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2019年10月2日(水)

追跡! ネット通販 やらせレビュー

追跡! ネット通販 やらせレビュー

生活に欠かせない、アマゾンなどのネット通販。頼りになるのが“5つ星”“1つ星”などのレビューだ。しかし… 「レビューは高評価なのに、買ってみると性能がイマイチ」「よく見るとレビューの日本語がおかしい」などの声が相次いでいる。理由を調べていくと、有料で偽のレビューを書く人々の存在が明らかになった。この“やらせレビュー”、アメリカや中国では有罪判決が出ており、日本でも景品表示法違反となる可能性がある案件。いったい誰がレビューを操っているのか? 国内外を徹底取材すると、信じられない実態が明らかとなる。ネットの闇に迫るシリーズ第5弾。信頼できるはずのレビューをめぐって何が起きているのか、徹底追跡する。

出演者

  • 麻木久仁子さん (タレント)
  • 宮田裕章さん (慶應義塾大学 教授)
  • NHK記者
  • 武田真一 (キャスター) 、 高山哲哉 (アナウンサー)

追跡!ネット通販 やらせレビュー

追跡の始まりは、福岡から。36歳の会社員が取材に応じました。

会社員(36)
「USBに、アイフォンのガラスフィルム。これはたぶん、腕に巻く感じですよね。」

これまで、60以上の商品でやらせレビューを書いてきたといいます。

会社員(36)
「ここにある商品、全部レビュー書いているんで。」

スマホバンドについて男性が書いたレビュー。

“走る時のストレスも軽減。しっかりしているので、外れる心配もありません!”

ずいぶん良い商品のように書かれていますが…。

取材班
「これは本当に使った感想?」

やらせレビューを書いた男性
「使った感想じゃなくて、1回も使ったことないし、開けたこともなかったんで、使った感を出したかったというか。」

取材班
「ご自身は、走ることとかあるんですか?」

やらせレビューを書いた男性
「いや、ないですね。走らないです。だから、すべて想像ですね。」

毎月、アマゾンで商品を10個ほど購入。高い評価のレビューを書くと、商品代と報酬をもらえるといいます。

手に入れた商品は、そのままフリマアプリで転売。これまでに6万円近くを稼ぎました。

やらせレビューを書いた男性
「今の収入に、もう少し欲しいなとか、そういう考えから始まりましたね。(知り合いでは)主婦の人とかが本格的に副業としてやったりとか。結構います。」

レビュー売買の情報を、いったいどこで仕入れるのか。男性はSNS上の、あるページを見せてくれました。なんと、サイト上で堂々とやらせレビューの募集が行われています。

レビューを書きたい人は、呼びかけに応じて書き込みをする仕組み。どんな人がレビューを募集しているのか、プロフィールを見てみると、中国風の名前が多いようです。
募集のからくりを調べるため、連絡先を公開している人に電話取材を試みることに。

取材班
「もしもし、こちらは日本のNHKですが。」

(通話の切れる音)

取材と伝えると皆、口を閉ざしてしまいます。
そこで、レビューを書いてみたいと聞いてみると。

取材班
「もしもし。」

「こんにちは。」

取材班
「レビューを書いたら、お金をもらえると聞いて…。」

「レビューを書いて写真を送ってくれれば、2日以内に商品代を返金するわ。私はレビューを集める仲介業者なの。たくさんの出品者とつながっているのよ。」

仲介業者だと名乗る女性。出品者から依頼されSNS上でレビューの書き手を募集しているといいます。

今、レビューを集めているのはイヤホンなど12の電化製品。どんな物なのか、実際に購入してみることにしました。
3日後。届いたのは、中国製のUSBケーブル、イヤホン、モバイルバッテリー。見た目は至って普通です。

詳細にチェックしてみると、イヤホンは接続が甘いものの、問題なく使えました。続いてモバイルバッテリー。こちらは、いくら充電しても満タンになりません。
正直にレビューを書いてもよいのか。仲介業者に再度、電話取材。

取材班
「レビューに3つ星をつけても、報酬をもらえますか?」

「それはダメよ。似たような商品のレビューを参考にして、5つ星をつけて!」

取材班
「品質に問題があるから、5つ星はつけられないです。罪悪感はないんですか?」

「意味のない質問はしないで!私は大学を卒業して、3年もたっているのよ。仮に罪悪感があったとしても、あなたに『いけないことをした』と話して何になるの!!バイバイ。」

電話を切られてしまいました。
仲介業者への取材はここでストップ。いまだ全貌が分からないため、今度は商品の出品者を手がかりに追跡を続けます。商品の送付元を見ると、日本国内にあるアマゾンの倉庫からでした。そこで、出品者の登録情報を見ると、ほとんどが中国。中でも、「深セン」の住所が目立ちます。
深センは中国のシリコンバレーとも呼ばれ、先端企業や工場が集積する一大ハイテク都市。出品者はどんな人なのか。まずは、イヤホンの製造元を直撃取材してみます。

取材班
「この辺だと思うんですけど。」

「その住所だと…あっちだよ。」

取材班
「登録された会社名と違うみたいだけど…ノックしてみましょうか。」

男性
「どうぞ。どうぞ入って。」

取材班
「こんにちは。」

男性
「面接の人ですか?」

取材班
「違います。お聞きしたいのですが、ここは(イヤホンの会社名)ですか?」

男性
「違うよ。」

中にいたのは、休憩中とおぼしき2人の男性。

取材班
「日本のアマゾンで商売をしていますか?」

男性
「知らないよ。住所が盗まれたのかなあ。」

どういうことなのか。登録された番号に電話してみると。

取材班
「ここの住所に会社はありませんよね。」

「よく分かりません。」

取材班
「NHKなんですけど、アマゾンに登録している住所を確認したいのです。」

(通話の切れる音)

どうやら、“他人の住所を勝手に使っていた”と見られます。
その後も取材を続けると、ようやく実在する出品者を突き止めました。

取材班
「ここはモバイルバッテリーを扱っている会社ですよね?実は、私たちは日本のNHKです。あなた方は、やらせレビューをしていますか?」

「正直に言いますが、少ししかしていません。仲介企業を使っているような大企業もあるかもしれませんが、私たちは小規模にやっているだけです。もっと大きい企業を回ってくださいよ。」

やらせレビューに関わっていることは認めましたが、詳細は語りませんでした。
そうした中、取材班に情報が。ある中国人出品者が、インタビューに応じるというのです。現れたのは、深センの家電メーカーの日本支社に勤める女性。

中国家電メーカー 社員
「これもやらせ。やらせ。全部やらせ。」

これまで、中国人留学生や日本人を使って、数百件のレビューを書き込ませてきたといいます。

中国家電メーカー 社員
「レビューは、形を変えた広告費。なぜなら、日本人はレビューがないと、まずその商品を買わないから。食事でも宝くじでも、行列が長いほどそこに行きたがるのよね。自分で判断する意識(が低い)。」

武田:ネット通販で多発する「やらせレビュー」。今回は、日本最大の売上高を誇るアマゾンジャパンで横行する実態について考えていきます。通販で毎日のように買い物をされるという麻木さん。レビューって、これまで信じていらっしゃいましたか?

ゲスト 麻木久仁子さん(タレント)

麻木さん:もちろん信頼できるレビューもたくさんありますし、でも、やっぱりこれはどうだろうと思うレビューもあるし。それを読み解くところから、ネットのお買い物は始まるといっても過言ではない。

武田:それなりに見極めていらっしゃると。

麻木さん:そうですね。結構、とっぷり眺めます。ただ、あんなに大っぴらにやらせを書く人を募集しているとかは知らなかったので、ちょっと驚きましたね。こんなに堂々とやっていたんだと。

高山:我々も取材して驚きの連続だったんです。書き手と、それから仲介業者、出品者、組織的にやらせレビューを生み出しているという実態が浮き彫りになったんですが、これだけじゃないんです。さらに取材を進めると、より巧妙に、大量のやらせレビューが生産されている現場にたどり着きました。貴重な映像を入手しました。
中国にあるビルの一室なんですが、なんと大規模なレビュー工場だというんですね。無数にスマートフォンが並んでいます。誰も手を触れていないのに、画面が勝手に動いています。

1台の画面をよく見てみると、「アイフォンチャージャー」と入力を自動的にしています。この映像の提供者によると、これは特殊なプログラムを使って、人間の代わりに商品を購入している様子なんだそうです。

麻木さん:やらせレビューを書く人を募集する必要もないと。

高山:購入を終えると、スマホは自動的にレビューを書き込み始めるんです。この仕組みで、スマホの数だけレビューを量産できちゃうと。

同様のシステムで大量のレビューを売っているという業者に、出品者として接触しました。

取材班
「最近、1日に500件ものレビューをつけられている商品がありますよね?」

レビュー売買ブローカー
「ええ、私たちにもできるわよ。世界中のアマゾンでレビュー操作ができるわ。1レビュー40元(約600円)だけど、遠くから来てくれたので安くしてあげるわ。」

高山:さらに話を聞くと、アマゾンが怪しいレビューを削除することは織り込み済みだというんですね。

レビュー売買ブローカー
「ビクビクしないで。大規模にやらないと何もできないわよ。レビューが消されるのなんて普通よ。その分、新しく書けばいいだけ。何の役にも立たないものでも、レビューが多ければ売れるのよ。消費者とはそういうもの。」

武田:ずいぶん見くびられたものですよね。

麻木さん:消すスピードより多く出せばいいと。

武田:レビューって、直接商品を手にとることができない通販では、信頼の基盤だと思うんですけど、それを揺るがす行為で、本当に憤りを感じます。宮田さんも通販で失敗された経験があるそうですが、どういうふうに捉えていらっしゃいますか?

ゲスト 宮田裕章さん(慶應義塾大学 教授)

宮田さん:価格の低いものだと油断して踏んでしまいますが、やはりじわじわとイライラがきますよね。こんなときに、やはりオンラインストアやグルメ旅行、ホテルの予約とか、サイトの質を高めるために良質なレビューは不可欠ですが、アマゾンの成長を後押ししたのは、このレビューデータの活用です。普通の購買データはどこにでもあるんですが、彼らはコストをかけて良質なレビューを収集すると。それによって、Aという商品を買った人がBもいいと感じると。こういう顧客体験をデータによって引き出していると。インターネットが登場する前から、商品の取引には常にフェイク情報が入っていました。悪貨が良貨を駆逐する。こういう言葉が示すとおり、フェイクレビューというのはコミュニティーの信頼に対する破壊行為です。アマゾンも定期的に不正アカウントを削除するなどの対応をとっているんですが、いたちごっこが続いています。

武田:サイバーセキュリティーやネット犯罪を多く取材している斉藤記者にも聞きます。このやらせレビュー、どのぐらい広がっていますか?

斉藤記者:世界14か国で販売している、ある電化製品のレビューをすべて調べてみたんです。すると日本を含めて、9か国でやらせが疑われる不正なレビューがついているのが分かったんです。やらせイコール粗悪品とは限らないんですが、世界中に広がっていることが分かりました。

武田:これって違法じゃないんですか?

高山:今回調べてみたんですが、アメリカと中国ではすでに法律が整備されています。アメリカでは、仲介業者と出品者に14億円の支払い命令、書き手1000人を提訴するという動きもあります。中国では逮捕者も出ています。じゃあ、日本はどうなの?実は、レビューを規制する法律まだ整備されていないんですが、ウソのレビューを書かせるという行為は「景品表示法違反」にあたる可能性があると。

武田:アマゾンは対策を何かとっているんですか?

高山:ガイドラインをじっくり読んでみると、いくつか触れられています。「対価を目的としてレビューを書く行為は禁止」、「やらせレビューと分かれば削除」、「違反した人のアカウントも停止」となっています。しかし実際には、やらせレビューが横行しているというのが実情なんですよね。

武田:麻木さん、レビューを信じたり信じなかったりと。どんなところに具体的に気をつけているんですか?

麻木さん:完全に見極めることは難しいんですけど。例えば、似たような商品が並んでいるとき、突出しているものがあるわけじゃないのに、ほかは20~30個レビューがついている。1つだけ800ついていたみたいになると、「あれ?ちょっとおかしいな。なんでこれだけたくさんついているの?」と思ったり。それから、中の分布を見たときに星5ばかり、星1ばかりみたいな、分布がおかしいなというときは少し用心してみたり。あとは、どんな人がレビューを書いているかなと、時にはレビュワーが過去にどんなレビューをしているか見に行ったりすることもあります。そうすると、やはりよほど怪しいと、どこかの段階で気付けるかなとは思うんですけど。

武田:なかなかしっかりチェックしていらっしゃいますが、やらせレビューを見分ける方法は。

斉藤記者:ITの専門家に、やらせの見抜き方を聞きました。まず、レビューについているおかしな日本語。これはワイヤレスイヤホンと、ある美容器具に実際についていた表現なのですが、読んでみていただけますか。

麻木さん:“私はそれを私の耳に装着する。”“私は初日にたくさんのことを吸うことができます。”

斉藤記者:2番目は毛穴吸引器についていたレビューです。

麻木さん:鼻の頭の毛穴とか吸うやつですね。

斉藤記者:不自然な文章ですが、翻訳ソフトを使って海外の言葉を日本語に翻訳したので、こういった不自然な状態になっていると。2番目なんですが、先ほど麻木さんも気にされているという、星の数の分布ですね。やらせのレビューが多い場合、レビューの分布が星5と星1に集中したりするんです。星5のやらせレビューを大量につけて売り出したんだけど、品質が悪いので、買った人が正直な感想として星1をつけるという形で、こういう分布になるということです。

最後が日付の偏りです。麻木さん、レビューが書かれた日付は見られますか?

麻木さん:できるだけ新しいレビューを参考にするようにしています。古いものは商品が変わっているかもしれないので、新しいものを見ています。

斉藤記者:そこで、同じ日付で大量の投稿がある場合には、疑ってほしいですね。あるイヤホンのレビューを調べてみると、こちらのグラフ、なんと1日に200件以上もついている日があったんです。

レビューというのは、通常100個売れて、そのうちに2、3個つけばいいといわれているのに、レビューがつかない日もあったり、100件つく日があったり。これは明らかに異常な分布をしています。
この見抜き方を教えてくれた専門家が、参考になるサイトを公開してます。レビューがやらせである確率がどれくらいなのかをチェックする、その名も「サクラチェッカー」というサイトなんですけど、商品のURLを入力すると独自の指標でサクラ度をチェックして、“この商品のサクラ度は90%です”という形で教えてくれるんですね。今年7月に公開されて、すでに10万件の商品がチェックされたんですが、そのうちの11%の商品でレビューのサクラ度が極めて高いと判定されているそうです。

武田:こうして消費者が自分で身を守る対策はあるにはあるんですけども、やっぱり仕組みとして不正なレビューを防ぐ方法を考えるべきじゃないですか。

宮田さん:そのとおりですね。先ほども商品の日付とありましたけども、たまに発売前にレビューがついていたり、やらせ業者が早く帰りたかったのかなと。あからさまなものもありますが、定期的にやはり不正アカウントというのは削除されます。この削除率が近年一貫して高いのが、イヤホンとかウェブカメラ、あるいはスマートフォンのアクセサリーですね。いずれも多くの企業が入り乱れていて、そして商品のサイクルが早い。こういったものには注意する必要があると思います。近年、急速に進化した多言語翻訳で、これは我々の生活を便利にしたんですが、当然やらせ業者も便利にしてしまっているんですね。非常に見分けがつきにくくなっています。まさに個人の対応だけでは限界があるということだと思います。

高山:信頼が揺らいでいるのは、評価を必要以上に高めるアゲレビューだけではなくて、低評価のサゲレビュー。こちらも今、横行しているんです。

去年脱サラし、アマゾンでヘッドライトを販売している松田大輔さん。機械メーカーのエンジニアだった経験を生かし、商品をみずから設計・販売しています。

しかし、今年7月予期せぬ出来事が起きました。

ネット通販出品者 松田大輔さん
「これは、弊社の商品が爆発したっていうレビューですね。」

“敷地に使うとき、爆発しました。ありえないです!弁償を求めるのに無視されました。最悪です!”

突然つけられた星1つのレビュー。数日後、商品が返品されてきたのですが…。

ネット通販出品者 松田大輔さん
「全く使われていない未使用品だったんです。もちろん爆発なんてしていなかったですし、電池もそもそも取り付いていなかったので、これはおかしいなと思って。」

アマゾンでは、安全が疑われた商品は、いったん販売が停止されることがあります。松田さんも急きょ販売停止に。折しも、年1回のセールに向け借金をして、商品を大量に準備したところでした。

ネット通販出品者 松田大輔さん
「もしも、このまま(出品)停止になってしまったら、食べていけるのかなっていうのは、正直心配になりましたね。」

さらに、このころ1000通を超える嫌がらせメールも届いていました。中には、ぎこちない日本語で脅すような内容も。

“あなたの製品を攻撃しなければなりません。あなたは非常に邪魔です。”

悪質な嫌がらせとして弁護士に相談し、警察にも届け出。なんとか販売を再開できましたが、損失は100万円に上りました。

ネット通販出品者 松田大輔さん
「恐らくは、同業他社がやっていると思われます。そういうのはリスクじゃなくて、単純に犯罪なので、ちょっとそれは、正常とは言えないですよね。」

商品をいわれなくひぼう中傷するサゲレビュー。攻撃に耐えかねて、みずからもレビュー操作に手を染めてしまう人も出始めています。

フィットネス用品を販売する男性
「(私の会社は)大体2000円くらいの商品を売っていますので、1000個で(月商)200万円くらい。」

フィットネス用品を販売する男性。この夏、星1のサゲレビューを立て続けにつけられました。売り上げは3割減少。悩んだあげく、ブローカーに金銭を支払い、星1レビューの削除を依頼することに。1件削除で、およそ1万2000円。10万円ほどを投じて売り上げは元に戻りました。

フィットネス用品を販売する男性
「できるだけルールを守ってということは思っているんですけれども、ただ、ルールを守らない相手と闘っていくには、自分もギリギリのところまで自分のレベルを落として闘っていかないと。」

取材班
「心が痛むってことはない?」

フィットネス用品を販売する男性
「悪いというよりは、自分の商品を守るためには仕方ないことだと思っています。」

武田:レビューの削除まで請け負う業者が出てきているとすると、何を信じればいいか本当に分からなくなりますが、アマゾンの責任どう感じていますか?

高山:今後について問いました。回答がきました。“アマゾンは、専門チームによる調査とテクノロジーを組み合わせて24時間365日体制で不正レビューのブロックや削除をしています。さらに不正検知の仕組みを改善し、引き続き、取り組んでいます。”

武田:買い物という日常的な行為さえ、膨大な情報に踊らされる時代になっていますが、賢い消費者になるために何をよりどころにすればいいのか。麻木さん、どうお感じですか?

麻木さん:難しいと思うんですけど、お買い物をするときに限らずネットの社会は、もうやらせとかフェイクとかデマとかが付き物というか、付いてきてしまって、人の悪意だとか欲望だとかをどんどん拡大してしまう性質がそもそもあるんだということを分かったうえで、時々、小さい失敗を繰り返しながらリテラシーを磨いていく以外、個人としてはない。文字を見ると信じちゃいますけどね。文字で書いてあるものをそのまま信じないという、それぐらいしか、いち消費者としてできることはあまりないんですよね。

武田:リスクを意識して、便利さと引き換えにするということですかね。宮田さんはいかがですか?

宮田さん:マーケット規模の拡大が先行する中で、国境を越えた不正という新たな問題が起こって、顧客体験が損なわれたというのが今回のケースですけども。ただ、変化する条件の対応をグローバル企業だけに任せるのではなく、日本側もやはり、この問題を考えていく必要があると思います。例えば日本は、文化や信頼、それは幻想のときもありますけど、こういったことを前提に、ただつなぐということをITの役割だと考えがちだったんですが、これからは多言語翻訳などのテクノロジーで、さらにコミュニティーが崩されていく中で、信頼をデザインするということも必要になるかなと思います。これは問題が起こったあとに消費者を守るということだけではなくて、問題が起こる前に発生しないようにする。例えば、フェイクレビューを書かせないようにする対応も必要です。さらには、国境を越える悪意に対する制度的な対応も必要なんですが、先ほどの麻木さんの話にもあったように、我々側、ユーザーが学ぶこと、支え合う仕組み、こういったものも考えていかないといけないと思いますね。

武田:これから新たな手口とのいたちごっこですけども、そこは、やっぱりテクノロジーで乗り越えようと努力をしなきゃいけない。

宮田さん:テクノロジーであったり、あるいは社会の仕組みであったり。国境をすでに越え始めているので、そこに対する信頼を守る、そして作る。ここを意識した活用が必要になるのかなと思います。

斉藤記者:こういった、罪悪感なく書き込める偽の情報に、いつも我々がさらされているんだということを考えなければならないなと思いました。

武田:一人一人気をつけて。麻木さん、毎日買っていらっしゃるそうですが。

麻木さん:頑張ります。

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