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2020年6月24日(水)

新型コロナ 元感染者たちの告白

新型コロナ 元感染者たちの告白

私たちの生活を一変させた、新型コロナウイルス。 感染した人の多くはウイルスを克服し、回復したと言われています。元感染者の人たちはいま何を考え、どう過ごしているのか?番組で体験談を募集したところ、多くの”元患者”が、長引く体調不良に悩まされていることが明らかになりました。さらに「感染した事実に、なぜか罪悪感を持ってしまう」との声も。
誰もが感染者になる可能性がある、このウイルス。いち早く感染を経験、克服した人の声に耳を傾けることで、私たちはこのウイルスとどう共生していくべきか考えます。

出演者

  • 石井光太さん (作家)
  • 髙山義浩さん (沖縄県立中部病院 感染症内科)
  • 三浦麻子さん (大阪大学大学院 教授(社会心理学))
  • 武田真一 (キャスター)

回復したはずなのに…元感染者の告白

元感染者が抱える悩み。1つ目は、症状がなかなか治まらず体調不良が長引くケースです。
4月に新型コロナウイルスの感染が判明した大学生。PCR検査が陰性となってから2か月以上たちますが、今も体調がすぐれないといいます。

大学生(21)
「37度7分あります。ちょっと高めですね。熱があると不安な気持ちにはなります。」

3月から自宅で自粛していましたが、アルバイトのため一度だけ電車で外出。5日後に発熱し、PCR検査で陽性となりました。

大学生
「例えるならインフルエンザの10倍以上のつらさと、ろっ骨が骨折したぐらいもがいて、寝返るたびに激痛が胸に走って。」

その後、一向に熱が下がらず、手のひらには湿疹が。

症状は全く改善しませんでしたが、発症から1か月後にPCR検査を行うと、2回連続で陰性に。体内にはもうウイルスはいないと診断され、退院が決定しました。

大学生
「体調的には全く変わらなくて、本当に陰性なのかなって疑うレベルでした。」

感染から2か月。発熱や頭痛は今も続いています。はっきりした原因は分かりませんが、医師の見立てでは、免疫力全体が落ちているか、長い療養生活による心因性の可能性もあるといいます。
大学も休学せざるを得ませんでした。

大学生
「コロナに感染する前は2週間ぐらいで治る病気なのかなという認識でいましたけど、(大学の)オンライン授業を見ることも結構きついし、それを覚えてテストするとなると、今の僕には到底できない。コロナにかからなければ、みんなと一緒に卒業できて『楽しく卒業できたね』という話をしたかったんですけど、ちょっと悲しい気持ち。」

検査で陰性となったあとも長く続く体調不良。番組が体験談を募ったところ、同様の悩みが多く寄せられました。

“3月上旬から現在も微熱が下がらず、全身にさまざまな症状が出ています。”

“発症後50日たつが、味覚・嗅覚の異常が治らない。”

長引く症状について、海外では研究も始まっています。
フランスの病院が行ったアプリによる調査では、この病院で診察を受けた感染者400人のうち10%~15%の人にコロナ感染による長引く体調不良が見られたということです。症状は咳(せき)、頭痛、胸の痛み、重度の疲労感、息苦しさなど、多岐にわたります。



新型コロナの元感染者たちのもうひとつの悩みが、こころの問題です。

主婦(40代)
「感染してるっていうだけで、やっぱり迷惑が人にかかる可能性があるんだなって思うと、究極に悪いことをしているような。」

パート先で新型コロナウイルスに感染した40代の女性。4月初めに同僚が感染。濃厚接触者だった女性も1週間後に発症しました。症状は軽く、ホテルに入所。このとき、なぜか後ろめたさを感じたといいます。

主婦
「療養中の身支度を整えて大きいバッグを持って出たんですけど、極力、誰とも会わないように見られないように。悪いことはやってないんだけれども、なんだろう、このいたたまれなさはと、すごく悲しくなりましたね。」

2週間で隔離期間が終了。自宅に戻ることになりましたが…。

主婦
「2週間たったら(PCR検査なしで)『もうお帰りください』っていう状態。“みなし陰性”です。」

当時、厚生労働省の基準では、医療機関に入院した感染者は2度陰性が出るまで退院できませんでした。一方、ホテル療養の場合、自治体によっては一定期間が過ぎれば“みなし陰性”として検査なしで自宅に戻ります。

はっきりと治った確証がないまま社会復帰していいものか。女性は1人、悩みました。

主婦
「『ホテルから出てきた。でもPCRはしてない』って言うと、(周りは)『えっ』って。それは正直な感想だと思うんですけれども、(自分は)やっぱり外に出ちゃいけない人物なんだっていう思い込み。なんか悪いなっていう罪悪感みたいなもの。」

発症から2か月、医師からは「他人へ感染させる心配はない」と告げられています。仕事も再開しましたが、感染の事実は絶対に知られたくないと話します。

主婦
「言うつもりはないです、全く。人との距離をすごく近く取る性格だったんですけれども、現状はもう誰にも言えず、本当に黙ってるっていうのが今です。孤独ですね。」

長い時間がたっても続く元感染者たちの葛藤。皆さん、どう感じましたか?

元感染者たち 残るからだと心の不安

武田:退院した後も体や心に長い間影響が続くという実態。改めてこのウイルスによる感染症の怖さを感じます。
まず、「長引く体調不良」について、私たちの番組にも多くの声が寄せられています。沖縄県立中部病院 感染症内科の医師で、厚生労働省の参与としてアドバイザーも務めていらっしゃる髙山さん。体調不良が続く方、実際に目にされますか?

ゲスト髙山義浩さん(沖縄県立中部病院 感染症内科)

髙山さん:すっきりよくなる人のほうが多いんですけれど、いわゆるかぜと比べると退院後も体調不良を訴える方が多いという印象を持っています。私の病院の経験で言うと、2割ぐらいの方が何らかの症状が数週間続くと。中には1か月経過してもにおいが戻らないとか、けん怠感が続くということをおっしゃる方もいらっしゃいますね。

武田:例えば咳(せき)、頭痛、胸の痛み、極度の疲労感、息苦しさなどが長く続くと言われているんですけれども、こうした長引く体調不良とウイルスとの関連性はどうご覧になっていますか?

髙山さん:まだ分かっていないところが多いんですけれども、大きく分けると4つ考えられると思います。
まず最初に、感染をしたことによって臓器障害が起きていて、その回復のプロセスが遅れているという可能性です。例えば“サイトカインストーム”、免疫の過剰反応によって肺が線維化を起こしたり損傷を受けたりしていることがあるんですけれども、その結果、呼吸機能が低下した状態が維持されてしまう。ウイルスを排除してもそれが残ってしまうんですね。
次に長期入院するということにおいて、特に高齢者なんですけれども、体力的に衰えるのはどうしても避けられない。本当はリハビリテーションが必要なんですけれども、残念ながら感染のことが心配だということでリハビリ病院への転院ができていないと。そうなると、身体機能や認知機能が落ちたまま固定化してしまうというリスクがあります。
3つ目に、心理的・社会的ストレスによる可能性ですね。長ければ数週間にわたって隔離されることがありますので、こうなると心理的なサポートも十分受けられない環境です。不安や恐怖というものがあって、そして「家庭に帰っても大丈夫だろうか」というふうなことを考えながら帰っていくと、どうしてもうつ状態のまま遷延してしまうということがあります。
4つ目は、これは可能性なんですけれども、持続感染をしているという可能性を指摘する専門家がいます。ウイルスがどこかに臓器の中で潜伏していれば、そこで炎症が起きてしまって、体調不良が続くという可能性も考えられています。まだまだ未解明の部分ですね。

ゲスト石井光太さん(作家)

石井さん:僕から髙山先生にお聞きしたいんですけれども、検査によって陰性として出てしまうのにもかかわらず体調不良だということなんですが、その期間中に人に感染させてしまうことというのはあるんでしょうか?

髙山さん:体調不良だから感染性があるとは言えません。もちろん発熱とか咳とか、いわゆる新型コロナの症状が続いているのであれば、それは感染対策を続けていただいたほうがいいと思います。けれども、例えば先ほど出ていらした方たちのように、けん怠感とか嗅覚障害が続いているからといって他人に感染させることがあるとは言えないと思いますね。

武田:石井さんも今コロナ感染者の方を多く取材されているということですけれども、退院後も苦しんでいる人に実際にお会いになったこともありますか?

石井さん:このコロナの怖さというのは、本当にその後の症状、体調不良が続くというだけではなくて、例えば会社がコロナで休み、お給料がないにもかかわらず体調不良で仕事ができないとか、あるいは、ただでさえ人と会えない環境で、大切な人に会えないとか。あるいはどこに行っても病歴を聞かれてしまって、差別された気持ちになるとか。つまりコロナが起こす社会問題と、その体調不良が合わさって、二重三重の苦に彼らは陥っているのではないかと思っています。

武田:そしてきょうはもうひと方、大阪大学大学院教授で社会心理学がご専門の三浦さんにも中継でお話をお伺いします。感染を周りに言えない、後ろめたく感じてしまうというお話がありましたけれども、その要因のヒントになりそうなデータがあります。こちらは三浦さんがお調べになったデータだそうですけれども、これはどういうことでしょうか?


ゲスト三浦麻子さん(大阪大学大学院 教授)

三浦さん:私たちの研究グループでは、ことし(2020年)の3~4月にかけて、日本を含めてここにある5か国で新型コロナに関する意識調査を行いました。この項目をご覧いただくと分かるんですけれども、「新型コロナウイルスに感染する人というのは自業自得だと思うか」ということを問うたところ、ここにあるように非常に大きな違いがあるんですね。日本では11.5%のものが、ほかでは本当にごく僅かという結果になっているということなんです。これは私たちも正直驚くべき差だと考えているんですけれども、やはりこういう風潮がより日本に強くあるとするならば、それを意識した人たちというのは、「なぜか後ろめたく感じてしまう」ということにつながるんじゃないかと思います。

武田:三浦さんは、どうすれば感染した人のそういった後ろめたい気持ち、人に言えないという気持ちをなくすことができるというふうにお考えでしょうか。

三浦さん:今の数字は非常に衝撃的だと私も思うんですけれども、ただ、9割ぐらいの人というのは「感染は人の責任ではない」と思っているわけですよね。そうすると、大多数の人というのができる役割というのは非常に大きいと思います。つまりそれは「あなたのせいじゃないんだよ」と、非常に強いストレスを受けてしまっている感染を経験した方々に温かいサポートをすることだと思っています。ストレスを受けているときに、本当に否定的なことというのを言われると非常にショックを受けるものですので、声をかけるのであれば「そうじゃないよ」「あなたのせいじゃないよ」という内容にしていただきたいと思います。

武田:なかなかそういう声かけってしづらいところもあるんですが、それが助けになる?

三浦さん:そうですね。それがやっぱり「あなたの責任じゃない」と思っている人の役目ではないかなと思います。

武田:今お話にありましたように、感染を自己責任だと考える人が多い日本。特に強いバッシングを受けた業界で新型ウイルスに感染した方はどんな気持ちでいるのか、話を聞いてきました。

パチンコと“夜の街” 元感染者の本音

今回、最も非難を浴びた業界の1つが、パチンコ店。感染拡大の恐れがあると、自粛を求める声が大きくなりました。
激しいバッシングの中で、みずからが感染したパチンコ店の店長です。緊急事態宣言を受け、男性の店は営業を自粛。その8日後に発熱。店から感染者は出ておらず、家庭内での感染を疑いました。

大手パチンコ店 店長(40代)
「3月末から4月頭ぐらいに、妻が『味覚が無いんや』と。ちょうどその前に(プロ野球の)藤浪選手が同じことを言われていたので。」

妻と娘と3人暮らし。持病があったため、入院するときは死を意識したといいます。

大手パチンコ店 店長
「これが妻に私がもし亡くなった場合に、私しか知らない情報とか。もう私は死ぬと思って書いてますので。最低限(妻と子の)2人が困らないようにと。」

入院して4日。ショックなニュースが飛び込んできました。

大阪府 吉村知事
「どうしても要請に応じていただけない店舗がございますので、公表いたします。」

たび重なる休業要請に応じない一部のパチンコ店に対し、大阪府知事が店名を公表したのです。営業を続ける店に客が殺到。業界バッシングに火がつきました。

大手パチンコ店 店長
「自分がコロナになった感染者であることを公表するのも、自分の責任ではないかなと思っています。ですけど、もし1人でも発症者が出たら(業界全体が)バッシングされてしまう。恐怖が感情として表れました。」

同じく非難の声にさらされたのが、いわゆる「夜の街」。

「感染状況は、銀座の街では?」

キャバクラ マネージャー(30代)
「キャバクラで1つクラスターが発生してて、そこで4名。」

銀座のキャバクラでマネージャーを務める男性。自身も4月半ばに感染しました。

キャバクラ マネージャー
「ホテル内はこんな感じです。」

軽症だったため、ホテルと自宅で2週間の隔離生活。現在は店に戻っていますが、上司からコロナ感染について口止めされたといいます。

キャバクラ マネージャー
「お前はとりあえず会社に必要だから仕事には出てきてほしいと。ただ、それをよく思わない人がいる可能性もある。もしかしたら大事なお客さんを失っちゃうかもしれないですし、(感染が分かれば)うちの店を辞めて別の店へ行く従業員が出て来かねない、出てくる可能性がある。経験者として何か発信できることがあるなら、しようとは思ってますね。ただそれは僕個人の考え方であって、会社に迷惑かけるわけにはいかない。なので顔出しとかは(難しい)。」

さまざまな葛藤を胸に秘めながら、以前と同じ生活を送る元感染者たち。一方で、感染を公表することで人生が大きく変わったケースも。
長年、夜の街の取材を続ける石井光太さんと、六本木に向かいました。出迎えてくれたのは石井さんの取材先、40代のママ。

経営者(40代)
「ここはね、カラオケラウンジ。ここも閉まって個室になるし、向こうも個室になるし。クラブとかキャバクラに行って、お姉ちゃんを連れて、また飲み直すじゃないけど。」

店の従業員がコロナに感染したのは、3月末のことでした。

経営者
「(従業員が)具合が悪くてどうにもならない、もう40度超えてると。下手したらコロナだと。『どうしたらいいか?』って、『休むに決まってんじゃん』みたいな。40度なんて出たら。とりあえず『自粛でお休みします』っていう貼り紙だけババッと作って。」

すぐに従業員7人に自宅待機を指示。PCR検査してくれる病院を探しました。

経営者
「まず保健所とか、そういうホットラインみたいなのに電話。でも結局つながらないのよね。全然つながらない。(埼玉県に)夜中のホットラインみたいなのがちょうどあって、夕方5時から朝9時までっていうのを発見した。そこに電話したらすぐつながって。」

検査してみると、やはり陽性。即入院となりました。万が一にも感染を広げないよう、女性はすぐに管理会社やオーナーに連絡したといいます。

石井光太さん
「コロナを公表することに、ためらいは?」

経営者
「無かったです、それは。ちゃんと伝えなくちゃいけないと思ったしね。」

しかし、その告白は思わぬ波紋を広げました。

経営者
「うちが一番に(感染者が)出ちゃった、このビルの中で。だからエレベーターと4階のホール(の消毒)はやっておきますと。」

石井光太さん
「管理会社のほうで?」

経営者
「そう。(店内の消毒代を)聞いたら60万とか70万とか。」

石井光太さん
「店の中だけで?」

経営者
「うん。分からないと、見てみないことには。100万円になる可能性もある。それ結構、痛くて。」

消毒費として多額の支払いが発生。自粛要請で店を再開できる当てもありません。悩んだ末、廃業を決めました。

経営者
「4月の終わりぐらいだったかな、廃業届を出したのは。どんどん自粛、自粛となって。自粛って言い方を日本では使うけど、(営業)出来ないのよね。闇営業して何かあったりしても嫌だし、ダラダラ続けて借金どんどん膨らまして『あいつ終わったね』って六本木去るよりは、パッと言ってパッとやめたほうが水商売としては格好いいかな。格好悪くちゃいけないんだよね、やっぱり、こういう商売って。」

20年過ごした六本木を去って1か月半。知り合いから声をかけられ、女性は銀座の割烹(かっぽう)料理店で働き始めています。

元感染者と共に生きる

武田:パチンコ店やいわゆる夜の街の人たち、皆さん、家族や従業員、日々の暮らしといった守らなくてはならないものがあって、感染を広げてはいけないということも分かりながら、さまざまな選択をされているんだということを改めて理解することができました。石井さんは、どんな思いで話を聞かれたんでしょうか?

石井さん:本当に夜の街の人たちというのは働いてて、それはバッシングされてますけど、彼らも本当に必死になって、いろんな問題を抱えながら夜の街に来てサバイバルしてるんですよね。
例えば先ほどのママで言うと、家庭に問題があって、中卒で、しかも少年院まで行って、夜の街に裸一貫で入ってきて働き続けている。そういう人たちにやめろというふうに言っても、なかなかそれはできないわけです。店を経営しているオーナーたちもそれは分かっていて、本当に今やめてしまったらこの子たちの行き場がないといった考え方なので、薄利だけども営業を続けていこうと。営業を続けていこうと。
一般の人はそれをどう思っているかというと、一般の人は常日ごろ、そういったお店を利用しているにも関わらず、こういったときに「あいつらが感染を広めている」というふうにバッシングをするわけですね。これではなかなか夜の街の人たちは、僕たちに対してきちんと理解してくれないだろうと。
今必要なのは、僕はやはりお互い歩み寄ることだと思うんですね。どういうことかといいますと、僕たちは、彼らがなぜそこで働かなければならなかったのか、人生、生活すべてを理解した上で、彼らが感染したことを告白しても不利にならないようにするにはどうすればいいか。どうすればコロナと立ち向かえるのか。そういったことを1つずつ考えていく必要があるだろうなと思います。
今、「新宿モデル」というのがあるんですね。新宿の夜の街の人たちが、国と一緒に考えて防いでいこうということです。

これに参加しているオーナーが、「今まで僕たちは無視されていたと思っていたけれども、国がきちんと僕たちのことを考えて補償もしてくれて、防ぎ方も考えてくれている。そのときに初めて一緒に協力しようと思った」というふうに言っているんですね。これはやはり国だけがやることではなくて、僕たち一人一人が彼らを理解して歩み寄る、話し合うということをしていくべきではないかと思っています。

武田:髙山さんは、感染予防と、それから営業を両立させていくために一番大切なことは何だとお考えですか?

髙山さん:実は1つだけではなくて、決定打というのはないんですね。感染対策には。できることを地道にやってリスクを減らしていくしかありません。症状のある人が仕事を休む、これは最低限のラインなんですけれども、それに加えて手をきちんと洗うとか、接客のときにはマスクをつけるとか、あるいは皆が触れるところを丁寧に、定期的に消毒する。こうした基本的なことを地道にやっていくことで、感染を減らしていってほしいと思います。とはいえ外に開かれている、夜の街もそうですし、私たちの病院もそうです。外から人が来るということは、ウイルスを持ち込まれる可能性はあります。そのときに大切なのは、非難しないということです。バッシングすると、検査を受けてくれなくなって潜伏していってしまうんですね。ですから、発生したら皆で助けてあげる。沖縄では「ゆいまーる」ということばがあるんですけれども、お互いさまで助け合うということです。そういう感覚が必要だと思いますね。

武田:これから第2波が来るかもしれません。私たちが連帯して立ち向かっていく必要があると思うんですけれども、そのために、こうして感染した人たちの声を実際に聞くということは大きな意味があると感じましたが、三浦さんはどういうふうに感じてらっしゃいますか?

三浦さん:私は「なぜ人がバッシングするのか」ということを先ほどの調査も絡んで考えているんですけれども、こうしたバッシングが起こるというのは、実は人間の根源的な心理システムに基づいていることなんですね。ただ、それが非常に敏感に働きすぎてしまっていて、誤作動しているような状態だというわけです。じゃあ誤作動がどこに向かいやすいかというと、社会的弱者だということなんですね。なので、ある意味、人間の行動としては想定の範囲内ということになってしまうんですけれども、だからこそ、私たちはそれをしてはならないと意識して抑制していかなければいけないということなんです。私たちは「ちょっとだけちょっとだけ」と思うかもしれませんけれども、一人一人の積み重ねというのが社会全体にとっては大きなうねりをもたらしてしまうということがありますので、そのことを本当に私たちは意識して避けなければいけないと、きょう番組を拝見して、自戒を込めてそのように思いました。

武田:石井さん、私たちはこういった人たちの声をどう生かして次に備えていけばいいんでしょう?

石井さん:僕は本当に、夜の街の人、バッシングされている人と僕らというのは、気持ちは同じだと思うんです。ばらばらじゃないと思うんですね。どういうことかというと、先ほどのママが言っていたんです。「私は自分の娘に、あるいは友だちに感染させたくないから公表したんだ」と。大切な人を傷つけたくないという気持ちは、全員が持っている、揺るがないものだと思うんです。僕たちはそこの部分であれば必ず団結できると思うんです。団結して1つの方向に向かうことが、最終的にはコロナを克服することになるのではないかなというふうには思ってます。