クローズアップ現代

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2019年7月10日(水)
豪雨被害を拡大!?あなたの町のダムは安全か

豪雨被害を拡大!?あなたの町のダムは安全か

“私たちの命を守ってくれるはずのダム”。そのあり方が今、大きく問われている。去年の西日本豪雨で5人の犠牲者が出た愛媛県西予市では、ダムからの放流によって河川が急激に氾濫したことが被害の拡大につながった可能性が指摘されているのだ。取材を進めると、民間企業が管理するダムでは安全対策の議論が長年置き去りにされてきた実態も明らかに。今年も私たちに迫りくる豪雨の恐怖。“ダムがあれば安心”は本当なのか、水害から命を守るために今何が求められているのか、検証する。

※全国にある「放流量に制約があるダム」「堆砂による浸水のおそれがあるダム」のリストはこちらから

出演者

  • 石井光太さん (作家)
  • 武田真一 (キャスター) 、 高山哲哉 (アナウンサー)

豪雨被害を拡大?あなたの町のダムは安全か

被災した住民
「野村ダム始まって以来このような状態になっております。」

命を脅かす水害は、あなたの身近に迫っているかもしれません。西日本豪雨から1年。私たちの安全を守ってくれるはずの存在が、今、大きく問われています。

被災した住民
「ダムはやっぱり怖い存在でしかないです。凶器なんだなと。」

被災した住民
「野村も(ダムができて)だいぶ安全と言われて、すごく安心しとったんですけど。」

ダムにたまった水を急激に放流した結果、下流の川が氾濫し、住民が犠牲になったと言うのです。

高山哲哉アナウンサー
「水の代わりにたまっているのは、これ土砂ですよね。」

一方、極端に土砂がたまったダムは、大雨の度に洪水被害を引き起こしていました。取材を進めると、土砂により浸水を引き起こす危険性のあるダムは、全国にいくつもあることが明らかになりました。「私たちの命を守ってくれるはずのダム」。揺らぐ安全神話を検証します。

愛媛県南部、肱川(ひじかわ)流域に広がる野村町です。

野村町住民
「やばい、車が流されよった。怖いよー。」

ダムの下流2.5キロメートルにあるこの町では、放流からわずか20分で河川が氾濫、5人が犠牲になりました。あの日から1年がたつ今、住民たちは、ダムを管理する国に対して、改めて説明を求めました。

野村町住民
「こちらとしては、突然に(ダムの)放流で、その逃げる時間を奪われたと。ダムはやっぱり怖い存在でしかないです。私たちを守るものではなくて凶器なんだなと。」

国のダム担当者
「我々もルールというのは最初に決めて、それに基づいて操作をする。これを原則としていまして。」

あの日一体何が起きたのか?当時、野村ダムの操作にあたった責任者です。これまでにない大雨の予報に備え、ある準備を進めていました。「事前放流」と呼ばれる操作です。ダムにたまっている水を事前に減らし、容量を確保。その後、大雨が降っても、より多くの雨をダムにせき止めるようにするものです。

川西浩二 野村ダム所長
「大変な、これまでに経験のないような大洪水になる。びっくりしたというのが正直なところですね。」

夜になり、雨は激しさを増していきました。事前放流をしたにも関わらず、9時間後には、9割以上がたまってしまいました。
このままダムから水があふれると、施設が損傷、ダムをコントロールできなくなるおそれもあります。
それを防ぐには、「緊急放流」と呼ばれる操作を行わなければなりません。しかし、大量の水を一気に流すこの操作は、短時間で川の氾濫を引き起こすおそれがあり、最終手段とされています。

川西浩二 野村ダム所長
「誰も(緊急放流の)ボタンを押したくなかったと思いますよ。押したくないですけど押さなければいけない。」

7月7日午前6時20分、緊急放流を開始。下流の河川の能力を大幅に超える毎秒1,800トンを放流します。その頃、大雨は、ピークを迎えていました。

野村町住民
「さっきより(水位が)上がっとる。」

行政が避難指示を出してから1時間半。逃げ遅れた人たちが数多くいました。その1人、必死に屋根によじ登り、一命をとりとめた、小玉由紀さんです。

小玉由紀さん
「ほんの2~3分の間に何か水がドバドバと押し寄せてきとるし、どうして?という感じやったんです。」

近くに住む母のユリ子さん(享年81歳)です。「水に押されて扉が開かない」という電話の声が最後の言葉でした。

小玉由紀さん
「何でたったの2~3時間の放流というか、水で、こんなに死んだり、みんなの財産がぐじゃぐじゃと流れたり、みんな何か夢やったらいいのにねと言って。」

どうすれば、命を守ることができたのか?
河川工学の専門家は、「緊急放流」のタイミングを遅らせることで、被害を軽減できたとしています。野村ダムでは、事前放流した後も、すぐにダムがいっぱいにならないよう、少しずつ水を放流し、水位の上昇を抑えていました。その量は毎秒300トン。専門家は、この量を毎秒500トンに増やせば、より水位の上昇を抑えられたと指摘。これにより、理論上は、緊急放流を2時間以上遅らせることができ、住民の避難がより進んだとしています。

今本博健 京都大学名誉教授
「実際にそれができていれば、少なくとも住民の方は、あんな被害は出なかったと僕は思います。」

しかし、野村ダムには、こうした操作ができない事情がありました。平成7年に起きた梅雨前線による洪水被害。この時、およそ毎秒500トンの放流を行ったところ、野村地区のさらに下流域では堤防がなかったところもあり、氾濫が起きたのです。以来、堤防の建設が計画されましたが、完成までは、放流量を毎秒300トンに抑えることになりました。十分に治水の機能を果たせないまま、野村ダムは西日本豪雨を迎えることになったのです。
被害を防ぐために、一体どうすればよかったのでしょうか?

ゲスト 石井光太さん(作家)

武田:この野村町のケースですね、命を守るために何か方法はなかったんでしょうか。

高山:そうですね。今、言われているのが避難指示を出すタイミング、これも1つの重要なポイントでした。実はですね、野村ダムとしては自治体に、午前2時30分には緊急放流を避けられないというふうに伝達をしていたんですけども、自治体としては雨の中、大雨です。そして、暗闇の中、住民の皆さんに避難していただくのはちょっとちゅうちょがあって、実際に伝えたのは午前5時を過ぎてからだったんですね。住民の皆さん、もっと早く知っていれば逃げることができたのではという声も聞かれました。

武田:そうですよね。

高山:こういったことを受けて、実は今年(2019年)の5月に自治体では、伝達のしかたを変えました。これまでは、緊急放流が決定してから住民に伝えるというルールだったんですけども、新しいルールは、ダムを見極めて、より早いタイミングで住民に注意を促すという改善が図られています。

武田:実際に住民の皆さんに話を聞かれた石井さんはどうご覧になりました?

石井さん:そうですね。僕は、これは単なる自然災害だけではないと思っています。もともとダムというのは、治水を目的として、日本全国にたくさん造られていったんですよね。その中で、ダムがあれば安全だというダムの安全神話というものが、いつの間にかできていました。実際に今回被害に遭われた方々にお話を聞いても、「ダムがあったから、絶対うちは大丈夫だと思っていた」というような言い方をするんですね。
ただ、災害というのは、想定外の時に起きるわけです。そういった時に、安全神話が崩れる瞬間というのがあるんですよね。本来であれば、崩れた時にどうしなきゃいけないか、どうするべきかということを事前に決めておかなければならないのに、そういったことがほとんど決められてこなかった。放水した時にどういったような状況になってしまうのか。本来はきちんとやっていかなきゃいけないのに、そこの部分が抜けてしまっていた。

武田:下流の堤防の整備が進んでいないために、野村ダムの運用には限界があったと。ダムだけではなくて、川全体で治水対策をとっておくべきだったという話がありましたけれども。

高山:そうですね。国土交通省に確認をしました。野村ダムのように、川の下流の整備が終わっていないということを理由に、放流量に制約があるというダム、全国の国が管理している河川に17か所あるということでした。専門家は、こうしたダムは、本来の治水能力を発揮できないため、大雨の際、緊急放流により氾濫するリスクが高まると指摘しています。

武田:北海道から九州までかなり存在しているわけですけれども、こうした危機感というのはなかなか共有されてないですよね。

石井さん:これには行政の縦割りの問題もあると思います。例えば、なぜきちんと早めに避難指示を出さなかったのかとダムのほうに言っても、それは自治体のことだからと。あるいは自治体のほうに、なぜ事前放流をしなかったのか。これはダムの話だからと。でも、住民からすると縦割りがどうなっているかなんて、正直な話どうでもいいんですよね。考えなきゃいけないのは、ダムを造ったからには、ダムの側も、自治体の側も、あるいは県の側も、国の側も、すべて1つになってきちんと住民を守るという意識がどうしても必要になるし、そこの部分が欠かせないのかなというふうに思っています。

高山:そもそも、ダムというと、我々は命を守ってくれる治水ダムというものをイメージしがちだと思います。この治水のほかに、実は利水という、利水ダムとも言われますが、農業、工業、発電、生活用水など、水を確保する。我々に恩恵をもたらしてくれるという側面もあるんですね。この利水を重視してダム建設を進めてきたために、下流の河川整備が遅れてしまったのではないかと指摘する専門家もいます。

武田:この利水ダムの中には、電力会社などの民間企業が管理するものもあります。そうしたダムの災害時の対応を巡って、大きな議論が巻き起こっています。

去年(2018年)7月、岡山県で大きな被害が出た、高梁川(たかはしがわ)一帯。その上流にある、県内最大の中国電力・新成羽川(しんなりわがわ)ダム。今、それを巡って議論が沸き起こっています。先月(6月)開かれた、防災対策についての住民説明会。

高梁市住民
「事前に放流するわけ、前の日から。そうしたら、あそこまでならずに済んだんじゃないか。」

住民は、ダムが事前放流を行っていれば、下流に流れる水量を抑えられ、避難する時間も稼げた、と主張しています。

一方、中国電力は、そもそも発電や工場地帯に水を送ることを目的とする利水ダムは、事前放流など治水対策は義務づけられていない、と説明しました。

高梁市住民
「(昭和)47年も浸かりました。今回も浸かりました。」

これに対して、この地域の住民たちは、中国電力に対しては昭和40年代から繰り返し、事前放流を求め続けてきた、と応じました。
昭和47年、中国地方を襲った豪雨被害。この災害をきっかけに、治水義務のない民間ダムのあり方を巡って、国会の場でも大きな議論となりました。
当時、住民の代表として、国会で事前放流を求めた、国実明さんです。国実さんが問題視したのは、国の責任でした。実は緊急時は、国が民間企業に事前放流を指示できる、と定められた法律が存在します。
にもかかわらず、国がこれまで一度も指示を出すこと無く、豪雨被害が繰り返されてきたことに、やりきれない思いを感じています。

国実明さん
「なぜなんだと。またやったのか。なぜ直らないんだという、無念な気持ちというのがやはりずっと残っています。」

国は、なぜ事前放流の指示を出してこなかったのか。国土交通省の担当者は、民間企業の経営資源である水を、国が放出させるのはハードルが高い、と語ります。

空閑健 国土交通省企画専門官
「当然そこにお金も入るのかもしれません。事前に技術的な課題も含めてルールを作るというところが、今まで難しかったと。」

ダムの利水と治水、どう折り合いをつければいいのでしょうか?

石井さん:まず、利水なのか、治水なのかという議論がずっと行われているわけですね。どちらを優先するのか、あるいはどうバランスを取るのか。だけど、利水と治水ってよく考えてみると、利水っていうのはお金なんですよね。で、治水というのは命なんです。利水と治水っていう言葉でちょっとごまかされてしまっていますけども、やはり僕は、命かお金かというふうに考えた場合、命を優先する、それは当たり前のことだと思うんですね。

高山:先ほど映像でご覧いただいた中国電力の新成羽川ダムですが、ダムの目的は利水で、発電、それから、工業用水の供給など行っているものです。中国電力は今年の5月、去年の西日本豪雨を受けて、国の指示を待たずに、大雨が予想される時は事前放流をして、ダムの2割を治水のために空けるという方針を打ち出しました。住民は、2割じゃなくてもっとできるはずだというふうに声を上げているんですが、なぜ2割なのか、中国電力の担当者に話を聞きました。

吉岡一郎 中国電力 電源事業本部 部長
「もちろん技術的に下げることというのは可能ですけれども、実際に渇水になったときに、じゃあ誰が助けてくれるのかといったところを考えますと、やはり今回、設定した水位ぐらいがぎりぎりだろうというふうに思っております。」

高山:電力会社にとっては、実は水というのは大切な経営のための資源でもあるわけなんですよね。水がなくなってしまうと工場に水を供給することもできませんし、当然発電もできなくなってしまいます。そうすると、企業ですから大きな損失が生まれてしまいます。ある関係者は、具体的にいうと、億単位の損失につながるのではと話していました。こうした損失を誰が補償するのかも決まっていないという状況。

石井さん:例えば、自分でこれは危険だなと思って放流をしました。でも、予想とは違ってそこまで雨が降りませんでした。そして、経済的に大きな損失を出してしまいました。これは放流した側の責任になってしまうんですね。やはり国自体がきちんと、もしも放流してもいいよというのであれば、きちんとその補償を国が背負う、責任を背負うということは絶対しなきゃいけないことなんじゃないのかなと、僕は思っています。

武田:ダムが必ずしも安全を守ってくれるとは限らない実態を見てきたわけですけれども、取材を進めると、戦後、相次いで造られたダムの中には、今、深刻な危機に直面しているものもあることが分かってきました。

高山哲哉アナウンサー
「見えてきました。水の代わりにたまっているのは、これ土砂ですよね。」

山梨県にある「雨畑(あめはた)ダム」、民間の発電用ダムです。
1967年の完成以来、水と一緒に流れ込む土砂の堆積が進行。なんとダムの93%が土砂で埋まってしまいました。

高山アナウンサー
「こちらにはかつて使われていた吊り橋。もう私の膝下3~40センチくらいのところまで土砂が迫っています。」

一体なぜ、こうなったのか?ダムが川の水をせき止めると、水だけでなく、少しずつ土砂もたまっていきます。この現象を「堆砂」(たいしゃ)と言います。この堆砂が進みすぎると、川の底が土砂で上がり、ダムの上流が氾濫しやすくなります。

高山アナウンサー
「この辺りは、とにかく濁っていて流れが激しい。音も恐怖を感じます。」

この日は、2日で60ミリと平均的な雨の量でしたが、川はあふれる寸前でした。
そもそもダムは、100年間でたまる土砂の量をあらかじめ予想して設計されています。しかし、雨畑ダムでは、建設から50年たった今、すでに予想の2倍の土砂がたまっています。高いところから水が落ちれば発電できるため、土砂がたまったままでも、使い続けることが可能なのです。
今回NHKが取材したところ、たまった土砂による浸水のおそれを国が指摘しているダムが、全国に少なくとも35あることが分かりました。

そもそも堆砂対策は、ダムを建設する時にどこまで考えられていたのか?ダムの建設が盛んに行われた高度経済成長期、それを推し進めた元官僚の証言を聞くことができました。

元通産省水力課 佐山實さん
「(土砂が)溜まれば何か対策すればいいという考え方ですね。たまるから水力をやめたとか、あらかじめ対策するということになっていないですね。とにかく日本の経済を支えるエネルギー、日本の食料を支えるダム。当時はまず堆砂という問題はまあ二の次ですね。」

対策を後手に回してきた堆砂の問題は今、深刻な事態を引き起こしています。熊本県の瀬戸石ダムです。

去年の西日本豪雨。瀬戸石ダムの6キロメートル上流では、川が氾濫し、町へ続く道をふさいでしまいました。

防災無線のアナウンス
「速やかに避難を始めてください。」

このダムは、国から土砂による洪水被害の危険性を17年も前から指摘され続けています。ダム上流の地域には、川の氾濫を避けるため、2度もかさ上げする工事を行った建物もありました。

高山アナウンサー
「(室外機を)あれくらいのところに置かないとダメなんですね。」

上流地域で旅館を経営 島元敏典さん
「梅雨時なんか3日4日続けて降ったらもう一面川ですよ。」

こちらの女性は、2度にわたって高い場所へ引っ越しました。ダムを管理する電気事業者は責任を認め、かさ上げや家の移転費用を補償しています。住民は被害を完全になくすための土砂の撤去を求めていますが、その計画は示されていません。

上流地域で暮らす 中村絹代さん
「いつまでこの繰り返しやって、どこで止まるんだろうと思う。そういう運命なんでしょうね。」

限界に達するダムの土砂問題、どうすればいいのでしょうか?

武田:ダムに、水ではなくて土砂がたまることによって、人々の暮らしが脅かされる。実際に住民の皆さんに電話で取材されたそうですけれども、なんておっしゃってたんでしょう。

石井さん:日常的に問題が起きているほうが圧倒的に多いんだという言い方をしてました。どういうことかというと、本当に小さな雨が降っただけで、まず交通網が全部止まってしまう。しかも数日間単位で止まってしまう。あるいは、下に置いてある、駐車場に置いてある車を全部上のほうに上げなきゃいけない。たった1回雨が降るだけですよ。先ほどのVTRの中でも、諦めてしまうような言い方をしていましたよね。これは運命だということを言っていました。それは、彼女自身が何回も何回もやり続けて、そういった状況をある種受け入れてしまっている。悲しいことなんです。これは。

武田:受け入れざるをえない。

石井さん:受け入れざるをえない。だから、彼女はそれを嫌なんだけども、運命として考えるしか、たぶん方法はなくなってきてしまっているんですね。

高山:旅館を経営されている男性は、言葉を飲み込むようにぽつりと、長年言ってきたんだけどねっていうふうに目に涙を少し浮かべられて。何も言わずにその地を去った皆さんもいらっしゃるそうなんです。

武田:それにしても、土砂は取り除くことはできないんですか?

高山:重機とか、あと、特別な船を浮かべて取り除くということは行われています。取材をした熊本の瀬戸石ダムでも、昨年度は全体の8%ほどの土砂を取り除いているんですが、ただこれ、運んだり管理したり、あるいは処理したり。これ全部、民間のダムの新たな負担になってしまうんですよね。こうした状況の中で、民のダムに国が関与することで問題解決につなげていこうという動きもあるんです。こちらはですね、発電用の利水ダムなんですけど、この容量の6分の1を国が治水のために買い取ります。プラス堆砂の対策も、官民合同でこれからは対策をしていきましょうという動きが、今、始まっていて、これが新たなモデルになるかもと、期待もされているんです。

武田:今、各地で大雨が続いているわけですよね。もちろんこうした対策をどんどん進めるべきだとは思うんですけれども、今、起きている洪水のリスクに対して、住民の皆さん、どういうふうにこれに向き合っていけばいいのか。取材でどんなことを感じましたか?

高山:発電用の利水ダムのはずなのに、このダムのおかげで僕らは守られているんだよとおっしゃる方、何人もいらっしゃったんですよね。ですから、自分たちの身近にあるダムがなぜ安全なのか、危険性はないのか疑ってみて、いざという時に、ハザードマップがなくてもどんなふうに避難をするのかというシミュレーションを個々人がやる。自分の命を守るという取り組みをぜひしていただきたいというふうに思いました。

武田:石井さん、高度経済成長とともにダムが増えてきた。本当に巨大なインフラなわけですけれども、それが今、大きな問題に直面しているわけですよね。ダムの運用が刻々と今、変わりつつある社会の姿であるとか、あるいは地球環境に応じて、使い方や管理のしかた、変えていかなきゃいけないと思うんですけれども、どういうふうにご覧になりますか。

石井さん:ダムというのが安全神話だとか、経済神話の中で、高度経済成長期にいっぱいできたんですけども、それは今、ほったらかしになってしまっているんですね、極端な言い方をしますと。全部ダムの特色っていうのは違うし、ダムの持っている機能も違うし、その河川の、川沿いに住んでいる人たちの生活状況って全く違う。だからこそ、住民と自治体が国に任せるのではなくて、住民と自治体が1つになって、きちんと、このダムのどこが危険なのか、直すべきところがあるとしたらどこなのか、住民はどういうふうに意識しなきゃいけないのかということをきちんと考えて、情報を明らかにして、そして、それを避けるためにはどういうふうにすればいいのか。そういうことを1つ1つやっていかなければならないのではないのかなと。

高山:NHKで今回、取材でいろんなダムの状況というのを取材しましたので、その一部になるんですけども、今回番組を通じて、みなさんにお伝えしていこうと思っています。

武田:ダムの恩恵だけではなくて、これ以上の被害を生まないために、そのリスクですね。それも見つめていくべきだと。

石井さん:そうですね。

武田:そういう時に来ているってことですね。

石井さん:はい、そう思います。

武田:ありがとうございました。