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2019年7月4日(木)

記録的大雨 “全市避難”で何が起きたのか

記録的大雨 “全市避難”で何が起きたのか

記録的な大雨になっている九州。鹿児島市は市内全域で、警戒レベル4にあたる全員避難を示す避難指示を出した。市民59万4943人はそのときどう判断し、その後どう行動したのか・・・。市民が避難を進める中で、避難所が手狭になり別の避難所に移るケースも。一方、各地で土砂災害が多発的に起きており、「記録的大雨」の猛威を改めて見せつけられることになっている。今後も梅雨が続き、台風シーズンがやってくる中、今回の九州のケースは、他の地域でいつ起きてもおかしくない。命を守るために何が必要か、最新情報を交えて伝える。

出演者

  • 中北英一さん (京都大学防災研究所 教授)
  • 関谷直也さん (東京大学大学院情報学環 准教授)
  • NHK記者
  • 武田真一 (キャスター) 、 栗原望 (アナウンサー)

記録的大雨 混乱・戸惑い…問われた判断

昨夜、大雨の中で、想定外の事態に直面する家族がいました。

取材班
「お子さん大丈夫ですか?せき、していますけれど。」

女性
「病み上がりで熱が下がったばっかりだったので。」

かぜ気味の子どもを抱えた妊娠9か月のこの女性。安心できる避難所が見つからず、さまよっていました。

取材班
「(避難所は)どんな様子だったんですか?」

女性
「130名ぐらい、いらっしゃって、妊婦と小さい子どもがいるので、福祉館(違う避難所)の方が、もしかしたらいいのではと。」

九州南部を襲った記録的な大雨。6日間にわたって降り続いた雨は地中にしみこみ、いつ土砂災害が起きてもおかしくない状況になっていました。

そうした中で鹿児島市は、市内全域、59万に上る住民に避難指示を出します。ところが、「命を守るために」と、早い段階で広範囲に出された指示が、かえって混乱を招きました。

住民
「もう(避難所には)入れないので、ここでちょっと。(避難所は)いっぱい。」

指示を受けて、どう行動すべきか。高齢者を預かる施設は、難しい判断を迫られます。

グループホーム 担当者
「緊急事態になった時に、たぶんスタッフも慌てます。ふだんとは違う行動をする。それに従う必要があるかどうか、かなり現場の判断だと思います。」

武田:いつ、どこで起きてもおかしくない豪雨災害。その時、私たちはどう動けばいいのか。鹿児島の“全市避難”から考えます。

子どもを乗せ、自宅に向かう女性が見たものは…。

あちこちで道路が冠水。何度も、う回を余儀なくされたといいます。
さらに、高齢の男性が道路の崩落に気付かず、車ごと転落。なんとか自力で逃げ出しましたが、軽いけがを負っていました。

昨日(3日)鹿児島県を襲った記録的な大雨は、平年の7月1か月分の雨量を僅か1日で超えました。

この大雨を見て、去年(2018年)の西日本豪雨と同様の被害を危惧した人がいます。鹿児島大学で土砂崩れなどの大雨災害を研究する、地頭薗隆教授です。

鹿児島大学 地頭薗隆教授
「こういう赤いところ、非常に雨が降っているわけですけど、こういうのがずっと同じ場所に雨が降るということになると、同じ場所で崩壊が同時多発的にいっぱい起こっている。去年の西日本豪雨もそうだったし、その前の九州北部豪雨でもそういう現象が起こった。それが鹿児島でも起こるんじゃないかということで心配していた。」

大雨による深刻な被害に備え、鹿児島県の各地で、市内全域を対象にした避難指示が相次ぎました。中でも、最も避難の対象者が多かったのが、人口59万の鹿児島市です。

鹿児島市に避難指示が出されたのは、昨日の午前9時35分でした。

鹿児島市 森博幸市長
「ぜひとも早めに避難していただき、ご自分や大切な方の命を守る行動をとっていただきますようお願いいたします。」

この直後から、ネット上ではさまざまな意見が飛び交い始めます。

(ネット上の声)

“市内全域に避難指示でてるんだけど、どこに避難すればいいんだ。”

“仕事休んでまで避難所に行けるかと言えば、NOだよ。”

全域への避難指示を決断した、鹿児島市の危機管理課です。

夜にかけて、さらなる大雨が予想される中、広範囲に注意を促すことで、市民1人1人に危機感を持ってもらいたいと考えていました。

鹿児島市危機管理課 担当者
「我々としては60万人に(避難指示を)出さざる得ないのは、危険な地域、危ない地域に住んでいる人に避難してほしいわけです。市内全域の中で自分が危ないと思ったところ、危ないと思った人は避難してくださいと。」

かつてない規模の避難指示に、鹿児島の人たちはどう対応したのか。取材を進めると、いくつかの課題が浮かび上がってきました。
夜10時過ぎ、私たちが向かったのは、市の中心部から車で15分の中山町です。避難所を訪ねてみると…。

住民
「もういっぱいで、私もいま来て、ようやく2人だったから場所を取れたんですが、もう、ほとんど満員です。」

建物の中は、多くの人であふれていました。大勢の市民が詰めかけ、中に入ることをためらう人まで出ていました。

栗原:車の中にいますけど、避難所には入らないんですか?

住民
「入れないので、ここで。いっぱいだったので。」

栗原:じゃあ、きょうはここで寝るんですか?

住民
「ここで。」

栗原:車の中で?

住民
「車の中で。
情報が入ってこないから、心配は心配ですね。」

さらに…。

栗原:お腹大きいですよね。

女性
「9か月です。」

2歳の子どもを抱えた、妊娠9か月の女性です。十分なスペースが確保できないと判断し、別の避難所に向かいました。大雨が降りしきる中、近くの避難所に移動した女性。ところが、そこは比較的崖に近く、安心できなかったといいます。女性は再び移動することにしました。

女性
「崖になっているんですね、ここ。」

栗原:また移動するんですか?

女性
「自宅のほうに、団地に(移動する)。ここよりは、そんなに崖に面してないので。
怖いです。しょうがない。」

避難指示が出た地域の中に、どう行動すべきか、難しい選択を迫られていた人たちがいます。18人の高齢者が暮らす、グループホームの担当者です。

利用者全員が認知症の、この施設。避難指示が出されても、全員の高齢者とこの場を離れることは困難だと考えたといいます。

グループホーム 担当者
「避難しなくちゃいけないとなったとき、いっぺんに動かせませんから何人かずつやっているうちに何か様子がおかしいなとなって、いつもみられない症状がでる可能性はあります。緊急事態になった時に、いかに落ち着いてもらって、こちらの言うことを聞いてもらってというのが一番大変。」

18人の命を守るために。川や崖からも離れている施設の立地を考慮して、避難しないことを決断しました。

グループホーム 担当者
「この介護の仕事は利用者さんの命をお預かりしている仕事なので、全員に(避難)指示がでたのはわかっていますけど、それに従うかどうかは現場の判断。」

家族が離れ離れの状況で、どう避難するか。その難しさも浮き彫りになりました。小学生と中学生の子どもがいる、立岡瑞代さんです。

共働きで、避難指示が出た時は仕事中。自宅には子どもたちだけがいました。仕事の合間に自宅に電話し、子どもにも注意を促しましたが、避難のことは深くは考えていませんでした。

立岡瑞代さん
「あんまり(子どもたちを)怖がらせてはいけないなというのもありましたし、実際、私もそこまでここが水に浸かるということはないんじゃないかと思っていたので、急いで電話で言っちゃいましたね。」

ところが、雨足が徐々に強まっていくと、不安な気持ちが増していったといいます。自宅のすぐ前には、かつて水があふれたことのある川があります。

立岡瑞代さん
「『昔はここも氾濫したんだよ』と聞いた話だとか、実際にやっぱり見るニュースとかで、だんだん心配になってきたというか。」

さらに、職場と自宅の間にある永田川の水位が徐々に上がっていました。

夕方、仕事を切り上げ、自宅に戻った瑞代さん。帰宅した夫と合流し、避難を始めた時には、自宅前の川も水位が大幅に上昇していました。

立岡瑞代さん
「怖かったですね。一番(雨も)強い時間帯に移動してしまったので。」

避難指示をどう受け止めるべきか。瑞代さんは、自ら判断することが難しかったと感じています。

立岡瑞代さん
「避難指示が出ているときに、自分のこととして自分で判断して、『じゃあ避難しよう』って行動に移すというのが、結構、思いきりがいることだなって思いました。」

59万人が対象となった、今回の避難指示。市長はどう受け止めているのでしょうか。

鹿児島市 森博幸市長
「瞬時に的確な情報を流すことが行政の一番大きな役割だと思っているので、一つ一つの区域を区切るというのは、今回の場合は困難ではなかったかと思う。全市的に人口が多い自治体では、どういう形で指示を出せばいいのか。あり方について、検証していかなければいけない。」

避難を巡る混乱はなぜ起きたのか。スタジオで詳しく考えます。

ゲスト 中北英一さん(京都大学防災研究所 教授)
ゲスト 関谷直也さん(東京大学大学院情報学環 准教授)

武田:鹿児島の皆さん、本当に大変だったんだなと思いましたが、テレビの前の皆さんも、ぜひ、我がごとに置き換えてご覧になっていただければと思います。
国内外の被災地を調査してこられた、中北さん。今回の雨の特徴は、どういうことが言えますか?

中北さん:まず、一番大きく思うことは、昨年の西日本豪雨と同じように、梅雨前線が停滞した状態で、長く、たくさんの雨が降ったというのが大きな特徴だろうと。流域とか、満身創痍になったと。思い起こすのは、1993年の梅雨が明けなかった年なんですけれども、地元では「8.6水害」と言われている水害とよく似た様相でもあると。竜ヶ水辺り、今回、南鹿児島駅が崖のそばで崩れかけているというのがありましたけれど、その当時も日豊本線の駅でそういう危険な状況で、実際に駅が崩れて、JRの方の判断で救われましたけれども、大変な被害になったと。それから、もう一撃、雨が降れば、もっと大きな災害になっていた危険性があっただろうというのも、今回の特徴かなと思っています。

武田:今回の鹿児島市の対応です。まず、今月(7月)の1日に、市民の7割を超える42万人余りに、速やかに避難を呼びかける避難勧告を出しました。翌2日、気象庁は会見を開きまして、「自らの命は自らが守らなければならない状況が迫ってきている」と強い危機感を訴えました。

そして昨日午前9時35分に、鹿児島市は市の全域59万人余りに、災害発生の恐れが極めて高い状況になったとして避難指示を出しました。その直後に気象庁は再び会見を開きまして、「場合によっては、大雨特別警報を発表する」としました。そして今日夕方、磯・竜ヶ水地区を除いて、市の避難指示を解除しました。

災害時の被害や情報伝達を研究されている関谷さん。市内全域59万人に避難指示が出された。さまざまな課題も浮かび上がってきたわけですけれども、まず、今回の市の判断をどうご覧になりますか?

関谷さん:全域への避難勧告、避難指示は過去にもいろんな地域であるんですけれども、基本的には、土砂災害警戒区域にいる人、また、河川の氾濫の危険性がある浸水区域にいる人、土地の低い人に「避難をしてください」という意味で伝えているのがほとんどです。

武田:全域には出ていても、土砂災害と浸水の危険がある人に対して出ているということですね。

関谷さん:「水害の危険がある人全員が避難をしてください」という意味ですので、それが市の全域に出されてしまったので、レベルの文言として「全員避難」ってありますので、市全域が全員避難をするというふうに、やっぱり誤って受け取られた方も多かったのではないかなと思います。

武田:VTRにもありましたように、自分が安全なのか危険なのか、なかなか判断ができないという声もありましたね。

関谷さん:自分の家、自分の住んでいる場所が危険かどうかというのは、自分で判断というよりは、むしろ土砂災害のハザードマップや、水害のハザードマップをちゃんと見ていただいて、ちゃんとリスクがある場所を知るということが大事だと思います。

武田:災害担当の森野記者。これほど多くの人たちに、一度に避難指示を出すというのは、これまでもあったんですね?

森野記者(社会部 災害担当):広い範囲に自治体が避難勧告、あるいは避難指示を出すということは、これまでもありました。ただ、それが本当に効果があるのか、これまでは疑問視されてきました。国のガイドラインでも、避難の情報を出す際には、受け取った居住者が危機感を持つことができるよう、適切な範囲に絞り込むことが望ましいというふうにしているんです。多くの自治体もそのように絞るようになってきています。例えば人口370万の横浜市です。市内2,400か所余りの土砂災害警戒区域の中でも、特に危険の高い場所110か所を絞り込んで、特に早く、しかもピンポイントに避難勧告を出す取り組みを行っているんです。

これのポイントは、避難を呼びかける地域を事前に絞っておくことで、よりピンポイントに伝えるということです。今回の鹿児島市の取り組みは、今後、全域で避難指示を出すことが避難行動にどう影響を与えたのかということは、やはり検証する必要があると思います。

武田:もう1つのポイントとして「警戒レベル」という問題があります。今年(2019年)から国は、複雑な情報を分かりやすくして、住民の避難行動につなげるために、5段階の警戒レベルの運用を始めました。

今回、鹿児島市で発表されたのは、レベル4です。避難指示や避難勧告が出されまして、対象地域の全員が避難するという段階になります。今回は、今月の1日にレベル4の避難勧告が出ました。そして、昨日になりまして、レベル4の避難指示が出されまして、つまり、レベル4の警戒レベルが3日以上続くという状況になったわけです。早い段階からレベル4の警戒を呼びかけるというのは、どうだったんでしょうか?

関谷さん:もちろん、市民の方も早めに逃げる、準備をする必要がありますので、早めの段階でレベル4を出して、早めに避難を呼びかけ始めたというのは、1つ意味があるんだろうというふうに思います。ただ、課題になったのは、レベル4の中でも、やはり7月1日の避難勧告と、7月3日になってからの避難指示、大雨特別警報の可能性ということを気象庁が発表した段階では、やっぱり切迫度が結構異なっていたというふうには思うんです。そこの部分が分かりにくかったというか、伝えるのが行政のほうも苦労したというのは、課題としては残ったんだろうというふうに思います。

武田:中北さんは、どうご覧になりますか?

中北さん:避難するのは本当に大変なことだと、今のVTRを見ても思いますが、空振りをある程度許す文化は培っておく必要はあるというふうには思います。

武田:やはり避難はするべき?

中北さん:見ていると、本当に大変だということがよく分かります。

武田:今回の大雨、実はもっと大きな被害が起きていてもおかしくないほど切迫していたことも見えてきました。

各地で土砂崩れ 「深層崩壊」のリスクも

土砂災害が専門の、鹿児島大学、地頭薗隆教授です。

鹿児島大学 地頭薗隆教授
「濁った水が出ていますので、そういう所は決壊していると思います。」

今日(4日)被害の全容をつかむため、上空から調査を行いました。4時間を超える調査からは、土砂崩れが鹿児島県内の広いエリアでいくつも起きていることが分かりました。中には、土砂が住宅を襲った場所も複数ありました。

実は、地頭薗教授は昨日の夜から、さらに最悪の事態が起きてもおかしくないと、警戒を強めていました。

鹿児島大学 地頭薗隆教授
「雨がどんどん降ったら、深層崩壊が起こるような危険な状況。」

「深層崩壊」、大量に降った雨が地下深くまでしみ込むなどして起きる、大規模な土砂崩れです。

通常起きる土砂崩れとは比べ物にならないほど甚大な被害をもたらします。これまで、少なくとも120か所で深層崩壊が発生。今後発生するリスクが高い地域も、全国に広がっています。

今回降り続いた雨でも、深層崩壊のリスクが高まっていたことが分かりました。地頭薗教授たちが開発している、湧き水から地下水の量を推測するシステムです。過去に起きた深層崩壊から、湧き水が1秒当たり10リットルを超えると、危険だと考えています。

鹿児島大学 地頭薗隆教授
「全く安心できる状況ではない。」

昨日、鹿児島県内の複数の場所で危険な水準に達していました。

鹿児島大学 地頭薗隆教授
「今まさに10を超えている高い状況。深層崩壊の心配はしないといけない。」

今回の調査では、深層崩壊は確認されませんでした。しかし、土壌には今もなお大量の水が含まれています。地頭薗教授は、今後も深層崩壊のリスクを注視する必要があると考えています。

鹿児島大学 地頭薗隆教授
「深層崩壊なんて、何十年に1回しか起こらない現象だった。非常に強い雨、なおかつ大量の雨が毎年続いているということになると、これから深層崩壊は増えていくと考えざるをえない。」

“西日本豪雨と同じような…” 大雨のリスク

1週間近くにわたって降り続けた大量の雨。ほんの僅か気象条件が違えば、さらに被害が拡大した可能性があると指摘する専門家がいます。気象システムを研究する、坪木和久教授です。

名古屋大学 坪木和久教授
「これは水蒸気の流れなんですけれども、もしこの水蒸気の入り込み具合がわずかにずれていたら、西日本豪雨と同じようなことが起こっていても不思議ではなかった。」

去年7月、死者200人を超え、平成最大の水害となった西日本豪雨。坪木教授は、今回の豪雨も同じような気象条件で引き起こされたと考えています。去年の西日本豪雨と、大気の流れを比較した画像です。これによって生じた雨雲を重ねると、両方とも東西に広がっているものの、今年はやや南に位置していたことが分かります。

梅雨前線の場所は気圧配置によって決まります。今回、長期間にわたって、ほぼ同じ位置にとどまり続けました。

その梅雨前線に、南の海上からもたらされた大量の水蒸気が流れ込みます。その結果、発達した雨雲が同じ地域で次々と発生し、大量の雨が降り注いだのです。

名古屋大学 坪木和久教授
「昨年とほぼ同じくらいの水蒸気の量が今年も流れ込んでいた。梅雨末期にかけて、より強い大雨が起こっても不思議ではない。激甚災害をもたらすような大雨というのは、今後も毎年のように日本のどこかで起こっていくと考えて、それに対する対策、それに対する備えをしていく必要がある。」

全国に広がる豪雨のリスクとどう向き合えばよいのでしょうか。

“異常気象新時代” 新たなリスク

武田:先ほど、「最後の一撃がもしあったら…」というお話をされましたけれども、今シーズン、まだその可能性は残っているわけですよね。

中北さん:来週も天気予報では降るかもしれないとおっしゃっていますし、梅雨末期がまた怖い時期ですので、同じように前線が停滞する可能性もありますし、線状降水帯の強いのが、また起こる危険性もありますので、今年においても注意が必要であるというふうに思います。

武田:それは九州だけではない?

中北さん:九州だけではなくて、近畿であり、東海地域と、より東のエリアでも気をつける必要があると。

武田:実感として、雨の降り方が変わってきていると思っている方は多いと思います。
こちらは今回の雨の積算雨量です。降り始めからの雨量が、平年の7月1か月分の2倍を超えた所もあったということなんですね。

こうした事態がもはや普通になっているようにも思うんですけれども、やはり環境が大きく変わっているということが影響しているんですか?

中北さん:総雨量、あるいは3日雨量等が更新されるということから考えると、やはり温暖化の影響もあり、入ってくる水蒸気が今までに比べて多くなっているということが考えられると。それがまた来年も起こるだろうというようなことは考えられると思います。

武田:これまでは、どちらかというと西日本、特に九州などで大雨が多いというふうに思われていたと思うんですけれど、そういった状況も変わっていく可能性があるんですか?

中北さん:温暖化によって、西のほうに来ていたやつが、さらに東へ東へ、東海、関東、あるいは東北、北海道のほうに進入していくと予測されておりますので、こういう豪雨が起こりやすい。中長期的には、より広い範囲で危険な状態になるだろうというふうに考えていただきたいです。

武田:中長期的に梅雨の豪雨が…。

中北さん:東、北へと思っていただいたらいいと思います。

武田:梅雨の長雨はまた続きますし、台風シーズンもこれからです。命を守るために何を考えていけばいいんでしょうか?

森野記者:まず九州の状況を見ていきたいんですけれども、警戒が必要な状況が続いています。土砂災害の危険度分布なんですけれども、鹿児島県では赤色、警戒の状況が続いているんです。雨が止んでも、このような状況ですので、少しの雨でも土砂災害が発生する可能性があります。

さらに全国でも梅雨が長引く可能性があるんです。梅雨前線が、九州、本州付近に停滞する状態が少なくとも今月中旬まで続く見込みだというふうに予想されています。全国で注意してください。

武田:今回の記録的な大雨から、お2人は何を教訓としてご覧になりましたか?

中北さん:「災害はまた起きます」それから「お宅でも起きます」というようなことを強調したいと思います。

毎年あるとは思っていましたけれど、このように3年連続であるというのはやはり驚きでもありますし、先ほど言いましたように、今年も、あるいは中長期的にも、さらに東のほうにも梅雨豪雨があるだろうと。そういう意味も含めて、「お宅でも」ということを書かせていただきました。

関谷さん:「『全員避難』という意味を知る、伝える」ということが大事だと思います。

誰が避難するか、私が避難する必要があるのかどうかということをまず知ること。また、行政やメディアとしては、誰が避難すべきなのか、もう少しメッセージの出し方を工夫する必要があるのではないかというふうに思います。

武田:ぜひ、これからハザードマップをご覧になっていただいて、皆さんの周りにどんなリスクがあるのか、しっかりと調べて、備えていただければと思います。