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2020年5月14日(木)

観光復活へ 知られざるシナリオ ~トップたちの一手~

観光復活へ 知られざるシナリオ ~トップたちの一手~

新型ウイルスで観光地から人が消えた大型連休…「100年に一度」の危機に、観光のトップはどう立ち向かうのか。星野リゾートの星野佳路代表は、仕事を失ったホテルの従業員が人手不足の農家を手伝うなど、雇用を維持しながら地域の魅力を再発見する取り組みを進める。大阪観光局の溝畑宏局長は、地域の飲食店やエンタメ業界の悲痛な叫びを受け止めながら、知る人ぞ知る郊外の観光地の掘り起こしを始めている。二人が模索するのは、「危機後」を見据えた新たな観光。密着取材から見えてきた、観光業復活のヒントに迫る。

出演者

  • 鎌田由美子さん (株式会社ONE・GLOCAL 代表)
  • 武田真一 (キャスター)

インバウンド消失 星野流“逆転の一手”

日本の観光が直面する危機、その一つが“インバウンド需要の消滅”です。

日本を訪れる外国人旅行客は、この10年で4倍以上に増加。10年後には6000万人を目指していました。

ところが、ことしは大幅な落ち込みを記録。3月は去年に比べ9割以上減りました。

そこに追い打ちをかけたのが、緊急事態宣言による外出自粛。
観光需要の8割を占めていた国内の旅行客も激減し、全国で30を超えるホテルや旅館が倒産しています。


この荒波を“100年に1度の危機”と語るのが、星野リゾートの代表・星野佳路さん。

私たちは3月中旬から取材を重ねて来ました。
そこから見えてきたのは、星野流の現状分析と苦境打開のシナリオでした。


緊急事態宣言から2週間後の先月21日。
星野さんは幹部を集め、戦略会議を開きました。

星野リゾート 代表 星野佳路さん
「これ(近隣への外出)が最初に戻ってくる。」

まず示したのは、観光客が今後 どう動いていくのかという予測。

星野リゾート 代表 星野佳路さん
「インバウンド(外国人観光客)が戻ってくるのは遠く先。おそらく1年~1年半後になる。まず近隣から戻ってくるんですよね。近隣から戻り、そして首都圏、関西圏が戻り、その先にインバウンドがある。」

星野さんの見立て。
それは、観光客は一気に戻るのではなく、まずは近場の30分、1時間圏内で楽しもうという人から戻り、次に首都圏や関西からの客、外国人旅行客は最後になるというものでした。

日本文化のおもてなしを徹底する戦略で、年間の宿泊客の3割ほどを外国人が占めていた星野リゾート。

インバウンド需要が失われた今、戦略の見直しを迫られていました。

星野リゾート 代表 星野佳路さん
「僕らはいつの間にか首都圏・大阪圏に行き、海外から集客しようみたいに、どんどん遠くに行って、そっち(インバウンド)がボリュームあったから、こっちばっかり行っていたんだけど。これ(インバウンド)はあまり期待できない、収束するまでは。」


3月下旬、北海道 占冠村。

“100年に1度の危機”をどう打開できるのか。
星野さんは この数か月、各地を回って考え続けていました。
このホテルでは、これまで宿泊客の6割を海外からの観光客に頼り、冬場は8割にも上っていました。

星野リゾート 代表 星野佳路さん
「クリスマスはシンガポールの方からいらっしゃったり、それが終わるとオーストラリアの夏休みが始まり、それがちょっと落ち着くと(中国の)旧正月になる。今年は新型コロナウイルスの問題がありますから、いつになったら戻ってくるか読めない、難しい年になると思います。」

さらに、国内の旅行客もキャンセルが相次いでいて、見通しは厳しいと聞かされました。

支配人
「(予約数は)だいたい8割減で今きている状況です。特に羽田‐千歳の減便もあるので、春休みのレジャー客が、需要が難しくなっているというのが現状ですね。」

しかし、これまで何度も破綻したホテルや旅館の再生を手がけきた星野さんは、逆転の一手を練っていました。

星野リゾート 代表 星野佳路さん
「何ができるんだろうな。再生を星野リゾートがやっていたころから一緒にいるメンバーが多くて、業績が悪いときに慣れているんですよね。この人なんか、そのまま破綻していたところにいた人ですから。少々悪くても誰も驚かない。なんか方法があるはずだと。」

星野リゾート 代表 星野佳路さん
「過去の困難なときに発想してきたことが、今の私たちの力に実はなっているんですよね。今回も大変な、過去になかったような大きな事件だと思っていますが、この環境下においても、私たちは常に発想し続けて、常に次の収束したときに より強い施設になっていよう、より強い私たちの組織にしていくためにはどうしたらいいか。そういう発想をしていくことがすごく大事だと思います。」

コロナ後の観光 カギは“地域”

各地の状況を目の当たりにしてきた星野さん。
幹部会議で打ち出したのが、今後 最初に戻ってくるとする“近場で旅行を楽しみたい”という人たちを取り込むための一手でした。

星野リゾート 代表 星野佳路さん
「感染拡大を防止しながら経済活動を維持していく、両立を目指すときには、ここの近隣の1時間圏内のマーケットに対して訴求する魅力を作っていく。そこでベースを作るというのは すごく重要だ。コロナ問題収束後のプラスになるようなネットワーク作りができればいいなというのを視野に入れて考えてもらいたい。」

地域の人たちにアピールする魅力を改めて作り出すことがカギになる。そのためのネットワークを強化していこうと呼びかけました。

観光は宿泊施設だけでなく、食材を提供する農家や漁師、人や物を運ぶ運送会社など多くの地域住民が関わっています。この地域のネットワークを生かすことが、観光復活にとって重要だと考えたのです。

星野リゾート 代表 星野佳路さん
「観光は実は海外移転できない産業なんです。その場所で観光産業が育ってくると、人件費が安いからといって違う国にそれを動かすことができない。地域に根ざした産業なんです。私たちは、取引業者さんはたくさんいらっしゃいますので、そういった方の売上、その会社の社員の方を含めて、そこも考えなければいけない。そういった観光が及ぼす波及効果を考えると、それは私たちができる範囲でしっかり仕事をしていくことが地域のためにもすごく大事だと思っています。」


危機が去ったあと より強い地域になっているために。
この日、休館したホテルのスタッフが訪ねたのは地元の野菜農家です。ホテルの仕事ができない間は、人手不足に悩む農家を手伝うことにしたのです。
畑に植えられていたのが、地元でもなかなか出回らない珍しい食材。

野菜農家
「小カブですね。これはもう出荷が始まっている。」

実はこのスタッフは、ホテルのカフェの従業員。この食材を、今後ホテルで出せないか検討することにしました。

野菜農家
「なんか柿みたいな甘みが。おいしいね。」

ホテルのカフェ従業員
「おいしい。ちょっと料理長に伝えてみます。」


星野リゾート 代表 星野佳路さん
「地元の観光資源を見つけて、地域の良さを再発見してもらう。需要を戻す意味でも大事ですし、雇用を維持することにもプラスになりますし、地域の方々が地域の魅力について、コロナ以前よりも よく理解して知っているってことが、私はすごく大きな力になると思っています。」

治療薬、ワクチンの登場まで、観光需要は完全には戻らないと見る星野さん。
先週、オンラインのインタビューで観光業の未来を次のように予測しました。

星野リゾート 代表 星野佳路さん
「おそらく緩和し始めると若干なりとも感染者数が増える可能性がありますし、そうすると また自粛をしなければいけない。社会は毎回それを繰り返すたびに、少しずつコロナウイルスの対処法が私たちはうまくなってくるので、だんだんとこの波(感染者数)は下がってくると、私は予想していまして。治療薬、ワクチンの誕生までは、それまでより低い観光需要の状態なんですが、その中でも最善の努力をすることによって、私たちの産業が生き延びていくということを目指さなければいけない。」

インバウンドの“優等生” 大阪の一手

インバウンドがしばらく戻らないという厳しい現実。
その試練に地域全体が直面しているのが大阪です。
5年間で外国人観光客は3倍に急増し、日本のインバウンド戦略の優等生とも言われてきました。

その戦略を推し進めてきたのが大阪観光局の局長、溝畑宏さんです。
これまで、Jリーグのクラブチーム社長や観光庁長官を歴任してきました。

溝畑流のシナリオ。
そこには、関西人ならではの視点とともに、星野さんとの共通点もありました。


3月以降、外国人観光客が1割以下に激減した大阪。

大阪観光局 局長 溝畑宏さん
「(店が)閉まってるね。いやぁ、すごいな。休業だらけ。」

影響はあらゆる観光産業に広がり、溝畑さんは難しいかじ取りを迫られていました。

大阪観光局は、これまで飲食やエンタメ、スポーツなど30を超える業種と連携しながら観光戦略を展開。

食や文化をアピールするイベントなどを企画し、集客を図ってきました。
溝畑さんは、今後も人の移動が制限される中で、“地域の欠かせない産業である 観光を守り抜く”ことが使命だと考えています。

大阪観光局 局長 溝畑宏さん
「不要不急の産業と言われているわけでしょ、スポーツや文化や観光って。そうなってはいけないと僕は思っている。非常時でも、みなさんの心に響く産業にならないといけない。レジャーじゃない。みんなレジャーだと思っているから いらないと言っている。どんな時でも必要な産業にならないと本当の観光立国にはならない。」

困難に直面する経営者たちに、溝畑さんが示してきたものがあります。

大阪観光局 局長 溝畑宏さん
「自粛をいつの段階でやめて、そこから国内・インバウンドを広げていくかのプロセスです。」

溝畑流、観光復活へのロードマップです。
どん底にある観光が好転するきっかけは、プロ野球やJリーグ、テーマパークが再開するタイミングだと考えました。それ以降を「回復期」とし、国内、東アジア、欧米それぞれの観光客が順を追って戻ってくると、3段階に分けました。

この「回復期」に向けて、さまざまな手を打つ重要な時期と位置づけているのが現在の「準備期」です。この時期、企業の体力を維持できるかどうかが復活のカギを握るといいます。

大阪観光局 局長 溝畑宏さん
「観光というのは、すそ野の広い産業だし、多くの零細事業者から成り立っている。こういう人たちの経営維持、生活を守ろうということも、観光をやっている人間の大きな仕事なんですよ。」

“現場の声”を届け 国を動かす

準備期の今、溝畑さんが取り組んでいるのが、現場の声を国に届け、必要な支援を求めることです。
この日は、営業自粛に追い込まれた飲食店の経営者を訪ねていました。

レストラン オーナーシェフ
「(ほかの店は)つぶれ始めています。ずっと頑張ってきた人間を切り捨てるようなことはしないで欲しい。なんとかして欲しい。」

多くの飲食店が、家賃や人件費を払えない 深刻な事態に直面していました。
溝畑さんは、こうした声を国が経済対策を打ち出す前から、みずからの人脈を生かし、政治家や官僚に直接伝えてきました。

大阪観光局 局長 溝畑宏さん
「今までの常識と違った対応をしていかないと、国としての新スキーム(計画)を考えないと。」

かつて観光庁長官を務めた経験から、“国が地方の実情を把握する難しさ”を知っているからです。

大阪観光局 局長 溝畑宏さん
「現場の人の意見を吸い上げたものを、ちゃんと(国に)ぶつける。現場の状況と制度を運用しているところで かい離がある。制度を扱っている人、決める人、そこに(声が)行かない限りは意味がない。」

“反転攻勢” 地域の魅力を再発見!

緊急事態宣言の延期が確実視されていた4月下旬。

溝畑さんは、さらなる一手を打とうとしていました。
国内の観光客が戻ってくる「回復期I」。これを、ただの回復ではなく「反転攻勢」を仕掛ける時期にしたいと考えていたのです。

大阪観光局 局長 溝畑宏さん
「今度よみがえる時には、今までと違った新しい魅力を身につけて、力をつけて反転攻勢すると。1発殴られたら10発殴り返してやる気持ちですよね。」

新たな大阪の魅力をどう生み出すか。
溝畑さんが今取り組んでいるのが、“知る人ぞ知る”観光地の掘り起こしです。

この日 訪れたのは、大阪府と奈良県の県境にある柏原市。
豊かな自然が楽しめる全長16キロのサイクリングロードがあります。道沿いには、明治時代の面影をしのばせる古い町並み。

そして、100年以上の歴史を持つワイナリーなどもあります。

これまで、大阪の都市部を中心にインバウンドを推し進めてきた溝畑さん。
郊外の魅力を掘り起こすことで、新たな需要を呼び起こそうとしたのです。

こうした観光地をSNSで発信する際にも、溝畑流が。
地域の顔となる人物を全面に押し出す動画の制作です。

大阪観光局 局長 溝畑宏さん
「ワインの歴史、会社の歴史、このあたりを話していただけますか?」

ワイナリー経営者
「来てもらったらびっくりするようなワイン用のブドウもなっています。」

堺市 ハニワ部長
「みなさん、こんにちは~。」

柏原市以外にも20か所以上の地域を紹介。時には、関西人らしいウィットに富んだ内容も盛り込みます。

堺市 ハニワ部長
「1600歳でございます。1600年の間、古墳の中でステイホームしていましたので。」

大阪観光局 局長 溝畑宏さん
「パワースポットをもっともっと掘り起こそう。意外と大阪市以外の所に宝物があるかもしれないし、大阪に来ていただく方に、商品棚が増えることになる。」

“大阪パワー” ピンチをチャンスに!

パワフルな大阪の人たちの力でピンチを乗り切ろうという取り組みも始めています。

商店街の店主たちに協力を仰ぎ、制作したポスター。コロナと闘う今の気持ちを、一人一人に寄せてもらいました。

大阪観光局 局長 溝畑宏さん
「あれ いいでしょ。『絶対負けへん』これいいでしょ、この言葉が。このあたりがね、お二人のパワー。大阪のパワー。」

“We are OSAKA”と名付けられたこのキャンペーン。地域が一丸となって難局に立ち向かう機運を作るのがねらいです。


溝畑さんがこうした取り組みの大切さを実感したのは、東日本大震災の経験でした。
当時、観光庁長官だった溝畑さんは、全国に広がる自粛ムードへの対応に苦慮していました。

観光庁長官(当時) 溝畑宏さん
「自粛というなかで経済を萎縮させずに、積極的な観光における活動をしていただく。」

閉塞感を打ち破ろうと始めたのが「がんばろう!日本」と銘打ったキャンペーンです。
溝畑さんは、今回も気持ちを一つにすることで地域の観光が より力強く復活すると考えています。

大阪観光局 局長 溝畑宏さん
「今回 絆が出来たことによって、『何か一緒にやろうよ』というのが自然にできるようになったのが“ピンチはチャンス”だと思っている。“We are OSAKA” これをワンワードに、ワンチームになっていく。すごい大きなチャンスやし、これを次に生かしていくのが僕らの仕事やと思いますね。」

“エキナカ” 仕掛け人に聞く 今後の一手

武田:きょう、東京や大阪などを除く、合わせて39県で緊急事態宣言が解除されることが決まりました。今後 段階的に経済活動が再開されることになっていきますが、都道府県をまたぐ移動を控えることが求められる中、どうすれば観光は再生できるんでしょうか。きょうのゲストは鎌田由美子さんです。よろしくお願いします。

ゲスト 鎌田由美子さん(株式会社ONE・GLOCAL 代表)

鎌田さん:よろしくお願いします。

武田:およそ20年前、JR東日本でエキナカ事業を立ち上げ、電車の乗り降りのためだけだった駅構内を魅力的なショッピングの場へと生まれ変わらせました。その鎌田さん、復活のシナリオなんですけれども、まず、「半年間は“止血” ワクチンが開発されるまでは苦闘つづく」ということですけれども、インバウンドが激減する中で、どう備えていけばいいんでしょうか。

鎌田さん:私自身、3月の末にイギリスから帰国しまして、今回 日本だけでなく、世界中の傷み方がひどいということを痛感しています。この“止血”というのは、とにかく今は経費を削減しながら生き長らえる、耐える時期なのではないかというふうに感じています。時間軸も、星野さんが先ほどおっしゃられていたように、やはり観光をまず地元から、そして国内の観光客、海外に関しては やはり1年半はかかるのではないかというふうに感じております。また、自粛が解除されても、また第2波が来れば経済は元気をなくします。ですので、営業をするにしても、以前の半分の売上で維持できるような効率化も必要なのではないかと思っております。

武田:何とか耐えしのいだ後に、何が来るか。「地方にとってチャンスがやってくる」。これまで東京などの大都市が地方のけん引役になってきたわけですけれども、今度は、宣言が先に解除された地方がチャンスを得て、対等な立場になり得るということなんですね。

鎌田さん:非常に厳しい時期ではありますけれども、今まで大都市の一極集中が変わらなかったと言われています。そういった面では、人の面で今回は地方にとってチャンスだと思っています。観光にとどまらず、地方にとって非常にチャンス。これは、地方に定住することの大きな課題に、仕事と教育という問題がありました。急激なテレワークのあと、出勤とテレワークの併用というのは今後も増えていくと思っています。また、いろいろな業界で副業が増えてくるかもしれません。例えば、流通でも運輸でも飲食でも旅行でも、雇用は維持したくても仕事の量が戻るのにまだまだ時間がかかる。副業も、これまでの企業が許可をするというような形から「推奨」に変わって、雇用を維持しながら、給料と働く時間が半減するということも考えられます。そういった中、定住という意味でニューノーマルの時代には地方に住み、数日は農家でも働き、都心企業でも働くというような“半サラ半農”のようなワークスタイルが生まれてくるかもしれないと思っています。

これは、今までのように趣味で何かを週末にやるというスタイルではなく、両方が自分たちの生活の糧であるというような形だと思います。さらに、教育もオンライン教育が充実してきていますし、教育機会の格差是正もされていますので、この2つがクリアできれば家族で定住することも可能になるのではないかと思っています。また、その人材が観光人材にも成長していくと思っています。

武田:価値観の変化で、地域を支える人が増えるのではないかというお話ですね。そして、今あらゆる産業がダメージを受けている中で、「“観光復活”こそが経済再生をもたらす」ということです。

こちらの図をご覧ください。実は一口に観光業といっても、宿泊業や飲食業だけでなくて、農林水産業や運輸業など多岐にわたる業種が関係しているわけです。さらに、その波及効果は55.2兆円もの規模に上りまして、雇用誘発効果も472万人に上るというんですね。観光を立て直すことが多くの業種の回復につながるということなんですが、これはどういうふうに取り組んでいけばいいのでしょうか。

鎌田さん:おっしゃるとおり、観光は すそ野が広い産業だと思っています。その観光のポイントとしまして、やはり観光にもサスティナブルな視点が共感を呼んでいきますので、これから さらに“産業観光”と“日常観光”というものをもっと活用できるのではないかと思っています。この2つはどこの地域にもあります。例えば、産業観光は歴史的、文化的な視点からだけではなく、現存する日常のものづくりの視点でも活用ができると思っています。材料も生産の場も見せながら、その中に観光客も入ってきていただく。その中で一緒に楽しんでいただく。例えば、酒蔵、みそ蔵、しょうゆ蔵だけではなく、酒米や大豆畑が広がる景色、そして発酵を中心に、飲食とかいろいろな体験ができる集積があってもいいですし、長野等のワイナリーの集積は観光資源にもなっています。見たことのない地元の魅力は、これから地域に目を向けたときに身近な人にとっても新しい魅力になるんだというふうに感じています。また同時に、強い観光には公共資源の注入と規制緩和が必要だというふうに思っています。国や行政といった公共の投資を使わないと、インフラを触り、景観をよみがえらせることも、マイナスをゼロにするのも難しいですし、移動手段や何かも、これからもっと変わっていくというふうに思っています。

武田:鎌田さん、どうもありがとうございました。

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