クローズアップ現代

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2019年7月11日(木)
はやぶさ2 密着!快挙の舞台裏

はやぶさ2 密着!快挙の舞台裏

小惑星リュウグウの探査を行う「はやぶさ2」。世界初となる人工クレーターを形成するなど、生命の起源解明につながる可能性がある成果を次々とあげている。今回、その壮大な探査を紹介しながら、成功する組織の“秘密”に迫る。その1つが、600人を束ねるプロジェクトマネージャに4年前、当時30代の若手を抜擢したこと。他にも「批判勢力を取り込む」「周到な準備」「外部人材を登用」するなど、巧みな組織運営の舞台裏を描く。

出演者

  • 杉田精司さん (東京大学教授 はやぶさ2プロジェクトチーム)
  • 原晋さん (青山学院大学陸上競技部監督)
  • 武田真一 (キャスター)

快挙の舞台裏 数々の知られざるドラマ

今日(11日)2度目の着陸に成功した、はやぶさ2。その舞台裏には数々の知られざるドラマがありました。

「(着陸に成功して)上昇しました。」

はやぶさ2 プロジェクトマネージャ
「ひとつひとつの作業は全部的確で、皆さん自信を持って判断している状態が保てていたと思うんです。このチームは本当にすごい。」

実は3週間前、JAXA内部には、2度目の着陸に対して、慎重な意見が出ていました。この日、行われていたのは、JAXAの幹部が集まるテレビ会議。JAXAの國中均所長です。「着陸中止も視野に入れるべきだ」と主張していました。

JAXA 宇宙科学研究所 所長 國中均さん
「今日はTD2(2度目の着陸)に向けてGO・ノーGOを決めましょう。」

去年(2018年)6月、小惑星リュウグウに到着した、はやぶさ2。今年(2019年)2月には、最初の着陸でリュウグウ表面の岩石を採取できたと見られています。さらに4月、金属の塊を小惑星表面に打ち込み、世界で初めて人工クレーターを作ることにも成功しました。もし、2度目の着陸に失敗し、地球に帰還できなければ、これまでの成果が無駄になってしまう。國中さんは危惧していました。リュウグウの表面を覆う岩石。

はやぶさ2の本体は着陸時、高さおよそ1メートルまで降下するため、岩にぶつかると機体を損傷し、地球に帰還できないおそれがあります。

JAXA 宇宙科学研究所 所長 國中均さん
「帰ってこられなければ、はやぶさ2の成功は0点になってしまう。1つの失敗は数年規模の(日本の宇宙科学の)停滞を招いてしまう。軽々に難しいミッションを行った上で探査機をロストする(失う)ことは、とても許されることではない。」

チームの責任者を務める、津田雄一プロジェクトマネージャ。
反対意見を受け悩み続けていました。

はやぶさ2 プロジェクトマネージャ 津田雄一さん
「非常に科学的に重たい判断を、将来の意義を占う判断をしなければいけない。(ここまで)我々は非常にうまくいっているので、逆にそこで悩みが深くなってしまっている。」

2度目の着陸で、世界で初めて、小惑星内部からの岩石を採取したいと考えていた津田さん。当初、6月下旬の着陸を予定していましたが、まだリスクがあると、2週間の延期を決断します。チームは着陸の安全性をさらに高めるため、詳細な分析を再び進めることにしたのです。上空50メートル付近から撮影した着陸地点の写真です。

ぶつかる危険のある岩はないか、チームは一つ一つ分析し、大きさを調べていきました。

はやぶさ2 プロジェクトメンバー 山田学さん
「このあたりに降りて、もの(岩石)を採ろうと思っています。なんとしても成功させたいので、みんな自分たちの担当の中で出来ることを、とにかく頑張ってやっている。」

着陸するのは、直径7メートルのエリア。

分析の結果、この範囲の岩は全て高さ65センチ以下だと分かり、高度およそ1メートルまで近づいても、安全に着陸できると判断しました。そして、2週間かけて着陸のシミュレーションを重ね、その回数は合わせて10万回を超えました。

はやぶさ2 プロジェクトマネージャ 津田雄一さん
「本当にこの地形は、この地域は安全なのか、ずっと評価してきました。着陸の安全性という意味では、非常に安心感の持てる数字です。」

着陸に慎重だった國中さんです。チームから逐次報告を受け、最後は着陸を認めました。

JAXA 宇宙科学研究所 所長 國中均さん
「数字(リスク)が安全範囲内に入っているので、これはGOであると。彼らの実力を、これまで研究してきた成果を最大級投入して、いい成果をあげてほしい。」

そして、今日。

はやぶさ2 プロジェクトマネージャ 津田雄一さん
「あとは探査機、頑張ってくれ。GOでお願いします。」

2度目の着陸を実施。人工クレーターから噴き出した、内部の岩石を採取することに成功したと見られています。

はやぶさ2 プロジェクトマネージャ 津田雄一さん
「私たちは太陽系の歴史を手に入れることができました。100点満点で言うと1000点。本当に今回は言うことなし。完璧に動きましたし、事前の準備も含めてパーフェクトでした。」

全てがうまくいったかに見える2度目の着陸。ところが、ここに至るまでには、相次ぐ想定外との戦いがありました。はやぶさ2の任務は、リュウグウから、生命誕生のカギを握るとされる、水と有機物を持ち帰ることです。

46億年前に誕生した地球。その後、衝突した小惑星が水と有機物をもたらしたことで生命が誕生した可能性があるからです。

最大のピンチは、2月の最初の着陸の時でした。降下直前、トラブルが起きたのです。高度20キロを飛行する、はやぶさ2。その高さでは動作するはずのないカメラが突然稼働し始めました。降下に向けた作業は中断。プログラムの誤作動が原因で、高度を取り違えていたことが分かりました。プログラムの修正に時間がかかり、降下を開始したのは5時間遅れ。小惑星が自転しているため予定の場所に着陸できないおそれがありました。

はやぶさ2 プロジェクトマネージャ 津田雄一さん
「着陸場所を厳密に決めているので、着陸の時間は変えられない。」

津田さんたちの決断は、着陸続行。予定の倍、時速およそ3キロで降下させ、時間どおり着陸させるというものでした。

はやぶさ2 プロジェクトマネージャ 津田雄一さん
「計画したとおりにやるというのがセオリーなんですけど、それを捨てなければいけない。」

この決断を支えたのが、周到な準備。何度も繰り返してきた訓練の経験でした。はやぶさ2の動きをコンピューター上で再現するシミュレーターです。

「3、2、1、ゼロ。」

ここで仮想のトラブルを発生させ、管制室でそれに対処する訓練を行います。

「そろそろターゲットマーカ出現させます。」

訓練の内容は、「神様」と呼ばれる出題者6人が決め、ほかのメンバーには知らせません。数百通りのトラブルを組み合わせて、訓練ごとに全く違う状況を設定します。その時、管制室では、トラブルの原因を本番さながらに究明。1回の訓練は30時間に及ぶこともあります。こうした実践的な訓練を、2年間にわたり、何度も繰り返してきたのです。
神様役の1人、JAXAに入って5年目の武井悠人さんです。武井さんは、最初の着陸でのトラブルよりも過酷な状況を訓練のたびに設定してきました。

はやぶさ2 プロジェクトメンバー 武井悠人さん
「予定していない異常が起こったときに、運用メンバーがどう対処すべきか。起こり得る不具合を考えて、それを訓練で出していくことに、とてもこだわってやっていました。」

2年前には、今回予定を変えて行うことになった2倍の速度で降下する訓練を行っていました。この訓練で武井さんは、はやぶさ2の姿勢を制御する機器に異常を発生させ、軌道を大きく外れるように設定。さらに、姿勢を立て直すための端末が使用不可能になるという、極めて困難な状況にチームを追い込んでいました。

はやぶさ2 プロジェクトメンバー 武井悠人さん
「絶対に大丈夫ですと言い切ることは出来ないとは思っていますが、それを言い切るのに近いところまで自信を持つために、限られた時間の中で、出来る限りの訓練をやりました。こだわって模擬したことによって気付けたところはありました。」

トラブルに見舞われていた最初の着陸。変更した倍の降下速度は訓練でも経験していたため、津田さんはこのトラブルを乗り越えられると考えていました。そして、迎えた着陸の瞬間。

はやぶさ2 プロジェクトマネージャ 津田雄一さん
「どうしなきゃいけないって考える想像力がみんな自然に身に付いていた。ひとつひとつの作業は全部的確で、皆さん自信を持って判断している状態が保てていたと思うんです。このチームは本当にすごいと、このとき思いました。」

今日は、はやぶさ2のカメラの責任者、杉田精司さんと、プロジェクトの舞台裏をさらに詳しく掘り下げます。

プロジェクトメンバー生出演 舞台裏は

ゲスト 杉田精司さん(東京大学 教授 はやぶさ2プロジェクトチーム)

武田:その杉田さんにお伺いします。1回目の着陸が成功して、今日、2度目も着陸成功。どんな思いでご覧になりましたか?

杉田さん:1回目ですら、世界のトップに立っているというところなんですね。

武田:すごいことなんですね。

杉田さん:すごいですね。2回目ができた時は、これは世界のトップをさらに首1個、あるいは1馬身突き抜けたなと。これはすごいことになったなというのが感触でしたね。

武田:2回目には慎重論があったということでしたが、世界中の研究者からも2回目はやめたほうがいいんじゃないかというメールが届いたそうですね。

杉田さん:「2回目の価値はすばらしい、ぜひやってほしい」「だけど、君たちはもう世界の一番にすでにいるから、もう心配でしょうがない」、我々の仲間である人ほど「大事にしたほうがいいぞ」と、「僕はもうハラハラする」と、そういう感じの連絡は来ました。

武田:その心配を見事覆して、本当にすごいことですね。

杉田さん:そういうことを言っている人は、すでに「いやあ、よかった」「すばらしい」という連絡がいっぱい来ています。

武田:実は、今日の着陸に向けて、さまざまな課題があったんですけれど、大きな課題の1つが、はやぶさの目になるカメラが曇ってしまったと。

実はこのカメラをつかさどっていらっしゃったのが、杉田さんです。
これは大丈夫だったんですか?

杉田さん:これ、私を象徴しているわけですけれど。

武田:まさに、はやぶさの目になるわけですよね。それが曇ってしまったと。

杉田さん:この小惑星は、我々が、NASAも含めて、ESA(欧州宇宙機関)も含めて、世界中も含めて、初めて行くタイプの小惑星で、表面がどんなもので出来ているかよく分かっていなかったんですね。たぶん炭素のちっちゃい微粒子が表面にあったんだと思います。それがぴたっとレンズについてしまって、感度がものすごく落ちてしまいました。まずいことになったんじゃないか。ところが、非常に微粒子が細かかったからではないかと思うんですが、曇るんですけれど、ぼんやりしていなかったんですね。シャープな場所はシャープに見える。「これだったらタッチダウンには問題ない」ということで、露出時間を調整するだけで元の機能は十分使えるというふうに考えたというか判断できて、それで今日につながったと、そういういきさつがありました。

武田:じゃあ、安心して?

杉田さん:そうですね。実は、リュウグウに到着する前のほうが、私は内心ずっと心配でした。やっぱり未知の星に行きますし、初めて使うカメラにスイッチを入れて、初めて写真を撮った時にうまくいくだろうかと。それと比べると、1回目で曇っても「ああ、こうなってる」というのが分かっているというのは安心のほうがちょっと強かったですね。

ゲスト 原晋さん(青山学院大学陸上競技部監督)

武田:今日はもう一方、青山学院大学陸上部の原晋監督にもお越しいただきました。
原さんは最近、初代はやぶさのプロジェクトリーダーの方と対談をされたということで、今回のミッションも大変関心を持ってご覧になったと思うんですけれども、どうですか?

原さん:前リーダー、川口先生は「うちのメンバー、みんな夢を追いかけるのが好きな夢追い人なんだ」とおっしゃっていたんですね。「いろんな困難があっても、最後はチーム一枚岩となって挑戦するんだ」と、そういう夢追い人が、今日は夢を現実のものにしましたので、本当に「あっぱれ」をあげたいですよね。

武田:杉田さんは今日、原さんにお会いになるのを楽しみにしていらしたんですよね。

杉田さん:私、探査をやっていましてよく思うのは、打ち上げてしまうと何もできないと。ただ、何もできない、ほとんどできないんですけれども、ちょっとだけできるんですね。これって、マラソンの時に、選手のトレーニングをして「よーいドン」すると、監督にはできることが少ないって、なんか似ているんじゃないかなと思うんですけれども。その辺をちょっと聞きたいと思いまして。

原さん:おっしゃる通りです。宇宙開発ほど、我々のマラソンはそこまで大きなものではありませんけれども、全てはスタートラインに立つまでの「準備」と「こだわり」だと思います。そういう点で言えば、共通項は大いにあるのかなと思います。我々も幾とおりのシミュレーションをしますからね。

武田:これは、杉田さんたちが撮った画像を基にした着陸地点のジオラマです。この凸凹した表面に、はやぶさが降りていくわけです。

これが最大の壁だったということなんですが、実は杉田さんのチームが、この凸凹した岩石一つ一つを調べたと。
これは大変だったんじゃないですか?

杉田さん:そうですね。これをみんなで、1人の人だけに任せてはいけないので、多くの人でチェックをし合いながら進めると。工学の人たちと、我々のチームと共同作業で、一生懸命やってくれましたね。

武田:これを一個一個調べたんですよ。すごいことですよね。

原さん:そういうようなポシショニングでリーダーなんですね。

杉田さん:そういうことになりますよね。リーダーでやってくれました。

武田:一人一人がリーダーの立場で。
さまざまな困難を乗り越えてここまで来たわけですけれども、今日の成功の影には、もう1つの知られざる苦労がありました。

快挙の舞台裏 成功支えた“大胆な改革”

2度の着陸に成功した、はやぶさ2。順調に進んだかに見えるプロジェクトは、実は当初から苦難の道のりでした。
16年前、地球を出発し、小惑星イトカワの探査に向かった、初代はやぶさ。機体が損傷し、一時通信が途絶するなど、重大なトラブルに見舞われながらも、地球への帰還を果たしました。はやぶさ2のプロジェクトが動き出したのは、その翌年、2011年でした。初代の1.5倍、およそ300億円をかけ、小惑星内部の探査など、より難しいミッションに挑むことになりました。

しかし、チームが作成した当初の計画は批判にさらされることになります。宇宙開発の長期計画を審議していた文部科学省の「宇宙開発委員会」。議事録には、「300億円かける意義があるのか」と、疑問を投げかける声が相次いでいます。

“探査に行けばいいというものではない。”

“科学の成果は得られるのか。”

ミッションを達成するための体制や目的に、あいまいさが指摘されたのです。
JAXA内部でも危機感が高まっていました。当時、執行役だった、山浦雄一さんです。

当時の山浦さんのメモです。組織・人の壁、コミュニケーション不足、体制のぜい弱さが問題となっていました。

元JAXA 執行役 山浦雄一さん
「本当にこれ(はやぶさ2)が成功するんだろうか。あるいは実現出来るのだろうかという懸念でいっぱいでした。」

今日の着陸成功のカギを握った、あのシミュレーター訓練。実は、JAXAの総力を挙げた組織改革によって生み出された成果の1つです。もともと3つの組織が合併して出来たJAXA。

はやぶさ2のチームは旧文部省の宇宙科学研究所が母体で、惑星探査などを研究するメンバーが中心でした。有人宇宙飛行を担う筑波宇宙センターや、航空機の開発を行っていた調布航空宇宙センターなど、ほかの部署とは壁があり、ノウハウの共有が限られていました。
そこで取り組んだのが、「壁を取り払う」ことでした。はやぶさ2のチームの主要ポストを2倍に増設。新設したポストに、筑波宇宙センターなどの人材を積極的に呼び寄せました。

それまで交流が少なかった有人宇宙技術の開発を担当する、筑波宇宙センター。1つのミスが宇宙飛行士の命取りとなるため、NASAの手法を取り入れ、あらゆるトラブルを想定した訓練を日々繰り返しています。さらに、宇宙輸送船「こうのとり」など、大規模なプロジェクトを動かすノウハウもありました。組織の壁を取り払ったことで、こうしたノウハウが生かされ、あのシミュレーターを使った訓練の向上につながったのです。

元JAXA 執行役 山浦雄一さん
「全然違った文化でやってて、本当に融合できるのかと思った人もいた。いろんな経験をしている人が集まって議論をすると、いい方向に向かう。」

総勢600人からなる、はやぶさ2のプロジェクト。実は、外部の研究者や技術者が多く参加し、日本の総力を挙げたチーム編成が、成功のカギの1つとなっていました。その1人、名古屋大学の渡邊誠一郎教授。惑星科学の第一人者です。

渡邊さんは、外部から批判も含めて、プロジェクトに対して客観的な立場で意見を述べていました。JAXAは渡邊さんに「チームに加わって率いてほしい」と説得を繰り返しました。そして、従来はJAXAの人材が歴任してきた科学者のチームのリーダーに招いたのです。

元JAXA 執行役 山浦雄一さん
「最後、了解のひと言がきた。それは大変うれしかった。オールジャパンで皆が後押ししてくれるようなミッションにしなくてどうするんだという思いがあったことは間違いありませんね。」

さらに、渡邊さんがチームに入ったことをきっかけに、外部の科学者たちが次々と参画するようになったのです。

名古屋大学 教授 渡邊誠一郎さん
「僕自身はかなり、はやぶさ2はぜひ進めるべきミッションだと思えてきたし、学会の空気もだいぶ変わったと思います。チーム力はどんどんアップしていってると。それが最高潮に達したときに、まさにリュウグウに到着して、いろんなチャレンジが出来ている。」

渡邊さんと共に外部から参画した1人が、ゲストの杉田さんでした。こうしたチーム編成が舞台裏にあったのです。

プロジェクトメンバー生出演 舞台裏は

武田:外部の力が入ることで組織の力が強くなった。杉田さんご自身はどういうふうに感じていらっしゃるんですか?

杉田さん:外部の人の力が重要だったと、これは間違いないと思います。ただ同時に、そういう外部の人が必要だと言われる中で、ずっと最初のころから内部の人が頑張り続けて今に至っていると、これもまた忘れてはいけないというか、忘れたくないなというふうに思うところは強いです。さらにもう一つは、今日がミッションの一番のハイライト、ヤマ場だったかもしれませんが、帰り道が残っているんですね。カプセルが地球にまで来て、「ああ、とれた」というところまで、我々は自分たちのチームがよかったのか、悪かったのか、本当の判断はできないなと思っていて、中の人間としては、そこがまだ先に来てしまうというのが一番強い気持ちですね。

武田:こういったポイント、我々も参考になるようなチームの力を最大限発揮するための教訓だと思うのですが、原さんはどう思いますか?

原さん:どうしても、いわゆる出世競争の壁だったり、学閥の壁だったり、男女の壁だったり、そういったものが組織には存在するんですよね。それをオープンマインドで、心理的安心性で、話をしてもいいことだという空気感がJAXAの皆さんにはあるのかなというふうに想像するんですけれどね。

武田:杉田さんは、例えばどういう点が今日の大きな成功につながったというふうにお考えですか?

杉田さん:やっぱり多様な人がJAXAの中でもいろんな部門から来た、大学からも来た、それによって、先には予測ができない未知の惑星に行った時に、いろんな柔軟な対応ができたと。ここに生きてきたんじゃないかなというところは大きいと思います。どんな方法論かは事前には分からなくて、「困った、どうしよう」という時に、こういうアイデア、ああいうアイデアっていうのが多様な人から出てくるので、そういう意味では、多くの人が入っていたということは強かったなというふうに思います。

原さん:私、2番の「“批判勢力”取り込む!」というのが気になっていて、これ一歩間違ったら、組織が空中分解するんですよね。でも、共通理念を皆さんが持っているからこそ成り立っているんじゃないかなと思うんですよね。反対の意見をうまく取り入れて、また新しい意見に変えていくと、発想を変えていくというのが理想じゃないですかね。

地球への帰還は

武田:いよいよ、今年の秋から冬にかけて、リュウグウを離脱して、3億キロ離れた地球まで戻ってくるわけですけれども、来年(2020年)の11月から12月というふうに見られています。カギを握るのが「エンジンの耐久性」、そして「大気圏突入」ということですけれども、杉田さんはこの復路のポイントをどういうふうに考えていらっしゃるんですか?

杉田さん:今、探査機(はやぶさ2)の状態としては、非常に良い状態になっているので、これに関しては期待ができる。ただ、大変な仕事であることは間違いないです。それと理念とおっしゃった、これはすばらしいことだと思って、批判勢力をみんな、この探査はすばらしいことに対して、誰も疑いを持っていない。それで一丸となってやっていると。ここを、このあと、もう少し引き続いてやっていければ、きっと成功できるんじゃないかと、そういうふうに期待しています。

武田:ものすごい宝物を持っているわけですよね。それを今、持ち帰るわけですよね。

杉田さん:絶対にこれは持ち帰りたいですね。

原さん:総合優勝するためには組織全体の力が必要ですからね。箱根駅伝のように、上り坂、下り坂、最後に「まさか」がありますから、十分に気をつけてください。

武田:やっぱり復路のほうが大変なんですか?

原さん:やはり、チームが一枚岩となれることが証明できるのが、総合力が証明できるのが、復路の走りなんですね。ですから研究もたぶん、いろんなプロジェクトの皆さんと一緒になってやられているから、最後は人ですね。

武田:勝算はありますか?

杉田さん:それはもう、ここは絶対成功させたい。たぶん大丈夫だと思います。