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2019年6月11日(火)

“性の偏見”取り払えますか? ~LGBTに寛容な社会のために~

“性の偏見”取り払えますか? ~LGBTに寛容な社会のために~

同性愛者や心と体の性が一致しないトランスジェンダーなどLGBTの人たちは、日本の調査では8.9%。左利きの人と同じくらいいるといわれている。しかし、男はこう、女はこうといった、社会に根付いた「バイアス」によって、生きづらさを感じている。それをどう取り払い、生きやすい社会を作れるのか? 先月(5月)WHOが、LGBTのうち最後まで精神障害としてきた性同一性障害を障害の分類から外すなど、世界ではLGBTに対する意識が大きく変わろうとしている。 対応に動き始めた日本の企業や学校、先進的な取り組みが進むスウェーデンの幼稚園や介護施設などを取材した。

出演者

  • 安渕聖司さん (アクサ生命保険・社長)
  • 北川わかとさん (笑美面・LGBTキャリアアドバイザー)
  • 武田真一 (キャスター) 、 合原明子 (アナウンサー)

あなたの職場で… “性の偏見”取り払えますか?

LGBTの人たちが働くための支援をしている北川わかとさん、32歳です。みずからも、心と体の性が一致しないトランスジェンダーです。

笑美面 LGBTキャリアアドバイザー 北川わかとさん
「女の子っぽい格好はしたくないという感じでしたね。」

女性として生まれましたが、26歳のときに性別適合手術を受け、今は男性として暮らしています。LGBTの人たちの仕事の悩みを聞きながら、企業側の理解も深めるコンサルタントをしています。

北川わかとさん
「実はこんな悩みを持って働いている人もいるので、気づかせてあげることも大事かな。」

この日、北川さんは大阪で老人ホームを運営する社会福祉法人を訪ねました。ここでは以前、周囲の目を気にしたトランスジェンダーの職員が退職してしまいました。

職員
「ちょっと顔拭きますね。」

施設では、LGBTの職員への配慮が足りなかったという反省から、対応を急いでいます。

慶生会 人事採用担当 藤原知子さん
「LGBTであることを理由に、働きにくくなって辞めることを本当に防ぎたい。人が不足しているというにもかかわらず、何も対策もせず辞めてしまうことを避けていきたい。」

藤原知子さん
「女性の更衣室になっています。」

北川さんが最初に調べたのは、更衣室でした。かつての北川さんのように、体は女性でも心は男性の場合、視線を遮るものがないまま女性の前で着替えるのは苦痛だと指摘しました。

北川わかとさん
「僕、ここで絶対、下着まで履き替えられないですね。このオープンな状況であれば。やっぱり自分の体を見られること自体が抵抗があったので。」

藤原知子さん
「いつもだと、それが当たり前みたいな感覚になってしまうので。」

さらに、こんなところにも目を留めました。廊下に張り出された職員のフルネームと顔写真。見た目が男性らしくても、名前が女性のままの場合もあるため、このような掲示はやめたほうがいいと伝えました。

北川わかとさん
「僕の場合だったら“北川和香”だったんですけど、ここに僕の名前があったら、ちょっと。『あれ?』みたいに、きっとなるかなと。」

藤原知子さん
「言われてみれば、確かに。なるほどな。」

これまで当たり前だと思われていたことも含めて、職場の在り方を一つ一つ見直していくことが大切だとアドバイスしました。

北川わかとさん
「知識が全然足りないとか、まだ設備が整っていないとかあったんですけど、それをそろえるのはすぐには難しいと思いますし、まず何か一歩踏み出してみる。できるところから。そこがすごく大事かなと思いますね。」

今、LGBTの人たちが働きやすい環境を整えようとする企業が増えています。先月、都内で開かれたLGBTに理解のある企業を認定するための説明会には、幅広い業種から60社以上が参加。

主催者
「全社員に対する研修、マネージメント層に対する研修。やろうとしている姿勢が見えるだけでも、安心して働けることにつながる。」

偏見をなくし、社員の多様性を認めていくことが、成長に欠かせないという意識が広がり始めています。

参加した大手航空会社
「外資の企業はすごく取り組みが進んでいると聞いておりましたので、私たちも何かやっていかなくてはいけない。」

多様性を重視することで成長を続けるグローバル企業があります。世界に370店舗を構え、日本にも展開する大手家具メーカー。LGBTの人たちを積極的に採用。個人を尊重する社風を前面に打ち出しています。

社内で同性愛者であることを隠す必要はありません。

レズビアンの社員
「あしたはハーフマラソンの大会に出ます。今夜中に移動するつもりです。」

ゲイの社員 ジェフリー・アンガスさん
「あなたの妻も一緒に練習したの?」

レズビアンの社員
「いいえ、でも彼女は応援してくれるわ。」

ジェフリー・アンガスさん
「僕の夫はテレビを見ていたよ。」

店舗で働く従業員の制服は、男女とも一緒。このオフィスに設けられた70ほどのトイレもすべて個室です。性別を問わず、誰もが利用できます。

差別や偏見のない社風のおかげで、LGBTの社員も能力を最大限発揮できるといいます。

ゲイの社員 ジェフリー・アンガスさん
「私たちは誰もが互いの違いを認めあっています。それぞれの多様性や個性を生かすことで、会社に貢献できるのです。」

店頭でも、LGBTの人たちを尊重する姿勢を示しています。

“こんにちは、ここは僕たちの家だよ。”

“どうぞ中に入って。”

客の中には同性のカップルがいることも、当たり前のように想定されています。こうした取り組みが先進的だとして、国連にも評価されるこの企業。世界中から優秀な人材が集まり、成長につながっているといいます。

イケア ダイバーシティ戦略担当 責任者 サリ・ブロディさん
「多様な価値観を持つ人が働くことを望むので、有能な人材を採用できます。私たちが人材を求め、人材が私たちを求めるのです。また、あらゆる人のライフスタイルを尊重し、業績も上げています。」

偏見をなくし、誰もが働きやすい社会をどう作っていけばいいか。具体例をもとに考えます。

“性の偏見” 職場をどう変える?

ゲスト北川わかとさん(LGBTキャリアアドバイザー)
ゲスト安渕聖司さん(アクサ生命保険 社長)

武田:当事者としてLGBTの人たちの支援を続けてこられた北川さん。海外の企業を見ますと、日本の会社の職場、NHKもそうなんですけれども、まだまだだなと思わざるをえないんですが、今起きている企業の動きをどう捉えていらっしゃいますか?

北川さん:私が悩んでいた10年前、11年前に比べると、本当に情報も増えていますし、企業での取り組みであったり、そういったところがすごく進んではきているなと思います。

武田:ただ、それが本当にLGBTの人たちの働きやすさにつながっていますか?

北川さん:表面上は、アライ(LGBTを支援する)企業ですと発信していただいている所もあるんですけれども、実際に働いてみると、やっぱり中のところ、働き口としてはまだまだ全社員が知らないとか。もっともっと理解を深める必要があるかなと思います。

武田:おっしゃるとおり、まだ働きやすい環境が整っているとは言えなさそうなんです。今年(2019年)の3月に行われた調査で明らかになった、LGBTの人たちが職場で困ったポイントです。

まず、就職活動で履歴書に写真を貼らなければいけませんが、この見た目と、実際の性別が異なっている。そのため応募をためらうという問題。また、男女の違いを前提としたリクルートスーツ、これも気になる人がいるということですね。これは、具体的にどんな問題が?

北川さん:私の実体験で言うと、手術をして性別を変更したんですけれども、戸籍上は男性になったんですが、実は私、女子高、女子大を出ておりまして、そういったときに、履歴書に女子高、女子大と書かないといけない。今の会社を受けたときは、うちの会社はLGBTの支援をしている会社というのが、もともと分かっていたので、ここの会社やったらすべて受け入れてくれるだろうなという安心感はすごくありました。

武田:しかし、そのちゅうちょが選択肢を狭めるということになりますね。さらに、健康診断で服を脱がなければいけないということで不快な思いをしたり、同性のパートナーに家族手当や社宅が提供されないといった福利厚生の問題もあるといいます。そして「アウティング」。これはカミングアウトしたことを口外してしまうということなんですが、これはどんな問題があるんでしょうか?

北川さん:カミングアウトって、本当に信頼できる人に伝える場合が多いんですけれども、この人やったら信頼して話を聞いてくれるやろと思ったとしても、聞いた側が、軽はずみな感じで周りの人に言いふらしてしまったりとか、時には死に至ってしまうというケースもありますので、本当にここは慎重に取り扱うべきだなと思いますね。

武田:ご本人が言ってることだから、いいだろうというふうに思うと、本当に大きな問題になる可能性があるということなんですね。もうひと方、大手保険会社の社長として、会社を挙げてLGBTのパレードにも参加されるなど、LGBTの人たちが働きやすい環境を作ってこられた安渕さん。まだまだ日本の企業、さまざまな問題がありそうですけれども、経営者としては、どう捉えていらっしゃいますか。

安渕さん:まず就職活動のところですけれども、私どもでは応募書類にまず写真を頂いておりません。それから性別も頂いておりません。したがって、学歴がどうであっても、そこは分からないようになっていて、応募しやすくなっています。

武田:そこから違和感を感じることが少ないと。

安渕さん:そういうふうになっております。企業の立場から申し上げますと、そもそも社会は多様であるというのが、たぶん前提条件になってくると思います。その多様な社会という中にお客様がいるわけですから、お客様も多様だと。われわれはお客様にアプローチしていくためには、その多様性というものをよく理解して、社内に取り込んでいかなくてはいけないということは、企業としてはとても必要性を感じているところです。

武田:今、多様性がイノベーションを生むということがありますけれども、必ずしも多様性というのは、イノベーションのためではないですよね。

安渕さん:もともとあるものですので、それがないとイノベーションが生まれにくくなるわけですから、企業としてはそれを積極的に取り込んでいって、違ったアイデアをぶつけ合いながら、多様性を受け入れて、ある意味、育てていくということの中から、新しいアイデア、イノベーションが生まれてくると思います。

武田:多様性はもう前提としなければいけない?

安渕さん:そのとおりです。

合原:ここで、見ていただきたいデータがあります。実はLGBTに対する意識というのは若い世代ほど高いというものなんですけども、年代が下がれば下がるほど点数が上がっていき、10代から20代は寛容度が高くなっているんです。

この若い世代が、一体どんな意識を持っているのか。東京のある学校を取材しました。そこで大切な視点に気付かされました。

高校生が動いた 規則・意識を変えた

東京にある、男女別学の高校です。

合原
「男子部があって、女子部は別のところ?」

自由学園 男子部 校長 更科幸一さん
「女子部は向こうの方にあります。」

案内されたのは、「性の自分らしさを考える自由の会」と名付けられた、生徒たちのグループです。2年前に始まり、月に数回、LGBTについて議論したり勉強会を開いたりしています。

生徒
「先生も『机運ぶの男子でしょ』みたいな。女子だって机運べるけど。男子も『それは男子の役目なんだ』と認識してしまって。」

高校3年生 木村翠さん
「女の人を好きになる女の子もいていい、男と女という分かれ方を嫌う人もいていい。いろんな人がいる。」

中心メンバーの、木村翠さんです。活動を始めたきっかけは、友達からLGBTだと打ち明けられたことでした。誰にも相談できずに苦しんだ話を聞き、仲間たちが立ち上がりました。木村さんも、自分自身が持っていた偏見に気付かされたといいます。

高校3年生 木村翠さん
「(自分も)ゲイだとかホモだとか言われることがあって、そのときに『いや絶対に違うから』みたいに否定していたんです。それはすごく僕のつらい過去というか。そういう中でクラスの当事者の人を傷つけたことがあったんだろうなと思って。」

合原
「生徒たちから、この活動をやりたいと言われたときは、率直にどう思われましたか?」

自由学園 男子部 校長 更科幸一さん
「率直に、はじめ、ぎょっとした瞬間はありました。」

合原
「それはどういう?」

更科幸一さん
「この問題を、私自身がしっかりと理解できていなかったからだと思います。」

生徒たちは、「男子はこうあるべきだ」と感じさせる学校の決まりを次々と変えていきました。創立以来の伝統だった坊主頭。全校で話し合い、髪形を自由にしました。さらに、体操では上半身裸という習慣も。シャツを着ることができるようにしました。

こうした生徒たちの活動を受けて、学校は今、男女別学をやめて共学にする検討を始めています。

自由学園 男子部 校長 更科幸一さん
「彼らと話をしたりミーティングをしているときに一緒にいたりすると、とても、はっとさせられる瞬間があります。大人は頭で理解しようとします。一生懸命。ただ生徒たちは、心と肌の感覚でそのことを理解できる。」

先月、行われた文化祭。木村さんたちは初めて、これまでの活動について発表することにしました。会場を訪れた親の世代は、LGBTのことを、どこかひと事のように感じていました。

来場者
「ママ友じゃ、いないからね。」

「会ったことがないからね。」

高校3年生 木村翠さん
「左利きの人と同じくらいの割合でいるという統計がありまして。」

来場者
「会社でも研修があるけど、なかなか身近にいないと自分から遠い話のように思えちゃって。」

LGBTについて多くの人たちが関心を持つきっかけになればと、木村さんは声をかけました。

木村翠さん
「必ず身のまわりにいると思うんですよね、当事者の方が。まだ出会っていなくても、そういう人のことを考えられるようになると、変われるんじゃないかと思います。」

人々の意識を変えていくには、どうしたらいいのでしょうか。

社会の意識をどう変える?

武田:北川さん、大人は「会ったことがない」。高校生は「必ず身のまわりにいる」と。この認識のギャップが一番のポイントではないかと思うんですが?

北川さん:やっぱり知ってもらっていないと、自分自身を隠さないといけないのかなと思いますので、少しでもLGBTのことを知ってますよ、理解してますよと言ってくれたら、過去の自分ですけれども、言いやすかったり、相談しやすかったかなと思います。

武田:「いない」と言われてしまうと、隠さないといけない?「いないことになっている」と、本当に自分はそうじゃないと思い込まなければいけないということですか?

北川さん:女として生きていかないといけないとか、実は同性が好きですと言うことに、すごく恐怖心を感じてしまう。そう思う気持ち自体、間違っているのかなという思いになりますね。

武田:私もLGBTに対して「まあ、いいんじゃないかな」くらいの感じだったんですが、それは実は理解があるということではなくて、無関心、知らないということだったんだなと思ったんです。

安渕さん:今のお話で「見えない」ということが、この問題の一つのポイントだと思うんですね。「見えない」から「いない」と思う。「いないと思う」と言うと、表に出てこられない、となります。私がすごくやっぱり衝撃を受けたのは、当事者から聞いた話ですけれども、当事者が本当の自分を隠すために、どれだけのエネルギーを使って、全く違う自分の、いわば壮大なフィクション、ストーリーを作り上げていかなければいけない、それを人には語り続けなくてはいけないというのが、私も聞いたときにはすごく衝撃を受けました。

武田:そんなことがあるんですね。

北川さん:そうですね、つらい、不安…恐怖心がありますね。

合原:先ほどご紹介した、同性愛に対する寛容度の調査、実は世界各地でも行われているんです。

10点に近いほど寛容度が高いことを示しているんですが、日本は5.14。一方で8.18と、世界トップレベルなのが、北欧のスウェーデンなんです。一体なぜなのか、取材しました。

国を挙げて意識を変えた“先進国”

スウェーデンの首都ストックホルム。街の至る所に、LGBTに理解を示すレインボーフラッグが掲げられています。

「LGBTの人たちを尊重していますよ。同じ人間ですから。」

「僕はゲイだから、もちろんゲイ支持派です。君もでしょ?」

「ええ、もちろん。」

「スウェーデンのほとんどの人はそうです。」

スウェーデンでは、1980年代からLGBTの権利の拡大を求める運動が盛んになりました。しかし、保守的な人たちの反発は根強く、運動の支持者が襲われる事件も起きました。転機となったのは、2000年代に入って国が同性愛差別を禁止するなど、次々と法律を整備したことでした。経済が低迷し高齢化が進む中、国として成長していくには、多様な人材の活躍が欠かせないと考えたのです。

スウェーデン リンドハーゲン男女平等担当相
「国のルールや価値観は、必ず変えることができます。そうすることで社会はよりよく、より強くなるのです。」

まず力を入れたのが、幼少期からの教育です。LGBTに対する偏見が生まれないよう、国がカリキュラムを作っています。

ニコライゴーデン幼稚園 ロッタ・ライヤリン園長
「こちらが図書室です。これは『ダディとパパとわたし』です。」

この幼稚園で読み聞かせしているのは、男性カップルが子どもを育てる絵本です。

ニコライゴーデン幼稚園 ロッタ・ライヤリン園長
「幼い子どもたちは、この本に何の疑問も持ちません。疑問を持つのは大人だけです。『すべての人には尊厳があり平等だ』と、幼いころから教えるほうが簡単です。」

社会も変化していきました。企業や公共交通機関、同性婚に反対してきた教会も、理解を示すようになりました。
今では長年、偏見に苦しんできたLGBTの高齢者にも配慮が行き届いています。こちらの高齢者用住宅には、LGBT専用のフロアも。この男性は、若いころ同性愛者であることを父親に拒絶されたといいます。

ビョルン・ルンドステットさん
「父は私を弱くて女々しいととがめました。いまは同性愛者であっても、何の問題もありません。」

60歳になって初めて、同性愛者だと打ち明けることができた女性もいます。

アグネタ・スパッレさん
「自分と同じような人たちに囲まれ、ようやく打ち明けることができました。みんなが守ってくれると感じますから。」

高齢者住宅 創設者 クリステル・フェルマンさん
「人生の最後には安心できる環境が必要です。これまでの日々を語り、共に過ごすことが大切です。」

LGBTの人たちが暮らしやすい社会を作るため、国を挙げて取り組み続けるスウェーデン。日本には何が求められているのでしょうか。

寛容な社会をどう作る?

武田:スウェーデンは、長い葛藤の歴史を経てここまで社会が変わってきているわけなんですが、日本はこれからどう変わっていけるのか、何が必要なのか。安渕さんが挙げた言葉は「あたりまえに混ざる」、どういうことでしょうか?

安渕さん:最初に申し上げたように、社会そのものが、そもそも多様である、みんな違うんだと。そうした違いを受け入れて、混ざることがあたりまえになるような社会を作っていきたいと。まさに左利きの人が、右利きの人と今、同じように混ざっていて誰も不思議に思わないと、そうなります。LGBTもそういうふうになっていってほしい。そのためには、変わらなくてはいけないのは多数派、91%、マジョリティーのほうが変わっていって当たり前に混ざっていくと、そういったところをぜひ目指していきたいと思います。

武田:日本社会は変われるのでしょうか?

安渕さん:変われると思います。どちらかというと、無関心な人が多いと思います。「まあいいんじゃないか」というお話もありましたけれども、その無関心な人も、やはり全体の空気が変わってくると、みんなが変わってくるという可能性は十分あると思います。私は変われると思います。

武田:会社が変わるためには、なんとかしなくてはと思ってらっしゃる経営者の方も多いと思うんですが、まず何から始めればいいんでしょうか?

安渕さん:まずは当事者の話を聞くところからだと思います。要するに当事者じゃない人だけで議論しててもしかたがありませんので、当事者の話をまずは聞いて、よく理解して。それからがスタートだと思います。

武田:それが、肌感覚で認識するということにつながる?

安渕さん:まさにそうだと思います。

武田:そして当事者である北川さんが挙げたポイントは、「相手を知ることから始める」ということですね。

北川さん:男性であったり、女性、元男の人、元女の人、元スポーツ選手の人、皆さん、いろんな過去があると思うんですけれども、LGBTに関しては、勇気を持ってカミングアウトをする方が中にはいらっしゃいます。それを聞かれた方は、まず相手の話をしっかり聞いて、「あなたのことを教えてください」と、まず相手のことを知るということから始めていただければと思います。

武田:でも、われわれが意識していないような、今の世の中の当たり前が知らず知らずのうちに当事者の皆さんを傷つけているということがあるということも知らなければいけないですね。そこはどうやったら変えていけるんでしょうか?

北川さん:本当にLGBTの人は皆さんの近くにいるんですよということを、もっと知っていただく必要があるかなと思います。

武田:それは、われわれが常にそういう気持ちでいなきゃいけない?

北川さん:そうですね、当たり前に存在しますよと。

武田:LGBTの人たちが本当に生きやすくなるためには、さっきおっしゃいましたように、本当にこれまで関係ないと思ってた人たちこそ、変わっていかなければいけないということですね。

安渕さん:まったくそのとおりだと思います。

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