クローズアップ現代

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2019年9月25日(水)
「ウサギの彫刻」に100億円!? 現代アート高騰の舞台裏

「ウサギの彫刻」に100億円!? 現代アート高騰の舞台裏

いま世界で現代アート作品の高騰が続いている。5月、アメリカの作家が製作した「ウサギの彫刻」がオークションにかけられ、存命作家史上最高額の100億円で落札されたのだ。アメリカでは、ギャラリー経営者や評論家、コレクターたちが協力して有望なアーティストを発掘し市場価値を引き上げるシステムが構築されていて、そこに世界の投機マネーが流れ込んでいるという。一方で中国は国が旗振り役となり自国アート作品の価値向上を目指している。日本でもアーティストの活動を後押ししようと文化庁が動き出した。現代アートの「値段」はどう決まるのか?日本、アメリカ、中国の現場ルポから浮き彫りにする。

出演者

  • 宮津大輔さん (アートコレクター/横浜美術大学教授)
  • 宮田裕章さん (慶應義塾大学教授)
  • 武田真一 (キャスター)

現代アート100億円! 高騰の裏側

「4500万ドルが出ました。」

「4800万ドルが出ました!」

今年5月、アメリカ・ニューヨークで行われたオークションで、ある美術品が驚きの価格で落札されました。

「8000万ドルで落札!(手数料込みで9100万ドル 約100億円)」

日本円にして、およそ100億円の値がついたのが…こちらの現代アートの作品。

高さ1メートルほどのステンレスでできた、風船ウサギの彫刻です。存命中のアーティストの作品としては、史上最高値となりました。

オークション担当者
「あの夜のことは忘れられません。私の仕事人生で最も興奮した瞬間です。」

近年、高騰する一方なのが現代アートのお値段。村上隆の彫刻、およそ16億円。アンディ・ウォーホルの作品、およそ36億円。ファッション通販サイトの創業者、前澤友作さんが購入したこの油絵は、なんと123億円!なぜ、現代アートにこんな高値がつくのでしょうか。芸術の値段が決まるその裏側に迫りました。

アメリカ・ニューヨーク。街のそこかしこに斬新なオブジェが展示されている、世界の現代アートの中心都市です。100億円の風船ウサギの彫刻を作ったのはジェフ・クーンズ、現在64歳。

アメリカのポップカルチャーをテーマとした作品がことごとく高値で取引される、現代アートの申し子です。クーンズに詳しいアートアドバイザーのリサ・シフさんを訪ねました。
100億円で落札された風船ウサギの彫刻。しかし、作られた当初の価格は400万円でした。リサさんは、作品の価格を押し上げるのに重要な役割を果たした存在があるといいます。

アートアドバイザー リサ・シフさん
「アーティストを見いだすのがギャラリーの仕事です。ギャラリーがアーティストを育てるシステムがあるのです。」

ギャラリーとは美術品の展示や販売を行う画廊のことです。しかしアメリカでは、才能あるアーティストを発掘し、育てることがとりわけ重要な役割です。ギャラリーは、これぞというアーティストを見つけると、つきあいの深い美術関係者に呼びかけ、チームを作って売り出します。

ギャラリー経営者
「ギャラリーに行けば、次にスターになるアーティストが誰なのかわかります。ギャラリーの役割は、アーティストを見いだし、光を当てることです。」

あのクーンズも、風船ウサギの彫刻を作った1986年、大手ギャラリーに見いだされ、チームでのサポートが始まりました。

まず作品に価値を与えたのが、有力な批評家の評論です。

“クーンズは、まさに俗っぽい王子様である。クーンズの才能は、階級、人種マネー、セックス、卑わいさ、美しさ、パワー、欲望という問題を提示する、謎めいた泉なのである。”

抽象的で難解な現代アートは、影響力のある批評家が作品に解釈を与えることで、まずその価値を高めます。
そして、クーンズの作品の価値を決定的なものにするのが、コレクターです。ニューヨークの不動産王にして、現代アートのコレクター。エドワード・ミンスコフさんです。

ニューヨークの不動産王・コレクター エドワード・ミンスコフさん
「これは奈良美智の作品。これは村上隆の作品。これがジェフ・クーンズの作品です。ここ最近のものでは最高傑作です。」

こちらの巨大な風船ウサギの彫刻も、ミンスコフさん自慢のコレクションです。

名のあるコレクターが作品を所有していることがクーンズの信用を高め、現代アート作家として最高位の評価を得ることになりました。

ニューヨークの不動産王・コレクター エドワード・ミンスコフさん
「コレクターが重要な役割を果たすことが少なくありません。これぞというアーティストを世に出し、人々にその作品を知らしめることで、それを買いたいと思う人を増やしていくのです。」

有力な批評家による評論、そして、有名コレクターが所有したという来歴。それが、ひとたびオークションに出品されると一気に世界中のマネーが殺到。瞬く間に、バブルさながらの100億円という価格にまで高騰しました。

クリスティーズ 現代アート部門責任者 アレクサンダー・ロッターさん
「このオークションには34もの国から参加者が集まりました。この20年でアート市場の国際化は著しく進み、以前は参加しなかった国々がオークションに群がっています。」

ギャラリーに見いだされ、成功への切符をつかもうと、若いアーティストが国内外からニューヨークにやってきます。オレンジ・リーさんもクーンズのようなスターを夢見て3年前、台湾からやってきました。

この日、リーさんはアーティストとして重要な局面を迎えていました。海外とつながりを持つ著名なギャラリーに見せるための、こん身の1枚を描いているのです。絵が認められれば、ギャラリーと契約を結ぶ可能性も出てきます。

現代アーティスト オレンジ・リーさん
「この絵に私の人生がかかっているの。」

ギャラリーに絵を見せる日。ギャラリー経営者のジョージ・バージェスさんです。

現代アーティスト オレンジ・リーさん
「これが作品です。えーと…あなたに初めて絵を見せるってことで…なんていうか…ちょっと…。」

ギャラリー経営者 ジョージ・バージェスさん
「いやいや、気に入ったよ。筆の運びにエネルギーを感じるし、色使いや表面の質感もいいよ。」

ギャラリーは、リーさんとの契約を前向きに検討することを決めました。

現代アーティスト オレンジ・リーさん
「やった!こんなにうまくいくなんて。とにかく一番大事なのは、私のようなアーティストを信じてくれる人がいるということなんです。」

中国の国家戦略 現代アート高騰の裏側

アメリカに負けじとアート大国を目指すのが中国です。3年前、習近平国家主席は国を挙げて芸術を後押しすると宣言しました。

習近平国家主席
「中華民族の偉大なる復興の時代に、最高の芸術を生み出す努力をしよう。」

その柱となるのが美術館の建設です。補助金や優遇税制も導入して、民間による美術館の建設を強力に支援。国内のアート市場を活性化しようとしています。
背景には、中国が内戦や文化大革命によって、歴史ある文物や美術品の多くを失ってきたことがあります。
中国は、失われた美術品にかわる現代アート作品の制作を推し進めているのです。中国を代表する画家の胡岩(こがん)さん。描くのは中国伝統の山水画ですが、構図を決めず、思いのまま墨を紙にぶつけていく抽象的な表現が特徴です。

現代アーティスト 胡岩さん
「西洋の乱れた現代アートは、中国にたいした影響を与えません。私たちには、伝統文化の根があります。習近平主席もおっしゃる通り、未来の中国はさらに開放的な態度で世界を包み込み、より活力あふれる文明で世界に貢献するでしょう。」

今や中国のアート市場は世界第3位の規模。中国のオークションハウスは、売り上げ世界トップ5の2社を占めています。政府は資産家に対し、中国の現代アート作品を購入するよう奨励しています。
さらに中国は、現代アート作品の海外展開にも動いています。それを後押しするのも美術館の役割です。美術館の副館長が注目している、現代アート作家。巨大な作品の購入をフランスの美術館に打診しているといいます。

美術館 副館長 杜曦云さん
「経済がここまで発展したら、次は文化ですよ。中国の文化は、中国人みずからの手で押し広めるべきです。」

現代アート100億円! 高騰の裏側

武田:分からない。なぜあのウサギが100億円もするのかって、ちょっとまだ分からないんですけれども。取材した宮本さん、分かる?

宮本ディレクター:それこそが現代アートがおもしろいとされている理由なんですね。

武田:分からなさがおもしろい。

宮本ディレクター:そうですね。作品の背景であったり、作品が美術の歴史の中でどのような意味があるのかと。そういうことを批評家の方、評論家の人、そういう人たちが実際に言葉で表現するという。そういうことによって価値が高まっていくという。
こちら、ウサギの彫刻の批評の文の例になるんですけども。評論家の方がどのように解釈したのかと。例えば、ウサギですね。見たまんまですけれども。これって、どういう意味があると思われますか。

武田:えっ?ウサギだから、かわいい。

宮本ディレクター:かわいいウサギ。そうですね。じゃあこれ、評論家はどう解釈したのかといいますと。1980年代の爛熟したアメリカ文化。その象徴である「プレイボーイ」。これを表現しているということなんですね。

武田:「プレイボーイ」って雑誌のロゴマークになっている、あのウサギってことなんですか?

宮本ディレクター:はい、そうです。

ゲスト 宮津大輔さん(アートコレクター/横浜美術大学教授)

宮津さん:アメリカが、もうかっている頃ですから。この作品が作られたときって、映画の「ウォール街」が作られた頃なんで、やっぱりちょっとバブルで、あの映画を見ると分かりますけど、女性関係も盛んな感じなので。

武田:そして、ピカピカの表面。

宮本ディレクター:そうですね。ピカピカの表面。ステンレス製の彫刻でして、表面が磨き上げられているという。これは、どういう解釈がされたかというと。

武田:きれい。

宮本ディレクター:見る人の心情を映し出す鏡の役割を果たしている、ということなんです。

武田:じゃあ、これは見るということも含めて作品の一部ってことなんですか。見た人が映るということも含めて。

宮本ディレクター:そういうことでもあります。そして最後、手に持ったニンジンですね。ウサギといえばニンジンと。これは、どのような解釈をされているのか。実は深い意味が込められていまして。実はこれ、男根崇拝を表す。

武田:男根崇拝。なんで?

宮本ディレクター:これはですね、ウサギが多産の象徴であったりとか。そういうことも表現されているというので、暗喩、隠喩的に込められている意味ということでもありますね。

武田:現代アートに詳しく、みずからもコレクターという宮津さん。現代アート、どういうふうに楽しめばいいんでしょうかね。

宮津さん:難しく考えすぎない。自分の価値で見るっていうのが現代美術と向き合う最初のステップだと私は思っているんですけどね。でも、深くいろんなことを考えてもいいっていうところがおもしろさですよね。

ゲスト 宮田裕章さん(慶應義塾大学教授)

宮田さん:そうですね。まさに現代美術というのは既存の価値観というものを、ある種、斜めだったり、あるいは打ち壊すっていう、この中の自由さだったり、あるいは方向性を喪失したとも言われていますけれども、この中で多様な価値観を表現していく。ここに我々は、いろいろなものの見方で楽しんだり、あるいはそれを美しいと感じたりしていく。

武田:スリリングに思ったり…。

宮田さん:現代美術だと思います。例えば、今日の私の格好なんですが。

武田:そうですね。今日はいつもに増して…。

宮田さん:これスターリング・ルビーというアーティストのスタジオから、直接買ったものなんですが、例えば、これを見て私の家族は、お前はゾンビみたいだから一緒に歩きたくないと。これも正しいものの見方だと。

武田:ちょっとスプラッター…。でもこれは、そうじゃないんですね。血ではなく。

宮田さん:アーティストが表現したい志と、私がクリエーションの中で表現していきたいもの。これを重ねて着るということでアートというものを楽しんだりしていく。

武田:いろんな楽しみ方があるというのは分かったんですけれども、でも、それが100億円という値段になってしまう。これはどうなんですか。

宮津さん:だいたい多くの人が誤解していて、美術にお金の話を持ち込むのは不浄であるとか、よくないって話があるんですけど、美術品というのは人類の叡智の発露である我々の宝物であると同時に、やっぱり金融商品の側面があるわけですよ。だから、システィーナ礼拝堂とか、要するにモーセ像とか、あれはみんな受注生産なんですよ。教皇がお金を出してパトロンとして作ってください。そのときからそういうことになっていますし、王様が自分の権力を示したり自分でコレクションしたりと。だから、もともとそういう歴史がある。

宮田さん:今、宮津さんがおっしゃっていただいたように、それはやっぱりビジネスであり、それを、なりわいとする人たちがいて、お金が回って初めてこういった文化というのができていくと。なので、やはりトップ・オブ・ザ・トップを育てるうえでも、アートというものの中で、それをお仕事にする人たち、あるいは、そこに憧れる人たちがより多く生計を立てられるような1つの生態系、これが必要になってくるのかなというふうに思いますね。

武田:芸術作品が取り引きされる市場規模の大きさを国別に比較したものです。最も大きい市場があるのはアメリカですね。2位はイギリスなんですが、実は中国が、そのイギリスに並ぶような勢いで成長してるということなんですね。

宮津さん:世界第2位の経済大国の中国が、経済でそこまでいって文化をやらないわけがなくって。美術によって、いろんな人に親近感を抱いてもらうとか。それから、1つの美術館があることによって、そこに世界中から観光客が来てお金を落とすとか。ある意味で、文化というのは1つの国の安全保障上の大事な部分もあるわけです。

武田:一方で、日本の市場が世界の中でどんな位置にあるかというと、この白いところ、その他というところで、実は1%以下しかないといわれているんですね。なぜこんなにも日本の市場規模は小さいのか。そこには日本が抱えている課題がありました。

現代アート“小国”日本の課題は

日本の現代アートの現状を危惧するアーティストがいます。彫刻家の名和晃平さんです。

鹿の剥製を透明な球体で覆った作品。シリコーンオイルの泡が織りなす不思議な空間を体感する作品。ユニークな素材を駆使する作風が海外で高く評価されています。
名和さんは、日本にはアメリカのように若い才能をチームで育てる仕組みが十分整っていないと考えています。

彫刻家 名和晃平さん
「アーティスト、評論家、ギャラリー、美術館、美術の大学、全部有機的につながっている世界だと思うんです。その循環が、まだ少しうまくいっていないのかなと感じます。ギャラリーがもう少し強くなったほうがいいと思いますし、アーティストが、より強気で勝負できる環境というものを、周囲が支援していくことは非常に必要だと思います。」

日本にも、草間彌生さんや村上隆さんなど、国際的に活躍する現代アーティストはいます。しかし、いずれもアメリカに渡り、自力で作品をアピールし、成功をつかんできました。
日本の多くの現代アーティストがチャンスをつかみづらい現状をどう変えるか。文化庁主催のシンポジウムが開かれました。
美術館の副館長やギャラリー経営者など、出席者からは日本の現代アートの現状について厳しい指摘が相次ぎました。

森美術館 副館長 片岡真実さん
「極端な話をすると、日本がなくても現代アート界はまわっているので、東南アジアに行ってもそうですよ。みんな各国の若い世代の人たちが英語で会話していて、ここに日本の存在感はないというのを、行くたびに思います。」

このシンポジウムを企画した、文化庁課長補佐の林保太さん。文化財の保護を主な仕事としてきた文化庁は今、日本の現代アート市場の活性化と国際発信に取り組もうとしています。

文化庁 文化経済・国際課 課長補佐 林保太さん
「このままだともう、海外に出てやっていくか、アーティストをやめるしかないという話もよく聞きます。国としても、そういうことが続いていくと非常に損失だと思うんです。」

文化庁がまず乗り出したのが、英語による海外への情報発信です。林さんは、全国の美術館を束ねる団体に協力を求めようとやってきました。
文化庁の構想です。全国の美術館から所蔵作品の情報を提供してもらい、データベースを作成。さらに、それを英語に翻訳して世界に公開することで、日本のアートの存在感を高めるねらいです。

国内のどの美術館にどのような作品があるのか、文化庁も把握しきれていませんでした。

文化庁 文化経済・国際課 課長補佐 林保太さん
「5年間くらいのスパンでこれを何とか成し遂げて、次のステップへ行けるようにしたい。」

全国美術館会議 会長 建畠晢さん
「5年計画とおっしゃいましたが、5年後に完成年度を迎えるわけではないんですね。始めたものは継続していかないといけない。やはり、更新されなければデータベースは劣化していきますから、一美術館の努力だとなかなか限界がある。」

5年といわず、継続的に国が事業を進めてほしいという要望に対し、林さんは今後の検討を約束しました。

文化庁 文化経済・国際課 課長補佐 林保太さん
「日本の文化をプレゼンテーションする、提示する、そういうことがなかなかこれまで弱い。むしろ、ずっと海外のものを受容するという方に重きが置かれてきたことと関係があるんですけど。そこをなんとかしようというのが、いま取り組んでいることです。」



武田:宮津さんは、先ほどVTRをご覧になりながら「日本の存在感が世界でない、そうなんだよ。」というふうにおっしゃってましたけれども。

宮津さん:もちろん村上さんとか草間さんいらっしゃいますけれども、総体として、やっぱり層も薄いと。それから、さっき森美術館の副館長がおっしゃってましたけれども、英語でコミュニケーションをする。それから文化庁の林さんが苦労されてましたけど、英語で発信すると。そこがネックになっているのが1つと、もう1つはさっきご指摘したように市場が小さい。そこにお金がなければ、人はなかなか動きにくいんですよ。

武田:日本にアートシーンがないわけではないですよね。大学ではどこでもかなり美術を教えているところはありますし。

宮田さん:もちろん、やはり若手の美術家たち、芸術家たちを支援をして、彼らが作品制作に打ち込めるような環境を作っていく、これは大事ですと。そこで、後れを取っている部分もあるんですけれども、じゃあ、アメリカや中国と同じ方法でやれるかっていうと、またちょっと違うところがある。今まさに、社会のビジョン自体が世界で大きく変わってくる中で、じゃあ美術作品自体も、先ほどのように資本主義市場の中で価値をつり上げていく所有型のものからですね、共有しながら、また価値を育んでいくものがあってもいいだろうと。
この先駆けというのもすでにあって、例えば瀬戸内海の豊島美術館。

これ、ただ1つの作品しか展示してないんですが、アートと建築と自然が融合して、いわゆる所有不可能な作品なんですよね。さらに、地域の物語とも結びついているんですが、ただ、その作品を鑑賞したときに命と世界を感じる空間体験というのは、これもまた普遍的なものであり、世界中から非常に多くの人たちが訪れてきていると。こういった方法というのも、やはり日本が歩んでいく1つの方向性にはなっていくのかなというふうには思います。

現代アート100億円! 高騰の裏側

武田:なぜ、私たちの社会に現代アートがそもそも必要なのか。それを育てていくことが、なぜ大事なんでしょうか?

宮津さん:例えばですけども、1つ例を挙げると今、京都に世界中から観光客がやってきます。それは日本の伝統的なすばらしさとか、我々の思想みたいなものも彼らに伝えるわけですね。あそこは、文化財と美術品のタイムカプセルになってるわけです。現代アートは今現代、最先端ですけど、100年後、1000年後にそういうものを我々が作れなければ、1000年後の、今の京都のようなタイムカプセルを持てないってことになるわけですね。これは国としても、人類としても非常に大きな損失なんじゃないかなというふうに私は思ってます。

武田:あのウサギちゃんを、なんで僕らが大事にしなきゃいけないかなって、ずっと疑問だったんですけど。それって、やっぱり私たちが自分たちのタイムカプセルを作る。

宮本ディレクター:今の現代アートっていうのは、50年後、100年後、その国の文化になっていくというところなんですけども。アメリカが、なんでこんなシステムを作り上げて、どうしてそんなにアートにお金をかけていくのか。よくよく考えてみると、建国から240年ちょっとしかたっていないという、ある意味で歴史の浅い国だということで、歴史の浅い国だからこそ、自分たちの今作っている芸術作品、生み出している文化、それが自分たちの歴史を作り上げていくという意識のもとにやっていった。その結果が、あのシステムを作り上げた原動力になっているのではないかなと感じましたね。

武田:なるほど。私たち一人一人にとって、100億円のウサギって遠いところの出来事のように感じるんですけれども。やっぱり何か現代美術というものに関わっていきたいなという思いはあるんですよね。それは、どうすればいいんですか。

宮津さん:これはもう、できる範囲で自分のしたいことをすればよくて。美術館に展覧会を見に行って入場料を払う。これは立派な文化貢献ですよ。それから5万円でも作品を買う。我々は、超富裕層のように100億を買えなくても5万円で美術品を買う。これは文化貢献。

武田:例えば、僕でもできるそれは。

宮津さん:美術展に、年1回だったのを3回行ってみよう。5万円だったら買ってみよう。これで十分ですよね。

武田:それで私たちも時代のタイムカプセルを作るっていうことに参加できるということですね。

宮津さん:そうですね。その積み上げ。結局トップ・オブ・トップが100億円なわけですから。

武田:でも5万円も、結構高いですけどね。

宮津さん:グッズでもいいですよ。

武田:グッズね。そうか。1000円からね、なるほど。