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2019年10月31日(木)
東京五輪マラソン・競歩 “札幌開催“の波紋

東京五輪マラソン・競歩 “札幌開催“の波紋

IOC・国際オリンピック委員会から突然示された、東京オリンピックのマラソン・競歩を札幌で開催するという案。IOCは、先日ドーハで行われた世界陸上で暑さのため途中棄権する選手が相次いだことを受け、選手を守るための決定だとしているが、開催都市・東京都の小池都知事は、事前の議論がないまま提案されたことは納得できないと強く反発している。今週、双方が出席する調整委員会で協議が行われているが、どのような形で決着が図られるのか見通せない状況だ。なぜこのような事態に陥ったのか、最新情報をもとに専門家と読み解いていく。

出演者

  • 増田明美さん (元マラソン選手)
  • 友添秀則さん (早稲田大学スポーツ科学学術院 教授)
  • NHK記者
  • 武田真一 (キャスター)

あす どんな決着? 東京か札幌か…選手は…

武田:東京オリンピックマラソン・競歩の会場変更問題について、今まさに話し合いが続いているわけですけれども、どんな結論になるのか。IOCの取材を担当する原口さん。最新の状況はどうなっているんでしょうか。

原口デスク:今日は調整委員会の中で、IOC、東京都、組織委員会、国、4者の実務者による協議が行われました。明日まで続く調整委員会で、結論が出るかどうかが最大の注目なんですけど、IOCは一貫して、札幌移転は決定事項だという姿勢を貫いています。今日は、なぜ変更が必要になったのか、そもそもの背景や根拠。具体的には、暑さのデータといったものについて議論が行われて、お互いの議論は平行線をたどったとみられています。本来ならば、札幌に移転した場合の費用負担の問題まで議論したかったと思うんですが、そこまでいかなかった可能性もあります。
あすには再び、トップによる協議が行われる予定でして、IOCはコーツ委員長が、東京都は小池知事が組織委員会の森会長、国の担当大臣の橋本大臣が出席して公の場で議論に臨む予定になっています。

武田:一方、東京都庁担当の早川記者。東京都は、どういう姿勢で臨んでいるんでしょうか。

早川記者:IOCは札幌移転を決定事項だとしていますが、東京都としては最終的に決まったものではないとしていて、東京での実施を主張しています。突然の会場変更は容認できないという考えで、仮に会場が札幌に変更されるということになったとしても、都が費用を負担する考えはないと主張しています。

増田明美さんが“細かすぎる解説”

武田:今日は、この問題を3つのポイントを軸に見ていきたいと思います。
まずは、どう考える「アスリート・ファーストとは?」。マラソン・競歩ではご覧の選手が、すでに代表に内定しています。

選手たちが今回の問題をどう考えているのか。増田明美さんが細かく取材してくださいました。日本の選手たちは、今回の問題をどうとらえているんでしょうか。


ゲスト 増田明美さん(元マラソン選手)

増田さん:選手たちは、札幌に移るということに関してはすごく残念がっています。なぜかというと、リオのオリンピックが終わってから、女子マラソンのほうは、その直後から荒川の河川敷とかで、強化指定の選手たちが暑い中で30km走を何度も行って、日本陸連の科学委員会の方が血液を検査したり、いろんな検査をしてデータを残しています。準備は3年前から行われているんですね。暑さの中で、東京に向けて。だから、今までやってきたことが水の泡になってしまうという声もあります。
それから、今VTRにもありましたけど、なんといっても、MGCですよね。本番とほぼ同じコースで一発勝負で、全力であそこを走った地の利というのは、すごく日本選手にとっては有利なんですね。また、選手の中には、新国立競技場に戻ってきて大歓声を浴びるということをモチベーションにしてやってきた選手もいますので、いろいろな意味で、なぜこのタイミングでこういうことになるの?というのが、選手たちの多くの声だと思います。

武田:代表の選手たちは、すでにMGCで東京のコースを走っているわけですが、それで、課題とか教訓を得た選手も多いんじゃないですか?

増田さん:鈴木亜由子選手なんかは、終わってすぐに最後の上り坂のところで両太ももの前側が痛くなったと。あと、自分と40km走の質をもっと高めないと、前田穂南さんのように優勝はできないんだから、世界の選手と戦うときにも40km走の走り方を、なんて。コースを全力で走っているからこそ、体感したことというのがあるんですね。だからこのタイミングで、こういうことで変更になると、準備してきただけにちょっと残念だと。

武田:コースと選手の準備は不可分なものなんですね。実は、外国の有力選手もツイッターでこのように発信しています。
例えば、女子マラソンのリンデン選手。“オリンピックスタジアムにゴールすることが魅力で、そこを目指してきたのに”という声。

増田さん:一緒ですね、海外の選手も。

武田:それから、男子競歩のダンフィー選手。“これまで暑さ対策を頑張ってきた。なぜ対策していない選手に合わせるのか?”という声もありますけれども。増田さん、海外の選手はどういうふうに思っているんでしょう。

増田さん:私が話を聞いたのは、イギリスのホーキンスさんという選手で、強いんですよ。この前のドーハで行われた世界陸上で4位に入って、アフリカ勢のあと。その選手がなぜドーハを走ったかというと、2020年の東京を見据えて、暑さに慣れたいと思って走ったっていう選手などもいますので。だから、そういう選手にとっては、どうしてということでしょうし、ただ、アフリカの選手たちはあんまりコースの下見とか試走をしないので、そんなに準備をしない選手にとっては、言われたとおりのコースを走るわということだと思うんです。

武田:比較的、冷静に見ている海外の選手もいると。

増田さん:アフリカの選手は。ただ、ケニアの選手は高地が涼しいので、暑さ対策をモンバサでしてきた。

武田:モンバサというのは低いところにある?

増田さん:ちょっと暑いんですね。みんな準備していますね。

武田:海外の選手で準備をしている人もいれば、冷静に見ている選手もいる。ただ、なかなか決まらないというのは、いずれにしても選手としてはドキドキ。早く決めてほしいなっていう思いですよね。

増田さん:選手にとっては札幌にもしなっても、じゃあコースはどうなのか、スタート時間は何時なのかが決まれば、一日も早く準備ができるので、そういった意味では、今もどかしい気持ちで結果を見ていると思うんですね。

武田:今回IOCが札幌移転案の根幹だとしているのは、そのアスリート・ファースト。IOCはどう考えたんでしょうか。

IOCが考えるアスリート・ファーストとは?

会場変更について、IOCは選手のためだと強調しています。

IOC コーツ調整委員長
「アスリートの健康を常に念頭に置いているため、変更を決定した。」

IOCが東京都に示した資料です。陸上の世界選手権が開かれた、ドーハの暑さ指数と東京の暑さ指数を比較。競技環境が「とても似ている」としています。

ドーハでは暑さを避けるため、マラソンや競歩は深夜のスタートとなりました。観客もほとんどいない中で行われたレース。ところが、女子マラソンは深夜でも気温30度以上、湿度70%以上の過酷なコンディション。レース途中にリタイアする選手が続出しました。出場した68人のうち、実に4割を超える28人が棄権に追い込まれたのです。海外メディアからはレースが強行されたことに対し、痛烈な批判が相次ぎました。

東京でも、同様の事態に陥るのは避けたいと考えたIOC。

IOC コーツ調整委員長
「マラソンと競歩の会場を、札幌に変更することを決めた。」

実は、東京の暑さは上昇傾向にあるというデータもあります。東京都が開催都市に決まった2013年の時点では、選手にとって理想的な気候だとアピールしていました。
これは、東京の暑さ指数を時間ごとに色分けして示した図です。2013年の時点では、危険を示す赤や、極めて危険を示す紫は僅かでした。ところが現在では赤や紫が目立つようになり、地球温暖化などの影響で、真夏の暑さが厳しくなっていることが分かります。

IOCは、暑さ指数のより低い札幌であれば安全にレースを実施できるとしています。

IOC コーツ調整委員長
「東京より800キロ北で、気温も5~6度低い。東京と比較して、札幌の方が条件が良いことを示していきたい。」

これに対し、東京都は長期間かけて、さまざまな暑さ対策を行ってきたと強く反発しています。

東京都 小池知事
「東京都、そして都民にとっては大変な衝撃であり、納得できるよう経緯や理由について、丁寧なご説明を頂きたい。」

マラソンと競歩のコースでは、すでに7割以上で道路の表面温度を下げるとされる「遮熱性舗装」を整備。さらに沿道では、ミストを噴射する装置を設置したり、日陰を増やすため、せんていを工夫して街路樹を大きく育てる取り組みも行ってきました。

東京都 小池知事
「アスリート・ファーストという観点は、言うまでもございません。だからこそ、東京の気候・ルートに合わせてコンディションを整えてきた選手の方々、『選手のために最高の舞台を』と準備を進めてこられた地元・地域のみなさま方の気持ちを、ないがしろにすることはできない。」

アスリート・ファーストとは何なのか。このあと、さらに深めていきます。

どう考える?アスリート・ファースト

武田:アスリート・ファースト。IOCは、命と健康を守ることが大事なんだ。一方、東京都の小池さんは、命と健康はもちろんだけど、選手の思いなども尊重しなくてはいけないと言っているわけなんですけど、原口さん、IOCにとって、やはりドーハの衝撃は大きかったようですね。

原口デスク:中でも女子マラソンですが、選手が次々にリタイアしていく姿は本当に衝撃的で、これまで議論してきた暑さの怖さをまさに目の当たりにしたというのが、あの場面だったと思います。オリンピックの場で、こういう事態を繰り返してはいけないという考えがIOCには強くあります。東京の暑さ指数のデータとドーハのデータを比較して、東京でも同じことが起こりうると判断をしたIOC。そのバッハ会長が、みずからイニシアチブを取って、今回の会場変更を推し進めたという形です。

武田:ただ早川さん、東京都ももちろん暑いというのは分かっていていろんな対策を取ってきてはいたんですね。

早川記者:東京都はこれまで、組織委員会とともに暑さ対策として、すでにマラソンではスタートを7時から6時に前倒ししましたし、IOCの専門家の意見も聞きながら暑さ対策を進めてきました。こうした中で、先ほどVTRにもあったんですが、今回、突然IOCが都に対してドーハと東京の条件が似ているという気象データを出しました。東京の暑さ指数のデータが何に基づいているのか、都としても根拠が分からないという状況でした。実際に、この5年間の東京の暑さ指数では、早朝のレースの時間帯で見ますと、IOCが示したものよりも2度ほど低いといいます。札幌への変更の根拠となっているデータですので、これについても納得いくような説明を求めています。

武田:どちらも、それぞれの立場で選手のことは考えているというように見えるんですけれども、スポーツ倫理学が専門の友添さんは、どうご覧になっていますか。

ゲスト 友添秀則さん(早稲田大学スポーツ科学学術院 教授)

友添さん:難しい問題ですね。札幌か東京かという選択は、どちらにいってもしこりを残さないでほしいなと思うわけですけど。
もともとオリンピックの価値は何か、と考えてみる必要があるんですよね。それは何かというと、選手、アスリートにとっては最高のパフォーマンスを発揮できるような場を提供することが一番大事なわけですけれども、どうも、これはドーハショック、つまり衝撃というよりも、多分、バッハさんやコーツさんにとってはショックだったと思うんですね。ドーハの悲劇と言っているぐらいですから。こういう悲劇を目の当たりにしてしまうと、これはやっぱり、命を懸けたサバイバルゲームになってしまっていて、本当はアスリートをぜんぜん大事にしていないと、オリンピックの精神に反するということが、彼らを動かした理由だというふうに思います。同時に、こういう臨場感の中でストップをかけないといけないと思ったんだろうと思います。

武田:東京も努力はしてきていますよね。それをどう捉えるかですけれども。

友添さん:もちろん努力は大事だけれども、命と健康を守ることに勝るものはないということですね。

武田:これまでの気候自体も…。

友添さん:地球環境が大きな変動の影響を受けていて、実際、今年の8月の初旬の温度は、もう端的にいうと35度ですよね、日本の場合。35度で湿度が70%を超える中で、いくら日陰が多い東京でも、例えば沿道の住民たちが倒れる可能性があるわけですね。セキュリティーを重視していますので、例えば救急車が入れない地区がいっぱい出てくるわけですよね。誰かが死んでしまうと、もうオリンピックの持続可能な発展というのはあり得ないんですよね。危機感を抱いたと思います。

武田:増田さんはドーハにも行かれて解説も担当なさっていましたけど、やっぱり暑かったですか?

増田さん:友添さんが言われるように、ドーハショックでしたね。ひどすぎる。日中はオーブンの中にいるみたいで、女子マラソンは深夜でしたけど、ミストサウナの中にいるみたいで。

武田:東京はそこまで…。

増田さん:比べちゃいけないんです。東京はずっと楽。ドーハのときには、これで女子マラソンやるの?というような息が苦しくなっちゃう感じだったんですけど、東京はぜんぜん楽ですし。あと私、東京で8月2日と8月9日、1年前にちょうど同じ6時に何か所かコース走ったんですね。東京は、前半は高いビルの陰になるから日陰なんですよね。そういうことも考えてみると、やっぱりぜんぜん違いますよね。ただ、友添さんが言われるように、IOCの方がドーハで体感したんだったら、2020年に危機感を覚えるのも分かります。でも、違うと思います。

武田:そして次のポイントです。「オリンピックは誰のもの?」、どういうことでしょうか。

オリンピックは誰のもの?

今回の問題で注目を集めているのが、開催都市の東京都とIOCの関係です。
きのう行われたIOCの調整委員会。会場変更のプロセスについて、認識の違いが改めて浮き彫りになりました。

東京都 小池知事
「議論もないままで、このような提案が出されたこと、極めて異例の事態ととらえております。いったい、開催都市とは何なのか。開催都市の長といたしまして、都民の代表として、マラソン・競歩の東京での開催を望みたい。」

一方、IOCは会場の変更は決まったことだとしています。

IOC コーツ調整委員長
「IOCは、マラソン・競歩の会場を東京から札幌に変更することを決めました。もし、さらなる説明が必要ならば、時間をかけて応じるつもりです。」

組織委員会 森会長
「IOCのみなさんの気持ちも、十二分にわかります。IOCにも、関係者や都民、国民の理解を得るための努力をお願いしたい。私どもも努力をいたします。」

IOC、東京都、組織委員会、それぞれの役割の違いは。
そして、オリンピックは誰のものなのか。


武田:オリンピックの主催者は、あくまでIOCです。東京は、IOCの承認を得ながら大会を開催するという立場。実際の大会運営の実務を担うのは、組織委員会。こういう関係にあるわけですが、競技会場を変更するなどのような場合、これまでは、まず開催都市と組織委員会などが協議を行って、そして調整をして、IOCに提案して承認をもらうという、いわばボトムアップで決めてきたんですね。実際に東京大会の競歩の会場も、このプロセスで変更した経緯があります。ところが今回は、IOCの一存で決定事項が伝えられるというプロセスでした。これは極めて異例ということなんです。原口さん、なぜIOCはこんなプロセスをとったんでしょうか。

原口デスク:オリンピックの会場変更について、最終的な権限、決めるのはIOCの理事会です。ですから、今回IOCが決めたわけですけれども、やっぱりドーハの現状を見て、会場変更にかじを切ったIOCが危機感を持ったということがあるんですね。スケジュールなんです。ドーハの世界選手権は9月27日に開幕しました。女子マラソンも行われました。この時点で、実は開幕まで10か月を切っていますよね。そして、今回行われている調整委員会。これは準備状況などを確認するんですけども、これも、この期間1か月しかない。この時間の間に、果たして議論をボトムアップする時間があるんだろうかと。そこが非常に迫っていたんだと思いますね。そこで決断が求められる中で、バッハ会長が主導して極めて異例な形ですけど、トップダウンでの決定となったんだと思います。

そして今回はオリンピックという大会の価値、それを守ることもあったと思います。沿道にほとんど観客もなくて、選手が次々とレースから外れる。あのドーハの異様な光景を、絶対に東京では繰り返しちゃいけないという強い決意の表れでもあったと思います。

武田:これに対して、東京都の立場はどうなんでしょうか?

早川記者:東京都の立場をまとめました。先ほどのドーハでの女子マラソンのあと、今月3日の時点で、IOCのバッハ会長は東京で進められてきた暑さ対策について評価するという考えを示していました。それから2週間もたたない間に、事前に開催都市への説明もなく、突然会場を変更するという案が出されたことは、小池知事だけでなく、東京での実施の準備に関わってきた多くの関係者からは納得がいかないという声が上がっています。実際にIOCの発表のあとに、東京都には電話やメールなどで会場変更について1000件以上の意見が寄せられていて、その9割が会場変更に反対する意見だということです。

武田:友添さん、この一連のプロセスをどうご覧になっていますか。

友添さん:通常だと、ボトムアップというのは普通なんですけど、今回、それだけ非常事態だったということです。トップダウンで下ろさなければ、間に合わないということが1つ。もう1つは、圧倒的にIOCが大きな力、決定権を持っていますので、IOCが言えば従わざるを得ないというのが組織論の立場から言えばそうなんですね。ただ、日本の社会はコミュニケーションを大事にして、みんなで話し合いながら、ゆっくり調整するということで。ところが、向こうのコーツさんもバッハさんも彼らは弁護士ですから、極めて合理的に、法にのっとって対処するということだったと思います。

武田:増田さんは、どうご覧になりましたか。

増田さん:選手の健康を考えてくれているのはありがたいんですけども、タイミングが悪すぎるなっていうふうに思いますね。でも、次のパリも次のロサンゼルスも暑いじゃないですか。だから、次につながるような、時期を変更するとか、そういうような見直しとか発展をしてくれないと、あまりにもタイミングが悪すぎるなっていうのは感じます。

“曲がり角”のオリンピック

武田:そして、最後に見ていきたいポイントが「“曲がり角”のオリンピック」。夏のオリンピックに立候補した都市の数なんですけれども、減少傾向にあるんですね。2024年大会について見てみますと、当初、立候補したのは5つの都市でした。その後、3都市が撤退しまして、残ったのは2都市なわけですが、2024年大会にはパリが決まりました。ロサンゼルスが残ったんですけど、こちらは2028年大会を開催するということになりました。
友添さん、こういう状況にあるわけですけれども、IOCと開催都市の関係も変わってきているそうですね。

友添さん:危機意識をIOCは持っていますので、アジェンダ2020という長期計画でもって改革をしていこうということで、大きくIOCは変わろうとしているときです。だから、本来なら変わらなかっただろう東京の開催が、バッハさんを含めて、大きく選手を第一にしようということで、選手の辞退も避けようとして、持続可能性の観点から今回は対処したと理解できると思います。

武田:IOC、今一番改革しなきゃいけないというのは持続可能性?

友添さん:オリンピックって歴史的に見ると、いろんな問題を抱えて乗り切ってきたんです。戦争とかテロとか差別とかイデオロギー対立とか、こういうのを経済的にもうまく乗り切ったわけですね。ただ、こういう事態が起こると、持続可能性という問題が起こっているということだと思います。

武田:それを乗り越えるためには、今回のように柔軟な大会運営も必要ですね。

友添さん:大きく変わろうとしています。1つは、恒久開催を考えていくべき時期じゃないかというふうに。1つの都市で、ずっとオリンピックを、アテネだったらアテネでずっとやっていくのも1つの改革案だろうと思います。一番いいベストシーズンを選んで。

増田さん:古代オリンピックはずっとアテネでしたね。

武田:原口さんは、IOCと開催都市の関係、どう見ますか。

原口デスク:友添さんがおっしゃるように危機感を覚えていますので、今アジェンダ2020の話がありましたけど、既存の会場を有効利用できるように。例えば国が変わっても、今までは都市で開催していましたが、例えば違う国に行って、その会場を使ってもいいよという、国をまたいでもいいよという議論もありますし、バッハ会長は気候変動のことも言っていまして、持続可能性という言葉の中で、今の現状の7月、8月開催というものを変更する可能性も十分あり得る、というのも言及しています。柔軟さというのは、確かに今、見せている状況です。これはまさに、オリンピックを長く続けていきたいという心の表れだと思うんです。
その一方で、今回の件で言いますと、開催都市が置き去りにされたことがあると思います。この問題が残した、開催都市の東京の不信感というものがあれば、これからオリンピックを開催したいという都市にとっては、もしかするとかなりマイナスな影響もあったんじゃないかと。その影響も、IOCはちゃんと考えておかなきゃいけないと思います。

武田:いずれにしても、来年夏にはオリンピックがやってくるわけです。増田さん、大会を成功させるために、今後どういうことを大切にしてほしいですか。

増田さん:いろいろ、ごちゃごちゃ言っている場合じゃなくて、日本のオリンピックっていうことで、東京になっても札幌になってもみんなで盛り上がれるようにしていく。そして暑さ対策がもう一歩進んだら、というような方向性になればいいですねこれから。

武田:いずれにしても、大会を楽しんで成功させるために、しこりが残らないような解決策というのをやってほしいですね。
今日は、オリンピックの問題について考えてまいりました。皆さん、ありがとうございました。