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2020年2月25日(火)

あなたのニュースで社会が変わる ~信頼のジャーナリズム~

あなたのニュースで社会が変わる ~信頼のジャーナリズム~

今、ネットの爆発的な普及の陰で、新聞をはじめとした地域メディアが危機に直面している。発行部数と広告収入の減少により、全国で廃刊や休刊する新聞が相次いでいるのだ。こうした中、読者や市民と直接結びき、疑問や悩みを取材する「読者起点の報道」に活路を見いだそうという動きが始まっている。報じるだけでなく、読者とともに地域の課題解決を目指す「課題解決型ジャーナリズム」。この新たな報道のかたちは、メディアへの人々の信頼を取り戻すカギになるのか?地域メディアの当事者や専門家たちと一緒に、これからの地域メディアのあり方を考える。

出演者

  • 瀬尾傑さん (スマートニュース メディア研究所 所長)
  • 古田大輔さん (元BuzzFeed Japan 編集長)
  • 坂本信博さん (西日本新聞 記者)
  • 大井美夏子さん (社会福祉士 市民の視点でネットメディアを運営)
  • 武田真一 (キャスター)

“ニュース砂漠”で暮らしに何が?

アメリカ南東部のノースカロライナ州。
全米に広がるニュース砂漠があります。

人口13万人の郡で、唯一の新聞社となったロブソニアン。
経営難から、かつて18人いた記者は6人に減りました。
ほとんどがキャリア2~3年の若い記者です。

「どうにかして、あすの紙面を埋めないといけない。ジェシカ、何かないのかい?」

「警察に電話で問い合わせてみます。今朝はニュースがなかったんです。」

「タングルウッドも調べたけど、だめだったよ。クリスマスツリーの話もだめ。」

ロブソニアン紙 ドニ―・ダグラス編集長
「かつては1つの記事を3人の編集者でチェックしていましたが、今では2人です。週末は誰もチェックできないこともあります。誤植が増えました。取材の方法も変わりました。自分たちの足で稼ぐ取材が減りました。」

6年前、メディアの存在が地域にもたらす影響を象徴する出来事が起きました。
ロブソニアンがある隣の郡には、記者40人がいる比較的大きな新聞社があります。この郡に鶏肉処理工場の進出計画が持ち上がり、新聞社は170を超える記事で手厚く報じました。内容は、雇用を生むメリットと環境汚染が起きるかもしれないリスクの両方を伝えるものでした。報道を受けて住民の間に進出の是非を巡る論争が起きました。

ニュースキャスター
「鶏肉処理工場建設に対して、集会が開かれました。」

「緑のシャツは賛成派、赤のシャツは反対派です。」

反対の声が高まり、最終的に工場は進出を断念。
その後、この工場がロブソニアンのある郡への進出を計画します。それに対して、ロブソニアンが掲載した記事は隣の郡の7分の1ほど。雇用を生むメリットに注目し、誘致を促すものばかりでした。

取材班
「工場建設のことを新聞で読んだことがありますか?」

「いいえ。」

取材班
「工場があることも知らない?」

「知りません。」

取材班
「聞いたこともない?」

「ないです。」

「フェイスブックで知りたい情報は得られる。新聞と同じよ。」

工場は3年前に完成。
ロブソニアンがある郡では、市民の間に議論は生まれませんでした。


“ニュース砂漠”が広がるとどうなるのか…。

武田:改めて、瀬尾さんはこの要因をどういうふうにお考えですか。

ゲスト瀬尾傑さん(スマートニュース メディア研究所 所長)

瀬尾さん:アメリカのローカルメディアは、ある意味、日本以上にはるかに追い込まれているわけですよ。やっぱり数が多い。日本みたいに、1県1紙のように対象になってないので競争が激しい。あるいは、宅配制度も弱いということがある。そういう意味で言うと、日本以上に広告収入に依存している。そういった経営はすごく厳しくて、すでに、とう汰も始まっています。

武田:そういう地域メディアがどんどん衰退していく中で、何かアメリカで起きている問題はあるのでしょうか。

ゲスト古田大輔さん(元BuzzFeed Japan 編集長)

古田さん:もういろんな研究がアメリカではなされていて、地域メディアがなくなったところの影響で特に深刻視されているのが、例えば投票率が下がる。選挙で候補者も減っていく。みんな、その地域の政治に対する関心を失っていくんですよね。それが大きな影響だと言われています。

武田:実際にそういうことが起きている…。

古田さん:起きていると。そこで考えたいのが、実は日本でも今、候補者がいないという問題が言われていますよね。地方選挙のたびに投票にならない、地方議会が維持できないと。実は、これは日本においてはニュースの砂漠というのが、もうずっと昔から起こっていたことの証左なのではないのかなと僕は思うんですね。日本って、1,800の自治体を116紙がカバーしている。つまり、日本においては地域情報の取材というのは、そもそもずっと昔から足りていないんですよね。

密着!地方新聞の舞台裏

読者に必要とされる新聞になるため、何かできないか。
西日本新聞では、2年前から新たな取り組みを始めました。
「あなたの特命取材班」通称「あな特」。
記者と読者が共に作る、新しい報道だといいます。

これまでマスメディアは、行政や警察などの当局取材や記者による調査報道をもとに、何を知らせるべきかを判断して報じてきました。
一方「あな特」では、記者は読者から寄せられた疑問や悩み事から取材をスタート。その経緯や分かった事実を行政や企業にもぶつけ、取材を深めていきます。“読者の声から始まる調査報道”です。

西日本新聞 あなたの特命取材班 坂本信博さん
「課題設定権を読者に半ば委ねる形で、読者が知りたいことに答えて、単に知りたいに答えるだけではなく、新聞社の取材力を発揮した調査報道で課題が解決していく。そういう課題解決型の調査報道を通して、新聞のファンを増やして、ジャーナリズムへの信頼を稼ぐということが、今われわれがやるべきことなんじゃないかな。」

読者と記者をつなぐのが通信アプリ。
読者からの情報や意見には記者全員がアクセスでき、担当は早い者勝ちで決まります。

テーマに関心を持った記者が読者に個別に連絡し、取材を始めます。

この日も読者から投稿がありました。子どもの医療電話相談「#8000」についてです。
早速、記者が情報を寄せてくれた読者のもとに駆けつけます。

“電話を何度かけてもつながらない”
“つながって症状を伝えても自分で判断してほしいと繰り返された”
運営している自治体への取材だけでは気付けなかった事実です。

続けて、読者の声を受けて行政に取材すると、相談が増える中、電話回線が足りず、体制が不十分な場合が多いことが判明。その実態を記事にしました。

投稿を寄せた読者
「『あな特』の場合は、市民がそれぞれ意見を言ったところを掘り下げて調べてくれるので、ちょっと切り口が違うというか。下から上がってきたようなものなのかな。より信頼はありますね。」

読者が発信し、記者がそれを深掘りすることで身近な課題を解決する。
例えば、高速バスに障害者優先席が設置されたり、携帯電話の決済を不正利用した詐欺の補償制度も始まりました。

読者からは「あな特」の存在に感謝する声が寄せられるようになっています。

“声を届けてくれた西日本新聞さんのおかげです。”
“一人の訴えではどうにもできなかった”

開始から2年、「あな特」に登録した人は1万4,000人になりました。

西日本新聞 あなたの特命取材班 坂本信博さん
「『こういう企画を新聞がやるのは初めてです』とか、『こんな企画を待ってました』という声が読者から来まして、我々、新聞は斜陽産業だみたいなことを思い込んでいましたけども、まだまだ我々にしかできない仕事がたくさんあって、しかも地域に根ざした地方紙の記者だからこそできる仕事がたくさんある。」


去年からは、地方新聞社同士の連携も始まりました。

それぞれの地域の声を共有することで、全国に共通する課題の解決を目指しています。

西日本新聞 あなたの特命取材班 坂本信博さん
「地域最強のメディア同士が連携すれば、そこに読者という最大の見方が加われば、かつてない質量ともに面白い報道ができるのではないかなと感じております。」

これまではライバル同士、取材した情報を共有するなど考えられなかったことでした。
しかし、沖縄から北海道までおよそ20社が加わり、全国をカバーするネットワークが生まれています。


その一つ、去年参加した岩手日報です。

記者たちが情報共有をするのは、こちらのチャットシステム。90名の記者やデスクが会社の垣根を越え、一日およそ10件の記事や情報を直接やり取りしています。

岩手日報 報道部 太田代剛さん
「これはこっち(岩手日報)でもいけそうな感じがするね。」

この日、西日本新聞から届いたのは“子連れで議会を傍聴した時に退席を求められた読者の体験をもとにした記事”です。
早速、西日本新聞とテレビ会議でつなぎ、記事を書いた経緯を詳しく聞きます。

西日本新聞
「お母さんが議会によって対応だったり、設備だったりとかがばらばらで、そういう現状を知ってもらいたいという話を『あな特』でいただいて。」

岩手日報
「規則が決まっていないところは、議長さんが職権でその都度決めている感じ?」

岩手にも、九州の読者と同じような疑問を持つ人がいるのではないか。
記者はまず、子連れで議会を傍聴することについて子育て世代の母親に話を聞きます。

読者
「(子連れ傍聴が)ウエルカムな状態を作ってもらえたら、すばらしいのかな、やる気あるなと感じるかな。子育て(世代)に対して。」

さらに、県議会にも取材。

記者
「福岡の西日本新聞さんの『子連れ傍聴』について取材した記事ですけども、今、議会でそういった議論とかは…。」

岩手県議会議員
「まずは『開かれた議会』というところ、誰もが来られる場所を作るべきだと。」

2日後、連携から生まれた記事は、西日本新聞の記事と一緒に大きく掲載されました。

岩手日報 記者 小向里恵子さん
「市民の声を聞くことで、県民はこういう疑問をもっているんだなっていう。新しい取材なのかなって。新聞記者だからこそできることもあるかもしれない。」


西日本新聞 あなたの特命取材班 坂本信博さん
「書いた記事が読者に刺さっているのか、読者に読まれているのかという手応えが何となく感じにくい中で、地域の最強のローカルメディア同士が連携して、より深い調査報道ができれば、その地域だけではなくて日本中の読者に、よりよい報道を届けることができると思っています。」

読者に必要とされるメディアとは?

武田:西日本新聞の坂本さんの「記事が読者に刺さらない」という言葉にすごく共感するところがあるんですね。でも、なぜそういうことになるのか。

ゲスト坂本信博さん(西日本新聞記者)

坂本さん:これまで、市民が知るべきだというニュースと記者が知らせたいというニュースに軸を置いてきました。一方で、読者が知りたいということに応えられてなかったんじゃないかなというのは、最近感じるようになっていまして。

武田:何がそうさせたのしょうか。

坂本さん:読まれているのかどうか、反響がまずなかなかないと。

古田さん:昔、マスメディアしかなかった時代は、情報の流通は基本的にマスメディアを通してだったわけですよね。ほかには、そんなになかったわけです。でもインターネットの時代になって、誰でも1億人のインターネットユーザーが自由に発信できるし、受信できるし、拡散できるようになったら、情報の数が膨大になってしまったわけですよね。そうすると、その中でマスメディアが担ってる情報の率なんて、本当にこれっぽっちになっちゃったわけです。

武田:大井さんにお伺いしたいのは、読者や視聴者の側としてはやっぱりそんな感じなんですか。

ゲスト大井美夏子さん(社会福祉士 市民の視点でネットメディアを運営)

大井さん:そうですね…はい。

武田:こんなテレビとか新聞なんか要らないよと、もうネットがあるからという感じ?

大井さん:「知りたい」というものと、出されたものが…。例えば地方でしたら、地域に関する自分たちが知りたいと思うところの情報が本当に少ないですし。だから、そういった「知りたい」っていうものをもっと出してもらって深めてもらったら、やっぱりこれは買いたいなとか、応援したいなという気持ちになるんじゃないかなと思うのですが。

武田:欲しい情報がない。何かここでギャップが生じて、メディアの不信というものが、やっぱり背景にあるのではないかという気もするんですけれども。例えば、最も信頼しているメディアとしては、新聞やNHKテレビというのは相変わらずある程度は高いんですけれども、徐々に信頼度は下がってきているというようなデータもあります。

坂本さん:そこで何か手を打てないかということで始めたのが「あなたの特命取材班」なんですけども。読者と記者が直接つながることで読者の知りたいことを吸い上げて、しかも双方向でやり取りできるので、一緒に取材に協力して頂く形で、いい報道を作っていこうという取り組みを始めたところです。その手法も可視化していくというのをこだわっていまして。読者からこういう調査依頼があって、ここで調べたらこうで、そのあと調べたらこうで、という手法を見せていくことで信頼を高めていきたいというねらいもあります。

古田さん:今まさにおっしゃった取材の過程も、どういうふうに取材したのかということも開示することで信頼性を担保しようとする手法というのが、今後ますます重要になると思います。

瀬尾さん:僕、「あな特」ですごいなと思うことが2つあって。1つは、読者から課題をもらうことによって、いわゆる読者とエンゲージメントができているということなんですね。要するに、読者をいかに巻き込むかというところだと思うんですけども、そこを「あな特」は
達成していると思うんですね。2つ目は、それをネットワークにしようとしていることなんです。単独でやるのではなくて、いろんな力を借りてやるというのがすごく大事なことだと思うんですね。

坂本さん:以前だと、会社と会社でシステムがつながってなければ記事のやり取りはできなかったんですけども、デジタルとかネットの発達のおかげで、よりやりやすくなってきてるというのは間違いなくあると思います。

大井さん:紙のメディアが駄目だというお話もずっとあったと思うんですが、じゃあ新聞社の方でも「うちの社にはこういった得意分野の記者がいますよ」というものをどんどんアピールしていけば、「じゃあその記者が書いた記事を読みたいわ」とか。それをやっていったら、信頼関係というのも生まれてくるんじゃないかなと私は思うんですけど。

瀬尾さん:実は、マスメディアの中にいる記者の方たちというのはすごく取材力もあったり、発信力もあったり、分析力があったりする方もいるわけですよね。それがなかなか今まで日本の新聞社の中から表に出てこなかった。逆に、記者の方も発信できるツールや機会もいっぱいあり、それは別にネットだけじゃないと思うんですよね。例えばイベントでどんどん情報発信するというのもあるかもしれないし。

古田さん:「Journalism as a Service」という言葉があるんですけど、サービスとしてのジャーナリズム。日本語にちょっと訳しづらいんですけど、「貢献するジャーナリズム」みたいな意味があります。自分たちも地域の一員として、その地域の課題と向き合って、じゃあそれをどうポジティブな方向に変えていけるのかっていうことを、そのコミュニティーの人たちと一緒に考えて報じていくというような考え方が広がっていて。信頼性を失ってきた中で、じゃあ我々の価値って何なんだろうというふうに考えた時に、やっぱりこのコミュニティーに貢献しないといけないのではないかという考え方が広がってきてると思うんですよね。

模索する記者たち 地域が求めるニュースとは

新たな試みは、NHKでも始まっています。
北海道十勝地方にある帯広放送局。
4人の記者で34万人が暮らす地域を取材しています。

「NHKの加藤です。」

その一人、加藤誠記者です。
2年前、かつて勤務していた帯広局に再び赴任。取材を続ける中で、視聴者との距離を感じるようになりました。

NHK帯広放送局 加藤誠記者
「ギャップですよね、やっぱり。今までこうだろうなって思ってきたことと。あと実際、市民の方が本当に知りたいとか、悩んでいることって、やっぱり違うっていうか。ずれがあるっていうか。やっぱりもう一回向き合いたいな。」


帯広放送局がおととし12月に始めた、地域の悩みにとことん向き合う「ナットク!とかちCH」。

記者は、視聴者から寄せられる意見や情報をもとに取材。放送やホームページで結果を報告します。反響が届くとすぐに取材し、放送。情報のキャッチボールを繰り返します。異なる意見やアイデアを伝え、課題解決のつなぎ役を目指します。

「交差点の除雪のしかたが悪い」という投稿から始まった放送では、ボランティア、除雪を行う業者、ドライバーの悩みなど11週続けて伝えました。

その後、帯広市は除雪の予算を増額。除雪車を増やしました。

NHK帯広放送局 加藤誠記者
「続けることでいろんな人の考え方が伝えられるし、反響をもらえるし。そうすることによって、いろんな人が共感できる。今までと違う手触り感というか、それは初めての感覚。」


さらに、地域の人のもやっとした思いを記者が直接聞くワークショップ「もやカフェ」を開きました。

参加者
「移住者とつながる場がないっていう。いろんな人とつながる場所が市内にはなくて。」

NHK帯広放送局 佐藤恭孝記者
「会う機会がないですよね。」

参加者
「冬の時期になるとお店が休業してしまうモヤモヤが出て。」

参加者の本音が次々と出ました。

NHK帯広放送局 加藤誠記者
「みなさんのモヤモヤやアイデアを、NHKを使ってもらって、私たちがつなぐ役割になれればと思っています。」

参加者
「ふだん知り合うことのない人たちと話ができて、いろんな悩みとかも共有できて、いい時間になりました。」

「テレビだけじゃなくて、外で直接お話ができる機会が得られて、とてもいいなと。」


翌週。

“もやカフェではとても有意義な時間が過ごせました!!”
“『人口流出』をテーマにされていることが、モヤっとしております”

参加者がSNSで発信してくれた疑問の声。
加藤記者は直接会いに行きました。
地域の情報をネットで発信する野澤一盛さんです。

野澤一盛さん
「人口流出をネガティブに捉えて、まあ流出しているのは事実ですけど、北海道の中でいうと石狩以外は札幌圏以外は、十勝の人口流出が一番少ないんです。むしろ、そこが何でなんだろうみたいな突っ込み方をしてくれたらヒントが生まれるなと。」

NHK帯広放送局 加藤誠記者
「つまり、あれですか、流出って言い方だと…」

野澤一盛さん
「ちょっとネガティブなワードがいっぱい入っていて、なんかすげー外からっていうか。上から目線だなってすごい思ったんですよ。」

NHK帯広放送局 加藤誠記者
「上から目線…。」

前向きな発信を心がけてきた加藤記者にとって意外な指摘でした。
しかし、この意識のズレに、地域の人に役立つための手がかりがあると感じました。

NHK帯広放送局 加藤誠記者
「そうか、そう見えるのか。そう伝えているつもりはないですけど、そう聞こえちゃうわけですね。聞けてよかったです。そういうの。」


2週間後。

「ただいまより、第2回もやカフェを開催いたします。」

会場には、野澤さんの姿が。
地域の課題を一緒に考えたい気持ちが強まったといいます。

野澤一盛さん
「また何かあったら相談してみようとか、これの繰り返しかなって、ちょっと思いましたね。」

市民とつくる“未来のメディア”

武田:西日本新聞やNHKの帯広放送局がやっていることも、より見やすくしていくとか、ただ報じるだけじゃなくて、読者と一緒に社会を変えていくというようなこともできるんじゃないかなというふうに私は感じてるんですけれども。大井さんいかがですか?

大井さん:メディアと市民って、結構区分けしすぎというか。例えばメディアの人や記者の人も、一人のいわゆる家庭人であったり、地域社会の人であったり、いろんな所にいろんな趣味とかでも関わっていると思うんですけど。自分はメディアの人間であり、市民でもある、県民でもある、国民でもあるというような意識で取材してもらったら、その垣根というのも「同じじゃん」じゃないですけど、(同じ)だと思うんですけど、「さあ取材に行きますよ」「メディアですよ」みたいにすると、みんな構えてしまうところもあるので、そういった取材の持ち方がいいんじゃないかなと思います。

武田:一生懸命、仕事をしてるつもりなんですけど、やはりそこのズレですよね。

瀬尾さん:これはメディア側が読者や市民を信じることだと思うんですよね。やっぱり読者をまだ信じ切れていないんじゃないかと思うんですよね。今日議論した中でも出てきた、例えば取材過程の透明性、あるいはコミュニティーメディアを巻き込んでいく、市民に参加してもらうということは、前提として僕らが読者、ユーザー、市民を信じているということなんですよ。その原点に戻るということが僕は大事なんだと思います。

坂本さん:新聞記者は、お金稼ぐのではなくて信頼を稼いでファンを増やすというのが、これからの仕事だと思ってるので。そういう意味では、一緒に連携して作っていくという信頼関係を紡ぎつつ、協力関係も大事にしていくというのが大事なんじゃないかなと思っています。先日、あな特通信員に「あなたにとって『あな特』って何ですか?」ということを聞いたところ、一番多かった答えが「社会参加」だったんですよね。64%の方が「あな特」=「社会参加」だと。つまり、社会への窓だというふうに答えて下さって。それは、われわれもすごく可能性を感じました。

大井さん:でも、やっぱり市民の人はみんな、メディアに期待をしてると思うので。それに応えるために頑張って頂きたいというのは思いますし、メディアが駄目になったら本当に地域がゆがむので、それは心の底から「やって下さい」という感じで応援したいとは思っているんですけど。応援したいと思うような記者の方がどんどん出てほしいなと思います。

武田:頑張りましょう。ありがとうございました。

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