クローズアップ現代

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2019年11月26日(火)
虐待 親たちの“再出発” ~カウンセリングの現場から~

虐待 親たちの“再出発”
~カウンセリングの現場から~

虐待で年間50人を超える子供の命が失われている。どうしたら虐待を減らすことができるのか。親へのカウンセリングを行う現場の記録から考える。虐待した親たちが駆け込むカウンセラーがいる。200人以上と対話を重ねてきた心理カウンセラーの松林三樹夫さんだ。松林さんは、親たちが心の内に何を抱え虐待するのか、どう怒りの根源をひもとくのか・・・時間をかけて、ひとつずつ前に進む手助けをしている。変わろうと模索を続ける親たちの対話の記録から、虐待を防ぐヒントを考えていく。

出演者

  • 中脇初枝さん (小説家)
  • 島田妙子さん (児童虐待防止機構オレンジCAPO)
  • 武田真一 (キャスター)

やめたい…カウンセリングで見えた“心の内”

自宅の書斎でカウンセリングを行っている、心理カウンセラーの松林三樹夫さんです。

対象は、児童虐待やドメスティックバイオレンス。これまで200人以上と対話を重ねてきました。ここを頼る親たちの多くが、自ら連絡を取り、松林さんのもとを訪ねてきます。
この日やって来たのは、30代の母親です。「自分と同じような親の役に立てるのなら」と取材に協力してくれました。

30代の母親
「手がもう出ちゃうんです。考える間もなく手が出ちゃう。頭の中では、やりたくない、やってはいけないことをやっているんだって分かっているのに、手が出てしまって、止めることができない。」

妊娠を機に仕事を辞め、専業主婦として、幼い2人の子どもを育てている女性。2人目の子が生まれて、長女の子育てに悩むようになる中、手を上げるようになりました。
カウンセリングで打ち明けたのは、夏休みの出来事でした。風呂場で、子どもたちがおろしたてのシャンプーを浴槽にあけたのを目にした時。怒りが爆発した女性は、子どもを風呂場に閉じ込め、冷たいシャワーを浴びせたというのです。

松林さんは、女性がなぜそこまで怒りを爆発させたのか、その根源を探ることにしました。

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「そういう怒りを感じたときというか、その場面というのは思い出せます?手を上げないと気がすまない、そのときの感覚。」

30代の母親
「感覚は覚えています。」

クッションを子どもに見立て、たたくよう促します。

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「目を開けてください。長女さんがいます。思う存分、たたきたいだけたたいてくれて結構です。」

30代の母親
「こんなふうにたたくんです。おしりとか。」

30代の母親
「あとは、髪の毛を引っ張るときもあって。なんか、火をつけられたような怒り方でした。あの日は。ガソリンに火をぱっとつけられたら爆発する、そんな感じです。」

ここで、松林さんが問いかけます。

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「あなたの怒りはそうやって、子どもに向けられるんだけれども、あなたの怒りの元になっている、心の中にある、それってなんでしょう?」

30代の母親
「自分への不満。自分への不満と、現状への不満。私は(実家に)帰ることができなかったり。一番ほっとする場所で、一番ほっとする親しい人たちと過ごす。でも、私にはそれができない。」

女性の両親は離婚していたため、この夏休み、実家を頼ることがかなわなかったといいます。子育てのストレスを、一人、ため込んでいたことが見えてきました。

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「怒りを、本来ぶつけるべきものにぶつけないで、ぶつけてはならない、大事な子どもにぶつけちゃっている。代わりにね。それは、ぶつけられる子どもにとっても不幸だし、あなたにとっても不幸になるかな。」

30代の母親
「今からでも、だんだん直していけば、子どもたち(との関係)も良くなるんですか?」

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「なりますね。まだ遅くないです。」


心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「(虐待)被害者のケア、被害者の保護、これは本当に大事なことです。でも同時に、被害者と同じだけの加害者がいるわけですよね。その加害者をなんとか向き合って、更生してもらうようにしないと、虐待問題はこれからもずっと続いていってしまう。」

松林さんは親と向き合う際、時間をかけて、その心の内に迫っていくことにしています。
カウンセリングを始めて2か月になる、40代の父親です。小学生の子どもたちに、暴力を振るい、今は別居している男性。同じような経験をした人たちのためになればと、取材に応じてくれました。

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「結構、子どもには怒ったりとか?」

40代の父親
「そうですね。手を上げていましたね。ふと、ヒートアップすることで、こういうふうにしてしまったんだけど、止まらなかったら死んでましたよね、自分の子どもも。助けてくれる人、介入してくれる人がいなければ、僕自身も子どもを殺していたんだなと思いましたね。」

男性は、子どもたちがカップラーメンを作る時、材料をこぼしたのを見て、かっとなり手を上げました。子どもたちは児童相談所に一時保護され、その後、祖父母に引き取られています。男性は、児童相談所から、更生のためのプログラムがあることを提示されました。

男性の怒りの根源には何があるのか。この日、松林さんは幼少期の体験について確かめたいと考えていました。

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「自分がさみしい少年時代を送ってきたなと改めて感じたというか、さみしかったかなと改めて感じました?」

40代の父親
「いま振り返って考えてみれば、父親は不規則な仕事、母親は忙しく、家をあけることが多い。考えてみると、さみしい人生かなと。」

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「夕飯とかは楽しく食べたという記憶はあります?」

40代の父親
「楽しく食べたというのはないですね。」

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「どっちかというと、重苦しい感じ?」

40代の父親
「そうですね。父親と顔を合わせたくないというのもあるので、また何か怒られるのかなとか、何かやればどなられるし、たたかれるし。ささいなことでも、大きな声でどなっている姿しか浮かばないですね。」

対話を始めて、1時間がたとうとした時のことでした。

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「お父さんがどなったりしたとき、あなたとしてはどんな思いでしたか?」

40代の父親
「怖かったですね。『いついつまでにこうしろって言ったのに、なんでやらねえんだ』って。全く一緒ですよね。自分も全く同じことやっているし。自分がそう思うということは、自分の子どもも、そう思っているんだなと。」

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「自分がそう思うように、自分の子どもたちも、そう思っているだろうなと。」

40代の父親
「同じことをしているわけですから。」

自分が幼い頃、暴言や暴力を受けていたことが、今の自分の行動につながっていた。男性は、そう気付きました。

40代の父親
「どんだけ反省したって、悪いことだって分かったって、結局、自分がなぜこうなのか分からないまま、ずっときたので、『負の連鎖』、自分の父親から受けた影響でこうなっているのは分かったんですけど、じゃあ自分はどうしたらいいのか、今後もっと勉強して、自分を変えていきたいと思います。」

翌週、松林さんは、男性のカウンセリングを一歩進めました。子どもたちとの接し方を具体的に考えていきます。
行ったのは「エンプティ・チェア」。「空のいす」という心理学の手法です。まず、空のいすを相手に見立て、語りかけます。その上で、次は相手の立場になって、自分自身に語りかけます。相手の気持ちを想像し、認識することがねらいです。

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「もし子どもに会えたら、こういうこと言いたい、ああいうこと言いたいというのを、心の中で膨らませてみてくれますかね。…じゃあ目を開けてください。語りかけるつもりで。」

40代の父親
「学校はちゃんと行って、楽しく過ごしていますか?ごはんはちゃんと食べてる?パパも頑張るから、もうちょっと待っててください。」

今度は席を移動してもらい、子どもの身になって父親に対して話しかけます。

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「いまのお父さんのことばを聞いて、(想像で)子どもとして、どんなことを言いますか?子どもとして、パパに早く会いたいですか?」

40代の父親
「それなりの恐怖心があると思うので、会いたいっていう思いより、どうなんだろう、という方が強いと思う。」

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「まだ恐怖心あるかな?」

40代の父親
「あの日のまま止まっていると思う。あの日までで。」

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「お父さんは、どうなったら会いたいですか?」

40代の父親
「怒り方ですよね。たたかないでいてくれれば。暴力ふるわないでいてくれれば。」

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「今度会うとき、そういう怖さを感じないお父さんになっているといいですね。」

では、子どもたちに、どんな言葉のかけ方をしたらいいのか。

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「相手が何か言ってきました。それに対して受けて、言葉を続けて行くんですけど、『でもね』『だけど』『なに言ってる』『あんただって』、こういう接続詞って否定になりますよね。そういう接続詞ではなくて、たとえば『そうか』『そう思うんだ』『そうなんだ』『そうだね』とか。受容・共感につながる。」

40代の父親
「なるほど。」

ここでカウンセリングを受ける親たちのほとんどが、男性のように、幼い頃、自らも暴力を振るわれた経験を持っています。松林さんは、抱えてきた感情を段ボールに対して吐き出させています。

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「これは、虐待してきた母親に対する恨みですね。」

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「この人はバールでたたきましたね。そうやって、我慢してきた感情を吐き出すことでスッキリして、次に自分がどう生きたらいいのかという、新たな一歩が湧いてくる。」

虐待の連鎖を断ち切るため、自らの親と直接向き合った父親がいます。カウンセリングに通い、8か月になるこの男性。3年にわたって、妻や子どもに暴力をふるっていたといいます。

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「このごろはどうですか?」

20代の父親
「僕自身はかなり、自分でも思うくらい落ち着いてきてて、まあ、いいや、なんか嫌なことがあっても、まあ、いいか。」

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「『まあ、いいか』というのは、すごいすてきな言葉なんですよ。『まあ、いいか』とか『しょうがないな』とかいうのは、ある意味で『いい加減』だけど、でもそれは『良い加減』なんですよ。そういうのが使えるようになると、関係がやわらかくなりますよね。」

松林さんとのカウンセリングで、怒りの根源に母親からの暴力があったと気付かされた男性。母親に自分の気持ちを伝えるため、あるメッセージを送ったといいます。

“俺が小さい頃から、たたいたり蹴り飛ばしたりしてしつけてたよね?それがお母のやり方だったと思うし、俺も、それが普通だと思ってたけど、それも虐待だったんだって!”

“俺は、お母のせいにしたくてこーゆー事言ってるんじゃない。”

“お母も自分で言ってたけど、腹痛めて産んだんでしょ?それは俺も感謝してる。たった1人の母親なんだから、これからもよろしくね。”

20代の父親
「おふくろが『間違った育て方をしてしまっていた』『自分では気づいていなかった』って言ってて、『ごめんね』って、ひと言はありました。謝ってほしかったっていう気持ちよりも、分かってくれてよかったかなって感じですね。でもやっぱ、うれしかったですね。」


子どもと別居している男性が、松林さんのもとを訪ねるようになって5か月。子どもたちへの思いが、日に日に募っていました。

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「この間、何かありましたか?気になることとか。」

40代の父親
「児童相談所さんにね、運動会のことどうなっているのか、ずっと1か月気にしてきたんですけど、連絡が一向に来ないので。」

子どもたちの運動会に参加することを楽しみにしてきましたが、子どもへの接触は控えるよう連絡を受けたといいます。

40代の父親
「運動会の前日ですよ。1か月も前から言ってあった話を、前日のこんな夜遅くに、9時半近くにもなって冗談じゃない。(児相が)忙しい忙しいと言ったって、何にも手をつけられず、ほったらかされている感じがするので。」

松林さんは、男性の気持ちを受け止めた上で、自らの変化を児童相談所に示すことが大事だと伝えました。

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「そこ(別居)の出発点は何に問題があったのか、そこを絶えず考えてほしいんですよ。」

40代の父親
「ずっと考えていますよ。自分がいけない、自分がいけないって。」

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「どういう自分を見せたらいいのか。こうやって一生懸命変わる努力を、あなたはいま、しつつあるわけですよ。こういうことができる人になったなと(児相が)判断すれば、もっと子どもとの接触も認めてくれるでしょうし、戻ることも認めてくれるでしょうし。」

40代の父親
「そこは努力しますけど。」

そして、1か月後。
ある進展がありました。最近、男性は自らの親と話したといいます。

40代の父親
「最近、言いましたけどね。両親に対して。全て負の連鎖でこうなったと言い切れないかもしれないけど、それなりの考えを持って欲しいと。『ちゃんと考えてるよ』なんて言っていましたけど。」

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「考えてるよと。」

40代の父親
「親も変わってくれる方にいけば、なおさらいいんでしょうけど、自分が変わらなきゃしょうがない。」

松林さんは、子どもに手を上げた時のことを再び聞きました。

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「カップ麺をやって、子どもがかやくをこぼしたときに、あなたは非常に怒ったわけですよね。そういう場面は、いまだったらどうすればいいと思いますか?」

40代の父親
「まず、やって見せてやるとか、そういうことをした方がいいかなと。ちゃんとフォローというかね。『これはこうするんだよ』とやってみせる、言ってみせる。そうしていきたいな。」

心理カウンセラー 松林三樹夫さん
「あなたが変わって、人は変われるんだと見せることも、これから子どもにとっては、かなりプラスになるのではないでしょうか。」


子どもに見立てたクッションをたたき、怒りを吐き出していた母親です。取材の最後、あるエピソードを明かしてくれました。
公園で、子ども連れの母親を見かけた時のことでした。

30代の母親
「お姉ちゃんと弟が走っていて、転んじゃって、私はもちろんお母さんは子どもを抱きしめるだろうって思ったのが、お母さんはパッと下の子の頭をたたいて。自分が子どもをたたいている光景を、また見ているような感じだったんです。その瞬間、痛くて、もう動けなくなって。」

女性は意を決して母親に声をかけ、最後は抱き締め合ったといいます。

30代の母親
「勇気を出して『すみません』って声をかけて、『あんまり自分を責めないでください』って言ってあげて、向こうのお母さんも泣いて、私もつられて泣いて、そのあと自分も救われました。実は。もっとそういう、みんなで助け合う世の中になってほしい。」

どうしたらやめられる?何が必要か

武田:「人は変われる」という言葉がありましたけれども、そのためには、時間をかけて自分と向き合い続けるという作業が必要だということが、本当によく分かりました。小説家の中脇さん、子どもの虐待を扱った小説を書かれて、映画化もされて、大きな反響を呼びましたけれども、こうした親たち、本当に変わっていけるのかどうか。どういうふうにお感じになってますか。

ゲスト 中脇初枝さん(小説家)

中脇さん:変わろうとしていることを、まずはたたえたいと思います。向かい合うことは、とてもつらいことだと思うんです。そこに逃げずに向かい合っている姿をすばらしいと思います。事件が報道される度に、虐待している親は特別な人のように思われますけれど、決してモンスターじゃないと思います。やはり、つらさを抱えている存在なんだっていうことを強く思います。

武田:自分への不満、現状への不満っていうふうにおっしゃってる方もいましたね。みんな、何か、そういう背景があるんだっていうことですよね。
今、児童相談所の虐待相談対応件数は、およそ16万件と過去最多を更新しています。子どもの虐待防止の活動に取り組む島田さん。ご自身も虐待を受けた経験があるということですけれども。こういう親の存在を、子どもたちはどういうふうに見てるんでしょうか。島田さんの場合、どうだったんでしょう。


ゲスト 島田妙子さん(児童虐待防止機構オレンジCAPO)

島田さん:私の場合ですけど、虐待されてる時に、本心は、誰かうちの親を助けてって。うちは父親でしたけど、誰かうちのお父ちゃんの、この心をどうにかしてあげてっていう気持ちがすごく強かったです。途中からは、とてもつらい体験でしたから、親を恨むことで耐えてた時期もあったんですけど、やっぱり優しかった父を思い出しました。

武田:ご自身が母親になられてからはどうなんでしょう。

島田さん:私は、私だけは絶対優しいお母さんになると心に誓いましたけど、やっぱり子育てする中で、心の余裕なくした時には当たりやすい…。我が子にも当たったことあります。ただ、虐待の連鎖は絶対にないんだと言い聞かせて、乗り切ることができたのかなと思っています。

武田:そこは、もう言い聞かせて。

島田さん:言い聞かせました。たまたま、たまたまなんだということは言い聞かせました。

武田:「たまたま」とおっしゃいましたけれども、やっぱり支援というものが必要だということですよね。虐待した親たちの再出発への道のりですが、自治体によって、さまざまなのですが、主にこうしたものがあります。例えば、市町村や児童相談所から直接、支援や指導を受ける。精神科などの医療機関や民間の更生プログラムに行くということがあります。こうしたところにつながるということが大切だと思うんですが、ただ、なかなか自分から行くというのはハードルが高いと思うんですよね。どういうふうな取り組みをなさってるんですか。

島田さん:そうなんですよ。大阪になりますが、虐待してしまっている親御さんを救っていきたいということで、「ゼロ会議」という、大阪府で虐待死で亡くなる子どもを救いたいという活動なんですが、虐待死をゼロにするという活動なんです。ただ、これは本当にテレビを見ている近所のおっちゃん、おばちゃんが会場に来て頂いて、声のかけ方、そして、大阪ですから「聞くで」って「話を聞くで」って、聞いてあげるというような活動をしています。この輪がすごく広まっています。1人だと気付かないことも、「来て下さい」ということでさせて頂いてます。

武田:そういった、近所にいる方が声をかけるだけで、「話、聞くで」って言うだけで、何かの糸口になる。

島田さん:そうなんです。すごく大きなつながりにはなってます。

武田:その周りにいる人たちの力が大切だと思うんですけれども、そのために必要なこととして、中脇さんが挙げるのが、こちら。「想像力」。どういうことを想像したらいいんでしょうか。

中脇さん:完璧な親なんてどこにもいないと思うんですね。みんな、得意なことがあったり、苦手なことがあったり。武田さんもそうでしょうし、私もそうです。できない人にできないことを求めるのではなくて、できる人ができることをしてほしい。できないことや虐待をしてしまうことについて、たとえ理解はできなくても、それは自分とは違うということで、でも、想像してほしいと思います。その人が置かれている立場や状況というものを想像してもらう。そして、想像することで、声をかけたり、見守ったり、それが支援につながったりすると思うんですね。子どもの幸せのためには、子どもの周囲の大人がまず幸せにならないといけないというふうに思います。

武田:中脇さんも、小説の中で、近所のお母さんが虐待をしているお母さんを抱き締めるっていうシーンをお書きになってますよね。そういうことができないか、想像力を膨らませてやるということですよね。

中脇さん:小説では、想像力で書いていますので、そういう作品が皆さんの共感を呼んだっていうのは、そういうことなのかなと思います。

武田:皆さんも、想像すればできると。そして、島田さんは、「一歩踏み出せるように手助けをする」。

島田さん:はい、そうですね。環境を変えるということ。自分の力では環境を変えることができなくても、私たち、そばにいる人がちょっと環境を変えてあげることで、変わってこられる方がたくさんいらっしゃいます。ある方も、転職がきっかけで、今までは自分がしんどいと視野も狭くなってたんですけど、人のお役に立てるということを感じただけで、すごく前向きに歩き出せた方がいるんですね。なので、たとえ虐待してしまってる方がいらっしゃっても、支援して下さるところに自分で行けない人もいますので、そういうふうに一歩踏み出せるように、たくさんの方が手助けできると、虐待はきっとなくなると信じています。

武田:まだ遅くない。

島田さん:はい、遅くないです。