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2020年11月5日(木)
どうなる?ハンコ社会ニッポン

どうなる?ハンコ社会ニッポン

急ピッチで進もうとする“脱ハンコ”。先月、国は婚姻届や確定申告などの行政手続きで押印を廃止する方針を発表。各地の自治体では無駄な手続きを見直し、電子化への動きが加速している。一方で、企業などでは“ハンコ文化”も根強く残る。契約書やりん議書に押印をすることで、取引先との信頼関係や社内のコミュニケーションを促す役割を担ってきた。脱ハンコはどこまで進むのか、社会はどう変わっていくのか考える。

※放送から1週間は「見逃し配信」がご覧になれます。こちらから ⇒https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/WV5PLY8R43/

出演者

  • 宮田裕章さん (慶應義塾大学医学部 教授)
  • 渡部友一郎さん (弁護士・日本組織内弁護士協会 理事)
  • 厚切りジェイソンさん (タレント・IT企業役員)
  • 武田真一 (キャスター) 、 小山 径 (アナウンサー)

進む“ハンコレス”

今、全国の地方自治体でハンコの見直しが進んでいます。
国に先駆けてハンコレス化に踏み切った福岡市です。

小山
「福岡市の中央区役所です。こちらでは、保育所を利用するための申請書にかつては押印の欄がありましたが、いまはなくなっています。」

担当者
「これが今回、押印を見直した、押印不要な様式の一覧になります。」

小山
「え、こんなにあるんですか!?税金関係や、固定資産税に関する減額してもらうための申請書、申告書…。市民生活に身近なものがあがっています。」

児童手当や失業手当、介護サービスの利用申請など、およそ4,000の書類でハンコを不要にしました。

利用者
「今日は特にハンコを持ってきてません。先日も子どもの保育園の関係で来ましたけど、特にハンコ使わなかったです。楽だなと思います。」

「今日(ハンコが)なくなっているかと思って、ちょっとワクワクしてきました。結婚したとき、名字が変わったらハンコを変えないといけなかったり面倒くさい。ほとんどなくなってほしいです。」

ハンコレスの目的は、行政の無駄をなくすこと。窓口業務の効率化を進めようとしたところ、壁になったのが、ハンコの存在でした。そこで、ハンコをなくし、手続きを電子化。すでに200以上の手続きを、窓口に行かずパソコンやスマホからでもできるようにしました。

例えば、高齢者用無料バス券のオンライン申請では、これまで窓口対応に一件10~30分かかっていましたが、オンライン化によって手続き業務が数千時間削減できました。

ハンコレスを推進してきた、福岡市の高島市長です。

福岡市 高島宗一郎市長
「本人の証明としてハンコというものがあったのですが、実は実印以外のものは誰でも買えるものだから、安全性が低下するわけではありません。今までやってきたからという慣習、これまでの慣れというところに、その理由があったんです。」

行政手続きに必要なハンコは、「実印」と「認め印」の2種類があります。不動産登記や相続税の申告など、正確な本人証明が必要な手続きには、印鑑登録された実印が求められます。一方で、転入届や児童手当の申請などは認め印。どこでも買える簡易なハンコでも手続きができます。福岡市がなくしたのは、この認め印の手続き。実は、認め印は本人の証明になりづらく、ほとんどが慣習で押しているだけだといいます。

高島宗一郎市長
「ハンコレスというものが急にきて、なんとなく自分を証明できなくて、『適当なものでいいのかな』ということではなく、ハンコが必要なものは、実印としてハンコを押すということは今後も残ります。」

ハンコを見直す動きは、企業の間でも広がっています。大手飲料メーカーでは、ことし(2020年)6月、コロナ禍でのリモートワークを推進するため、ハンコの電子化を決めました。
総務部の課長・文野潤也さんは、これまで、請求書の支払いなど、ハンコを押すことがリモートワークの障害になっていました。

サントリー 総務部 文野潤也さん
「僕はハンコに毎日縛られている最たる人なので、週に5日、午前と午後2時間ずつ、なつ印の時間に充てていた。」

ハンコを電子化した今では、クリック1つで承認が完了。クラウド上でデータが管理され、セキュリティーも厳重です。ハンコは一切使いません。

文野潤也さん
「断然ラクですね。文章作ったり、プレゼンテーションの資料作ったり、集中して作業することが必要になるんですが、従来以上にできるようになったと思う。」

この会社では、ハンコレスなどで電子化を推進し、年間およそ6万時間の労働時間と3,000万円の経費の削減を見込んでいます。

ところが、総務部の文野さんは、新たな課題にも直面していました。

文野潤也さん
「きょうは会社に行かないといけない。ハンコを押す日なんですよ。」

ある書類にハンコを押すために、週に2回、出勤せざるを得ないといいます。

社員
「書類を取りにうかがいました。」

「何の書類ですか?」

社員
「契約書です。」

その書類とは、取引先との契約書。こうした重要な意思確認には、これまでどおりハンコを求められることが多いといいます。

文野潤也さん
「(取引先から)契約書が紙で来ている。相手先が(ハンコを)押していると、もう一回突き返すのは厳しくて。向こうが紙で押しているものに、おつきあいで押すしかない。」

実は、電子化が進んでいたのは、主に社内で使うハンコ。しかし、取引先は電子化されていない会社も多く、まだまだ書類での契約がほとんどだといいます。
取引先との契約もハンコレスにすることを目指して、会社では電子化の説明に力を入れています。この日は、営業部員が名古屋にある飲食チェーンを訪ねていました。

サントリー 営業部 高田温さん
「きょうは“電子なつ印”を。今後の契約のなつ印をクラウド上でやると。(紙で契約する)なつ印は2週間かかるという数字が出ているんですが、これなら1分で終了できる。」

エスワイフード 潟見正志さん
「早いですね。」

聞き慣れない「電子契約」。取引先の反応は?

潟見正志さん
「ステップが簡素化され、簡単すぎるので、『本当にいいの』って不安感がある。」

今回説明していた電子契約の仕組みは、まず、契約をお願いする企業がパソコンを通じてクラウド上に契約書をあげます。このとき、契約書は暗号化され、セキュリティーが保たれます。その後、取引先はクラウド上にあがった契約書を確認。合意するかどうかを判断します。お互いに合意した場合、クラウド上で契約を管理する会社が第三者として立ち会い、安全に成立させる仕組みです。

安全性を説明することで、前向きに電子契約を検討してもらえることになりました。

再び、総務部の文野さん。今後、どのように取引先と契約の電子化を進めていくのか、ほかの部署の担当者とも議論を続けています。

経理部 田中雄生樹さん
「窓口の担当同士は電子なつ印いいですよねと盛り上がるんですけど、社内ルール的に今はまだハンコという内規やルールになっているので、すぐに今変えることはできませんということがあるみたいなんです。」

グループ人総業務部 鈴木聡子さん
「私も実際、電子契約を先方にお願いしても、会社の規定が電子契約に沿ってませんと断られた会社もあって。」

総務部 文野潤也さん
「われわれ基本がメーカーですので、お願いベースなわけで、あんまり強くお願いできないというのはあります。」

“脱ハンコ”をどう位置づけるか

武田:確かに、便利になると思うんですよ。でも、僕ハンコがすごく好きなんですね。あれをきれいに押せたときの快感ってあるじゃないですか。だから、やっぱりハンコってちょっとは残ってたほうがいいんじゃないかと思うんですけれども…ジェイソンさんはどうですか?

ゲスト厚切りジェイソンさん(IT企業 役員)

厚切りジェイソンさん:僕はアメリカのときはハンコを持ってなかったし、ハンコの存在は知らないぐらいだったんですけど、日本に来て初めて自分のハンコを持つようになって、ちょっとうれしかったですね。

武田:こんな感じですか、ジェイソンの“慈永”。

厚切りジェイソンさん:そうそう。これで「日本の一員になりました」みたいな気持ちになりましたから、これが完全になくなるとちょっと寂しいところはありますけど、生産性を上げて効率よくなれば、それもいいことですので…。

武田:そもそも“WHY?”、なぜ私たちはハンコを使っているのか。大きくこの2つの意味があります。

いろんな手続きや申請時に必要な「本人確認」。それから契約や社内のりん議のときに使う「意思確認」。この2つの意味があるわけなんですが、やっぱり慣習として押している部分が多いということなんですよね。内閣府の脱ハンコの検討会に参加された、弁護士の渡部さん。どうして、こんなにハンコを押すことがそもそも広がったんでしょうか?

ゲスト渡部友一郎さん(日本組織内弁護士協会 理事)

渡部さん:かつては、ハンコが大変便利なツールだったんです。明治時代の初めには、成人男性でも識字率は40%程度といわれていました。自分の名前が書けなくても、本人を確認できる。しかしその後、技術が発展して認め印や三文判というものがどんどん生まれることによって、次第に確認が取れているからいいやということで、慣習として残ったと言われています。

武田:それがまさに今、電子手続きに置き換わるという動きが出ているわけですけれども、これはどう進んでいるんですか?

渡部さん:今、膨大な法律の中で実際、押印が求められていますが、政府の中では1つの法律で、この押印を廃止しようという動きの検討が進んでいます。そしてさらに民間対民間では、ことしの9月、政府が電子署名、これはまさにハンコと同じ効果を持つんですけれども、これが認められる場面を広く解釈するようになり、これから安心感を持って、電子署名というのがさらに普及していくと言われています。

武田:国はまさにそうやって制度をどんどん変えて、行政手続きの99%以上で押印の廃止を検討しているわけですけれども、宮田さんは、こうした動きをどうご覧になっていますか?

ゲスト宮田裕章さん(慶應義塾大学医学部 教授)

宮田さん:忘れてはいけないのは、脱ハンコというのは「手段」であって、「目的」ではないということですよね。デジタルという選択肢を手に入れた中で、われわれが新しい働き方、生き方をどう解放できるのかということだったり、あるいは労働生産性を上げるかということですね。まさに先ほどもありましたが、ハンコを押すためだけに出社しなくてはいけないと。これを例えばなくすことによって、育児をしながら家庭の生活と両立して働くという生き方、働き方を解放することができるかもしれない。こういった新しい働き方のデザインの中で、この脱ハンコをどう位置づけるかということが重要だと思います。

厚切りジェイソンさん:確かに「ハンコをなくす」で終わりではなくて、ハンコをなくしたことによってビジネスはどううまくいったのか。手続きがどう効率よくなったのか。今でもたまにテレビとかあちこちで見るんですけど、こんな分厚い書類を持っている日本人が、何かハンコをバンバンって(押す)…絶対に読んでないでしょう!と思うところがあって。もうちょっと内容を読んだほうがいいと思うところもありますし、それがより正確なビジネスのありさまにつながれば、それはいいと思います。

宮田さん:押すという習慣の中にわれわれは取り込まれてしまって、何を確認すべきなのかって、これがやっぱり見失われているところもあるので、まさにそれを確認する、すごくいい機会なんだと思いますね。

武田:こんなデータがあるんです。「ハンコの慣習をなくしたほうがいい?」という質問に対して、74%の企業が「なくすべき」と回答しているんです。しかし、「簡単になくせると思いますか」と質問したところ、「難しい」と答えた企業が50%以上に上ったんです。

なぜハンコをなくせないのか。取材を進めていきますと、日本独特のハンコ文化が浮かび上がってきました。

ハンコの電子化 企業の取り組みは

ハンコの電子化を検討している食品メーカー。創業120年以上、アイスや中華まんなどを製造している老舗企業です。数年前から、社内でハンコの電子化を検討していますが、難しさを感じているといいます。

井村屋 執行役員 岡田孝平さん
「バーチャル(電子上)では確認しづらい。難しいと思います、ハンコをゼロにするのは。」

どうしてゼロにできないのか、現状をのぞかせてもらいました。

井村屋 財務部 伊藤健司さん
「りん議の確認をお願いしたいんですが。」

入社21年目、財務部の課長・伊藤健司さん。自分が作成した書類に、直属の上司である部長からハンコをもらいます。部長だけではありません。今回の書類に必要なハンコは5つ。その1つ1つを、伊藤さん自身が書類を持って回ります。この会社では、重要な案件には、担当の管理職1人1人から、必ずハンコをもらうようにしています。中には社長や会長まで、全部で12個ものハンコを必要とするものも。

岡田孝平さん
「たくさん押してあると、りん議が回ったと、しっかり承認がとれた思いはあります。1つ1つ確認が何重にもとられるところが、やっぱりいいところですね。」

この会社では、管理職になると専用のハンコが手渡されます。上司1人1人がリスクを見極め、慎重に意思決定することを大事にしているといいます。

岡田孝平さん
「管理職になってもらえた印鑑ですので、非常にうれしいですし、重みがある。」

ほかにも、ハンコを大切にする理由がありました。

岡田孝平さん
「伊藤課長、どう仕事は?」

伊藤健司さん
「財務でシステム化を進めていかないとというところはありますので…。」

それは、ハンコを通したコミュニケーション。ふだん接することの少ない上司からハンコをもらうことで、社内のコミュニケーションが円滑になるといいます。

専務
「面と向かって話をする機会なので、プライベートのことも聞いたりする。」

伊藤健司さん
「ハンコをもらいに行く機会は、コミュニケーションをとるいい機会になっていたのかなと思います。ようやく苦労して許可をもらってハンコを押してもらうと、うれしいというのもあります。」

こうしたハンコ文化のよさを残しつつ、電子化を進める新たなサービスを開発した企業があります。名古屋市にある老舗ハンコメーカーです。作ったのは、本物そっくりにハンコの赤い印を残した電子印鑑。この半年間で、30万件以上の問い合わせがあったといいます。

シャチハタ システム法人営業部 小倉隆幸さん
「日本独特の習慣、決済の習慣がありますので、サービスやシステムに取り入れて、違和感なく使えるものを実現していきたい。」

セキュリティーのため、それぞれの電子印鑑は本人しか使えないシステム。パソコン上でも、実際のハンコを押している感覚になれるそうです。さらに、ハンコの横にメモを書き添えることもでき、コミュニケーションにも役立ててほしいと考えています。

先ほどの三重県の食品メーカーでは、この日、体験用で電子印鑑を試してみることになりました。初体験の財務部・伊藤さんは…。

井村屋 財務部 伊藤健司さん
「簡単ですね。本物の感覚に近い感じがする。手書きで日付も入れてハンコをもらっているので、今までの紙によるりん議書と遜色ない感覚で使える。」

検討の結果、この会社は電子印鑑のシステムを来年度にも導入しようと動き出しました。

井村屋 執行役員 岡田孝平さん
「デジタル化する中で、業務フローも変えないといけないところが出てくる。しっかり対応してデジタル化していく。できるだけ早い段階で必要なもの、デジタル化できるものに関しては導入していきたいと思っています。」

どうなる?ハンコ社会ニッポン

武田:やっぱりハンコって、文化なんですよね。だからやっぱり難しいんですよ。

厚切りジェイソンさん:これ、さっきから気になっているんですけど、「なくせると思うか」という質問で「難しい」と「簡単」と分かれているんですけれども、難しくても、それはまだ不可能ではないので、やったほうがいいところは、やったほうがいいと思います。と言いながらも、さっき出てたコミュニケーションとかの場面もありますし、僕も実体験で感じたこともあります。うちの会社の社長にハンコを押してもらいに行くときは、これはこういう書類でこういう背景で、こういうことでしたって話す機会にもなるから、それは完全になくすべきと言い切れないところもあると思うんですけど、難しくても、それも「やるんだ」と言いたいですよね。

武田:頑張ってやるんだと。ただ、ハンコをなくすということの本質ですよね。さきほどもお話がありましたけれども、ただなくすのではなくて、どうやって電子化、効率化していくのかということですよね。実はこういうデータもあって、「世界デジタル競争力ランキング」というのですが、日本は27位と決して高くないんですよね。こうした状況も踏まえて、これはどう考えていけばいいんでしょうか?

宮田さん:電子化だったり効率性というものは、あくまでも過程の1つで、その結果、国としての労働生産性をどう高めるかということですよね。OECD(経済協力開発機構)のランキングでも、今の日本の生産性って、37か国中21位なんですよ。先進国では最低であると。さらに、これからデジタルの競争力というのがさらに重要になるんですが、それがさらに下に来ているということは、やはりここをいかに改善するかというのはすごく大事なんですよね。そのときに、先ほどジェイソンさんがおっしゃっていた、慣例の中でハンコをいっぱい押すというのは本当にいいのかと。例えばデジタルでアプローチができれば、この人はどこを見て、何をチェックするのかという形で、意思決定の質を高めながら、新しいハンコに代わるプロセスというのを作れるんじゃないかというのも、考える必要があるんじゃないかと思います。

武田:取材した企業では、ハンコの電子化で意思決定のプロセスの改善をまさに検討しているということなんですけれども。渡部さん、先ほど宮田さんもおっしゃいましたけれども、意思決定のプロセスの改善は、アメリカ系のIT企業では、例えばこういうRASCI(ラスキー)モデルというような考え方でやっているそうなんですけど、これはどういうことなんでしょうか?

渡部さん:これは宮田先生がおっしゃっていた、意思決定の質を高める工夫です。「責任者」「承認者」「サポーター」、そしてその右に「相談役」。それから「共有すべき相手」という5つの役割に分けます。そして、ここが一番重要なところなんですけれども、意思決定ができるのは緑と赤の「責任者」と「承認者」だけなんです。実際に「サポーター」「相談役」。そして一番右側の「共有すべき相手」というのは、アドバイスはするけれども、意思決定はしない。このように、誰が意思決定をして、誰がサポートをするか。この2つを明確に区別してスピーディーな意思決定をするのが、この特徴です。

武田:意思決定をするのは要するに「責任者」「承認者」の2人ということなんですね。日本の企業というのは、これが今みんなハンコを押しているという状況になっているわけですか?

渡部さん:はい。日本の企業ではこれがこんがらがっていて、すべての方が「責任者」「承認者」としてりん議書にハンコを押している。これが意思決定の中で見直していかなければいけないポイントだと思います。

武田:誰がハンコを押すかというのは、意思決定の役割をきちんと分けていくということになるということなんですね。それももちろん必要なことだと思うんですけれども、ハンコをなくすことで日本の社会がどうなっていくのか。そして、ハンコレスにしていくために何が必要なのか、渡部さんはどういうふうにお考えですか?

渡部さん:2つあります。1つは、まず社会の多様性です。お年寄りなど、このデジタルの動きに慣れていらっしゃらない方もいます。この方たちと一緒にどう歩んでいくか、そこを見落としてはなりません。そして、2つ目がセキュリティーです。社会のインフラとして、どのように安全安心な利用を促進していくか。この視点も欠かさずに検討していくことが大切と思っています。

武田:うちの義理の母もタブレットをよく使うんですけれども、しょっちゅう電話をかけてくるんですよね。やっぱり、ちょっとお手伝いをしてあげるような体制というのは、作ったほうがいいかもしれないということですよね。ジェイソンさんはどうですか?

厚切りジェイソンさん:日本の会社のすばらしいところの1つは、仲間であることと僕はすごく思います。会社のために、みんなわいわい集まって頑張ろうという精神が、アメリカの会社よりは強くあると思うんですよ。それは一緒にいてコミュニケーションを取れるからこそ生まれることなので、何かハンコの文化も、それとつながっているところはあると思いますし、それをすべて効率だけで考えてしまうと、せっかくのいいものまでなくしてしまったら台なしじゃないかなと、ちょっと心配はありますよね。いいところを残しつつ、でも少し改善していけば、それが一番いいと思います。

武田:何か、ちょっと意外です。

厚切りジェイソンさん:えっ?WHY!?

武田:意外と日本に対して優しいなと(笑)。

厚切りジェイソンさん:いいところはいっぱいありますよ!(でなければ)こんなに10年いないよ、日本に。

武田:いいところも残すべきだということですね。

厚切りジェイソンさん:もちろん!

武田:宮田さんはどうですか?

宮田さん:最初に、政府が婚姻届をハンコレスにすると言ったときに、IT業界から総ツッコミが入ったと。それは、いわゆるサインレス先進国のエストニアでも、そこは残していると。つまり効率性だったり、あるいは働き方を邪魔しないところであれば、やっぱりハンコも使って、人生の1つの道しるべで、ハンコ文化をお互い楽しんでいくということはありなのかもしれない。ただ、やはりそこで言われたのはそうじゃなくて、99%を占める慣習的なもの、この働き方を阻害するものということだったり、あるいは労働生産性に対して障害になっているような部分こそ、考えなくてはいけないと。その結果、99%をなくすという政府の方針は、たぶん新しい日本に対しての1つの覚悟なんだと思うんですね。ただ、やはり大事なのは、それを経てわれわれが新しいライフスタイルをどう解放していくかということだったり、あるいは世界の中で日本のこの競争力をどう高めていくか。この中での意思決定を一緒に考えていくということが、すごく大事になってくるんじゃないかなというふうに思います。

武田:ハンコって、だからハンコだけが悪者じゃないということですよね。

厚切りジェイソンさん:脱ハンコと言っていますけど、それは何も考えずに脱ハンコじゃなくて、考えること自体は忘れてはいけないと思います。

武田:ハンコに頼らずにもっと社会をよくしていく、効率化していくということを考えると。

宮田さん:やはりデジタル化は待ったなしなので、ここはやっぱり考えなきゃいけない。でも、今までの文化をどう大切にするか。これは矛盾することじゃないと私は思います。

武田:やっぱりいいんですよ。僕のハンコって、真っ黒なんですよ。黒くてね、それで押すと真っ赤な「武田」という文字が出て…。

厚切りジェイソンさん:僕はまだうまく押せないのよね。

武田:修業してください(笑)。