クローズアップ現代

毎週月曜から木曜 総合 午後10:00

Menu
2020年12月8日(火)
世界をリード 日本の小惑星探査 ~密着 はやぶさ2の舞台裏~

世界をリード 日本の小惑星探査
~密着 はやぶさ2の舞台裏~

初代「はやぶさ」に続き、小惑星のサンプルリターンを成し遂げた「はやぶさ2」。今回は、小惑星の地表を覆っている砂などの採取に加え、世界で初めて星の内部に眠る物質の採取にも成功したと見られる。サンプルが詰まったカプセルは地球に投下され、まもなく日本に到着する! 番組は「はやぶさ」チームに密着。世界が驚嘆した2回のタッチダウンは、なぜ成功したのか。知られざるリーダーの決断力、それを支えたチーム力、快挙の舞台裏をお伝えする。 さらに、探査の目的であった「地球はどのように生命をはぐくむ星になったのか」という謎にどこまで迫れるか、期待が高まるサンプルの中身について、スタジオでたっぷりと掘り下げる。 「はやぶさ2」は地球帰還後も次なるミッションに向かう。宇宙開発競争にさらされながらも、挑戦し続ける今後の「はやぶさ2」にも注目。もっと知りたい「はやぶさ2」、その全貌をあますことなくお届けする。

※放送から1週間は「見逃し配信」がご覧になれます。こちらから ⇒https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/WV5PLY8R43/

出演者

  • 津田雄一さん (はやぶさ2プロジェクトマネージャ)
  • 寺薗淳也さん (元はやぶさプロジェクトチーム)
  • 武田真一 (キャスター)

「はやぶさ2」が成し遂げたミッション

武田:おととい(6日)、6年に及ぶ旅路を経て見事地球にカプセルを帰還させた「はやぶさ2」の快挙。今夜はそのプロジェクトマネージャの津田雄一さんにリモートでご出演いただきます。本当におめでとうございます。


ゲスト津田雄一さん(はやぶさ2 プロジェクトマネージャ)

津田さん:ありがとうございます。チームを代表して、まず御礼を申し上げたいと思います。

武田:本当に、心からホッとされているんじゃないですか?

津田さん:そうですね。実際にカプセルが帰ってきました。何億キロのかなたの星に行って帰ってきたというのは、われわれ自身がやったことなんですけど、夢のようです。

武田:このあと、たっぷりお話を伺ってまいりたいと思います。
今回、「はやぶさ2」が成し遂げたミッションは、「小惑星サンプルリターン」といいます。直線距離で3億キロ以上離れた小惑星「リュウグウ」まで、まずこれが行く。そして、砂のサンプルを採取しました。しかも、今回はそれを2回行いまして、2回目には地下の物質まで採取したとみられています。

さらにそれを地球まで持ち帰ってきた。これは非常に複雑で、高度な技術が必要とされるものです。達成したのは日本だけ。世界初の快挙です。ここに至るまでの舞台裏に、密着してきました。

はやぶさ2 密着 快挙の舞台裏

小惑星のサンプルを採取して持ち帰る、はやぶさ2のミッションは想定外の連続でした。
2018年6月、はやぶさ2はリュウグウに到着。しかし現れたのは、岩石だらけの小惑星。詳しく調べてみても、辺り一面に激しい凹凸。機体の損傷なく着陸できそうなスペースが見つかりません。

リュウグウのかけらを採取して持ち帰るというミッションが、いきなり窮地に立たされたのです。

しかし、ここからメンバーたちの専門性と執念が力を発揮します。画像解析を担当するチームは、岩石の大きさを一つ一つ割り出しました。

光学航法カメラ担当 諸田智克さん
「全部合わせると、何万個の岩を数えてきたと思います。ほとんど無に近い精神状態。」

制御の担当者たちは、危険な岩石を回避し、狙った場所に着陸させる方法をシミュレーションしました。その数は、なんと10万通り。

航法誘導制御担当 照井冬人さん
「全部試すわけです。いろんな誤差の組み合わせを考えて。」

その結果、半径6メートルの僅かな隙間が見つかりました。

津田さんは、ここにタッチダウンすることを決断しました。

はやぶさ2プロジェクトマネージャ 津田雄一さん
「皆さん、ここまですばらしいリカバリー、ご苦労様でした。あとは探査機に任せましょう。GOで良いと思います。」

「2、1、0。」

「よっし!」

見事サンプルを採取。最初のミッションに成功しました。

実は、クライマックスは2回目のタッチダウンでした。はやぶさ2は当初より、地下の物質を持ち帰ることを最大の目標に掲げていました。地下の物質は、太陽の光や熱の影響が少なく、小惑星ができた当時の状態をとどめていると見られているからです。そのための秘策が「爆破装置インパクタ」。

これが史上初、小惑星に作った“人工クレーター”です。

プロジェクトエンジニア 佐伯孝尚さん
「これ、めちゃすごい。ここに降りたい。ここに降りたいな。ここに降りたら、世界を数十年リードできる。」

しかし、クレーターの中央には大きな岩石がありました。

はやぶさ2が、クレーターの中に着陸するのは困難です。またしても凹凸の激しさが着陸を阻みます。このまま着陸は諦め、地球に帰ってもいいのではないか、という意見も出始めていました。しかし、ここでも最後まで諦めずに解決方法を探る、持ち前の粘り強さが力を発揮します。

クレーターの周辺に散らばった地下物資ならば、採れるのではないか。
そのための候補地は2つ。まず、南側。比較的平らですがクレーターからは遠く、地下物資は少ないと予想されました。

一方、北側は大きな岩石があって危険ですが、クレーターに近いのが特徴です。

地下物資を採るためにどちらに着陸すべきか。意見は真っ二つに分かれました。

「一回目のタッチダウンをしたうえで、そういうリスクを冒すんですか?」

プロジェクトエンジニア 佐伯孝尚さん
「ああいうクレーターができたことは、我々に与えられたチャンス。クレーターのより近くからサンプリングすることは、私は非常に価値が高いと思っている。」

そして津田さんは…。

津田雄一さん
「探査機の安全に、責任を持たなければいけない。ここは非常に迷いました。」

結局、安全であるというデータが得られた、南のポイントに着陸することに決まりました。
降下を始めた、はやぶさ2。ところが、思わぬことが起こります。

佐伯孝尚さん
「なんか変な数字が出ている。これ危ない。やべえな、これ何だ。」

はやぶさ2が何らかの異常を感知し、緊急上昇したのです。このとき、1枚の写真を撮っていました。
これが、幸運をもたらすことに。映っていたのは北側のエリア。よく見ると、幅6メートルの平地が見つかったのです。

実は、カメラチーム山田さんのファインプレー。万が一のときにはカメラが起動するよう、あらかじめプログラムしていました。

佐伯孝尚さん
「にわかにみんなも、こっちに行けるんじゃないかという気持ちになってきましたね。これはプレゼントだと思いましたね。」

そして、津田さんは北のポイントに挑むことを決断しました。

津田雄一さん
「しっかりお願いします。じゃあGOで。」

佐伯孝尚さん
「はい、じゃあGO送信しますよ。」

「よし!」

史上初、地下からのサンプル採取も成功。みんなの力で快挙が成し遂げられたのです。

津田雄一さん
「非常に難しい問題だったんですけれども、一人一人がそれぞれの持ち場でベストを尽くせば、最後はそれが全部つながって、ひとつの答えになるんだと示せてよかったです。やりきった。本当にうまくいって最高ですね。うれしいです。」

「場外乱闘」ができるチームづくり

武田:この「やりきった」と、今おっしゃった笑顔がとても印象的でしたけども、改めて2回のサンプル採取をやり遂げた。どんな思いでしたか?

津田さん:本当にやった、やりきったという思いです。今でもそう思いますね。技術者としては、「自信」と「過信」の境界を見極めるということが、とても大切だと思っています。「過信」という意味では、成功したことで「過信ではなかった」ということになり、これは心底ほっとしました。それから「自信」という意味では、われわれはもちろん技術的には「自信」を持って臨んだわけで、それがそのとおりできたので「やった」という気持ちと、「ほらできたでしょう」というような思いも少しありました。

武田:2回目のタッチダウンを決断するにあたっては、チームの中で意見が激しく割れているという状況にも驚いたんですけれども、このときの心境を津田さんは「たこせんべい」とご自身で表現なさっているそうですが、これはどういうお気持ちなんでしょうか?

津田さん:これは南に行くか北に行くかという話より前に、そもそも2回目のタッチダウンなので、1回目で獲得したリュウグウのサンプル、それがすでにはやぶさ2の本体の中に入っている状態で2回目をやるべきかどうかという、これは、はやぶさ2プロジェクトだけではなくて、JAXA全体としての議論になりました。上層部からは、そんなリスクは冒さずに1回でいいから地球に帰ってきて、それで十分価値があるというふうにもプレッシャーがかかったりして。一方でチームとしては「やりたいんだ」という、メンバーからの非常に力強いモチベーションのある声が聞こえました。その2つに押しつぶされそうということが、たこせんべいのようだったということです。

武田:そういう重圧もあったわけですね。その成功に導いた津田さんの決断を支えたのが、チームワークだと思うんですけれども。チーム作りにあたって「失敗経験がある」ということを重視された。そして、「場外乱闘ができる余地を残す」ことを目指したということなんですけれども、これはどういうことでしょう?

津田さん:チームメンバーに、最初にいろいろ声をかけていったわけですけども、「失敗経験」というとネガティブに捉えられるかもしれませんが、実際は私は非常に大切だと思っていて、無鉄砲に挑戦する人ばかりだとチーム、あるいはプロジェクトは立ち行かないんですよ。そういう意味で、過去に痛い目に遭った人、それから失敗と成功の境界を知っている人という意味で、失敗経験というのはとても大切だと思っていました。
そういうベテランばっかりでは、人を集めることはできません。ですので、チームの中でそういう失敗、経験を積めるような仕掛けというのを、リュウグウに到着するまでの3年余りの飛行の間で、探査機のシミュレーターを使って実際に若手も一緒に混ざって訓練することで、経験を積んだんです。その中でたくさん、我々は失敗をしました。

武田:「場外乱闘」というのは、激しいことばですけど…。

津田さん:「はやぶさ2」みたいな大きな事業、プロジェクトは非常にコストもかかっていますし、決められた計画に従って淡々と実行していく。それは事前に敷かれたレールに従ってプロジェクトメンバーがやっていくというのが、事業上は基本になります。ただし、そればかりですと、プロジェクトチームに入った若手メンバー、それから運用を一生懸命やっている人たちのモチベーションが上がらないんです。そういう人たちも、はやぶさ2の能力を知ったうえで、こういうことをやりたい、ああいうことをやりたいと積極的に提案できたり、挑戦できたりする。そういう余地を残すという意味で「場外乱闘」をぜひしてください、というようなチームづくりをしました。

武田:「初代はやぶさ」のプロジェクトに携わって、宇宙探査に詳しい寺薗淳也さんにも、きょうはお越しいただいています。今回の偉業は何がすごいかといいますと、天体探査で難易度が高いこうしたミッションを、いきなりすべてクリアしたということだったそうですけど、これはどういうことなんでしょう?

ゲスト寺薗淳也さん(元はやぶさプロジェクトチーム)

寺薗さん:未知の天体に行くのに、いきなり行って着陸して帰ってくるというのは極めて危険なわけで、何段階ものステップを踏むというのが普通です。
まず「フライバイ」、そばを通り過ぎる。通り過ぎて大体素性が分かったら、周りを回る「周回」。大体全体が分かったら「着陸」。そして、そこから今度は行って帰ってくる「サンプルリターン」とこういう、大体4つの段階を踏むというのが普通なんですが、「はやぶさ」も「はやぶさ2」も、いっぺんに一つの探査機でやってしまったんですね。例えば月探査で、かつてアメリカがアポロ計画を実行したときには、こういう過程を10年以上もかけてゆっくりやっていったんですけれども、今回は、行って全部やって帰ってくる、というところまでをやってのけた。これは日本のお家芸という形で、大変すごいことだなと思っています。

日本独自の“発想”と“技術”

武田:この「サンプルリターン」を支えたもう一つの要素が、技術の結晶です。こちらは、はやぶさ2に詰め込まれた数々の装置なんですけれども。津田さんはこれを、「お弁当箱」と表現されているそうですが、どういうことなんでしょうか?

津田さん:お弁当って日本特有の独特な、いい文化ですよね。お弁当って非常にコンパクトで、その中にたくさんおいしいものが色とりどり詰まっていて、しかもお財布に優しいということで。これは、探査機というのは非常にリソースの限られた中で、特に「サンプルリターン」ですと、多機能でなければいけない。それから、コンパクトでなければいけない。もちろんコストに入らなきゃいけないので、低コストでなければいけないということで、まさにそういういろんな色とりどりの機能を、1つの箱に詰め込んですごいことをやる、という意味でお弁当箱っぽいなと。これは、日本人の特色がよく出た探査機の作り方になっているな、と思ってこういう例えをしました。

ただ、ひとつつけ加えさせていただくと、これは必ずしも技術的には、好きでそうやっているわけではないと。やむをえず、というところがあるというところも、申し添えておきたいと思います。限られた予算、NASAとかヨーロッパなどに比べると、(日本は)極端に小さいお金の中でこういう挑戦をしていかないと、世界に打って出られる、そういう科学ができないんですね。その中でわれわれは必死に考えて、こういうことが実現できたんですが、本当はもっと大きいリソースがあれば、もちろんもっとすごいことができるという自信を持っています。

武田:その日本の「サンプルリターン」の技術。今、世界の科学者たちの注目を集めています。

世界が注目“生命の起源”

日本のはやぶさ2に、最も熱い視線を注いでいたのがアメリカ・NASAです。ことし(2020年)10月、「アメリカ版はやぶさ」と呼ばれる探査機「オシリス・レックス」が、小惑星のサンプルの採取に成功しました。

NASAのプロジェクトを率いる、ダンテ・ローレッタさんは、6年以上前から、はやぶさのノウハウを取り入れようと、はやぶさのメンバーからレクチャーを受けてきました。特に学びたかったのが、探査機を安全に着陸させるための技術です。

ダンテ・ローレッタ主任研究員
「高度計はどうなっていますか?」

はやぶさ2担当者
「上空30メートル以下では、レーザー高度計を使います。」

ダンテ・ローレッタ主任研究員
「私たちは“はやぶさ”から多くのことを学びました。彼らのオペレーション、ソフトウエア、そしてどうやって“リュウグウ”にピンポイントで着陸することができたのかを、学ぶことができました。そうやって得た知識を持ち帰り、オシリス・レックスに生かしました。」

世界が乗り出す「サンプルリターン」。科学の新たな扉を開くと注目されています。今回、リュウグウのサンプルからは、生命の起源の解明ができると期待されています。中でも、生命誕生に欠かせない「水の起源」に迫れると考えています。実は地球が誕生した45億年前は、水はなかったとみられています。この水は、いったいどこから来たのか。

これまで地球の水の起源として有力視されていたのが、ほうき星とも呼ばれる「すい星」です。すい星は大部分が氷でできており、これが地球に大量に降り注ぎ水をもたらしたという仮説です。この仮説を証明しようと、6年前、ヨーロッパの探査機ロゼッタがすい星に着陸。遠隔で表面の分析を行いました。

しかし分析した結果、すい星の水と地球の水は性質が異なることが分かりました。水の分子は酸素と水素からできています。水素の中には、通常よりも重い「重水素」と呼ばれるものが僅かに存在しています。すい星の水と地球の水を比較したところ、重水素の割合が一致しませんでした。地球の水の起源は、すい星ではない可能性が高まったのです。

太陽系の起源を研究する、東北大学の中村智樹教授。今回サンプルの分析を任される一人です。水の起源のすい星説が後退する中、多くの科学者たちが次のターゲットとしているのが、もう一つの有力な候補、小惑星です。

東北大学 中村智樹教授
「分析計画を立てて、施設も整えて、より完全な態勢でサンプルが帰ってくるのを待っている状態です。」

中村さんの元には赤外線調査など、はやぶさ2が飛行しながら捉えたリュウグウの観測データが届けられていました。赤色が濃いほど、酸素と水素が多いことを表しています。リュウグウ全体に水の成分を含む岩石が広がっているとみられます。

しかし、この水の成分は地球に持ち帰らないと分析することができません。中村さんは持ち帰ったサンプルを地球の水の成分と比較することで決定的な証拠が得られると考えているのです。

東北大学 中村智樹教授
「どんなに整備された探査機が、惑星に行っていろんな測定をしても、サンプルを地球に持って帰ってきて、地上で分析するものの足元にも及ばない。もう決定的なんですね。確実にこの手でリュウグウサンプルを解析して、水を含む鉱物が確かに含まれていると、それを確認することが大事。」

はやぶさ2が持ち帰ったサンプルは、私たちに何をもたらしてくれるのか。熱く語っていただきます。

はやぶさ2 切り開いた“宇宙新時代”

武田:水の由来というのは考えたこともなかったんですけれども、そんなことも、もしかしたら分かるかもしれないということなんですね?

津田さん:そのとおりですね。有機物と水の存在が期待されています。

武田:これは新たな歴史の1ページを、もしかしたら開く可能性もある?

津田さん:先ほど出てらした東北大の中村先生をはじめ、科学者の人たちが、2回目のタッチダウンを、リスクを熟知したうえでやってほしいと言っていただいたんですね。それで挑戦して、信頼に応えて成功して、無事にバトンを渡すことができた。どんな発見があるのか本当に楽しみです。

武田:寺薗さんもこの水の起源、あるいは生命の起源の解明につながるかもしれないということに、わくわくされているそうですけれども。

寺薗さん:非常に楽しみですね。水といっても、何でわざわざ小惑星まで行ってダイヤモンドでも水晶でもなく、そこら辺にあるような水を持って帰ってきたと皆さん思われると思うんですが、ただの水じゃないんです。太陽系ができて46億年たっていると言われていますが、小惑星にはそのころの物質がそのまま残っています。そのころの水が小惑星にあるかもしれないということは、もしリュウグウのサンプルの中に水が入っていたとすれば、私たちの生命の起源ですとか、あるいは太陽系そのもの、地球そのもののでき方につながる大きなきっかけを、手繰り寄せてくれるかもしれない。本当に楽しみであります。

武田:アメリカだけではなく、中国やヨーロッパなどもサンプルリターンに挑戦しようとしているわけですけれども、日本がリードし続けるために何が必要なんでしょう?

寺薗さん:今、はやぶさ2で日本は2回、小惑星からものを持ち帰ることに成功したので、皆さん大喜びだと思うんですが、それで喜んでばかりはいられないんです。次をもう考えなければいけません。やはりそのためには人材、人間を育てることだと思います。はやぶさ2が、前の「初代はやぶさ」の人間で育ったように、新しいミッションを打ち立てることで、次の世代を育てていく必要があると思います。

武田:このはやぶさ2ですけれども、実はカプセルを地球に戻したあと、新たな旅を始めています。

こちらは現在の位置をシミュレートしたCGなんですけれども、今どこにいるかといいますと、画面の左下に小さく見えるのが地球で、地球から110万キロの位置にまで今、達しています。これから11年かけて新たな小惑星を目指すということなんですが、津田さん、この新たなミッションも楽しみですね。どんなことを期待されていますか?

津田さん:「サンプルリターン」としては終わったんですけれども、いわば「はやぶさ2」は減価償却した状態で宇宙を飛んでいる。つまり自由の身で宇宙を飛んでいます。「リュウグウ」でもそうだったように、新しい星に行けば必ず新しい発見があります。そういった宇宙探査のだいご味を、皆さんに楽しんでいただきたい思います。

武田:今度は本当に、楽しめばいいということですね。

津田さん:はやぶさ2にも楽しんでほしいですね。

武田:このはやぶさ2の快挙は、本当にいろんな困難があっても挑戦するということの大切さを、改めて教えてくれたように思うんですけれども、津田さんは今、どんなことを感じていらっしゃいますか?

津田さん:挑戦といっても、人間界というか予算や組織のしがらみ、そういう制約の中で実現していく挑戦も大事だと思います。ですが、やはり「科学的欲求」、これに真に応えていくこと。そういう未知への挑戦。これがとても科学的には大事だし、人間の好奇心に応えていくためには大切だと思います。そういう意味で日本というおもしろい国があって、こんな宇宙探査をやっている。大切だよね、と思っていただけるような、そういうことをこれからも挑戦していきたいと思います。
それから、将来の子どもたちが「はやぶさ2」のことを思い返して、わくわくするような未来を思い描けるような、そういう探査がこれからもできればというふうに思っております。

武田:このコロナ禍でもありますし。

津田さん:そうですね。こういうコロナ禍でも希望を持てるような、新しい将来の探査を描けるような、そういう夢のある挑戦を「はやぶさ2」でも思い描ければと思っています。