうふうにお母さんと娘の問題が出てくるのは、社会の中で相変わらず男性と女性の不平等、格差の問題があるっていうこととも無関係じゃないと思います。

保里:いま私たちが日々向き合わなければいけない、大きなテーマでもありますね。

信田さん:これから結婚される方は、そういうこと考えて結婚していただきたいです。

井上:まさに男性優位だった社会のしわ寄せが、お母さんと娘さんに来たという。

信田さん:つまり、社会のしわ寄せは家族に行くんです。家族のしわ寄せは女性に行くんです、妻に行くんです。そうすると妻は母となって、子供にしわ寄せをするんです。「順送りの抑圧」が家族の中で一番立場の弱い娘にあらわれるということが、この母と娘の背景にあるのではないかと思います。

井上:信田さん、本当に社会の構造だったり、固定観念がいろいろあるということなのですが、冒頭の「親を捨てたい」という重たい言葉。こういう声が出る社会に対して、どう向き合っていけばいいのでしょうか。

信田さん:聞く人が聞いたら不愉快でしょうけど、私は「親を捨てたい」と言わなきゃいけないところまで追い詰められてる人のことを思うと、本当に心が痛む。だからもし、私がカウンセラーとしてそういうことを聞いたら「いいんじゃないですか」、「親に対してNOって言うこともOKですよ」と言ってあげたいです。

井上:それはどういう理由からそう思われたのですか。

信田さん:誰もそういうふうに言ってくれないから。「親を捨てたい」、「いいですよ」なんて言ってくれないわけですから。カウンセラーぐらいは言ってあげてもいいんじゃないかと思います。

保里:ここまで苦しめられてきた人たちがたくさんいるんだっていうことを、私たちはまず、今日知ることが大事だなというふうにも感じます。

信田さん:明るく普通にその辺にいる人たちも、一歩踏み込んで聞くと本当に複雑な思いを親に抱いている。「親を捨てたい」、と思っていらっしゃるかもしれないというふうに思います。

井上:そういう意味では、その選択、それぞれですが非情な選択にはならない。

信田さん:変な言い方ですけれど「親を捨ててもいい」と言われたり、自分でも「捨ててもいいんじゃないか」って思うと、親を捨てないことが多いんです。だからすごく変な言い方しますけど、親を捨てないためには周りが「親なんか捨ててもいいよ」っていう雰囲気をつくればいいのではないかと思ったりします。

井上:信田さん、ありがとうございました。

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