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2020年2月5日(水)

がんを乗り越え、命を授かる ~若い世代のがんと生殖医療最前線~

がんを乗り越え、命を授かる ~若い世代のがんと生殖医療最前線~

「AYA世代」と呼ばれる15歳から39歳の若い世代。毎年その内の2万人以上ががんと診断されている。この世代が、がんの治療と同時に直面するのが、“不妊のリスク”の問題。抗がん剤や放射線治療の副作用で、男女問わず生殖機能に影響が出る場合があるためだ。進行の早いがんの場合、治療は一刻を争う。すぐに治療を始めるのか、それとも、“未来の命”の可能性を守る手立てを探るのか。短い期間に難しい決断が求められる。番組では、25歳の時に乳がんと診断されたタレントの矢方美紀さんなど当事者たちの声を取材。また、医療者の連携によって抗がん剤治療の前に卵子を凍結保存し、子どもを授かることができた患者のケースを通して、医療現場の課題を明らかにする。また、全国に先駆けて地域に医療機関のネットワークを作り、スピーディーな支援を実現した岐阜の取り組みを取材。患者の立場に立って、意思決定を支える臨床心理士の支援の様子など医療現場の最新事情を伝える。

出演者

  • 矢方美紀さん (タレント)
  • 鈴木直さん (聖マリアンナ医科大学教授)
  • 武田真一 (キャスター) 、 高山哲哉 (アナウンサー)

AYA世代のがん患者の悩み あなたはどう考える?

25歳で乳がんの治療を始めた矢方美紀さん。声優の夢を追いかけながらも「20代の内に、子どもを産みたい」と考えていました。がんと診断された当時、“妊娠できる可能性”を残せないか、調べました。

矢方美紀さん
「『卵子凍結』みたいな感じで検索をすると結構いろいろ出てくるので…。」

見つけたのが、「卵子の凍結保存」という方法です。抗がん剤や放射線治療などの副作用で、生殖機能がダメージを受ける場合があります。そのため、治療の前に健康な卵子や精子を取り出し、凍結保存を行います。がんの治療後に、その卵子や精子を使って、妊娠を試みることができるのです。

しかし、大きな壁となったのが、その費用です。総額50万円以上もかかることが分かりました。

矢方美紀さん
「『こんなにお金がかかっちゃうの?』ってすごくびっくりしたのですね。『今月の給料が多分、いくらだから。でも、いくら分は病院に消えちゃうからどうしよう』みたいな。自分が病気になったから、お金も周りに迷惑をかけられないっていうのがあったので…。」

悩んだ末、卵子の凍結保存を諦めた矢方さん。がんの治療に専念することにしました。主治医からは「治療は36歳まで続ける必要があり、その間、妊娠は難しい」と言われています。

矢方美紀さん
「私、本当に子どもが、めっちゃ好きなので。自分で産むってことも選択できなくなっちゃうのかな。今からどうなるか分からない。孤独ですね…。」


がんの治療を優先させるため、卵子を取り出して行う治療を諦めた人もいます。美緒さん(仮名・30代)。3年前、不妊治療のさなか、右胸に進行性の乳がんが見つかりました。

美緒さん
「一番大きいしこりが、2.8センチで…。」

医師から「抗がん剤治療と右胸の全摘出が必要だ」と告げられました。同時に説明を受けたのが“不妊のリスク”です。

美緒さん
「“子どもができないかもしれない”ということに対してすごく、何か恐怖というか。衝撃だけがドンッときたような…。」

抗がん剤治療の開始まで、残された時間は1か月。美緒さんは、医師に受精卵の凍結保存について相談しました。そのためには通常、排卵を誘発する薬を使います。1度に複数の卵子を取り出すことで、妊娠の可能性が高くなるためです。

しかし、思わぬ壁が立ちはだかりました。

美緒さん
「エストロゲン受容体プラス…。」

美緒さんのがんは、女性ホルモンに反応して増殖するタイプのものでした。

美緒さん
「排卵を促す薬を使用すると、乳がんを増殖させてしまうというリスクがあった。」

それでも、それでも受精卵を作る治療を受け、“妊娠の可能性”を残したい。しかし、夫の意見は異なりました。

美緒さん
「主人は『命を危険にさらすくらいだったら、子どもはいなくてもどちらでもいいから治療を優先して欲しい』と。」

結局、誰にも本音を打ち明けることができないまま、美緒さんは受精卵の凍結保存を諦めました。

美緒さん
「私の気持ちとしては自分の命を少し危険にさらすとしても“未来の命”を持てる可能性を残したいというふうに思っていました。“選択肢を失う”ということがすごく悔しいというか。つらかったですね。」


「AYA世代」のがん患者の悩み。あなたはどう考えますか?

武田:矢方さん、時間は限られている。その中で、様々な重い決断をしていかなければならない。本当に大変な重圧だと思うのですけど、矢方さんはどんなことを考えないといけなかったのですか。

ゲスト 矢方美紀さん(タレント)

矢方さん:当時25歳でがんになって、手術までの時間が1か月、2か月しかないっていう中、その中で卵子凍結をどうするのか、治療法はどうするのか、胸の再建するのか、しないのか、というのを決めなきゃいけないってなったときにすごく悩んでしまって、やっぱり、卵子凍結という選択を私はしないというのを、そのとき決めました。そこから、また治療がいろいろ始まったりするのですけど、そうなってくると、ホルモンの治療というのが10年ほど続いて、その治療中の間は妊娠することができない期間。

武田:36歳まで治療が続くということでしたよね。

矢方さん:そうですね。それが続く間はできないので、「じゃあ、子どもってどうやって考えればいいのだろう」って思ったのですけど、まずは「今は治療に専念して、その後に自分は考えよう」と思いました。

武田:そのあとに。「36歳になって」ということですか。

矢方さん:はい。

武田:その希望というのは、今も持っていらっしゃる。

矢方さん:今も、一応、捨ててはなくて、ずっと持っている。持って、この後もいろいろと過ごしていこうと思っています

高山:矢方さんと同じようになかなか判断するのに時間が足りなかったのだという声が番組にも届いていて、そのうちの一つを紹介します。こちらは40代の男性からいただきました。「28歳の時に精巣腫瘍になり、抗がん剤治療をしました。目の前にある治療が最優先で、その時は「妊よう性(=妊娠する力・妊娠させる力)」のことを考える余裕がなかったです。」とのことなのです。

高山:それではどれぐらい時間がないのか。放射線、あるいは抗がん剤を使って乳がんを治していこうという場合、早ければ告知から治療まで1か月前後しかない。この限られた時間の中で、正しい情報を手に入れなければならない。さらには生殖医療をするかしないかの決断をしなければならない。この期間内で精子あるいは卵子などの凍結保存を終えなければならない。特に女性の場合は、排卵は月に1度ですから特に時間がないなと感じる方が多いそうです。

高山:そして、苦しいのは本人だけではないのですね。50代の女性からいただきました。「31歳の娘が突然肺がんの告知を受けました。薬を飲んでいる間は妊娠ができません。私は娘さえ生きてくれればと薬を飲んで欲しいと思いました。娘の気持ちはどうだろうかと今、考えています。」

武田:がんの専門医で生殖医療にも詳しい鈴木さん、“将来、子どもが欲しい”でも、“今の自分の命”も危険にさらされている。これは医師としては、そんな患者さんとどう向き合うのですか。

ゲスト 鈴木直さん(聖マリアンナ医科大学教授)

鈴木さん:まず前提として、すべてのがん治療が生殖機能に影響を与えるわけではない。つまり、将来子どもを授かる可能性を奪うわけではないのです。がんの治療の内容であったり、薬の量による。がんの患者さんは将来の不安と恐怖がある中で、様々な選択肢を、余裕を持って選ぶことができない大変な精神状態にあるわけである。一方で、患者さんの命を守るがん治療医としては、何よりもがん治療を優先とする中で、しかしながら、将来の可能性、希望を少しでも残していく。がんを乗り越えた後の希望を残すような、そういったサポートをしていくことが重要であって、そのサポートをどのように提供していくかということが課題になっています。

武田:VTRでも「自分の命よりは、次の世代の命を残したい」という方もいらっしゃいましたけども。そういう患者さんがいるとなかなか、お医者さんとしては判断が難しいのじゃないですか。

鈴木さん:患者さんの気持ちはよく分かりますし、まずは目の前のがんと闘うということが重要な中で、一方、“自分の命”よりも“将来の子ども”ということをどうしても考えてしまう患者さんも少なくないかと思います。

武田:悩まれる。先生も悩まれる。

鈴木さん:でも、患者さんの気持ちに寄り添って、しかしながら、まずは目の前のがんと闘っていくということ、ただ希望を失わないで、それを伝えていくことが、我々の責務ではないかと思っています。

武田:「最優先すべきがんの治療」と「子どもを授かる可能性を残す治療」。医師と患者が手を携えて、その両立を模索したケースを取材しました。

がんの治療と“未来の命”を守る治療 両立の壁は?

12年前に白血病になった島優子さんです。緊急入院した病院で「大量の抗がん剤投与と全身の放射線治療を速やかに始める必要がある」と告げられました。それは“不妊になる可能性”が極めて高い治療法でした。

島 優子さん
「一番はやっぱり、『自分の子に会えないのかな』という。やっぱりそれがつらいなと思ったのと。当時、付き合っていたので『彼に申し訳ないな』ということと。あと『両親にも申し訳ないな』と…。」

主治医を務めていた谷本一樹医師です。

優子さんの希望は「抗がん剤治療を行う前に卵子の凍結保存をしたい」。
谷本医師は判断に迷いました。

谷本一樹 医師
「時間的余裕はかなり厳しかったと思います。無理してやって、果たしてそれが本当にそれが将来的に、保存された卵子がしっかり受精卵となれるのかどうか。そういうことはすごく考えました。」

卵子の凍結保存は、谷本医師の専門外。悩んだ末、詳しいクリニックに相談しました。生殖医療の専門医の詠田由美医師です。

詠田医師は抗がん剤治療が始まる前に、卵子を取り出すプランを考えました。治療までの猶予は20日間とされました。

詠田由美 医師
「“未来の命”も本人が元気であって“未来の命”なんですよね。がん治療の方に何らかの支障をきたすというのは、まずあってはならない。」

排卵を誘発する注射を打った10日後。

詠田由美 医師
「こちらが右の卵巣、こちらが左の卵巣ですね。1週間以内に採卵できるような発育卵胞は見られません。」

予定していた期間で卵子を取り出すのは難しいことが分かりました。クリニックから知らせを受けた谷本医師は、卵子の発育を待つためにがんの治療を送らせることが可能か検討を行いました。血液検査の結果、病気は小康状態にあると判断。2週間を限度に治療をさらに遅らせることを決めました。

谷本一樹 医師
「2週間で、もしかすると、病態が悪化するリスクもゼロではなかったかもしれませんが、逆にいえば、これが“最後のチャンス”。なかなか難しい判断だった。」

2週間後。優子さんのお腹に、卵子が育っていました。6個の卵子を無事凍結保存することができました。

がんの治療から4年後、優子さんは結婚。卵子を解凍し、妊娠を試みました。顕微授精をした優子さんの受精卵。順調に分裂が進んでいます。

おととし秋、待望の赤ちゃんが生まれました。

島 優子さんの夫・剛志さん
「まさか会えるとは思っていなかったからね。」

島 優子さん
「大切な存在。宝物です。」


高山:今回の取材を通して、子どもを授かる可能性を守るためにはいくつかの壁があることが分かりました。

高山:まず一つが「時間の壁」なんですが、限られています。優子さん、病状を見極めてぎりぎり治療開始を引き延ばすことができたのですけども、簡単ではありませんでした。そして、なんといっても「費用の壁」。とにかく、がんの治療のために高額なお金がまずかかりますし、優子さんの場合は、それに加えて、卵子の凍結保存のために約50万円かかったというのですね。助成をしてくれるという自治体もあるのですけど、まだまだ数が少なくて、負担が大きいという状況に変わりはありません。そして、当事者だけでは、なかなか解決できない壁というのが、「医療の連携」なんですよね。優子さんのケースの場合は、幸運にも先生同士のつながりがあって、うまくいったのですけども、優子さんは違う医療機関にかかっていたら、この思いかなわなかったかもしれないとも話をしていました。

武田:様々な壁があるわけですけども矢方さんは、この費用の壁というのが大きかったのですか。

矢方さん:そうですね。自分ががんになって、想像もしない金額が費用としてかかってしまうと知ったときに、やっぱり家族にも負担をかけてしまうのじゃないかなというのと自分自身もまだ20代でがんになったので、そんな高いお金をこれから治療しながら払えるのかというのがすごく、毎日の悩みというか、壁になっていました。

武田:その不安があると卵子の凍結保存をやろうかどうかという判断もなかなか難しくなりますよね。

矢方さん:自分は費用のこともあって、卵子凍結を諦めたというのも一つあります。

武田:鈴木さん、この「医療の連携の壁」。これは大きいのですか。

鈴木さん:かなり大きいと思うのですが、それ以前に問題としては、疾患、病気によって診断から治療までの期間が数日単位だったり、数週間だったり、1か月前後というケースがあるのですが、時間との闘い、時間の壁がある中で、一方で医学、がんの医療も生殖医療も高度化し細分化している現状の中で、それぞれの専門の先生がそれぞれ専門の領域を正確に伝える。これがなかなか難しい現状があります。そのためにこの医療連携が必要なのですが、医療連携の壁がある。課題がある中でこれを乗り越えるためには、医療の連携が進むことによって、医療の連携の壁が下がって、時間の壁を乗り越えることによって、患者さんがより選択しやすい状況を作ることができるのじゃないかと思っています。

武田:患者さんが選択しやすいようにするために、医療の連携がぜひとも必要なのだということなのですね。

高山:いち早く地域で医療連携を実現した地域というのがありました。それが岐阜県。“岐阜モデル”ともいわれているのですけども、患者が県内のがんの診療施設で子どもを授かる可能性を守りたいですと希望すると、主治医は岐阜大学医学部附属病院の「がん・生殖医療相談」につなぐのですね。

高山:つながることによって、患者はカウンセリングを受けられます。それから、卵子・精子などの凍結保存につながります。さらには、より専門的な生殖医療施設の紹介にもつながっていくのですね。

武田:これがいわばワンストップの施設になるということですね。

高山:こうした取り組み、どんどん広がりを見せていまして、全国の都道府県の約半分の県と府で実施しつつあるのです。こうしたネットワークに加えて、大事になってくるのがやはり「患者の意志決定」だと思います。限られた時間の中で重い判断を迫られますから、冷静でいることも難しいですし、大変孤独なのですね。そこで先進地の岐阜では、“患者の立場”で決断をサポートする試みを始めています。

AYA世代のがん患者 サポート体制をどう作る?

去年、乳がんと診断されたさおりさん(仮名・30代)です。治療が始まるまでの2か月余り、臨床心理士と対話を重ねていました。

将来の妊娠に備え、受精卵の凍結保存を希望していたさおりさん。しかし…。

さおりさん
「将来、その相手のことを考えても『別れなければいけない』とかそういったことを考えていたので…。」

交際しているパートナーから理解が得られるか、不安を感じていました。
臨床心理士は、次の相談外来に交際相手も誘うよう助言しました。

臨床心理士 伊藤由夏さん
「彼女が(受精卵を)温存したいという気持ちを持っていて、それを1人では決められることではなかったので。相手もその当事者として一緒に考えられるってことが大事だと思って、『一緒に考えよう』って。」

2度目の外来には、交際相手も参加。さおりさんと一緒に医師の説明を受けました。

さおりさん
「自分の口からは説明がしづらかった部分もあったんですけど。ここに一緒に来て、一緒に相談を受けられたので、ふたりで理解して決断することができました。」

ふたりが出した答えは、入籍して受精卵を凍結保存することでした。未来への可能性が、さおりさんのがんの治療の支えになっています。

臨床心理士 伊藤由夏さん
「“正解”がないのですよね。しかも“時間制限つき”で大変ですよね。だから『その方にとってどんなことが幸せなのか』っていうことを一緒に考えながら、その過程で見つけたものが1番ベストなのだということを、後押しできればなと思っています。」

岐阜県で若いがん患者を支えるネットワーク作りを進めてきた古井辰郎医師です。卵子や受精卵の凍結保存を選ぶかどうかに関わらず、患者本人が自分で考え、納得することが重要だと考えています。

古井辰郎 医師
「患者さんにとっても『自分はどうして凍結するのか』とか『どうして凍結しない方がいいと自分が判断したのか』ということを心理サポートも含めて自ら決めることによって、患者さんの気持ちというのが、“納得したがん治療”を受けることにつながるのじゃないかなというふうに思います。」


高山:岐阜では、医師から診察を受けているときも患者の横に臨床心理士、または看護師がそばにいて、患者の隣で寄り添いながら、一緒に話を聞いて決断を支えています。

武田:様々なスタッフや周りの人たちのサポートがとても大事だということですけども、矢方さんの場合はどうだったのですか。

矢方さん:私の場合も誰に相談していいのかってすごく悩んだこともあったのですが、病院に行って、先生たちが、親身になって話を聞いてくれるというのも、だんだんと、こういう質問をした方が良いのかな、例えば分からない用語があったら聞いてみようというふうにもなったのですが、実際、病院に行って、抗がん剤で(髪が)抜けてしまってウィッグをショートのものやロングのものをつけてた時に、間隔は病院に行く時間って空くのですけど、行ったときに看護師さんが「きょうは矢方さん髪型がショートなんですね」っていう一言を言っていただけるだけで、「私って、きっと病気になったから孤独なんだな」と思っていたのが、実際に「ちゃんと見てくれる方がいる」というのが、すごく病院に行きやすくなったというのが一つありました。

武田:それによって自分の治療に向かう気持ちとか、選択のしやすさというのも違いましたか。

矢方さん:ちゃんと「先生たちに自分が思っていることを聞きたいな」というふうに変わりました。

武田:鈴木さん、医療間の連携、それから医療機関の中でのスタッフの連携、これってやっぱりどういう状況にあるのですか。

鈴木さん:なかなか進んでいない状況があったのですが、国や地方自治体のサポートも徐々に始まっています。例えば、厚生労働省の研究班では、先ほどの残り半分の医療連携のない地域に対して、医療連携ネットワークの構築をする、全国に展開する広がり、そういった動きがありますし、あと「費用の壁」を乗り越えるべく、地方自治体では生殖医療にかかるコストを少しでもサポートするような体制、また患者さんがより選択できるようなサポートをするための医師や看護師、心理士、相談員などへのガイドラインなどもでき上がりつつあります。ですから、医療者の意識も変わりつつある現状があります。

武田:体制とそれから医療機関の中での状況もちょっとずつ改善はしていっている。

鈴木:一歩ずつ前進しています。

武田:そういう中でまだまだ不安を感じていらっしゃる患者さん、ご家族の方、パートナーの方いらっしゃると思うのです。矢方さん、そういう方に向けてどんなメッセージを送りたいと思っていますか。

矢方さん:やっぱり自分自身が病気になってしまって、どうすればいいかってすごく、自分も悩んだのですが、周りを見ると本当にパートナーだったり、家族だったり、友達だったりって、「みんなが自分の味方だった」っていうのが私はすごく感じました。なので、本当にいま、自分に起きていることが“現実”だと思うのですが、きっとそれを乗り越える何かがあると思うので、諦めないで前に進んでほしいなと思います。

武田:現実は厳しいと思いますけど。

矢方さん:その厳しさをきっと乗り越えるために生まれてきたのかなと思っています。

武田:矢方さんもがんばってください。

矢方さん:がんばりたいと思います。

武田:ありがとうございました。がんを治療した後の人生をどう生きるのか、きょうお伝えした以外にも様々な選択肢があります。例えば、こんな人生を選んだ家族も…。

様々な“家族”の形

11年前に結婚した育子さんと洋平さん。
翌年、育子さんはがんのため卵巣と子宮を摘出。
治療後、ふたりは新しい家族を迎えた。

「特別養子縁組」で授かったふたりの男の子。

夫・洋平さん
「将来的には『ふたりで暮らす』っていう選択肢だけではなくて、他の選択肢があるのであれば、できる限りのことはしてみようかなと。妻の“治療の支え”にもなってもらいたいなっていうのもありました。」

がんを乗り越えた先にも多様な人生があると感じている。

ディレクター:会ったときはどんな気持ちでした?

育子さん
「やっぱりうれしかったですよね。待ちに待った“我が子”。」


★この内容を見て、がんと生殖医療についてや、特別養子縁組制度などについてもっと知りたいと考えた時に、参考となる窓口や情報をこちらにまとめました。
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