クローズアップ現代

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2019年7月23日(火)
1票に託したホンネ 参院選 有権者の“新潮流”

1票に託したホンネ
参院選 有権者の“新潮流”

「年金」や「消費税」など、暮らしに身近なテーマが争点となりながら、参議院選挙の投票率が、24年ぶりに50%を割り込み、国政選挙としては戦後2番目の低投票率となった。背景に何があるのか?一方で投票所に足を運んだ人たちは、どんな思いで一票を投じたのか?番組では、街頭演説の現場取材や各種の調査から、“将来不安”を抱える現役世代が政治の現状をどう捉え、何を求めているのかを徹底分析。また将来を担う若い世代の政治意識を探り、日本の民主主義が直面する課題は何かを探る。

出演者

  • 御厨貴さん (東京大学名誉教授)
  • 谷口尚子さん (慶應義塾大学大学院准教授)
  • NHK記者
  • 武田真一 (キャスター) 、 栗原望 (アナウンサー)

参院選 有権者の“新潮流”

戦後2番目の低投票率だった、今回の参議院選挙。関心の低さが指摘される中、どんな思いで投票日を迎えたのでしょうか。

「ちょっとでも変わればいいかなと思って。年金とか、いろいろ問題あるじゃないですか。」

「高齢者の方が増えてきて、医療費の負担が増えてる問題があるんですけど、難しいですね。」

現役世代の“ホンネ”を取材すると、有権者が1票に込める意味合いが、これまでとは違ってきていることが見えてきました。

与党に投票した人
「文句言って消費税が変わるのかといったら変わらないし、今の与党のままでもいいのかな。」

野党に投票した人
「社会の中の何かがすぐに大きく変わるわけではないでしょうけど、野党が強くならないと、たぶん今の政治はしっかりしない。」

さらに、若い世代はこれまでとは異なる価値観で政治を見ていることも分かってきました。

「ツイッターはフォローしてます。」

「政治色、前面に出されると引いちゃう。」

17日間の選挙戦の取材から見えてきた、変化の潮流。政治に今、何が求められているのか。有権者の声から探ります。

なぜ与党に? 広がる“現状維持”

連日多くの人が集まった自民党の街頭演説。現場で多く聞かれたのは、現状維持を求める声でした。

「問題なく今、日本が安倍さんのまま続いてるので、安定しているのかなと思いますね。」

「流れ的になんだかんだいって(自民党が)強いかなって感じがします。次この人がいいという人も特にいないし。」

与党が改選議席の過半数を上回る議席を獲得して勝利した、今回の選挙。過去に増税を掲げた政権は何度も苦戦してきたため、逆風が吹いてもおかしくないといわれていました。
NHKの行った出口調査では、与党が掲げた消費税率10%への引き上げについて57%が「反対」と答え、「賛成」を上回りました。ところが反対と答えた人のうち、比例代表の投票先として最も多かったのは、消費増税に反対の野党ではなく、自民党だったのです。

街頭演説の現場で出会った、岩上里紗さん。

岩上里紗さん
「安倍政権はそれなりに成果は出してるので。」

消費税の引き上げに不安はあるものの、自民党に投票するといいます。10か月の赤ちゃんを育てている岩上さん。増税によって育児や教育の費用が増えることを懸念していました。家計を支えようと看護の仕事への復帰を目指していますが、保育園の空きが見つからず、メドは立っていません。

栗原
「怒ったりはしないですか?そういう状況に対して。」

岩上里紗さん
「いっぱいありますけど、文句言って状況が変わるわけじゃない。しょうがないと思いますね。あきらめの方が強いかもしれない。」

会社員の夫との間で、年金問題を巡る政府の対応についても議論にはなりますが、投票先は変わらないといいます。


「直近の2,000万円の問題は、正直言うといろんな説明あったけど、不透明なところもあるんだろうからね。」

岩上里紗さん
「騒いでも、起きてる事実は変わらないじゃん。それをワーワー言うんじゃなくて、じゃあどうするか話し合わないと。」


「なんだかんだいっても長くなってる政権を安定させて、『がんばって』って応援してあげるのがいちばん得策なのかとは思います。」

自民党に投票した人の中には、かつて野党を応援していた人もいました。
都内で暮らす34歳の男性です。10年前は政権交代に期待して、民主党に投票しました。当時、定職を探しながらアルバイトを転々としていたというこの男性。政治に変化を期待したのです。

34歳 男性
「それこそ2009年のときは、ちょっと1回やらせてみようかと思って民主党に入れたんですけど、あのあと3年間、迷走気味だったなというか。」

今は介護の仕事に就き、年収は300万円ほどです。

「今の給与水準だと、もしこれから結婚して家庭をもって、子どもが生まれて、ちょっと厳しいのかなと感じてます。」

政府には、もっと賃金や雇用の改善に取り組んでほしいと望んでいますが、それを前面に掲げる野党には期待を持てないといいます。

「公約は確かに悪くないなと思いますけど、やっぱり政党ですよね。外交とか、そういうのも全部ひっくるめて考えたときに、野党よりは、野党にここで任せるよりかは現状維持で自民党にやってもらった方が、まだましなのかな。わりと消極的な(与党)支持。」

なぜ野党に? 現状への“叱咤(しった)激励”

栗原
「立憲民主党の街頭演説の現場です。今、党首の枝野さんの演説が始まりました。」

一方、野党の街頭演説の現場で多く聞かれたのは、「野党の意地を見せてほしい」という声でした。

「今の野党の状況をどう思いますか?」

「だらしない。もっと頑張れって感じ。野党がもっと自民党をどんどん攻撃してくれて、『俺たちもやらないとダメだ』と自民党ももっと思ってきてほしい。」

事前の世論調査では、実は与野党の議席について「野党が増えたほうがよい」と答えた人が与党を上回っていました。

立憲民主党を2年前の結党以来、支持している男性です。大学で非正規の事務職に就いています。

非正規で働く男性
「最終的には野党が政権とってくれるのがいいなと思いますけれども。現状、本当に安倍政権がまずいので。年金もそうですし、雇用が、時給が上がってくれたりとか。」

アベノミクスで暮らしがよくなった実感はないという、この男性。一方で、対案を示しきれていない野党にもどかしさを感じています。

「やっぱり(野党の)非力な部分というのは大きいと思います。国会対応みたいなものでも足並みが必ずしもそろわなかったり、去年とかあったりしたので。」

今回の選挙で、たとえ政治の流れを変えられなくとも政権批判の意思を示すことが重要だと考え、野党に投票することにしました。

「さすがに1票で何か変わることはないかもしれないけど、野党が強くならないと、たぶん今の政治はしっかりしないので、勝てはしないにしても野党に1票を入れる意味があるかな。」

これまで野党を応援してきた人の中には、劇的な変化を期待して一票を投じるという人もいました。
IT企業に勤める槌野雅敏さんです。

槌野雅敏さん
「例えば統計不正とか、与党があまりに強いがゆえにいろいろと問題を起こしている。なんか政治に対して萎えてしまう。」

既存の政党では、自分たちの不満をすくいきれないという槌野さん。今回は、消費税の廃止など弱者に寄り添う政策で政権との違いを強調した、れいわ新選組に投票しました。

「“NO”を突きつける勢力が政治の上では大事だと思うので。他の野党の方々にも同じ一丸となって政治に緊張感を取り戻してもらうということで頑張ってほしい。」

有権者が1票に込めた複雑な思い。政治は何を問われているのでしょうか。

参院選から何が見えた?

ゲスト御厨貴さん(東京大学 名誉教授)
ゲスト谷口尚子さん(慶應義塾大学大学院 准教授)

武田:不安や不満は感じながらも、政治に対してそれをなんとかしてほしいという、そんな期待にはつながらない。そんな空気が透けて見えてきたわけですけれども、長年、日本政治を見続けてこられた御厨さん、こうした有権者の態度、どういうふうにご覧になりましたか。

御厨さん:なんとなく暗い気持ちになってしまうんですけれども。ずっとお話を聞いていて分かるのは、現段階、つまり選挙が始まる前の段階で「与党が勝つよね」「野党はどんなに頑張っても負けるよね」という空気がまん延してるということが問題で、だから1票で変えようという人がなかなか出ない。やっぱり長年続いているものに巻かれたほうがいいかなという話にどうしてもいってしまうでしょう。そこに政治の中で何かが変わっていく、変えることの価値観みたいなものがあまり、もうみんな見えなくなっているのかなと。

武田:今回の選挙に関しては、なかなか変えるということが見えづらかった?

御厨さん:見えていないという感じがしますね。

武田:有権者の投票行動を研究する谷口さん。今回の参議院選挙の投票率、戦後2番目に低いということになりました。これはなぜなのか、2つのポイントを挙げていただきました。

谷口さん:大変低い水準の投票率になっているんですけれども、投票率が上がる2つの舞台装置として、有権者の方が関心が高い、そして意見が割れているような対立争点があるということ。もう一つは、先ほどのVTRやご指摘にもあったとおり、政治勢力がガチンコ勝負でしっかり対抗した接戦の選挙であること。この2つがそろっていないと、先ほどのご指摘もあったように、事前に結果が少し見えてしまって、自分の1票が支持をしていようがいまいが、満足していようが不満があろうが、行くインセンティブがなくなってしまうということがあると思います。

武田:ただ今回も、消費税をどうするか、あるいは憲法改正をどうするかなど、争点はあったのではないですか?

谷口さん:確かに消費増税は関心が高い争点ですが、これに関しては与党の側も軽減税率を考えるですとか、これまでの何回かの国政選挙を踏まえた、配慮した公約を掲げてきたという点。また憲法改正については、野党の側も意見の違いが多様にあって、2大勢力や2大意見の対立という形にはなっていなかったので、少し争点がぼやけてしまったということがあるかと思います。

武田:今回の選挙、有権者はどういう判断をしたといえるんでしょうか?

吉川衛(政治部・選挙デスク):こちらが今回の選挙結果になります。今回、有権者は、ひとまずは安定した政権の維持を選んだといえると思います。その意味では、与党が勝利したということになるわけですけれども、自民党は接戦で競り負けるなどしまして、改選前よりも9議席減らしています。そうしたことから、高揚感に包まれているというような状況ではないです。
一方、野党側を見ますと、立憲民主党が改選前から議席を倍近くにまで増やしました。ただ、こちらも国民民主党や野党統一候補の無所属らを合わせても、前回・3年前に民進党で獲得した議席より増やすことはできなかったんです。立憲民主党の比例代表の得票を見ましても、2年前の衆議院選挙からおよそ300万票減らしていて、与党に迫るというような勢いは感じられませんでした。

武田:与野党ともに、有権者の十分な期待を集めることはできなかったという結果なんですね。

吉川デスク:そうした中で、今回の選挙で注目を集めたのは、れいわ新選組ですね。比例代表で220万票余りを獲得しました。消費税の廃止や奨学金の徳政令などを打ち出して支持を広げてきました。既存の政党に満足できない、そういった有権者の受け皿になったものと見られます。野党の中からは、早速、このれいわ新選組との連携を模索する動きも出ていまして、今後こうした動きが関心を集めていくことになると思います。

武田:そして取材に当たった栗原さん。街頭で有権者の皆さんの声を聞いてみて、どんなことを感じましたか?

栗原:街頭演説の現場に行きますと、意外と若い人の数が多いなと感じました。彼らの姿を見てみますと、演説も聞いているんですが、スマートフォンで写真を撮って、SNSにアップする、そういう姿が目立ちました。話を聞いてみますと、彼らも奨学金や子育てなどで将来に不安はあると語っているんですが、その思いを1票に込めて政治にぶつけたいとは思っていないようだったんです。今、私は35歳なんですけれども、10歳違うだけで政治や選挙の捉え方が違っているようなんです。

若者と政治の“新たな関係”とは?

社会心理学が専門の稲増一憲教授です。この数年若者が政治を語る言葉に変化が起きているといいます。

関西学院大学 教授 稲増一憲さん
「もちろん共通点もありますけど、いくつかの面で断絶が起こっていて、我々の世代までの常識で理解してしまうと間違うのではないかという印象をもっています。」

一体どういうことなのか。大学の授業に参加しました。上の世代との違いが象徴的に分かるのが、政党に対するイメージだといいます。

稲増一憲さん
「これらの政党を、革新から保守までの軸上に、みなさんが思うように並べてください。」

これまでは、日本の文化や伝統的な価値観を重んじる自民党が保守。それに対する野党が革新と捉えられてきました。ところが…。

栗原
「いちばん保守のところに共産党、社民党、立憲民主党と書いてあって、逆に革新のほうに、日本維新の会と自民党、公明党。」

学生
「日本維新の会は、大阪に住んでいると都構想とか何か新しいことにチャレンジしようというのが耳に入ってくる印象があって。」

「自民党は憲法を変えるという意味で革新であるかなと考えていて、共産党は昔からのイメージで革新かなと思っていました。」

関西学院大学 教授 稲増一憲さん
「55年体制という時代は、こっちが保守、こっちが革新とわかりやすい枠組みがあったけれども、それが崩れた中で個別の情報を全部集めて理解をしようというのは、なかなかハードルが高い。そういう意味では、若者が枠組みを持たない状況で理解しにくくなっているというのは、ある種、必然なのかなと思います。」

もう一つの特徴が、政治へ期待する度合いが低くなっていることだといいます。
山一證券の自主廃業や、北海道拓殖銀行の破綻など、金融危機が深刻な時代に生まれた学生たち。小学校高学年のころに起きたのがリーマンショック。「失われた20年」と呼ばれる時代に育つ中、自分の身は自分で守らなければならないと思うようになったといいます。

学生
「今まで何か政策とかで変えてもらった経験自体がそんなにないからこそ、私たちが政治に対して何かアクションを起こして変わるという実感がそもそもあまり湧かなくて。」

「自分の生活を変えるには自分が頑張るしかないのかなって思って。」

「2,000万必要だったら頑張って仕事して、貯金してためたほうが裏切られることもないし、いいんじゃないか。」

一見、政治と距離を置いているように見える若者たち。しかし、上の世代とは少し違う形で政治との接点を持っていました。

「ツイッターはフォローしてます。」

栗原
「例えばどういう人?」

「安倍さんとトランプさん。」

栗原
「何見てるの?」

「官邸のインスタ。」

親しみやすいデザインなら、政治家のアカウントもフォローするといいます。

「国会でカタい顔をしてやっている人が、全然いつも見ているのと違う側面が見えると、ちょっと親近感湧いたり。」

SNSを通して接点を持つ政治に、若者たちはどんなことを求めるのか。

「検索したりとかコストがかからずに情報が入ってくるのはすごい利点だし。」

栗原
「コストって気になるの?」

「わざわざ検索しにいくほど興味はないけど、流れてくるんだったら見とこうかぐらいの気持ちで。情報が受け身でも入ってくるというところが、コスパがいい。」

「いまのことを解決するのはもちろんなんですけど、それが未来につながっているという実感が得られる政策だったり取り組みをやってもらえれば。」

いま 政治と有権者の“距離”は?

武田:「政策で何かを変えてもらった経験がない」とか、「2,000万円必要だったら自分で頑張ったほうがいい」。ちょっと考えさせられる言葉でしたね。

栗原:はっとする言葉でしたよね。その背景には、強い“自己責任”の意識があるなと感じたんですね。若者は政治に関心がないといわれますけれども、彼らが育ってきた20年間、社会から受け取ってきたメッセージを受けて、こうした考え方を自然と身につけたのかもしれないと感じました。

今回、話を聞いた学生たちによりますと、政治や選挙を通して、中長期的に社会の制度を変えるという発想よりも、自分の力で目先の不安を解決するという発想を優先するということだったんです。なので、その分、何かを変えたときのリスクを回避しようとする考え方が働きがちなのかもしれないというふうにも感じました。

武田:実はきょう(23日)、衝撃的な数字が発表になりました。これは総務省が発表した、今回の参議院選挙の18歳、19歳の投票率なんですが、速報値で前回・3年前に比べて15ポイント余りも低くなったということなんです。谷口さんは、高校生の主権者教育にも携わってらっしゃいますけれども、若い世代と政治の距離、どうなっているんですか。

谷口さん:18歳に選挙権が引き下げられて、教育現場でも大変、教育熱心に頑張ってらっしゃると思いますし、むしろ若者の政治関心は下がっていないという調査結果もありますので、こうしたことがどうして行動に結び付かないのかということを考えますと、
先ほどもありましたように今の若い方は生活スタイルが、スマホでなんでも買えるなどの経済の仕組み、多様なニーズがオンデマンドですぐに満たされる便利な世の中にいるのに、政治というのは地域社会があって、利益集団があって、政策過程があって、ものすごく複雑な構造で、時間をかけていかないと法律や法案という形になっていかないので、変えるのはものすごく時間がかかると。これはもう、ふだん感じてらっしゃるニーズや不満からして、非常に遠いスタイルの形に、今、政治の仕組みがなっているのかなと。逆に言えば、若者のスタイルに合った形で新しい政治の仕組みというのができてくれば、新しい参加の在り方も出てくるんじゃないかなと、今、期待させられましたね。

武田:政治の側はどうなのか。保革の各党の位置づけがわれわれの常識とはだいぶ違うような捉え方をしているところがありましたね。なぜこういった対立軸みたいなものが出にくくなってきているんでしょうか?

御厨さん:これは、平成の時代というのはご承知のように政治改革の時代だったんですよね。だからむしろもっと過剰に政治があったはずなのに、最終的に結果はあんまり芳しくなかったというところで、現実に政治過程に参加している政党はそれぞれいろいろ合従連衡しましたけれども、今の段階で見ると共産党を除いては、みんな与党を経験したんです。この与党、野党というときに、与党を経験しないと統治能力が身につかないといわれて、実は与党になることは大事だとずいぶん言われたんだけれども、結果どうなったかというと、みんな「与党病」にかかってしまって、与党にならないと政治はできないんだというふうに思ってしまったんです。
だから、普通だと野党にいるときに大きな問題を考えて、自分たちの、要するに支持基盤をどう変えるかとかなんとかいろいろな議論ができるのに、そういうところにいかないで、野党になったらすぐ与党に戻ろうと。だから今回もそうですけど、民主党政権の失敗を見た安倍政権は、とにかく政権を奪取したらこれを二度と野党にやってはいけないというところにいってしまうんです。そうすると政治のものの考え方もそこにいくから、また刹那主義的になる。だからいろいろ大きな問題を今回も出しているように見えるけれども、みんな遠くに見えてしまうのは、本気でこれをやる気があるかなというと、国民から見ると見透かされちゃうみたいな。大きなビジョンが見えてこない、出しづらい。出す気もないような感じになってきますよね。

武田:投票率50%を下回る深刻な状況だと思うんですけれども、政治には何が求められているんでしょうか?

吉川デスク:投票率を上げるためには、投票の利便性を高める制度上の改善というのはもちろんだとは思うんですけれども、やはり選挙で国民に何を問うのかという、そのテーマをどう決めるのか。それからまた、それぞれの選択肢を明確に示して競い合うということが、何よりも必要なことだと思います。その意味で、与党は政権を担って、何をどうやって実現していくのかということを明確に示す必要があると思います。
また今回も、かつての民主党政権に対する批判という場面も見受けられたんですけれども、国民に政治に期待を持たせるためにも、より前向きな議論が求められてくると思います。また、長期政権に対する批判にも向き合って、丁寧に説明をしていくということも重要になると思います。
対する野党側ですが、今後、衆議院選挙に向けて、連携を強化していくという方針でいます。ただ今回、1人区で候補者を一本化したように、与野党の対決の構図を作るというだけにとどまらずに、与党に代わる選択肢を政権構想を一致して示して、対立軸を鮮明にできるかどうかということが問われてくるんだと思います。

武田:今回、浮かび上がった政治と有権者の距離を埋めていくには、何が今、必要なのでしょうか?

御厨さん:政治とつきあう。みんな政治と向き合いたくないという若者が増えてるわけです。そうではなくて、自己責任でできるんだよという話なんですが、そうだろうか。政治って本当はすごく時間がかかって、なんとなく扱いにくいものだけれども、それをやっぱりわれわれはきちんと扱わないと、いつの日か痛い目を見るときが来るかもしれない。
例えば、今、社会保障の問題がいろいろ出ていますけれども、この社会保障の世代間対立、今はあまり明確に言ってませんけれども、いよいよとなったら、この両方のどっちを取るかみたいなことになったときに、自己責任の世界ですとは言えない。そこで政治でなんとかしなければいけなくなる。それからもう一つは、憲法。これは喫緊の問題で、もう来ますよね。その憲法の中で何がというところで大きな議論をしないとこれはもう無理だし、いずれ出てくると思いますけど移民の問題なども、かなり深刻に話し合わなければいけない状況が出てくる。そこで政治をかわいがってあげるといったら変ですけど、政治となじんでいこう、そんな感じですね。