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2019年10月24日(木)

ドローン兵器の衝撃~新たなテロの時代~

ドローン兵器の衝撃~新たなテロの時代~

サウジアラビアの石油関連施設への攻撃であらわになったドローン兵器の脅威。今回、明らかになったのは、これまでアメリカなどの軍事大国が独占してきた軍事用無人機=ドローンの技術が、イランを中心に中東各地に拡散し、テロや紛争に使用出来るようになったことだ。なぜ、ここまで高度な技術を手に入れることが出来たのか?番組では、イランや共闘する武装勢力が、いかに安価な部品を入手して、飛距離などの性能を伸ばしてきたのか、その秘密に迫る。さらに、ドローン兵器が世界中に拡散し、世界の原発や、来年の東京オリンピックもリスクにさらされているという。テロの手法を根本から大きく変えると言われるドローン兵器、その波紋に迫る。

出演者

  • 岩本誠吾さん (京都産業大学法学部 教授)
  • 保坂修司さん (日本エネルギー経済研究所)
  • 武田真一 (キャスター) 、 合原明子 (アナウンサー)

世界や日本を脅かす“新たなテロの時代”

「ゴルゴ13」の作者さいとう・たかをさん。
4年前に予見していたことが、現実のものとなりました。ドローン兵器の脅威です。

先月、サウジアラビアの石油施設に対して、ドローンによる攻撃が行われたのです。

サウジアラビア国防省 報道官
「これは、石油施設で見つかった、ドローンの残骸です。」

劇画家 さいとう・たかをさん
「もう戦争を人間同士でやらなくなるでしょう。機械の戦争になってきたら、もう、まさに破滅でしょうね。」

無人航空機、ドローン。今、各国で開発が進み、戦争やテロに使われる兵器となっています。
NHKの取材で、世界中から集めた民生品が転用され、拡散する実態も見えてきました。
イギリスでは、空港にドローンが進入。身近な施設が標的になっています。
来年オリンピックを迎える日本でも、対策を迫られています。
世界に拡散するドローン攻撃の脅威。進化する、新たな兵器の実態を追います。

徹底追跡!中東で急速に拡散 驚きの実態

先月、ドローンと巡航ミサイルの攻撃を受けた、サウジアラビアの石油施設。世界の原油供給量のおよそ5%が一時生産を停止し、世界を不安に陥れました。

大手商社は警戒感を強め、中東に代わる原油の調達先も探り始めています。

シンガポールのグループ会社
「寝耳に水というか、こういった攻撃に対する備えが、そもそも必要だという認識すらなかったので。」

サウジアラビア政府は、ドローンの残骸を公開。世界最大規模の石油施設を襲ったのは、18機のドローンだとしたのです。

サウジアラビア国防省 報道官
「これは、石油施設で見つかった、ドローンの残骸です。イランの無人航空機によく似た三角形の翼です。GPSも使われていて、より正確な攻撃を可能にしています。」

攻撃を行ったと声明を発表したのは、サウジアラビアと敵対する、イエメンの反政府勢力でした。しかし、サウジアラビアと同盟関係にあるアメリカは、この声明を認めず、攻撃に直接関与したのはイランであるとの主張を強めています。一方で、イランは言いがかりだとして関与を全面的に否定しています。

なぜ、サウジアラビアはドローンによる攻撃を防げなかったのか。世界の軍事用ドローンの研究を行っているゲッティンガー所長は、ドローンの特性をよく利用した攻撃だったと見ています。
被害を受けた石油施設には、ミサイル攻撃に対応した防空システムがあったと見られています。しかし、ドローンは低空で侵入する上に、小型であるため、従来のレーダーでは捉えにくいというのです。

バード大学ドローン研究センター ダン・ゲッティンガー所長
「ドローンは小さいので、鳥のように見えるのかもしれません。つまり、現在の防空システムのありかた故に、ドローンを識別するのが難しいということです。」

さらに、今回のドローンには、極めて高い性能が備わっていることも分かってきました。防衛省の装備品に詳しい、東京理科大学の平塚三好教授に、ドローンの残骸を分析してもらいました。

東京理科大学 平塚三好教授
「これは、比較的わかりやすいと思うんですけど、ウィングレッドと呼ばれる、垂直の羽が非常に高い。この羽の高さが高いということは、それだけスピードが出る。時速200キロ以上は出るだろうなと。時速200キロ以上出すということは、それなりの大きさのエンジンを使わなくてはいけない。」

エンジンの残骸を見ると、アメリカの軍事用ドローンのエンジンによく似ていると、平塚教授は指摘しました。

東京理科大学 平塚三好教授
「ここら辺の部分、この排気ダクト。この排気ダクトと、ここのダクトが、ほぼ同じですよ。ほぼ同タイプの、同じレベルのタイプのものだと考えていい。」

中東では、攻撃手段として、高性能のドローンが最近頻繁に使われています。
ドローン開発に力を入れるイランで、その背景を探りました。交渉の末、イラン革命防衛隊のキャナニモガダム元司令官が取材に応じました。イランのドローン技術の源流。それは、敵対するアメリカにあったと語りました。

イラン革命防衛隊 キャナニモガダム元司令官
「イランは、アフガニスタンで墜落したアメリカのドローンを捕獲し、利用しました。部品を分解することで、ドローンの造り方を習得したのです。」

2000年代、アメリカはアフガニスタンの戦場にドローンを投入。当時、ドローンの高度な技術は、アメリカやイスラエルがほぼ独占しており、山岳地帯に潜伏するアルカイダなどの動きを偵察し、攻撃に活用しました。この時、イランは、各地でアメリカのドローンを回収し、機体を分解して、その技術を習得したと言うのです。

イラン革命防衛隊 キャナニモガダム元司令官
「イランは、世界の5本の指に入る、ドローンの技術大国になったと言えると思います。今や私たちにとって、ドローン製造は、おもちゃ作りのようなものです。おもちゃです!誰もが、ドローンの技術を使える時代なのです。」

ドローンをつくるための部品は、世界中から集められることも分かってきました。イランの支援を受ける、イエメンの反政府勢力のドローンを調査した、国連の報告書です。ドローンを分解すると、使われていたのは、ほとんど民生品でした。プロペラは中国製。GPSセンサーはウクライナ製。制御装置は韓国製でした。

私たちは、制御装置を製造した企業を韓国で探しました。企業は、無線機器の部品を扱う世界的なメーカーでした。企業に尋ねたところ、製品が軍事用のドローンに使われていたことを知りませんでした。価格は1万2000円ほど。通常は、無線で操縦する飛行機などの進行方向を制御するための部品でした。

国連の報告書によれば、制御装置はテヘランの会社に、最終的に輸出されていました。テヘランの中心部にある会社を訪ねてみると、そこはプラモデルや無線操縦の模型の店でした。世界各地の模型の部品が売られていました。

店主
「部品は世界中から仕入れるよ。アメリカ、ドイツ、韓国、日本からもたくさん来るよ。」

無線操縦の模型に使われる、誰でも手に入れられる部品が、軍事用のドローンに使われていたのです。

もともと、中東で高度なドローンを独占していたのは、アメリカの同盟国イスラエルでした。2000年代から、本格的に軍事用ドローンを活用し、パレスチナに対して攻撃を続けてきました。今、その状況は変わりつつあります。イランは、ドローンの製造技術を中東各地の武装組織に伝え、イスラエルなどアメリカの同盟国への攻勢を強めています。

これはイスラエルが公開した映像です。今年8月、隣接するシリアから、ドローンを飛ばそうとする複数の人影。イスラエルは、イラン側が攻撃をしかけてくると判断し、この後、殺害しました。

イスラエル軍 報道官 ヨナタン・コンリクス中佐
「いったんドローンが飛び立てば、攻撃を阻止するのは難しくなるので、その前に止めなければなりませんでした。」

殺害されたのは、23歳のレバノン人、ハサン・ズベイブとヤセル・ダヒル。イスラエルは以前から2人をマークし、その行動を警戒していました。

2人はどのような人物だったのか。それを探るため、私たちはレバノンに向かいました。イランの支援を受ける、武装組織ヒズボラが勢力を張り、イスラエルとの戦闘状態が続いています。2人の行動を、ヒズボラに近い地元紙の記者が取材していました。

アハバール紙 フセイン・アミン記者
「2人は高校卒業後、イランに留学しましたが、明確な目的を持っていたのは確かです。それは、航空工学を学び、ヒズボラの武装闘争に加わるためでした。」

2人は、ヒズボラのドローン技術者でした。ヒズボラの使命を帯び、奨学金を受けながら、イランでも特別な大学に通っていました。
イマーム・ホセイン大学。イラン革命防衛隊が管理・運営する大学です。学生の卒業式とされる、ホームページの映像です。直接の撮影は禁じられていて、内部の様子を詳しくうかがうことはできません。

取材に応じた革命防衛隊のキャナニモガダム元司令官は、この大学の設立にも関わったといいます。

イラン革命防衛隊 キャナニモガダム元司令官
「我々の考えやイスラム革命をよく理解する科学者なら、誰でもこの大学に招待します。彼らは、ここで学び、イスラエルに対抗する国々に技術を移転するのです。最高指導者ハメネイ師は、それを奨励しており、我々は支援を惜しみません。」

レバノンで中東情勢を長年分析している、ムハンナド・ハッジアリ氏。イスラエルやアメリカの軍事的な優位性を、ドローンが揺るがすと指摘します。

カーネギー中東センター ムハンナド・ハッジアリさん
「ドローンは確実に、地域の情勢を一変させています。ドローンを飛ばして、アメリカが支援する地域の中心部を攻撃する能力があり、それに対して、アメリカに、なすすべがなければ、それはイランの能力を物語るものとなるでしょう。ドローンは、地域の抑止力のバランスを塗り替えることになると思います。」

新たな“貧者の兵器”その脅威

武田:中東情勢に詳しい保坂さんは、その脅威について、このように見ていらっしゃいます。まず、「新たな貧者の兵器」。これはどういうことでしょうか。

ゲスト 保坂修司さん(日本エネルギー経済研究所)

保坂さん:ドローンは、非国家主体にとっては安価で、簡単で、効果的で、なおかつ正確に空からの攻撃ができるという、極めて大きな脅威になるわけですね。これまで中東のテロ組織でいうと、自爆テロというのがよく思い浮かぶと思いますけれども、自爆テロは、しばしば貧者の誘導爆弾というふうに言われていたんですが、実際、自爆テロリストは警戒厳重な場所には近づけないわけで、必然的に彼らは、いわゆるソフトターゲット、警備の緩い場所にしか攻撃できなかったわけですね。それが、ドローンを使うと一気に攻撃の場所が拡大していくと、選択肢が増えるということだと思います。

武田:サウジの石油施設のようなものも狙えるようになるということですね。

保坂さん:実際、2006年にサウジアラビアの同じ施設がアルカイダによって攻撃を受けたんですけど、そのときには実際、治安当局によって撃退されています。ほとんど被害はなかったんですけど、サウジアラビアのように、ばく大な軍事費用を使って防衛体制を築きながら、今回のように非常に安いドローンで攻撃を受けて、しかも、それが世界経済を揺るがすぐらいの影響を与えたという点は、やはり大きいと思います。

武田:そして中東ですが、ドローンの実験場になっているということなんですね。

保坂さん:もともと中東は非常に不安定で紛争地だったので、テロ組織も含めて、多くの新しい軍事技術を使おうとしていたわけですね。特にアメリカが2000年代になってから、実際、軍事ドローンを中東で使うようになって、それが効果を上げたわけです。それを見て、イランもドローン開発にどんどん加速していくと。その結果、中東がまさにドローンの実験の場になったということなんですが。ただ、今はもはや、実験の段階を通り過ぎて、実践の場になっているということですね。

武田:そしてもう一方、ドローン兵器の現状を研究されている岩本さんは、その脅威についてこの点を強調しています。「民生品は規制が難しい」。

ゲスト 岩本誠吾さん(京都産業大学法学部 教授)

岩本さん:ドローンというのは、民生用と軍事用に分けられていますけれども、境があいまいなんですね。例えば、民生用で災害用でも使われますし、趣味として、おもちゃとして使う場合もある。最近の民生用のドローンは高性能なんですね。それに例えば、カメラだけじゃなくて、爆薬をつけるだけで、それが自爆ドローンになるわけで。またVTRでもありましたように、各センサーとかプロペラとか、制御装置も通常の貿易で入手可能なわけです。ですから、テロリストのレベルでも、ホームメードの手作りの武装ドローンが造れるということですね。

世界に拡散 背景に米中対立

合原:実は、ドローンの拡散というのは中東だけではないんです。こちら、アメリカのバード大学ドローン研究センターが今年発表しました、軍事用のドローンの拡散を示す地図なんです。大型の攻撃用だけでなくて、小型の偵察目的などのタイプも含まれています。2010年には60だったんですけども、今年は95の国と地域と、およそ1.5倍に拡大していると指摘しています。日本も赤く塗られていますが、自衛隊が防衛装備品として、偵察や災害対応などのために7機種運用しています。今後、さらに導入が予定されています。

こうしたドローン拡散の大きな要因が、中国とアメリカの存在なんです。近年、中国はドローン開発に力を入れ、輸出を急拡大しています。今月、行われた建国70周年のパレードでも、人工知能を備えたものなど、最新のドローンが公開されました。バード大学によりますと、今や中東やアフリカを中心に、軍事用としておよそ30か国へ輸出しています。

これに対抗する形で、アメリカも動いています。去年、トランプ大統領は大型ドローンの輸出規制を緩和する措置を発表しました。これまでは、テロ組織への流出を防ぐことなどを理由に輸出を規制していたんですが、国内の防衛産業から中国のシェア拡大を懸念する声が広がりまして、輸出の緩和に踏み切りました。さらに、トルコやロシアも独自に開発をして、輸出に乗り出していまして、ドローンの拡散まだ続くとされています。

武田:岩本さん、こうして米中、各国が競うようにドローンを輸出するような状況になっているわけですけど、この拡大のリスク、どうご覧になっていますか?

岩本さん:国際社会においては、国際条約で武装ドローンの規制というのはないんですね。ただ、自主規制という国際的な枠組みがございます。アメリカは、その枠組み内で厳格な輸出規制をしていたわけですね。例えば、サウジは武装ドローンが欲しいんですけど、アメリカは売らない。その隙を突いて、中国がサウジに武装ドローンを輸出していると。そうなると、アメリカにとっては軍事産業からの突き上げといいますか、圧力があって、貿易の機会を奪われるということで、アメリカもトランプ政権になってから武装ドローンの規制を緩和し始めた。米中がそろって武装ドローンの輸出を加速させているというのが現状かと思います。

武田:今、ドローンの脅威は身近なところまできています。日本は、これからどう対応していけばいいんでしょうか。

空港・原発…さまざまな施設が標的に

ドローンは、さまざまな施設を標的にしています。
今年1月、イギリスの空港に何者かが民生用のドローン1機を侵入させ、運航が1時間以上ストップしました。

乗客
「ドローンが飛んできて、着陸できなかったの。」

イギリスでは、航空機にドローンが接近したという報告が、去年だけで125件と急増しています。

さらに、こちらは、去年フランスの環境保護団体がネット上に公開した映像。「スーパーマン」を模したドローンが向かったのは、使用済み核燃料が保管される原発の建屋です。ドローンを使って、原発の安全管理に疑問を投げかけました。

“フランス電力は発電所の安全管理を徹底するべきだ”

東京五輪・パラリンピックも…日本はどう備える?

こうした中、来年オリンピックを控えた日本でも対策が始まっています。東京オリンピック・パラリンピックで警備を担当する会社です。

セコム技術開発本部 高須雅勝マネージャー
「こちらが、不審なドローンの飛行を検知する、ドローン検知システムです。」

この会社では、3年前にドローンを検知するシステムを実用化。高性能のカメラやレーダー、マイクによって、150m先までのドローンを探知し、追尾します。来年のオリンピックを見据えて、さらなる改良を進めたいとしています。

セコム技術開発本部 高須雅勝マネージャー
「どこからどうやられるか分からないっていうのが、一番の脅威だと思っています。早期検出して、人が対応する時間を稼ぐっていうのが一番の課題。」

一方、海外から新たな防御兵器を売り込む動きもあります。2000年代からドローン兵器を使い続けてきた、イスラエルにある企業です。

「こちらのドローンは、妨害されてコントロールができない状態です。私たちがドローンのGPSを妨害しているのです。」

開発したのは「妨害電波」によってドローンを撃退するという新兵器。
まず、半径5km以内のドローンをレーダーやカメラで検知。危険と判断した場合は、電磁波を発射しドローンのコントロールを奪うことができるといいます。現在、紛争地域などで実戦配備を進めています。

ラファエル社 開発責任者
「こうしたシステムを必要とする顧客は世界中にいます。もちろん、わが社は日本のオリンピックも視野に入れています。」


4年前にドローン兵器の脅威について作品にした、さいとう・たかをさん。ラストシーンで描いたのは、主人公が電磁波を使ってドローンを撃退する姿でした。兵器が、新しい兵器を生み、悲劇が繰り返されていく現状に、やるせない思いを感じています。

劇画家 さいとう・たかをさん
「人間のばかばかしさは描いているつもり。こんなことしていたら、どうしようもないぞという。戦争ばかりにもし、いってしまったら、突き詰めて、人間が全滅するまでになる。もうそろそろ、気が付いてもいい。」


合原:関西空港でドローンのようなものが目撃されたという情報がありました。一時的に離着陸が見合わせとなり、39便に遅れが出るという事態も起きています。

武田:そのドローンへの対策ですが、防衛省は来年度の概算要求で、およそ28億円を計上しています。妨害電波で飛行をできなくする装置や、網で捕獲する機材を導入することが有効かどうか、検討する費用として盛り込んでいるということなんですが、取りうる対策として、岩本さんが挙げているのがこちらです。まずは、競技会場や主要空港上空での飛行禁止。それに加えまして、やはり電波妨害は検討されているということですね。

岩本さん:飛行禁止は、今の現行法で規定されているんですけど、※注 違法な飛行をしているドローンに対する対抗措置の具体的な規定がないんですね。電波法では、電波妨害が違法となっていますので、例えば警察とか自衛隊が電波妨害装置を使用することが、合法か違法かということは不明確で、例外規定として認めるような法改正が必要だと思いますね。もう1つは、今は誰でも購入できて使用できると。それを例えば、ドローンの購入者の年齢制限とか免許制とか、ドローン本体の機体の登録制といったことで、誰が使用して誰が購入したかということを明確にして、軍事転用されないようにする法規制が、今後、必要になるだろうと思います。


※注 この発言について、誤りがありましたので、訂正します。電波法では、電波の妨害をしてはならないとされていますが、地震などの災害や暴動、その他の非常事態においては、「非常通信」として適用除外となります。そのため、現行の電波法でも、違法な飛行をしているドローンへの対応については、「非常通信」として、電波妨害をすることは可能です。従いまして、現行法の中に対抗措置の具体的な規定はあります。

どう向き合う?“新たなテロの時代”

武田:ドローンが軍事目的やテロに使われる事態が拡大していますけれども、こうした状況にどう歯止めをかけるべきなのか。キーワードを書いていただきましたので、お示しください。

岩本さん:「共通認識」ということで、我々は、やはり武装ドローンの拡大が国際緊張を増幅させるということを、もう一度、共通認識を持つ必要があるだろうと。そして、国際規制の自主的な国際枠組みを、もう一度、再構築する必要があるというふうに思います。

武田:保坂さん、新たな貧者の兵器というお話がありましたけど、その貧者の兵器を使ったテロの時代に、どう向き合えばいいのか。キーワードをお願いします。

保坂さん:私のキーワードは、「ヒトゴトではない」ということです。軍事ドローンの利用を減らすためには、そもそも紛争を解決しなければならないというんですけれども、これは多分なかなか難しいので、そういう時代に今、我々がいるということを意識することが重要なんだと思います。かつて、官邸、あるいはアメリカのホワイトハウスにドローンが落ちるという事件もありましたし、最近ではデンマークで警察がドローンによって襲撃を受けるという事件。また、ISによって感化された人が、シリアにドローンを密輸しようとしたこともありました。それが、ヨーロッパ、あるいは中東での出来事ではなくて、場合によっては日本にもやってくる可能性があるということを、やはり認識する、意識することが重要だと思います。

武田:さまざまな利便性があるドローンですけれども、それが世界の分断や混乱を、さらに深める可能性があるということを自覚しなきゃいけない。

保坂さん:そうですね。ドローンは技術としては、日本の未来にかかっているものなので、非常に悩ましいところではあると思います。

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