クローズアップ現代

毎週月曜から木曜 総合 午後10:00

Menu
2019年8月8日(木)
夏スペシャル 解決のヒントは? “老後のお金”と“ひきこもり”

夏スペシャル 解決のヒントは? “老後のお金”と“ひきこもり”

みんなで考え、みんなで作り上げる「クローズアップ現代+」夏季特集。これまでの放送で反響が大きかった、「老後のお金」、「ひきこもり」の2つのテーマで、悩みを持つ皆さんの声にさらに向き合い、専門家と具体的な解決策を考えていきます。「介護や教育費、どうまかなえばいいの?」「周りにいるひきこもりの人たちの悩みにどう向き合えばいいの?」-。皆さんの不安や悩みに徹底議論でこたえます。

出演者

  • 深田晶恵さん (ファイナンシャルプランナー)
  • 杉谷範子さん (司法書士)
  • 池上正樹さん (ジャーナリスト)
  • 千原ジュニアさん (芸人)
  • 中川翔子さん (歌手・タレント)
  • ひきこもり当事者の方々
  • 武田真一 (キャスター)
  • 高山哲哉、合原明子、栗原望 (アナウンサー)

老後のお金 預金が底を…プロの指南で変化が

お金の不安、まず解決を目指すのは、77歳・男性のケースです。
すでに老後を迎え、預金が底をつきかけています。

合原:いくらぐらいの貯蓄になるんですか?

男性
「65~66万円。この財布に入っているやつ含めてね」

男性はタクシー運転手として60歳まで働いてきました。
退職金などを合わせると一時は900万円ほどの預金がありました。
生活が厳しくなったきっかけは、退職の6年後に妻に先立たれたことでした。
家計を妻に任せっきりだった男性は初めて自分で管理するようになりました。

男性
「それこそ通帳のことも全然分からないっていうか。なんとか暮らしていけるだろうと思ったけどね」

年金は2か月でおよそ29万円。しかし、糖尿病や呼吸器の病気を患い、医療費は年々増加。自宅の修繕など、大きな支出も重なりました。

合原:今から出かけるんですか。

男性
「はい、これから買い物に行きます。」

向かったのは近所のスーパーマーケット。
出費を抑えるため、閉店前に値引きされる食品を買いに行きます。

合原:半額ですね。

男性
「一番安いの買ってきます。」

男性には離れて暮らす息子がいますが、自分たちの生活で手一杯だといいます。

男性
「子どもたちの生活も大変だし、私自身(子どもに)頼ることはできないということで、自分で一人で頑張らざるを得ないというのが現実ですね」

番組では、高齢者の家計改善のプロ、深田晶恵さんの力を借りることにしました。

深田さんのアドバイス、ひとつ目は自分の収支の状況を正しく知ること。

ファイナンシャルプランナー 深田晶恵さん
「だいたい1か月の書籍代はどれぐらいですか」

書籍代にいくらかかっているか、すぐ答えられません。これまで支出の全体像を正確につかんでいませんでした。

2つ目は、支払うことが習慣となっていた出費にメスを入れること。
深田さんが目をつけたのは、乗る機会が少なくなったという自家用車。

ファイナンシャルプランナー 深田晶恵さん
「車、手放しましょう、いいですか」

男性
「それは決意してっていうか。廃車にしちゃって、車検も必要ないし、車庫代も必要なくなるからね。」

男性
「これだけ、いま減るのね」

車や保険の費用、書籍代などを見直すと、年間50万円節約できることがわかりました。
周囲にお金の相談ができないこの男性のような場合、他にも利用できる制度があります。
国は2015年から家計相談支援事業を開始。自治体から委託を受けたファイナンシャルプランナーや社会福祉士が、無料で家計診断をしてくれます。

また、ファイナンシャルプランナーの団体などによる無料相談も全国各地で行われています。

この日都内で開かれた高齢者向けの相談会。
男性は思いきって参加してみることにしました。

男性
「生活は厳しいから、1円でも食べるほうに回したいと」

ファイナンシャルプランナー
「医療費の控除をして、確定申告をして税金をまず戻してもらうのが先決」

お金の悩みをひとりで抱え込まず、誰かに相談することの大切さを実感しています。

男性
「おかげさまで助かりました」

ファイナンシャルプランナー
「大丈夫ですよ。もうなんでも、いつでも相談してくれればね」

まずは自分で確定申告を

ゲスト 深田晶恵さん(ファイナンシャルプランナー)
ゲスト 杉谷範子さん(司法書士)

武田:VTRに出てきた男性のように、1人暮らしで子どもにも頼れない。1人で抱え込んでしまうという方も、たぶん大勢いらっしゃると思うんですよね。何かできることってないんですか?

深田さん:いま年金って、所得税が源泉徴収されているんですね。源泉徴収ってサラリーマンもそうですが、年金も少しずつ多めに毎月源泉するんですね。いま働いてる現役の人たちは、年末調整があるじゃないですか。それで全部職場がやってくれるので。

武田:ちょっと返ってきますよね。

深田さん:そうです。年金生活の人は年末調整がないので、自分で確定申告しなくてはいけないんです。

武田:会社の人事部や総務部がやってくれたことが、やってくれないから自分でやらなきゃいけない。

深田さん:はい。先ほどのVTRのケースだと、おそらく確定申告をすると所得税は戻ってくるし、年金生活者だからこそ、年末調整の代わりに自分で確定申告っていうのが1つのポイントになります。

お金の話 親とどう話す?プロの秘策でついに!

次に見ていく悩みは子どもが親に援助をしているというケース。
国の調査によると、親に対して仕送りなどの援助をしている世帯は40代から60代が7割を占めていて、その金額はひと月平均およそ6万円にのぼっています。

こちらの41歳の女性は、高齢の両親の生活費をひとりで負担しています。

合原:将来のご自身の老後のイメージって想像したことありますか?

高齢の両親の生活費を負担する女性
「両親がこうなるまでは、自分の蓄えでなんとかやっていけるかなと思っていたんですね。だけど、いざ両親の年金を見て生活してみて、『無理だな』って。どうなるんですかね、私って。」

今回アドバイスをしてくれるのは、長年、親と子のお金の悩みに向き合ってきた畠中雅子さんです。

こうした家庭の場合、親子でお金の話し合いをしているかどうかが大きな分かれ道になるといいます。

まず女性と両親の、1か月の収支をまとめてもらいました。
両親は自営業だったため年金は、二人合わせてひと月およそ13万円。
医療費や保険の費用だけで年金額を上回ってしまいます。

そこで女性が生活費の面倒を見ることに。女性はシングルマザーで息子に仕送りをしなければならず、家計は月32万円もの赤字に。女性の蓄えを取り崩してしのいでいるのです。

女性
「このままいくと仮定すると、今の貯金は3年はもたないですね、もしかしたら2年ももたないかもしれない」

女性はこれまでも両親にお金がないということを、再三伝えてきたといいます。しかし父親と話し合いのテーブルにつくことは、できませんでした。

女性
「(父は)なんとかするから放っておいた方がいいと、結局はシャットアウトされるので。もう聞く耳持たないですね」

ファイナンシャルプランナー 畠中雅子さん
「そうなんですね、よくあるパターンですよ、それは。なのでわりとそういうことは会話で終わってしまう感じですよね」

どうすれば親子の間でお金の話ができるのか。畠中さんが提案したのは、まず、きっかけを作るために手紙を通じてやりとりする方法です。

ファイナンシャルプランナー 畠中雅子さん
「家計収支はご存じですか、お父様は?」

女性
「知らないです」

ファイナンシャルプランナー 畠中雅子さん
「お父様も、もしかしたら想像以上に赤字になっているんだなということが、まず第1段階として認識していただく、それでまずは十分だと思います。」

親への手紙の書き方 ポイントは?

手紙を書くときには書き方にポイントがあるといいます。

女性
「『これからどうするつもり?』と率直に私は書きそうなんですよね」

ファイナンシャルプランナー 畠中雅子さん
「そこちょっと頑張って丸めていただいて、それはお父様が答えにくいですよね」

面と向かって話すと、つい言葉がきつくなりがち。手紙なら、ポジティブな表現にするなど、じっくり言葉を選ぶことができます。


もうひとつのポイントは、回数を重ねて少しずつ聞くこと。質問の仕方を変えたりしながら、根気よく聞き続けるのが重要だといいます。

ファイナンシャルプランナー 畠中雅子さん
「娘さんが一生懸命作ったそういう質問書みたいなものを、例えば回答はしないまでも、無視することはないと思うんです。読むことはしていただけると思うんですね。」

なかなか進まなかったお金の話。きっかけはつかめたのでしょうか?

合原:手紙を書いた女性と電話がつながっています。こんばんは。

女性:こんばんは。

合原:あの手紙、お父さんにうまく渡せました?

女性:はい、受け取ってもらいました。

合原:反応はどうでしたか?

女性:すごい苦い顔されて、黙られたんですね。

合原:その感想ってもらえましたか。

女性:死んだら保険が入ってくるって言われました。

深田さん:民間の保険の保険料の払いっていうのは続いてるんですか。

女性:はい、続いてます。

深田さん:なるほど。結構な金額ですか?

女性:父1人だと1万7000円、月に。

深田さん:大きいですね。それは「払い済み保険」というふうにする。これはテクニックなんですけれども。

「払い済み保険」とは、これまでかけてきた保険を解約はせずに、保険料の支払いをやめる手続きをとることです。保険料を支払い続けた場合に比べ、死亡時に受け取る額は少なくなりますが、毎月の支出を抑えることができます。

深田さん:ちょっと保険金額は小さくなりますけれども、取っておけるので、まずそこから始めてみてはいかがでしょうかね。

女性:保険会社の人と、お話を直接したほうがいいということですね。

深田さん:はい。

杉谷さん:親子間って言葉がきつくなってしまうところを、よくぞ我慢なさって、お手紙をお渡しして、プラスお話をされたのは本当に素晴らしいなと思います。

女性:少しずつチャレンジしていこうかなと思っています。

武田:はい、どうもありがとうございました。

女性:ありがとうございました。

武田:実はですね、私たちが行ったアンケートでは、収入がこのように低い人ほど、老後資金のことを家族で話していないというような結果も出てるんです。

深田さん:300万円未満のところがいちばん大きいというのは、おそらく話をしてもしかたがないというか、あきらめてしまっているのか、問題意識がないのか、どちらかは分からないんですけれども。ただ、「何とかなるさ」って思ってしまうと何ともならないです。思ってるだけでは。

武田:親子でお金の話をしておかなかったばかりに、もめてしまうとか、トラブルになるケースっていうのもあるんですか。

杉谷さん:急に親が認知症になってしまって、施設でお世話にならなくてはいけなくなった場合、あらかじめそういった、施設をどこにするかとか、いくらかかるのか、そういったものを全然調べていなかったから、慌てて施設に入れてしまうんですよ。
でも、そういう施設って高いところしかないので、とりあえず入れて、ほっとして、そして、よく考えてみたらお金が続かない。そこをやはり、事前に、もし何かあったらどこに行きたいっていうことで、お互い言いにくいかもしれないんですが、あとあとのことを考えるとお互いハッピーな結果になりますので。

夫婦で話し合わないと…プロの指南でチャンスが

次に見ていくのは、親子の間ではなく、夫婦でお金の話が十分にできずに悩んでいるケース。

中学2年生の娘をもつ、40代の女性です。
夫婦共働きで、世帯年収は600万円台。家計のやりくりはすべて女性に任されています。
娘は来年、受験生。高校生になれば、教育費などは全国平均で月8万円かかります。
女性は、これまで続けている月4万円の貯金ができなくなるのではないかと感じています。しかし、自分の不安を夫に話したことはないといいます。

栗原:将来のお金に対しては今どんなお考えでいらっしゃるんですか。

女性
「ただただ不安ですかね。」

栗原:ただただ不安。

女性
「はい。」

あるアンケートでは、お金の話をよくする夫婦とほとんどしない夫婦を比べると、お金の話をしない夫婦のほうが貯蓄の割合が10%低いという結果も出ています。

お金の不安を夫に伝えられないという女性のため、番組ではファイナンシャルプランナーの力を借りることにしました。
家計見直しのプロ・横山光昭さんです。これまで2万3千件以上の相談に乗ってきました。

ファイナンシャルプランナー 横山光昭さん
「風通しみたいなのがなかなか通ってない家庭が多いんですよ。(お金の)話ってどうなんですか、しづらい?」

女性
「しづらいです」

ファイナンシャルプランナー 横山光昭さん
「なぜですか?」

女性
「預かっている自分が(お金を)まわせていないというのと、あと実際マイナスだったら、これから(夫に)節約してもらうことになるので、それは言いづらい」

栗原:お金に関する会話があまりないご家庭ですと、最悪どういうリスクを抱えてしまうことになるんですか?

ファイナンシャルプランナー 横山光昭さん
「大きくいうと老後の破産という、老後貧乏じゃないですけど、そんなことになっちゃう。」

女性
「老後破綻はできたら、というか、できるとは思うんですけど、回避したいです。」

老後破綻を避けるために大切な夫との会話。横山さんがある提案をしました。

ファイナンシャルプランナー 横山光昭さん
「私もよく月に1回とかですけどね、お金の話を家族マネー会議っていってね。」

家族マネー会議とは、我が家の家計の状況を家族全員で共有する会議。
それにより、将来のお金の使い道を、家族で一緒に考えるのがねらいです。
横山さんは、夫と話をするきっかけを作るためのヒントを伝授してくれました。

ファイナンシャルプランナー 横山光昭さん
「男性って結構、投資の話とかも実は興味を持っているっていうような方もいらっしゃるので、そういうのをきっかけにしてね。それをするためにどうしたらいいかなっていうふうな話し方でもいいと思うんですよね。」

栗原:どうですか、お話聞いて、話せそうですか?

女性
「マイナスの部分だけでないっていうことと、あときっかけが何かあれば話せそうっていうことだったので、年金とか、あと積み立てとか、そこら辺のほうをちょっと上手く引き出して、現状把握から話をできたらなと。大丈夫だと思います。」

教育費 家族で話すとうれしい変化が

現役世代にとって、老後のお金を考える上で大きなカベになるのが子どもの教育費です。

一人あたりの教育費は親世代が子どもだった頃に比べ、15倍以上に増加しています。

将来、大きなお金が必要になる事にどう備えるか。
半年前から月に一度、お金のことを全員で話し合うことにした家族がいます。

妻と高校2年から小学5年までの3人の子どもと暮らす47歳の会社員の男性です。
子どものお小遣いだけでなく、家計の状況を細かく話しています。


「わが家にどれだけお金があるのかを知っておかないと困ることがあるかなと思って。せめて家族は分け隔てなく自由に話せる雰囲気がつくれたらいいなと」


「ちなみに家のローンって、年にいくら払っているか知ってる?」

長女
「まずローンがあるのを知らなかった。」


「家って1回で払う人はあまりいない。何千万という買い物だから」

次女
「3回に分けて払えば?」


「3回の人はあまりいないかもしれない。」


「じゃあ1か月にどれくらい家にお金かかっている?」

次女
「626円」


「安いよ」


「安い それ小遣いで買えるんじゃない、家」

最近、うれしい変化が現れ始めています。子どもたちが自らお金の使い方を考えるようになったのです。

高校2年生の長女。恥ずかしくて顔は出せないと言って、悩みを打ち明けてくれました。4年前から習っている電子オルガンについてです。

長女
「ここにふたをしているみたいな感じであるんですけど、ここにもう一個つけられる、バージョンアップする。それ(ペダル)が欲しい。」

大学への進学を目指している長女。今後、教育費もかかる中、趣味のための出費を親に切り出す事をためらっていました。
この日、思い切って電子オルガンのことを相談してみることにしました。

長女
「次の級に進む練習に必要なペダルがまだついていない。」


「先生に言われたら?」

長女
「言われてるって、だから」


「言われているの」

長女
「言われているよ」


「それをだから、たぶん遠慮して言ってなかった。」


「求められないから出してないだけで。求めたらそれは考えるでしょう、必要かどうかは」

長女
「今回の発表会のとき、ペダル1個、本当はもう1個いるのを無理やり1個でやっていたんだよ」


「本当にそこまでお金をかけるものなのかどうか、ちゃんと自分で判断できるような、そういうものは持ってほしいなと思っています。そういう経験を積めるような場面をできるだけ作ってあげるっていうんですか。それだったら親の私にもできるかなと思っています」

家族でのお金の話し合い。知っておくべきポイントを具体的に見ていきます。

夫婦・家族で話す時に大切な“情報開示”

栗原:今回取材しました現役世代の皆さんがいちばん気になっているのが、教育費ですよね。こちらをご覧ください。

栗原:国の家計調査による年間の教育関係費、年内ごとのデータになるんですけれども、20代、30代ときまして、急に40代、50代で上がるんですね。ピークの50代になりますと、年間の平均でおよそ52万円かかってくると。

武田:どうしたら。話し合う、何かコツみたいなものってありますかね。

深田さん:感情から入ってしまうと言わなくていいことも言ってしまったりするし、なかなか相手に伝わりにくいので、まずは収支を、これまでのずっとVTRもそうですけれども、書きだしてみて、それで、これだけお金が足りない、もしくは来年は教育費がかかったら足りなくなりそうだ、もしくはお金が貯められてないっていうのを、書類を見せて。会議のように。気持ちから入るんじゃなくて、やはり資料を用意して。

武田:資料を作って。冗談じゃなく、本当に会議みたいにやるってことですか。

深田さん:お金足りないのっていうふうに涙ながらに言われるのと、数字を見せて、客観的に見せられるのとどっちがいいですか?

武田:いや、どっちも、うーんって感じですけど。

深田さん:毎月必要なうちもあれば、そうじゃなくて、1回きちんと向き合って1年に1回でいいケースもあるし、あと、状況が変わったときにだけ、もう1回見直して話し合えばいいケースもあるので、そんなに恐ろしいことだと思わないで、皆さんがやってくださるといいなと思います。

栗原:取材した人だと共働きの方が多いので、なかなかすれ違って時間取れないという方も多かったので、改めてそういう場を設定するほうが話しやすいんじゃないかということは、取材しましたファイナンシャルプランナーの横山さんもおっしゃってましたね。

杉谷さん:やっぱり、夫にしろ妻にしろ、お互いプライドがあって、どっちか家計を預かってるほうが、いまちょっと厳しいんだけどっていう話ができない。そして、いまカードローンなどで結構キャッシングとか簡単にお金が借りられるので、機械から自分のお金を引き出す感覚でキャッシングをしてしまうんです。だいたいどちらか一方が自分の判断で借りていると。

武田:それがあとでお互いに分かって、えーっ?みたいなことになるんですか。

杉谷さん:そうなんですね。やはり夫婦の話し合いというのも大事ですよね。

武田:先ほど教育費の話が出ましたけれども、ただ、親としてですよ、自分の老後のためにお金をためたい、ためなきゃいけない。それはもちろんそうなんですが、そのために、子どもにいまかかるお金をちょっと我慢してねっていうのは、親としては、父親の沽券に関わるって感じもするんですが。

杉谷さん:私はありだと思います。

武田:ありですか?

杉谷さん:無理をしてはいけないと思います。夫婦も大切ですけど、子どもにもちゃんと伝えたほうがいいですよね。これだけ学費がかかっているとか。私なんかは、大学の授業料振り込んだ振込をパシャッと写真を撮って息子に送ったりとかしまして、ちゃんとわきまえるようにみたいなところもしていますね。

深田さん:子どものうちから我慢を知るっていうのは大事ですよね。

杉谷さん:そうですよね。子どもに、貸付でもいいじゃないですか。

武田:ペダルが欲しいっていう、あのお嬢さんの気持ちもよく分かるし。

杉谷さん:あの気持ちはとても、私、大事だと思います。

武田:うちの子どももだいぶ大きくなりましたけど、話したいと思います。
厳しい時代なんですけど、深田さんが、考えておかなければならないと指摘するのがもう1つあります。

武田:それは収入ダウンの崖。現役世代の収入といいますのは、年を取るにつれて、こうやって大きく、ある段階をへると減っていくということがあるんですね。役職定年だったり、60歳の定年だったり、年金生活にいくとき。さまざまな収入ダウンの崖があるわけですけれども、これに備えて、若い世代ほどいまのうちから備えておかないといけないと言います。

いますぐ見直すことで将来大きな差が…

老後になって節約しようと思っても、それまでの習慣は簡単にはやめられない人も多いと言います。その問題を解決するのは、再び横山光昭さんです。

この日訪れたのは、佐藤淳一さん、30歳の自宅です。
今は1人暮らしですが、将来は、長男の自分が親の面倒をみなければならないと考えています。佐藤さんは、個人事業主として建築現場で働いており、年収は、およそ700万円です。しかし、老後の備えは・・・

ファイナンシャルプランナー 横山光昭さん
「貯金って、どうですか?」

佐藤淳一さん
「まったくしてないですね」

ファイナンシャルプランナー 横山光昭さん
「出来ない感じ?」

佐藤淳一さん
「昔から出来なくて」

ファイナンシャルプランナー 横山光昭さん
「あったら使ってしまう?」

佐藤淳一さん
「そうですね」

外食がほとんどだという食費や、趣味のゴルフでお金を使い、預金はまったくありません。今のような生活を続けた場合、佐藤さんに必要な老後のお金はいくらになるのか。

ファイナンシャルプランナー 横山光昭さん
「これくらい。7000万円。やばいですよね。」

佐藤淳一さん
「7000万円・・・7000万円・・・」

ファイナンシャルプランナー 横山光昭さん
「7000万円とかになっちゃうんですよ。」

いまからお金の使い方を改めないと将来困ることになる。
逆にいま改めれば、老後資金だけでなく、将来の結婚や、子育て、また両親の面倒をみることになっても大丈夫だと言います。

ファイナンシャルプランナー 横山光昭さん
「(手取り)55万の20%で、月11万円とかですけど、これくらいは本当は(貯金)したい。どうです?ここらへんを(交際費・娯楽費)落として下さいというのも嫌なんですけど、落とせそうですか?」

佐藤淳一さん
「とりあえず、半分くらいにはしたいです。あまり考えていなかったことを考えさせられたという感じですね。なんとかします。やっていきます。」

ファイナンシャルプランナー 横山光昭さん
「自助努力というか、そこはしっかりとしていかないと誰もと言ったら嫌ですけども、助けてくれるというわけではないぐらいに思っておいて。ただ、小さい変化、起こしていけば、そこは安心にある程度持っていけるので、頑張っていただきたいです。」

プロのアドバイス「危機感の見える化」「お盆がチャンス」

深田さん:収入ダウンの崖って、ある日突然、ある月から収入がダウンするんですね。緩やかな下り坂ではないんです。定年退職、その次の月から再雇用で働いたとしてもガクンと落ちますよね。だけれども、支出ってある月からガクンと下げることって、なかなか、固定費はともかくとして、固定費だけで賄えない見直しっていうのは、突然は無理なので。

武田:それはふだんのライフスタイルとか。

深田さん:そうなんです。若いうちから老後の心配するのも、いま、ちょっと気の毒だなと、若い人に思うんですけれども。貯蓄をする、収入の中で一定額の貯蓄をする。残ったお金で暮らすって、この習慣が老後の安心に全部つながっていくんですよ。年金生活に入った時に、あるお金で暮らすっていうところにうまく着地できるんですね。なので、老後の不安って悪いことばっかりではないなと思います。

武田:私たちはこれからどうしていけばいいのか。改めて、これだけはというアドバイスをお願いしたいと思うんですが。

深田さん:「危機感の見える化」です。貯蓄のアップのモチベーションって、危機感を持つことがお金がたまりやすくなるんですね。例えば1か月の支出額ってぱっと、万円単位でいいので言えますか。あと、去年1年間でいくらお金をためたのか。これも万円単位でいいので言えますか。

武田:いくら使ったか、いくらためたか。

深田さん:40万とか50万とか出ていくんだとしたら、それで一方で、去年は貯蓄できてないとか、1年間で20万円しかできてないといったら、これはちょっと、このままでいくとまずいよねという。

武田:ちゃんと数字で見るってことですね。そして、杉谷さんは。

杉谷さん:簡単です、「お盆がチャンス」。お父さん、お母さんに、さりげなくこういったお金の話をする。お金の話だけではなく、例えばお墓、お仏壇どうしようかねとか、それって結構親が気になることなので、いろいろ周りから攻めながら、そういったお金の話をする。私ども、30代、40代、50代、60代も含めて、自分の子どもと自分と親、3世代のお金の心配をしなくてはいけないんですね。非常に責任の重い世代です。だから、そういったところは話し合って、家計を握っている人だけに責任を負わせるのではなく、みんなで話し合って解決の糸口を見つけていければいいんじゃないかなと思っています。

武田:私もお盆に話してみたいと思います。

(老後のお金への備えについて、さらに詳しい対策はこちらの記事で)
「住宅ローン」「もらえる年金の額の算出法」「副業のコツ」など
「非正規雇用の場合」「貯蓄ができない場合」など

続いてのテーマは、いま、全国で100万人以上にのぼると言われている「ひきこもり」です。
この問題を難しくしているのが、このおばけです。

ひきこもり 1200通の声から探る“解決策”

ひきこもり当事者
「ひきこもり100万人が凶悪犯罪の予備軍だとか、それは絶対ありえない話。生身の当事者はあくまで一人の人間であって、少しそのことが伝わってくれるとうれしいなと」

いま、ひきこもりの当事者たちが声をあげ始めています。大きなきっかけとなったのは、今年5月、川崎で起きた殺傷事件と、6月の元農林水産事務次官による長男の刺殺事件。いずれも「ひきこもり」との関連が取りざたされました。直後から、NHKの特設ホームページには投稿が相次ぎ、その数は1200通にも。

「もうこんな生活嫌、働きたい」
「どうしても一歩が踏み出せない」
ひとつひとつが、私たちが普段あまり聞くことができない、本人たちの切実な声でした。

そこで、私たちは当事者同士をつなぎLINEグループを結成。 すると、議論が白熱。
そこから見えてきたのは、当事者たちをしばる、「○○(なになに)すべき」という、あるオバケの存在でした。

ぼそっと池井多さん(ひきこもり歴 断続的に30年以上)
「社会からとか、親からとか、押しつけられて自分の中に採り入れられた『べき』っていうのは『べきおばけ』になる」

千原ジュニアさん(中学生時代にひきこもり)
「こういう番組を見ていました、当事者として。何ひとつ、そうそう、と思ったことはない」

ここからは、番組に寄せられた当事者たちの貴重な声をもとに、ひきこもり経験のあるゲストとともに徹底議論。「一歩を踏み出すためのヒント」を探ります。

(NHKに寄せられたメール)
“十人十色でひきこもりになった原因は違います。ひきこもりがすべて悪いと思われるのが悲しいです。”

男性は直接会って、ぜひ話を聞いて欲しいと連絡をくれました。

小崎悠哉さん39歳。20年以上にわたるひきこもり生活。これまで自分の部屋に、家族以外の人を入れたことはありませんでした。

(記者)
「どんなことを伝えたいなって思ってらっしゃいますか」

小崎悠哉さん
「39歳でまだ苦しんでいるんだということを伝えたいです」

小崎さんのひきこもり生活。きっかけは、中学生時代のいじめでした。

小崎悠哉さん
「あれから20年以上経つんですけれども、いまだに人が怖くて、外に出るのもためらいそうになる時もある。父は働け働けしか言わない。働くのが当たり前だって。社会の中に入るのが怖いのに、働けるわけないじゃないかって思います」

それでも、社会とつながろうと、毎日続けていることがあります。

それは、ラジオ番組への投稿です。

小崎悠哉さん
「自分を発信したいってことで本名で読んでくださいって書いて。やっぱり社会とつながれるのがラジオなんで、僕の場合は」

「やっぱり社会と繋がることって、何か大きなことなんですか。」

小崎悠哉さん
「大きなことだと思います。孤独だと死んじゃうと思います。」

こんな声もありました。
“6畳ひと間が私の世界そのもの。妹や親友の結婚式にも参列できない最悪の日々”

この投稿を寄せてくれた、清水聡さん、43歳です。いまも、両親と同居。仕事に就いても長続きせず、短い期間で転職を繰り返してきました。いまは週に数時間、清掃員として働いていますが、自信が持てないといいます。

清水聡さん
「ちょっと、こう、例えば、頓挫したら、また戻っちゃうんじゃないかなっていうのは、最近、つくづく思いますね。結局、家から出てない、自立できてない。親がいなければ、なにもできない。」

部屋にこもりがちな日々を送る中、続けてきたことがありました。
新聞を毎日読み込み、切り抜くことです。

清水聡さん
「ファイルしながら、みんなの情報に追いつこうっていう様な気持ちで、毎日、暮らしていたというか。世の中、世界が、今、どう動いてるんだろうとかっていうのを知れば、なにか、ここから出られるかなって。」

ひきこもり“つながりたい”“踏み出せない”

ゲスト 池上正樹さん(ジャーナリスト)
ゲスト 千原ジュニアさん(芸人)
ゲスト 中川翔子さん(歌手・タレント)
ゲスト ぼそっと池井多さん(ひきこもり当事者)
ゲスト ちあきさん(ひきこもり当事者)
ゲスト けいこさん(ひきこもり当事者)

武田:ジュニアさん、うんうんとうなずきながらご覧になっていましたけど。

千原ジュニアさん:何がきっかけでそういうところから脱するのかという、そこのきっかけも全員違うでしょうし、僕は実際14歳、15歳のころ、ひきこもってましたけど、家にテレビがあって、たまにこういう番組を見てました、当事者として。でも、そのときに大人たちがいろいろ言うてるなっていう、何一つとして、そうそうと思ったことはないですね。だから、きょうも誰かに当てはまればいいと思いますけども、誰にも当てはまらないかも分からないし、誰の救いにもならないかも分からないということを、ちゃんと自覚してしゃべらしてもらおうと思ってます。

武田:中川さんも、10代でひきこもりの経験がある。不登校の経験もあるわけですけれども。

中川翔子さん:私もいじめがきっかけで、あと、そのいじめを親とか先生に知られたくなかったけど、先生にあんまりいい対応されなかったってことがショックで、大人も学校も世界も全部嫌いってなってしまって、学校も怖い、だったら死にたいという、すごくネガティブなループから抜け出せなくなってしまって、夏休みとかも昼夜逆転して、腐ったような日々を過ごしてみたいな感じだったんですけれども。また外に出ようってなるきっかけもささやかなことだったりもしたので、何が人に刺さるか分からないんですよね。だから、議論交わすのは大事なことなのかなと思います。

高山:今日はスタジオとLINEグループの皆さんとリアルタイムでつながっておりまして、皆さんの(ひきこもりの)きっかけというのも教えてくださっています。例えば、まずこちらですね。「私はうつパニ発症が原因ですが、さらにその原因がいじめと虐待だった」というもずくさん。(うつパ二=うつ病とパニック障害)

ちあきさん:私の場合は、小さいころからの経験が、ひきこもっていく大きな原因になってます。家の中では緊張があったりとか、家にも居場所がなくなっていく。学校にも居場所がなくなっていく。そうやって育っていくと、心の成長ができていないので、そこでいきなり大学出たりとか、あるいは就職したりとかしても、そこで失敗しやすいっていうのはすごくあると思います。

高山:LINEグループを見てみても、もずくさん「めちゃ働きたい」、おもちさんも「働きたい」、みなみさん「働きたいし、働かなきゃいけないと思うのに働けない」「働きたくないではなく、働けない」というふうに届いています。

中川翔子さん:去年この番組でひきこもり女子会に参加させていただいたんですけど。すごく皆さん、おしゃべりが盛り上がるんですよ。そこに自ら行くわけですよ。人とつながりたい。そして、状態もその日によるっていうのもあるみたいなんですけど、ひきこもりで、すごくうつ病になってしまった。だけど、いまはやりたかったネイルサロン開いてしまったっていう、すごい行動をバッてやる人もいたりとか。ずっと心がしんどかったりで動けないっていう方もいらっしゃるんですけど、つながりたいっていう気持ちは、かなり持ってる方が多いんだなっていうのはすごく感じました。

番組に寄せられた貴重な当事者たちの声にも、「つながりたい」という思いがあふれていました。
「もうこんな生活はいや。働きたい。」「早く社会とのつながりが持てるようにしたい。」
そうした思いの一方で、こんな声も多く見られました。
「あきらめや恐怖感で踏み出せない」「一歩が踏み出せない、生きるのがしんどい」

池上正樹さん:ひきこもっていてはいけない、働かなければいけないんではないかとか、ちゃんとしなければいけない。そういう価値観、無意識のバイアスにとらわれてしまっているというところに、苦しめられているということがあるのかなと思いますよね。基本的に真面目で、優しくて、感受性が強くてという、断ることができないとか、そういう方々が共通項として多いと思うんですね。

武田:そこでですね、私達の中でどうにかできないかということで、解決したいこととして、社会との関係性、どうつながるか、そして、一歩踏み出すためにはどうしたらいいのか。これを、ここからは徹底的に考えていきたいなというふうに思います。

高山:実際に社会とつながりたいという思いを阻んでいるものは何なのか、1200の声から読み解いていくと、親や親戚の皆さんから、こんな、実は願いや不安というのを抱えているんだという声も届いているんです。50代のはっぽーしゅさん。「18歳の娘がひきこもりで施設に入れている。20歳をすぎて立ち直らない場合、家には一切入れない。」

ひきこもりは「甘え」?周囲の厳しい目

この投稿を寄せてくれたのは、娘が4年前からひきこもっている男性。

はっぽーしゅさん
「やっぱり、正直、娘を見てて、甘ったれてるなと。生きる努力をしていないなと。ひとつには自分で稼がなきゃならんし、働いてなんぼでしょ」

次々と出てくる、娘への厳しい言葉。しかしそれは、娘のことを思うがゆえだといいます。

はっぽーしゅさん
「ちゃんとできるだけハッピーに育って、大きくなってほしいじゃないですか。わが子だし。選択肢が多い人生の方が幸せだから。高いところまで登った方が遠くまで見れるんですよ。」

そこにあるのは、親として子どもをこう育てるべきという責任感。

はっぽーしゅさん
「辞書を引いて『育てる』の意味を見たら、『一人前になるように手塩にかける』と書いてある。一人前にするってことが、育てるってことだし、一人前にならなきゃ、やっぱり、それはダメでしょう」

さらに、ひきこもる人に対して、こうコメントする人も。
「部屋で好きなことをやって家族が汗水かいて稼いだお金を食いつぶす」
この投稿を寄せてくれたのは、運送会社で働くMさん。親戚がひきこもりで悩んでいるといいます。

Mさん
「みんな苦労して、人づき合いもやってるんで、その人たちだけが特別に苦労してるわけじゃない。」

ひきこもりを、つい厳しく見てしまうのは、自身が社会で、何度も困難を乗り越えてきたからだといいます。

Mさん
「世の中、お金で結局は動いてるんで、お金を稼がなきゃなんない。汗水垂らして働いてというのが健全な生活。誰かが後ろから手を添えてこうやって動かしてくれるわけじゃない」

こうした周囲の声をどう受け止めているのか。当事者達に集まってもらい話を聞くと・・・

ぼそっと池井多さん
「何だか分からないけれども焦りがある。働かなくちゃっていう焦りがある。こんなことしてて、いいのかという気持ちですよね。仕事しない、働かない。」

Toshiさん(ひきこもり歴10年)
「うちの両親とか、正社員じゃないといけないだとか、故郷では自分は正社員の管理職ということになっているんです。」

「それ、親御さんがまわりに?」

Toshiさん
「キャラ設定されているんですよ」

親が自分よりも世間体を気にすることに傷ついたという声もありました。

いじめが原因で20年ひきこもっていた小崎悠哉さん。
ひきこもりが長びき、心身ともに体調を崩しました。

小崎悠哉さん
「不安なとき飲む薬。電車乗らなきゃいけない時とか。」

ところが当初、両親は医療機関にかかることを反対したといいます。

小崎悠哉さん
「『精神科なんて、世間に知られたら恥ずかしい。』って」

(記者)
「言われたとき、どう思いました?」

小崎悠哉さん
「ショックを受けました。相変わらず僕のこと分かってくれてないなって」

“○○すべき”が社会の隅ずみに

武田:私も親ですから、つい子どもに、働いて、結婚して、一人前になってということを願ってしまうんですけれども、そうした、いわゆる当たり前が、当事者の皆さんを苦しめているっていうことがある。

中川翔子さん:学校行きたくないと言って鍵を買ってきて部屋につけて、そしたら、母が蹴破ってきて、学校は行かないとだめ人間になるんだよ。中学、義務教育、高校までは出ないとだめ人間になるから、だめだよ、行かないと。行くべきって。

高山:皆さんの声をいま一度じっくりと見つめるとですね、「○○すべき」「○○であるべきだ」ということが多くあるのが現状であるというのが分かったんですね。そこで、見えないものにとらわれて、なんだか怖いという思いをされているという気持ちになぞらえて、こちら、「べきおばけ」と番組では名づけて、考えてみることにいたしました。

ぼそっと池井多さん:私の場合はひきこもりになった原因は、これはひと言で、母子関係です。

千原ジュニアさん:どういう関係なんですか? お母さんと。

ぼそっと池井多さん:うーん。母親が望んだ社会的なレールに乗っかって、これから大企業に就職して、こういう道をたどっていくと、結局、母親が虐待をして、教育圧力をかけて、そのレールに乗せたということを、結果的に私は人生で追認してしまう。それだけは、それは私の人生でいちばんやりたくないことだということが、おそらく無意識的にあったんでしょうね。

高山:おもちさんも「レール乗ってはあります。幼児からずっと大学まで決められていた。それしかできないと暗示をかけられて」(というLINEのメッセージがきました。)この世界に行くのよっていうふうに決められてしまうと。この息苦しさっていうのは感じているようです。

ひきこもり支援に携わる専門家はこの「べき」は、社会のあらゆる場所に蔓延していると指摘します。

白梅学園大学 子ども学科 長谷川俊雄教授
「私たちが、人との付き合い方や関わりについてのこうあるべきだ、こうあらねばならないという強迫的な観念を持っていて、私たちも苦しんでいて、ひきこもりの人たちはより困っている。つまり、私たちとひきこもりの方たちが困っていることは連続線上にあるんじゃないかなって。その呪縛にとらわれてしまい、手にはできないゴールを設定し、そこで空回りをする。その結果、ひきこもりが長期化する、深刻化するということもあるのではないかなって思います。」

池上正樹さん:「べきおばけ」は誰の中にもあると思うんですけれども、これって、どこで生まれたかっていうと、他人との比較とか評価の中で親からすり込まれる。「あそこの家の子はあんないい学校入ったのにとか、会社で活躍してるのに、あなたは」みたいな感じで、比較の対象として、そこから「べきおばけ」ってたぶん生まれてしまうんだと思うんですけども。

けいこさん:例えば、女性も男性もなんですけど、「結婚して家庭を持つべき」とか、「新しい自分の家庭を構築して孫の顔を見せてくれ」みたいなのは、「べき」が、あったりするんじゃないかなとは思いますね。

武田:みなみさんが、「けいこさん、それ分かりますよ」って。

ぼそっと池井多さん:もしかしたらこれ、番組の流れをひっくり返しちゃうかもしれないんですけど、私は「べきおばけ」と「べきエンジェル」みたいなのがいると思うんですね。

武田:べきエンジェル。

中川翔子さん:新キャラ。

ぼそっと池井多さん:すべて、「べき」がおばけで悪いっていうわけでなく、社会からとか、親からとか、押しつけられて自分の中に採り入れられた「べき」というのは「べきおばけ」になるかもしれないけども、社会や親がなんと言おうと、ひきこもっているうちに、自分はこれをやるべきだと。

千原ジュニアさん:僕は、先ほどおっしゃってたレールの話でいうと、みんなと同じレールをいきなさいという教育をずっと受けて、それが嫌で嫌で、結構早熟な部分もあったと思うので、小学生ぐらいからみんなとは違うものを、僕1人だけ違うことをしたいみたいな。それも反発からずっとそれで、だから、中学生は学校に行かなければいけないということの反発でひきこもったところもあって。
でも、働くべきだということがあることが、大事な部分でもあると思うんですよ。

千原ジュニアさん:それが一歩踏み出すきっかけを作ってくれるってこともあるでしょうから。そこにいまいて居心地がよくて、何も考えずにずっとひきこもってられるというのがいちばんの、僕はつらいことじゃないかなと思って。いまのままじゃいけないんだ、何か一歩踏み出したいんだ。でも、その方向が分からない。どう一歩を踏み出していいのか分からない。でも、働くべきだ、一歩踏み出すべきだという「べき」がないと、非常につらいことになるんじゃないかなと思いますね。

中川翔子さん:やっぱり母が、どなりながらでしたけど、学校行けとか働かないとだめだみたいなことを言ってたのも、うるさい、知らない、そんなこといまは考えられない、無理、心が無理。もう死にたいんだから死ぬ、死ぬぞみたいな。すごい多感な思春期の暴走が、自分でもどうしようもなかった。考える余裕もなかった。だけど、その言われた「べき」が、だんだん、じわじわ背中を焦がしてくれたから、今日は学校行こうかなっていうふうになったり、ちょっとこの仕事をしてみようかなとか。そういうきっかけを吹かせる、風を吹かせてくれたのも焦げがエンジェルになりだしていったから、出してくれたのかなっていうことも思う。

千原ジュニアさん:ずっとこのままではいけない、このままではいけない、この状況を変えるべきってずっと思い続けてて、いま、すごく、ここにひきこもってることは居心地が悪くて、こんなはずじゃないと思い続けているところに、僕も、ただただ運が良かっただけやと思うんですけど、電話が1本かかってきて、その電話に出たら、それが兄で、ちょっと吉本でお笑いやろう思うてるから、お前来いって言われて、僕はここにいるより、何か、どこかに行きたいと思ってたので、その電話の方向に進んだんですけど。いまの現状のままではよくないんだ、この現状を打破するべきなんだと思い続けてるところに、脱出の鍵はあるんじゃないかなと思いますね。

武田:でも、自分がそう思ったとしても、例えば、親とか周りの人が、「あんた、そんなお笑いなんかで成功する保証もないよね」というような、社会の見方とか圧力とか。高校とか出なくていいの?っていうような常識とか。そういうあらゆる「べき」に、どうやってあらがっていけばいいのか。

千原ジュニアさん:それは別にどうでもいいんじゃないですか。いま置かれてる現状が、打破をしたいということがいちばんの目的なら、その先の方向。別に僕はお笑いが好きでこの世界に入ったわけじゃないので。例えば、せいじが料理人になるからお前も来いって言われたら、僕、料理人になってたでしょうし、大工やるからお前来いと言われたら、僕、大工になってたと思うんで、別にそれが、お笑い、たまたまお笑いだっただけで。

ちあきさん:ジュニアさんのおっしゃったことでちょっと気になったのが、ひきこもってるときに、居心地がよくないっておっしゃいました。それって多分、LINEのグループの方とか、けいこさんにも、皆さんにもお伺いしたいんですけど、居心地はよくないですよね。べきおばけは結局、あるべきというプレッシャーになっていって、それでつらくなっていっちゃうっていうのがあると思うんです。ただ、ジュニアさんがおっしゃったように、決して「べき」だけじゃない。それで解決しないものがたくさんあると思うんですね。何か「べきおばけ」とか自分を苦しめてるものと少しずつ闘って、少しずつ状態をよくしていって、そうすると、その先に次のステップが出てくるんじゃないかなって。

高山:「べきおばけ」なんですけど、目の前で立ちはだかるだけじゃなくて、追い風、味方になってくれる方法はないものかということで。専門家にアドバイスをいただきました。書いて吐き出したり、向き合い、共有したりすることが大事だ。この助言をもとに、番組で「べきおばけ」を味方にするワークショップを開催いたしました。

“○○すべき”と向き合う ひきこもり当事者

ワークショップに全国から集まったのは、8人の当事者や経験者です。最初に行うのは、コンクリート製の円盤に、長年とらわれてきた「べき」に関する言葉を書き込む作業。自らを抑圧してきた考え方を吐き出し、その正体と向き合います。

現代美術家 渡辺篤さん
「社会にあるいろんな抑圧。こうしないといけないっていうのを、みんなで壊しませんか?」

この企画を引き受けてくれたのは、現代美術家の渡辺篤さん。
自身も、3年間ひきこもった経験があります。

渡辺篤さん
「“普通”っていうのがあるじゃないですか。日本らしさかもしれないけれど。基準値みたいなものを社会が作り上げて、“普通”でなければおかしいという時にこそ“べき”が出てくると思う 」

千葉県から参加した雪緒さん。職場での人間関係に悩み、1年半前からひきこもっています。

ひきこもり当事者 雪緒さん
「(恋人がいないのは)コンプレックスだから、もう言わないでよみたいな。」

渡辺篤さん
「実際言われたんですか?」

雪緒さん
「言われますよ。すっごい言われました。」

雪緒さんを苦しめたのは、親や職場から出てくる「恋人がいるべき」という「べきおばけ」でした。

渡辺篤さん
「それが当たり前だっていうような?」

雪緒さん
「そうですね。それが当たり前って。なんで結婚しないのかって」

自分を追い詰めてきた「べき」を吐き出した次は、この「べき」を壊す作業です。

力いっぱい壊すことで、囚われていた価値観がすべてではないことを体感します。

参加者
「ミスなく完璧にっていうのは、ちょっと生き物には無理かなっていう感じが。できるかボケっていう感じ。」

最も力強く、何度もハンマーを振り下ろしていたのが雪緒さん。

高山リポーター
「すごいいい顔してますね。すごい気持ちよさそう」

雪緒さん
「すごい気持ちよかった」

「べき」を破壊して終わりと思いきや、最後にもう1つ。それは、「修復」の作業です。

渡辺篤さん
「自分が抑圧に対してどう向き合って、距離をとり合うか。間合いをとるかということもあるのかなとは。」

砕け散った破片をつなぎ直しながら、「べき」との付き合い方、現実との折り合いの付け方を探ります。

参加者
「割っても結局修復していくっていうか。そのままゴミに出せるわけじゃない。『これとは縁が無い』ってわけではないもの。妙にリアルな感じがしました。」

参加者
「壊して、またつなぎ合わせて行く中で、全部はなくならないけど、別に持っててもいいし、持たなくてもいいっていう風にはあらためて思えたかなって。」

雪緒さんはというと

高山リポーター
「“恋人がいるべき”でしたよね。どんな再構築を」

雪緒さん
「すごくこの文言もイヤだし、イヤな存在だったんですけど、いま砕けて、自分で一生懸命直しているというか、新しく構築しているじゃないですか、なんかちょっと愛おしい存在になっているんですよね」

長年、自分を苦しめてきた「恋人がいるべき」というべきおばけ。それとの向き合い方が少しだけ、変わりました。

雪緒さん
「正直に言います。(恋人が)欲しいんです。モテたかったんです。だから傷をえぐらないで」

“○○すべき”とどう向き合うか

中川翔子さん:雪緒さんですか。みんなに、えぐらないでって言ってたのが本当の本音、最初は言えなかったであろう本音をすっきり言えるようになってたというのは、心の角度を変えられるきっかけとしておもしろかったなって思いますね。これはいらないと思ってたけど、ずっとこだわってきた自分というのもあるからなんですよね。必要っちゃ必要というか。本当はモテたいっておっしゃってた。だから、おもしろいし、何が自分にとってのこだわりか、見つめ直す、いいきっかけでもありますね。

ぼそっと池井多さん:働かなくちゃだめでしょうっていう親御さんは、確かに生産性がない、ひきこもりには生産性がないってことをおっしゃってるんでしょうけども、それは非常に狭い意味の、経済的な生産性なんですね。社会の片隅にひきこもっていても、とりあえず生きていくべきっていうね。生き恥をさらすの反対ですよね。何も、いままでの、旧来の「べき」を果たさなくても、とりあえず命を紡いで生きていくべきっていうこの「べき」のほうが、私は「べきエンジェル」だと思うんです。

ちあきさん:プラスの動機ってことですか?

ぼそっと池井多さん:いろんな方によっては価値が変わってくるでしょうけれども、本人にとっては、そのほうがプラスだと思いますね。

けいこさん:私もちょっと思うんですけど、ひきこもりっていうキャリアができないかなっていう。

けいこさん:ずっと家にひきこもってて、精神的にちょっとおかしくなっちゃった部分もあるんですけど、履歴書にひきこもり歴30年とか20年って書いて、「えっ、何してたの?」って人事の人が言ったらおもしろいんじゃないかなって。世間、変わるんじゃないかなと思ったりも。それでいける人が多くなったら、働かざる者食うべからずも減っていくんじゃないかな。

武田:すごい来てますね、LINEで。

高山:「けいこさんそれな」って。「ひきこもりもキャリアですよね」とメッセージがきています。実際に私も取材した人の中には、不登校を長年していた人が、あるIT企業から、あなたが見てきた景色というのを形にしてくださいってことで採用されたと。ですから、いま多様性というのが認められている世の中ですから、ひょっとしたら、ひきこもりという新たなキャリアが光を浴びるという日が、そう遠くないのかもしれませんね。

池上正樹さん:生きていていいんだよって後押しをしてくれるもの、生きる希望を持てるものって何なのかなっていうと、やっぱり、それを理解してくれる人の存在、心の支え。それが1つのバネになりうるのかな。まずは肯定してくれる人の存在ができるっていうのが、大きなきっかけになるのではないかなと思いますよね。

武田:そう考えてみると、いわゆる「べきおばけ」っていうのは、皆さんの心の中というよりも社会の中にあるわけですよね。もしかしたら周りが「べき」を変えなきゃいけないのかもしれませんし。

千原ジュニアさん:「べきおばけ」じゃなくて、「べきエンジェル」っていうのはすばらしいなと思いますね。本当にそうだと思いますね。

中川翔子さん:発想の転換ですよね。ネガティブに捉えるというか、前向きたいっていう気持ちのための存在と捉えるか。その心の受け止め方で、全然意味が変わってくると思います。

武田:世の中の「べき」っていうものにどう向き合うか、社会全体で考えていかなきゃいけないことなんじゃないかなと私も思いました。きょうは皆さんどうもありがとうございました。
このプロジェクトは今日の放送が終わりではありません。あくまで通過点です。今後も特設ページやイベントなどでこの問題と向き合い続けて、放送も続けていきたいと考えています。引き続き、ご意見や体験談などをお寄せください。お願いします。

特設ページ 「ひきこもりクライシス “100万人“のサバイバル」はこちら