クローズアップ現代

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2020年6月10日(水)
密着!巨大商店街 “緊急事態宣言”の裏側で

密着!巨大商店街 “緊急事態宣言”の裏側で

番組スタッフが3月から密着取材を続けている、大阪中心部の「日本一長いアーケード」で知られる商店街。前回4/8の放送以降、緊急事態宣言下の商店街は激動の日々を送っていた。外出自粛要請によって人々が地元商店街に殺到し、いわゆる“3密”状態に。“自粛警察”なる言葉が登場し、商店主たちは葛藤や恐怖と闘いながら営業を続けていた。一方で、客足が落ち閉店に追い込まれた飲食店や、取引先でコロナ感染者が発生し、仕入れが絶たれた店も。閉じた店のシャッター前にはマスクの露店商が進出し、品薄だったマスクがどんどん値下がりする様子も…。かつてない緊急事態があぶり出した、日本人の素顔。「自粛」の名の下に息を潜めた商店主たちの呟きに耳を傾け、ウイルスで激変した社会を見つめ直す。

※放送から1週間は「見逃し配信」がご覧になれます。こちらから ⇒https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/WV5PLY8R43/

出演者

  • 武田真一 (キャスター)

巨大商店街 “緊急事態宣言”の裏側

取材を再開したのは4月中旬。
緊急事態宣言(4月7日)が出された後も、全国で感染者数が増え続けていました。
感染対策を徹底し、取材をスタート。

商店街に行ってみると…意外にも人通りが。

取材班
「今日はお買い物ですか?」

買い物客(83)
「ちょっと買い物しとかな、巻きずしぐらいとな。2日分、物買うときますねん。1人暮らしやから。この商店街な、こないして、ちょいちょい店開いてるとこあるでしょ。それがありがたいですわ。」

自主的に休業してシャッターを下ろしている店もありましたが、スーパーなどは通常どおり営業中。

このころ、梅田などの繁華街はデパートも休業し、大きく人が減っていました。その一方で、商店街には日用品を求める人が集まっていたのです。

同様の現象が全国で発生。行政は注意を呼びかけていました。

西村経済再生大臣(4月22日)
「スーパーや商店街で、レジ等における人混みを避ける取り組みをすべきことも(専門家会議に)提言をいただきました。」


4月下旬になっても人通りは絶えません。
前回も訪れた100円均一ショップ。
レジ周りに感染予防のビニールを張り巡らせていました。

100円均一ショップ
「ちょっとね、やっぱり(感染が)怖なってくるもんな。」

取材班
「人通りは相変わらず すごいですね?」

100円均一ショップ
「(人多くても)買い物客にはあまり結びつかへん。」

取材班
「人が通っても買い物には結びつかない?」

100円均一ショップ
「結びつかないな。やっぱり絞ってるんちゃう?財布を。」

数少ない売れ筋商品が透明ビニール。
レジに取り付けたところ、ほかの店主から注文が殺到したんだとか。

100円均一ショップ
「『店長 これどこにあったん?』って、『いや これうちで売ってるやつやで、シート100円のやつ』『これ買うわ』って、そんな感じで売り切れてる。あんなのは もうわからん。そんな何万個も売れるわけじゃないしな。」

手書きのポップには、諦めにも似た気持ちがにじみます。

“やっぱりコロナには勝てないわ
流石のおやじも営業時短します”


その近くでは、シャッターを閉めている和食店が。

和食店
「売り上げが激減しちゃってるんで、それやったら休もうかと。(飲食店は)どこもそうですけど、お客さんが入ってない。」

人通りはあっても飲食店は閑古鳥。
緊急事態宣言が明けるまで臨時休業しているといいます。


大阪名物の串かつ店。
中では、男性が何やら考え込んでいる様子。

串かつ店 劉小亮さん(37)
「シフトを今 組んでる最中なんですよ。あしたからのシフトを。僕1人だったら休んだほうがいいんちゃうかみたいな感じで。」

売り上げが落ち込み、しばらく休業していたという店主。
しかし、従業員のことばで、休業要請に抵触しない夜8時まで営業を再開することにしました。

串かつ店 劉小亮さん(37)
「みんなに聞いたらな、仕事したいと。」

取材班
「収入面を考えると?」

従業員
「それはもう不安はありますね。嫁もいてるんで。」

17年前に中国から来日し、ずっとこの商店街で働いてきた劉小亮さん。
売り上げが落ちた飲食店には、国や自治体からさまざまな支援制度が打ち出されていましたが…。

取材班
「これ(雇用調整助成金)ってご存じですか?」

串かつ店 劉小亮さん(37)
「これ結構、友達とかみんなに聞いてるんですよ。でも、これなかなか下りないらしいですよ。これはちょっと諦めようかなと思って。申し込んでも、正直 申し込みのしかたも僕、分からないんで。」

このころ、この雇用調整助成金に全国で延べ27万件の相談が殺到。しかし、申請書類が10種類に上るなど手続きが複雑すぎて、支給が決定したのは2%にとどまっていました。


疲弊する商店街で、お客さんが絶えない文房具店が。

文房具店
「縄跳びなんか今よーく売れるんですよ。たぶんね、運動不足の子どもさんが親に言われて、とんだり はねたりしてるんでしょうね。」

学校が休みで文房具はあまり売れませんが、アナログな遊び道具が売れ筋に。
中でも、一番人気は…。

文房具店
「バドミントンのセットもたくさん売れました。もう今バドミントン、実はないんです、メーカーに。ないの。全国で売れてる。」

近くの公園に行ってみると確かに、ちょっとしたバドミントンブームが。
ソーシャルディスタンスを保ちながら、適度に体を動かせるのが人気の秘密のようです。
こちらの親子は、ラケットがちょっと違うようですが…。

「バドミントン買おうと思ったんですけど、これしかなくて。このバドミントンっぽいやつしかなくて。」


3月の取材時に人気だったのが、夜だけ開く屋台村。

沖縄料理店 店長(3月)
「出せる(料理の)範囲は屋台なんで知れてるんですけど、出来るかぎりのものはね、手作りで作って。」

近所にある沖縄料理店の店長だという男性。
本店が売り上げ不振に陥り、空いた時間に屋台で腕を振るっていました。

あれから1か月。どうしているか訪ねてみると…。

電話で連絡を取ってみます。

沖縄料理店 店長
「はい、もしもし」

取材班
「どうも その節はお世話になりました。屋台がやっていなかったので、近況をお話しいただけないかと。」

沖縄料理店 店長
「屋台は一応、緊急事態宣言が出たところから自粛という形を。」

大阪府の休業要請で、飲食店の営業は夜8時まで。夜の屋台村は営業すらできずにいました。
本業の沖縄料理店はどうなったのでしょうか?

沖縄料理店 店長
「お店のほうも、もう閉める形にして、みんなからは『早いんちゃう?』みたいな感じで言われましたけど、ちょっとうちのお店は大箱だったので。」

取材班
「今は、お仕事は?」

沖縄料理店 店長
「ないです。本当にいろんな方に協力してもらったりとか、頭下げて、ちょっと貸していただいたり。それをちょっとずつ生活のあてにしているだけ。」

緊急事態宣言が明けるまで、じっと我慢。
何とか自粛に耐えてきた商店街ですが、時間とともに ほころびが見え始めていました。

夜9時過ぎ。
人通りは、ほとんどありません。
そんな中、にぎやかな声が。

「マスク」

「欲しいです。」

「5枚まで」

「はい」

「自分で取って。」

「わしゃ50枚まで(笑)」

段ボールの家に住む人々の元へ、支援団体が物資の配給に来ていました。

ところが最近、こうした支援にも変化が出ているといいます。

「炊き出しが少なくなってますわね。」

取材班
「なんで炊き出しがなくなった?」

「やっぱりコロナの関係です。人数が多いからね。ざっと80人近う並びますので。密集しますので。」

取材班
「今はどうやって(食べ物)確保している?工事現場とか?」

「そういうのが今、全然ないですからね。大きな建設会社もみな閉めてますでしょ。だから仕事がないですよね、今。助け合って、皆で。それでアルバイトしたりなんかしてね。重たい荷物をね、1回2回運んだら終わりとかね。」

少しでも体力を温存するため、最近は早めに寝ることにしています。

取材班
「おやすみなさい。」


安倍首相(4月1日)
「(布マスクを)一住所あたり2枚ずつ配布することと致します。」

この数か月、人々の関心を集めたのがマスクの品薄問題。
3月、商店街にもマスクを求める人がたくさん訪れていました。

薬局
「マスクですか、もう箱ごとって言うか、もう千枚単位で買って行ったり。困ってますし、正直 自分の分もないような。」

売り上げが落ちたTシャツ店では、手作りの布マスクを売って収入の足しにしていました。

Tシャツ店
「普通のマスクちゃうで、これ1800円。こんな世界やで、今。」

このマスク狂騒曲。
その後、意外な展開を見せることになります。

4月半ば、商店街に突如、露店でマスクを売る店が出現。
話を聞いてみると…。

「天神橋(の者)じゃないんですよ。別で、雑貨屋です。」

こちらにも別のマスク店が。

取材班
「NHKの者なんですけれども。」

「日本語はよく分かりません。」

どうやら営業を自粛している店のシャッター前で販売している様子。
一体なぜ、こんなにマスク店が増えているのか。
商店街組合の副会長が事情を話してくれました。

文房具店
「シャッター閉めてる飲食店は5月6日(緊急事態宣言の期限)まで休んではって、その前で許可してもらって、マスク売らしてもらってるお店が4軒か5軒くらい今はありますね。(店の)前だけを借りると、(賃料は)1万円ぐらいやけど。」

取材班
「どこから仕入れてる?」

文房具店
「そこまでは知らない。」

薬局には、妙な売り込みの電話もかかってきたといいます。

薬局
「一番びっくりしたのが不動産会社から、いつも通りマンション買わされるのかな見たいな感じで話聞いてたら、『マスク手に入ったんですけどいかがですか』とか。『どうやって?』っていう。ちょっと怖いなというのがあって、うちは入れたくはないですね。」

その後も謎のマスク店は増え続け、価格は3週間で、ほぼ半額に。

1800円の布マスクを売っていたTシャツ店は、一体どうしているんでしょうか?

Tシャツ店
「いらっしゃい」


「(マスク)どれにしたらいいかな。」

Tシャツ店
「こっちが3500円でな、こっちが4350円するのや。みんな一緒や思うやん。違うねんでマスク。ここに針金が入ってる。不織布がごついからしっかりしとるね。ところが、みんな(見るのは)値段だけやから。安けりゃええいう値段で買いはるからね。」

Tシャツ店
「これ(4350円)にしましょう。」

最近、感染が落ち着いた中国からマスクの輸送船が頻繁に来るようになり、価格が下落しているといいます。

Tシャツ店
「中国の業者が(価格が高騰した)日本のほうが もうかると。中国の女の子を20~30人集めて『売ってこい』という感じで。だから、あっちこっち出店が出る。」

取材班
「中国のどこから来てる?」

Tシャツ店
「出港は3つぐらいある。アモイからか分からへんけどね。」

取材班
「アモイ?」

男性も乗り遅れまいと、つきあいのある輸入業者にSNSで相談。
ところが、ショックな返信が。

Tシャツ店
「(マスクの輸入業者が)『コロナの反応が出ました』やて。これが一番最初にマスクのことでいろいろ相談したやつやねん。医療用マスクはこうやとかな、ずっと話してる者がや。今コロナになって、(アモイから)入国できへんから『何でや?』って聞いたらな、今どっかのなんとか病院に隔離されてるって。」

取材班
「ビジネスパートナーが倒れたのはショック?」

Tシャツ店
「そうや、もう。まさかね、まさか…」

最後に会ったのは1か月前。幸い症状は軽いといいます。


大型連休後半、安倍総理大臣が記者会見。

安倍首相(5月4日)
「当初予定していた1か月で緊急事態宣言を終えることができなかったことを、国民の皆様におわび申し上げたい。」

連休終わりまでの予定だった緊急事態宣言。多くの人々の協力で感染者数は減少していましたが、まだ十分でないとして、5月末までの延長が決まりました。

長引く自粛要請に、商店街近くでは経済的補償を求めるデモが。

「つべこべ言わずに金を出せ」

人々の不満が高まっていたこのころ、話題になっていたのが「自粛警察」ということば。外出の自粛や休業要請に応じていないとして、人が集まる店を脅迫する事件が相次ぎました。
商店街も多くの人を呼び寄せているとして、批判の対象に。

“天神橋筋商店街
70%以上が営業してます。
これは3密ではないのでしょうか?”

当時、大阪で休業要請が出されていたのはナイトクラブやパチンコ店など一部の業種。

しかし、要請が出されていない小売店などへも風当たりは確実に強まっていました。

商店主
「刺されるんじゃないかとか、怖いなというのは、日々営業しててしんどいなと思ってる部分ですね。じゃあ閉めりゃいいやんという話なんですけど、1か月はしのげるかもしれないけど、2か月しのげるかと言ったら、なかなかそれは難しいと。どんなお店さんも、しんどい所が多いんじゃないかと。」


お昼過ぎ。
困り顔で話し合う店主たちがいました。

薬局
「散歩でね、ここを通るのは正直やめてほしいかな、目的もなく。普通やったらね、何かついで買いとか、ぜひウエルカムやけど。」

洋服店
「コントロールが出来ないもんな。」

薬局
「『来るな』とは言えないですし。」

商店街組合の役員を務める2人。
「自粛警察」の批判を受けて、対策を話し合っていたのです。

すると突然、人通りの写真を撮り始めました。

洋服店
「商店街でツイッターがありまして、今日は僕が撮って、どんな様子かお伝えできればと。」

洋服店
「お買い物は短時間に済ませましょう?」

薬局
「それ、そのほうがいい。」

洋服店
「(写真を見て)お客さんが多いときは『だったらちょっと時間変えて行こう』ってなるかもしれない。」

自粛している店も、営業を続ける店も、苦しい状況は同じ。
少しでも足しになればと、これまで組合で積み立ててきたお金から見舞い金を配ることにしました。

洋服店
「今まではなかったことですね。もう数万もないと言えばないんですけど。(商店街も)感染拡大を防止するために絶対に努力しているから。なんとか注意喚起もしながら、生活が出来るようなお買い物の場所は提供出来ればいいのかなって。」


長い自粛期間を経て、5月中旬。
全国の感染者数は緩やかに減少。大阪も1桁台の日が続き、通天閣は基準内の数値を示す緑色に照らされました。


そして、5月21日。

安倍首相
「関西の大阪府、京都府、兵庫県について、緊急事態宣言を解除することと致しました。」

ついに、待ちわびた緊急事態宣言の解除。
しかし、商店街に戻った日常は、以前とは違うもののようです。

和食店
「(お座敷は)まだ1回も使ってない。」

取材班
「座敷ですか?」

和食店
「そうです。利用率ゼロですから。」

団体客の宴会場所としておなじみだった和食店。
しかし、全く予約が入らず、メニューの見直しを始めているといいます。

和食店
「生活様式も変わってきたりとかで、みんなで囲む鍋とか、そういうのはちょっと毛嫌いされるんかなみたいな。お一人様ずつのちょっとした小鍋だったりとか、そういうメニュー提案も考えないといけないのかなって。」

マスクを売っていたTシャツ店をのぞいてみると…。

Tシャツ店
「Tシャツが、ニコッ、動き出した。」

取材班
「Tシャツ動き出しましたか?」

Tシャツ店
「動き出した。でも、もちろん外国のやつ(観光客の売り上げ)そのままやけど、フニャーしてるけど。」

お得意様だった外国人観光客は戻りませんが、日本の若者がTシャツを買ってくれるとのこと。
しかし、マスクの販売も諦めていませんでした。

Tシャツ店
「これTシャツ(生地)なんですよ。Tシャツとマスクとセットで。」

取材班
「Tシャツとマスクが同じ柄?」

Tシャツ店
「同じ柄。ほんま商魂たくましいやつや。」

Tシャツ生地のおしゃれなマスク。夏場の主力商品に育てたいといいます。

取材班
「この間、取り引きのある方がコロナになってびっくりされていた?」

Tシャツ店
「もう(先週 病院を)出てきて、またね、大阪へ来ると思うけど、今は連絡だけで。」


1か月以上営業を自粛していた屋台村も再開。

そこに、沖縄料理の店を畳んだ、あの男性の姿がありました。
営業終了後。

取材班
「(お客さん)途切れなく来てましたね。」

沖縄料理店 店長
「ありがたいですよ。コロナ騒動が始まってから、この2か月ぐらい、お客さんと会話して『楽しかった』と思えたのが、今日、本当に久しぶり。」

自粛中、ずっと今後を悩んでいたという男性。
選んだのは屋台での再出発でした。

沖縄料理店 店長
「外食産業は今後、やっていけるのかなと思ってたときやったんで。なるべくポジティブに考えるんだったら(この状況が)新しい自分の再スタートを切らせてくれたのかなって。1人になってしまって、お店もなくなってしまったけど、1からスタートっていう。」

一歩ずつ、新たな日常へ手探りの夏が始まっています。


武田:誰も経験したことのない、異常な日々を必死に生きた人々。今月1日には休業要請がすべて解除され、商店街では、換気のためアーケードを開放するなど、感染予防の工夫を続けています。しかし、まだ先は見えません。客足が戻らないことに不安を覚えたり、消費者のライフスタイルが変化したことに戸惑う店主もいます。誰もが苦しい状況の中で、決して弱音を吐かず、努めて明るくふるまう姿に、みんな同じように大変な思いをしながら この緊急事態を過ごしてきたのだと連帯感のようなものを感じました。