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2020年4月16日(木)

新型コロナ フリーランスをどう守るのか

新型コロナ フリーランスをどう守るのか

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、イベント中止や営業自粛が相次ぐ中、舞台の裏方、ジムのインストラクター、ツアーガイドなど、フリーランスとして働く人たちが追い詰められている。緊急事態宣言が出された後、事態はより深刻化。「唯一残っていた仕事もなくなった」「もう生活できない」という悲鳴があがっている。こうした中、少しでも収入を得たいと増えているのがインターネットで単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」だ。仕事は多岐にわたり、スマホアプリで登録すれば誰でも働ける上に、外出自粛で食品デリバリーなどの仕事が急増しているため、もとの仕事がなくなった人たちの“受け皿”にもなっている。一方で、人との接触が多い仕事では、感染したり広げたりするリスクを懸念する声も少なくない。実は、新型ウイルスの感染拡大が続くなかで、日本だけでなく欧米でもこうした人たちの仕事や安全をどう守っていくか大きな議論になっている。今や全国で300万人超に増えてきているとされるフリーランスの人たちをどう守っていくか考える。

出演者

  • 土居丈朗さん (慶應義塾大学 経済学部 教授)
  • 平田麻莉さん (フリーランス協会 代表理事)
  • 武田真一 (キャスター)

収入が激減 補償もなく…厳しい実情

先月、請け負っていた12日分の仕事がすべてキャンセルになった諸江翔大朗さんです。
大学を卒業後、舞台俳優を目指してきた諸江さん。舞台の大道具を作る仕事をフリーランスとして請け負い、生計を立ててきました。

諸江翔大朗さん
「中止になっちゃっているので、全然(仕事に)入れず。どうやって過ごそうかなみたいな。」

外出自粛要請をきっかけに次々と仕事の中止が決まり、収入は激減。契約書を取り交わさず、口約束で請け負っていた諸江さん。キャンセル料などは一切 受け取れませんでした。

諸江翔大朗さん
「それまでに立てていた予定、家賃だとか支払うお金っていうのは、収入が全くないっていう状態になるので、なかなか厳しいですよね。」

少しでも稼ぎを得たいと頼っているのが、スマホアプリでやり取りする料理の配達代行の仕事です。飲食店がアプリを介して配達を依頼。対応できる配達員が、その仕事を請け負います。配達員は、1回ごとに仕事を請け負う個人事業主と見なされています。運営会社は飲食店と配達員から手数料を受け取るという仕組みです。

アプリの運営会社のCEOダラ・コスロシャヒ氏。
これまでにない働き方を提供したいと話していました。

ウーバー ダラ・コスロシャヒCEO
「アプリを使って、いつでも好きなときに働くことができます。配達員はアプリのユーザーで、私たちと雇用関係はありません。」


諸江翔大朗さん
「あっ、鳴りましたね。取ります。」

外出自粛などの影響で、需要が増えている料理の配達代行。1回の配達報酬は300円から500円ほど。配達の距離や天候などによって変動します。1日9時間働いて、収入が6000円に満たない日もあります。

(配達先にて)

諸江翔大朗さん
「玄関先に置きましたら、ノックして去りますので。」

諸江さんの周りには、配達代行の収入に頼る人が増えています。

「聞いてくださいよ。僕、ホテルのレストランの仕事なくなっちゃったんですよ。コロナの影響ですね。」

「つらー。」

諸江翔大朗さん
「やっても確実に、この稼ぎがあるっていう保証はない。これを2か月、3か月ずっとやれるかって言われると、僕どうしたらいいんだって頭をよぎります。」


仕事を失ったフリーランス。直面しているのが休業補償の問題です。
都内在住の加奈子さんです。
いまはアプリを通じて、単発でベビーシッターの仕事を請け負っています。

加奈子さん
「お部屋で絵本の読み聞かせをしてくださいっていう、ご夫婦が在宅ワークの方のシッターです。」

加奈子さんの本業はスポーツインストラクターです。5つのジムと契約しています。しかし、緊急事態宣言が出された後、すべての仕事がキャンセルとなりました。

ジムとの間で曜日と時間を取り決め、働いていた加奈子さん。ジムが営業休止を決めた場合には、何らかの補償があると考えていました。しかし、契約書を読み返すと、フリーランスには休業補償がまったくないことを知りました。

加奈子さん
「フリーランスが弱いところだったなって、今すごい痛感しているんですけど。」

企業などで雇用された人が受けられる雇用保険や労災保険といった社会保障は、フリーランスには適用されないことがほとんどです。その場合、仕事を打ち切られたり、けがや病気をしても支援を受けられないのです。

加奈子さん
「一応、雇ってもらっているっていう認識があります、私の中で。『あ、補償ないんだ』っていう驚きと、残念な気持ちになりました。」


今回 思い知らされた、みずからの立場の弱さ。戸惑う声が広がっています。

ヨガインストラクター
「今回のようなことがあったときに、完全に切り捨てられちゃうのねって。」

「私たちインストラクターがいないと成り立たない会社なのに、運命共同体とみていないような扱い。(仕事に)すごく誇りを持っているんですけど、認められないんだなって実感させられました。」

感染リスクがあっても…世界で共通の悩み

すでに感染者が60万人を超えるアメリカでも、共通の悩みが浮かび上がってきています。
自家用車を使って客を運ぶ、フリーランスのドライバー。外出が制限される中でも、地域に欠かせない移動手段になっています。いま、こうした人たちの間で感染する人が現れ、すでに亡くなった人も出ています。

ドライバーのデイブ・トマッソンさんです。
本業はミュージシャンですが、感染拡大の影響で収入はゼロに。いまはドライバーの収入が頼りです。

デイブ・トマッソンさん
「後部座席とハンドルは特に念入りに消毒しています。」

「くしゃみやせきをしている人には利用を控えてもらうようにしています。新型コロナウイルスの感染力はとてつもないですからね。」


自分が感染することで、周囲に感染を広げてしまうことを危惧する人もいます。
フロリダ州のクリスティン・サイサーさんです。
シングルマザーとして11歳と5歳の娘を育てています。

クリスティン・サイサーさん
「子どもたちは私のすべてです。」

本業はレストランのウエイトレスですが、外出自粛の影響で収入は減り、ドライバーの稼ぎでしのぐしかありません。

クリスティン・サイサーさん
「できることなら、感染のリスクがあるドライバーの仕事はやめたい。もし私が感染したら、子どもたちを危険にさらすことになりますし、子どもたちは学校に行きます。感染してしまうと、私だけの問題では済まないのです。」


先月、カリフォルニア州で開かれた記者会見。
「自分たちには傷病休暇がなく 働かざるを得ない」と訴えました。

ドライバー ニック・ヘイトさん
「私たちが感染するのは時間の問題です。今ではもう『もしも感染したら』ではなく、『いつ感染するのか』ということなのです。」

ドライバー サオリ・オオカワさん
「他の重要な仕事をしている人たちは必要な支援を受けています。私たちも社会に不可欠な仕事をしているのに、なぜ危険にさらされるのでしょうか。」

収入が激減 国の支援は届くのか

感染拡大によって、不安定な暮らしを強いられるフリーランスの人たち。

安倍首相
「個人事業主に100万円 支給します。」

先週、国が発表した緊急経済対策。
収入が半分以下に減ったフリーランスの人たちに対しては、100万円を上限とする給付金を設けるなどの支援策を打ち出しました。

しかし「制度が複雑だ」という声や「いつもらえるのか」という不安の声も上がっています。

「今いろんな情報が出るなかで自分がどれに該当するのだろうか、ちょっとまだ、いろいろ見た中で、これだって、よくわかってない。」

「私たちのような、月によって(報酬に)変動がある仕事にすると、もらえる額がもらえない不安が出てくる。」

舞台の大道具を作る仕事がなくなった諸江さん。
自分は支給対象になるのか不安を感じています。暮らしを支えるため、配達代行で収入を補っていたことから、結果的に収入が半分にはなっていないのです。

諸江翔大朗さん
「悲しいかな、(仕事を)やってしまったがために(給付対象になるか)ちょっと微妙な感じ。逆に(仕事を)やらなかったら給付金もらえるまでに餓死しちゃいます。」

フリーランスの人たちを支えるために何ができるのか。
詳しく見ていきます。

収入が激減 求められる支援は?

武田:先ほど、緊急事態宣言が全国に拡大することが決まりました。不安定な立場にあるフリーランスの人は、より苦しい状況に追い込まれていくことも考えられます。今月の7日に政府が打ち出した緊急経済対策。フリーランスに対しては、こんな支援が打ち出されています。
まず1つ目。事業収入が前年の同じ月に比べて50%以下になった方は、上限を100万円として不足分を受け取ることができます。

そして、先ほど安倍総理大臣は、全国すべての国民の皆さまを対象に一律1人当たり10万円の給付を行う方向で、与党で再度検討を行っていただくと述べました。収入が減少した世帯への30万円の給付にかわるものとしています。

ご自身もフリーランスで、今回の経済対策を策定するに当たって、政府のヒアリングも受けたという平田さん。平田さんは、今回の対策をどのようにご覧になっていますか。

ゲスト 平田麻莉さん(フリーランス協会 代表理事)

平田さん:多くのフリーランスや事業者の方々が声を上げてくださったおかげで、日本の歴史上、初めて事業者向けの給付金が実現しました。このこと自体は画期的だと思っていますし、諸外国と比べても、金額的にも世界最大規模の事業者向け給付というふうになっています。ただ、それでもまだ必要な情報が届いていない方々もいらっしゃいますので、しっかりそれを広報していく必要があるなというふうに思っています。

武田:取材していましても、フリーランスの方々から、今回の対策について疑問や戸惑いの声も聞かれます。例えば、前年度の収入の50%以下で給付が受けられるということなんですけれども、その前年度の収入を証明できないという声に対して、平田さんは「確定申告をしていれば大丈夫」ということなんですが、これはどういうことでしょうか。

平田さん:支援策を制度設計するに当たって、フリーランスが契約実態や見込み収入の減収を証明できないという課題を政府にお伝えしてきていました。というのも、フリーランスは口約束が横行していまして、発注もキャンセルも電話1本で済まされてしまうということが往々にしてあります。そのため、契約書ではない確定申告という形で証明できるように調整をいただきました。具体的には2019年の確定申告実績と、ことしに関しては、形式を問わない帳簿という形で減収を証明するということになります。

武田:そして、申請が補正予算の成立から1週間程度、早ければ大型連休明けという声もありますけれども、それまで待てないという声もあるんですよ。これはどうすればいいんでしょうか。

平田さん:今、補正予算も一律30万円という話が10万円になってしまうというか、いいことではあるんですけれども、それによって少し成立が遅れるという話もありまして。いろいろと意見はあると思うんですけれども、一刻も早く困っている方に支援金が行き渡るように、速やかに補正予算を成立させるということを与野党議員の方々にもご協力いただけるといいのかなと思います。今、本当に困っている方に関しては、この持続化給付金の前に出ている施策として、社会福祉協議会のほうで提供している生活福祉貸し付け制度もありますので、そちらは最大4か月で80万円が受け取れる制度になっていますので、こういったものも併用しながら しのいでいただければというふうに思います。

武田:こうした支援策に加えて、さらに必要なことがあるとすれば、どんなことでしょう。

平田さん:直近で言うと、事業者の方々が非常に困っていらっしゃるのが家賃の支払いということかと思います。そこの固定費の重みで、なかなか休業できないという方も多いと思いますので、自治体によってはそこの補助を始めている自治体はありますけれども、そういったことを別に検討いただけるといいのかなと思います。

武田:フリーランスの方々は今や社会に欠かせない存在になっています。フリーランスを代表して今、いちばん言いたいことはどのようなことでしょうか。最後に、ひと言お願いします。

平田さん:フリーランスは事業者なので、自己責任なんじゃないかということもあるかと思うんですけれども、われわれはもちろんリスクを織り込んだ事業者の自負はあるんですが、今回の緊急事態というのは個人が抱えられるリスクの範ちゅうを超えていると思いますので、こういった形で救済措置がとられるということは非常によいことだと思いますし、そこに対して、皆さんもご理解をいただければなというふうに思います。

武田:ありがとうございました。
皆さんに対して、どんな支援があるのかということなんですけれども、給付金や無利子・無担保の融資などについては、「NHK新型コロナウイルス特設サイト」でもご紹介しています。

さて、このフリーランスの人たちの中には、ジムのインストラクターや美容師、さまざまな教室の先生など、特定の企業のもとで働いている人たちもいます。そうした人たちの間で今、企業への責任を求める声が上がっています。

問われる企業の責任

先週金曜日。
配達代行の人たちが開いた緊急記者会見。

ウーバーイーツユニオン 記者会見
「感染予防のための措置をしっかりとってほしい。」

アプリの運営会社に対し、配達員へマスクや消毒液を配布するよう訴えました。

土屋俊明さん
「人の生き死ににかかわる問題ですので、まず最低限、企業として果たすべき役割を果たしてほしい。」

記者会見に参加した、土屋俊明さんです。就職氷河期に大学を卒業した後、非正規の仕事を転々としてきました。1年前、心と体の調子を崩したことから、働く時間を調整しやすい配達代行の仕事を始めました。

土屋俊明さん
「半端者と見られてきたわけですけど、いやそんなことないっすよ、人間です。その頭数に入れてください。」

土屋さんが自分の立場の不安定さに気付いたのは、去年7月、転倒事故を起こし全治2週間のけがを負ったときのことでした。決められた手続きに従い、アプリの運営会社に事故を報告したところ、思いもよらぬ回答が返ってきました。
次に事故を起こした場合はアプリへの登録を永久に停止するとして、働けなくなる可能性を通告されたのです。

土屋俊明さん
「これでもう仕事できなくなっちゃうのって。すごい大ざっぱなやり取りで、しかもこれで済んでしまうんだって。」

先月、アプリの運営会社から、土屋さんたち配達員のもとに通知が届きました。
配達員が感染者や濃厚接触者となって当局から隔離を求められた場合、最大14日間の経済的支援を行うという内容です。

企業の責任について、どう考えるのか。アプリの運営会社はNHKの取材に対し、書面で回答しました。

ウーバーの回答
“配達パートナーは個人事業主であり 稼働するかどうかは個々の配達パートナーの判断に委ねられます。今後も多くの配達パートナーが価値を感じてくださっているフレキシブルさを維持しながら 同時にこの個人事業主という働き方の質と安全性を高めるために 日々取り組んでまいります”


「力を合わせよう 私たちは絶対に負けない」

フリーランスに対する企業の責任を、法律で明確にしようという動きも出ています。
ことし1月、アメリカのカリフォルニア州でフリーランスを対象にした新たな法律が施行されました。

カリフォルニア州 下院議員
「働き手に必要な保護を与えない企業は一掃されるべき。」

これまで、企業側から「個人事業主」と位置づけられてきたフリーランス。

新たな法律では、フリーランスを一部の例外を除いて「従業員」として保護。企業に社会保障費の負担を義務づけたのです。

法律が適切に運用されているのかを監督するサンフランシスコの当局は、次のように指摘します。

サンフランシスコ市 管理委員会 ゴードン・マール氏
「パンデミックが起きているこの状況で、ドライバーたちは必要不可欠で重要な役割を果たしています。他の雇用された従業員たちと同じように、有給休暇や失業保険・傷害保険などをもらえるようにすべき。」

日本でも、さまざまな分野で活躍する人が増えているフリーランス。専門家は、そうした実態にあった社会保障制度の整備を急ぐ必要があると指摘します。

早稲田大学 鈴木俊晴准教授
「今の社会保障ですと、『雇用』か『雇用じゃないか』によって、保護の程度が大きく異なる形になっていますので、(フリーランスでも)企業に雇用されている労働者ほど保護することはなくても、保護の必要性に応じて、労働者じゃないけれども、一定程度の保護を及ぼす、そういう発想を取り入れるべきではないかと。」

フリーランスの人たちが安心して働ける仕組みを、どう作るのか。
スタジオで考えます。

収入が激減 求められる支援は?

武田:経済政策に詳しい土居さんに伺います。土居さんは、今回のこの新型コロナウイルス感染拡大はフリーランスのどんな課題を浮き彫りにしたとお考えでしょうか。

ゲスト 土居丈朗さん(慶應義塾大学 経済学部 教授)

土居さん:番組のVTRにもありましたけれども、やはりセーフティーネットがなかったということが改めて浮き彫りになったと思います。所得が減ったということも自分で証明するしかない。本来ならば、納税している、社会保険料を払っているということであれば、政府がその情報を持ってきて、きちんと個人情報を保護した上で名寄せすれば、この人は去年いくら稼いだかということが分かるはずなんですが、残念ながら、そういう仕組みがうまく成り立っていない。先ほどもありましたけれども、雇用保険に入れないとか、そういうような形で、なぜかフリーランスになっただけでセーフティネットから漏れてしまうと。

武田:世界でもフリーランスへの支援経済対策の焦点になっていますけど、今、日本に何が求められるのか。土居さんは、「プッシュ型の支援」そして、「職業訓練」というキーワードを挙げていらっしゃいます。これは、それぞれどういうことでしょうか。

土居さん:欧米、特にヨーロッパは「プッシュ型」、つまり政府の側から、困った人に対して働きかけをするという形の支援を積極的に活用しています。残念ながら、わが国ではこれはないものだと思います。例えば、フランスの場合には、毎月の収入の情報が政府の機関に入ってくるわけですけれども、ある月にぱったりと収入がなくなった方がおられたときに、政府の側から、「もしかして、あなたは失業しておられませんか。」「もし失業しているなら、こういう手続きを踏めばきちんと支給ができますよ、支援ができますよ」というようなメールなどの連絡が政府の側からあると。こういうようなことが、残念ながら、わが国には整えられていないということがまず1つあるということです。

武田:そして、「職業訓練」とありますがこちらは。

土居さん:新型コロナで非常に不幸なことに、一時的に仕事を休まないといけないというような状況で、なかなか収入が断たれて苦しい状況ではあるんですけれども、コロナが終息して、来る日に新たな仕事がもらえる、新たな仕事につけるようなときに、しっかりとスキルアップして職につけるようにするためには、同じ仕事をするにしても高い生産性を発揮できるような働き方を、レベルアップしていくようなことを、むしろ仕事がないときにこそ臥薪嘗胆(がしんしょうたん)、頑張るということが大事じゃないかと。

武田:それは、その人の努力ではなくて、職業訓練が受けられるような支援をするということですね。

土居さん:そうですね。お金がなくて職業訓練も受けられないということではいけませんので、そこを政府も支援をしていくということが大事だと思います。

武田:リーマンショックのときは、フリーランスというのは支援の対象外だったわけですけれども、今回初めて税金を投じて救済するということになりました。今、改めて社会全体で共有すべき課題はどういうことでしょうか。

土居さん:確かに、雇われている人は雇用保険に入れて、毎月、給料から雇用保険料を払っているということなんですけれども、保険料を払っていない人を排除して、果たして、それで国が成り立つだろうかというと、私はそうじゃないと思います。これから、ますますフリーランス的な働き方というのは増えていきますから、そういう働き方にもしっかりセーフティーネットがあるというような仕組みを作る。残念ながら、その備えは2010年代できていませんでしたから、今のところ、その付けは税金できちんと助けてあげるということで、その次なる機会に新たなセーフティーネットをどういうふうに構築していけばいいのかということが、いま考えていくべきではないかと思います。

武田:土居さん、ありがとうございました。